環境感染
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8 巻, 2 号
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  • 1979年から1992年まで
    荒川 迪生, 稲松 孝思, 江崎 孝行, 大井田 隆, 斎藤 厚, 副島 林造, 田口 善夫, 原 耕平, 藪内 英子, 山口 恵三, 上田 ...
    1993 年 8 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    先に我々は1980年から1990年までの間に確認しえた培養陽性本邦レジオネラ肺炎症例およびその胸部X線像の解析結果を報告した. 今回は1年6ヵ月にわたる患者調査を含めて, 1979年から1992年までに培養陽性, 血清抗体価上昇または尿中特異抗原陽性の単独, または組み合わせによって診断されたレジオネラ肺炎症例について集計した.
    14年間にわたるレジオネラ肺炎患者数は86例で日本全国に分布し, そのうち38例は生前または剖検時の培養陽性, 38例は血清抗体価の有意上昇, 4例は尿中特異抗原陽性, 残りの6例はPCR陽性で診断された. しかしPCR陽性患者については詳細な情報が得られなかったので, これらの6例を除外した80症例について解析した.これら80症例中61例 (76%) は市中感染であり, 19例 (23.7%) は病院内感染であった. 旅行歴のあったのは18例で, 国内12例, 海外6例であった. 集計の結果, 培養陽性の7例と尿中抗原陽性の3例で血清抗体価の有意上昇がなかったことから, 血清抗体価が陰性範囲にあってもレジオネラ肺炎を否定しえない場合があると考えられた. 市中感染症例数は院内感染症例数の2倍以上であったが, 致命率は前者で16/61 (26%), 後者で10/19 (53%) と高率であった.
  • 岩沢 篤郎, 中村 良子, 水野 徳次
    1993 年 8 巻 2 号 p. 11-16
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    アクア酸化水は, 水道水にNaClを微量添加後, 電気分解して得られた酸性水である. 電極内反応の結果, pH3以下, 酸化還元電位1100mV以上の高ポテンシャルを有する.
    臨床検体より分離された栄養型菌, 約30種147株を対象とし, アクア酸化水の効果をin vitroで検討した. アクア酸化水は, Bacillus 2株を除きすべて混和5秒後で菌の増殖が認められず, 優れた殺菌力を示した. 対象として用いた0.5%グルコン酸クロルヘキジンでは一部菌の増殖が認められ, 0.1%次亜塩素酸ナトリウムではBacillus 2株以外は菌の増殖が認められなかった.
    アクア酸化水は検討した9株において4℃の低温下でも殺菌力の低下が認められなかったものの, 有機物の存在下では殺菌力の低下が認められたため注意が必要と思われた.
  • 片桐 裕史, 今井 香織, 門脇 武博, 高田 勗, 斧口 玲子, 杉田 範子
    1993 年 8 巻 2 号 p. 17-22
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    ガス滅菌に使用されているエチレンオキサイド (EO) ガスは生体に対する毒性や医療材料への残留などの問題が指摘されている. そこで, 病院滅菌室においてEOガスが適正に管理されているかを総合的に把握した.
    滅菌運転終了後, 作業中での室内EOガス濃度は滅菌器扉開口脇で1.27~5.59ppm, 局所排気口付近で1.41~5.88ppmおよび器内では0.56~5.88ppmであったが, 作業環境中濃度および個人曝露濃度は検出されなかった.
    滅菌バッグ内EOガス濃度は滅菌直後で1.18~194ppmを示したが, エアレーション後はND~8.33ppmと低減し, 保管1日目でバッグ内EOガス濃度は認められなかった. また, 材料へのEO残留量は滅菌バッグ内EOガス濃度と同様の低減傾向を示したが, 保管1日目ではND~34ng/gの残留が認められ, 保管2日目では認められなかった.
  • 斎藤 ゆみ, 賀来 満夫
    1993 年 8 巻 2 号 p. 23-32
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    病院実習前の看護学生および大学病院勤務の看護婦の手指細菌について, 1990年から1992年4月にかけて計8回の調査を行った.
    その結果, 学生のべ27名の右手指第一関節末端から平均104.03 CFU (Colony Forming Unit) の細菌が検出され, 一方, 看護婦のべ63名からは103.68 CFUが検出され, 両者間に有意差はなかった. 検出された菌種を比較すると学生ではグラム陽性球菌 (GPC) および桿菌 (GPR), グラム陰性桿菌 (GNR) の割合はそれぞれ84%, 13%, 3%で, GNRは4菌種であった. 一方, 看護婦の勤務前の手指ではそれぞれ78%, 16%, 6%で黄色ブドウ球菌中にはMRSA (Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus) が71%と高率に分離された. 学生, 看護婦両者の手指細菌の特徴的な違いはGNRの検出率が看護婦で学生の2倍と増加している点, 看護婦からは院内感染で問題とされる菌が分離された点であった. さらに看護婦の手指細菌とその病棟の環境菌の検出結果を比較すると, 環境から検出されたGNRの割合は8%で看護婦の1.3倍であったが, 菌種は両者でほぼ一致していた. 以上の結果は同じ病棟に入院中の患者の臨床分離菌との類似性も高かった. 看護婦の手指細菌が他の医療従事者, 患者および病院の物理的環境の相互関係の中で病院内細菌の生態系の一部を形成しており, 手指細菌を感染源とする院内感染防御もこの生態系全体の枠組みの中で考える必要性が示唆された.
