病院内には感染に対する抵抗力の弱い, いわゆるcompromisedhostが多く, 医療行為による感染の機会が多い.また院内感染で問題となる菌種も年次的に変貌している.このような現状において術後感染の感染経路を把握することは, 院内感染防止対策上重要である.今回, 消化器疾患病棟において, 手術施行後
Pseudomonas aeruginosaおよび
P. aeruginosaと
Staphylococcus aureusの混合感染を起こした患者の身体由来の材料, 排泄物, リネン, 床, 手洗い場等の周囲の環境および関連する医療従事者を対象に細菌調査をし, 疫学的に検討を行った.
P. aeruginosa感染のケースは, 患者の創部と痰, 医師1名の鼻腔から, 血清型, 薬剤感受性が同じ性状の
P. aeruginosaが検出され, 感染経路として医師の鼻腔が原因となっている可能性が考えられた.
P. aeruginosaと
S. aureusの混合感染のケースでは, 創部, 創部ガーゼ周囲, 各ドレーン挿入部, 痰, 便から同性状のP. aerugznosaが検出され, 患者自身の便が原因の内因性感染であると思われた.またS.aureusは創の各ドレーン挿入部, 鼻腔, 手指, 痰, 尿, リネン, 床からコアグラーゼ型, ファージ型, 薬剤感受性がともに同一の菌株が検出され, 患者自身が鼻腔に保有していた菌が手指を介して感染した可能性が考えられた.
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