  • 辻 明良, 仲由 武實, 三野宮 文子, 八代 純子, 五島 瑳智子
    1993 年 8 巻 2 号 p. 33-41
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    エタノール83V/V%を含む速乾性手指消毒剤0.5%ポビドンヨード製剤 (イソジン®パーム), 0.2%塩化ベンザルコニウム製剤 (ウエルパス®), 0.2%グルコン酸クロルヘキシンジン製剤 (ウエルアップ®) および日局消毒用エタノール (83V/V%エタノール) の皮膚に対する安全性をウサギを用いて比較検討した.
    その結果は, 1) 健常ウサギを用いた皮膚一次刺激性試験での刺激性の強さは, 塩化ベンザルコニウム製剤>グルコン酸クロルヘキシジン製剤>消毒用エタノール=ポビドンヨード製剤の順であった.
    2) 健常ウサギ皮膚累積刺激性試験 (1日5回7日間連続塗布) での刺激性の強さは, 塩化ベンザルコニウム製剤>グルコン酸クロルヘキシジン製剤>消毒用エタノール=ポビドンヨード製剤>コントロール (拭き取り操作のみ) の順で皮膚一次刺激性試験の結果とよく一致した.
  • 戸田 すま子, 渡部 節子, 山本 匡子, 小田切 繁樹, 奥田 研爾
    1993 年 8 巻 2 号 p. 43-46
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    近年, MRSAの感染経路として医療従事者を介するものが注目されてきている. そこで, 医療従事者とその対象群として看護学生2年生の鼻腔における保菌状況を調査した. その結果, A病院 (呼吸器・循環器系) 4.3%, B病院 (腎透析) 1.6%, 看護学生0%であった. このことよりMRSAは, 保菌患者との接触の多い医療従事者と看護学生との間の鼻腔内MRSA保菌率に有意差がみられ, 保菌患者との接触が保菌率に大きく関与していると推察された.
  • 第III相臨床試験
    清水 喜八郎, 柴田 雄介, 川名 林治, 齋藤 和好, 青木 泰子, 紺野 昌俊, 小林 寛伊, 井上 松久, 山口 恵三, 稲松 孝思, ...
    1993 年 8 巻 2 号 p. 47-55
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    Mupirocin鼻腔用軟膏の鼻腔内MRSAに対する除菌効果, 安全性および有用性を検討する目的で, 多施設共同のオープン試験を行った.
    Mupirocin鼻腔用軟膏を1回60mg (片側の鼻腔に30mg) 1日3回3日間, 両側の鼻腔内に塗布した.対象は鼻腔内にMRSAを認めた医療従事者および入院患者とし, 以下の成績を得た.
    1.全例で188例が組.み入れられ, MRSAに対する解析対象例は最終塗布翌日の除菌効果138例, 最終塗布1週間後の除菌効果134例, 有用度138例, およびMRSAを含むS.aureusに対する安全度については188例であった.
    2.除菌効果は, 最終塗布翌日では83.3%, 最終塗布1週間後では92.5%であった.
    3.副作用の発現はまったく認められず, 安全度は100%であった.
    4.有用度はきわめて有用が84.8%, 有用性あり以上が95.7%であった.
    以上の成績より, Mupirocin鼻腔用軟膏は鼻腔内MRSAの除菌に有用な薬剤であると考えられた.
  • 小林 寛伊, 十字 猛夫, 岩本 愛吉, 吉野谷 定美, 高橋 孝喜, 伊賀 立二, 中村 幸一, 奥住 捷子, 井上 松久
    1993 年 8 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 1993/12/15
    公開日: 2010/07/21
    ジャーナル フリー
    Mupirocin is an antibiotic for topical application developed by SmithKline Beecham in the United Kingdom.
    To study the effects of mupirocin nasal ointment for eliminating nasal carriage of MRSA and preventing recolonization, and its effect on normal flora of the anterior nares, 60 mg of mupirocin nasal ointment was applied to both sides of the anterior nares (30 mg each) three times a day (morning, evening and at bedtime) for three days.
    Seven hospital staff who were found to have nasal carriage of MRSA at pre-study screening and who gave consent to participate in this investigation in writing were enrolled. Two cases were excluded because they were negative for MRSA just before the first application.
    By the day after the last application, nasal carriage of MRSA was eliminated in all the 5 cases (100%) assessed for the elimination effect, and one week after the last application.
    MRSA was not detected in any of these cases except one from which a specimenwas not collected.
    There was no problem in safety in any of the subjects.
    Recolonization with MRSA was not observed for 4 weeks from the last application.
    Mupirocin nasal ointment did not affect greatly the flora of the anterior nares.
    In conclusion, mupirocin nasal ointment is a safe drug which can eliminate nasal carriage of MRSA and prevent recolonization with MRSA without destroying the flora of the anterior nares.
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