Japanese Journal of Endourology
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26 巻, 2 号
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特集1:次世代につなげる画像誘導治療
  • 頴川 晋
    2013 年 26 巻 2 号 p. 145
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      21世紀の医療技術の革新は著しい.泌尿器科領域においても例外ではなく,様々な試みがなされており,新規治療・診断法の開発につながっている.この背景の一つにはITの進歩などコンピューター技術を基礎とするデジタルレボリューションと呼ばれる社会基盤の変化がある.
      従来,術者がスケッチや2次元画像をベースとして3次元立体解剖をイメージしていたものが,実際に立体画像で精緻な位置関係を把握することが容易になった.これに伴い非観血的な画像誘導治療や診断の可能性が飛躍的に広がった.さらには高性能かつコンパクトなコンピューターの登場で,以上の操作が簡便かつより現状に即したものとなってきている.画像診断を応用した機能検査という新しい分野も脚光を浴びている.複雑な臓器の動きをバーチャルリアリテイで解明していこうという試みであり,おおいに今後の展開・応用が期待される.光力学技術に基づく蛍光ナビゲーションはすでに膀胱腫瘍の切除に応用されて久しい.現時点では完全切除を補完する技術・診断法としての位置づけではあるが,他泌尿器科悪性腫瘍での実臨床上の応用も期待される.
      本特集ではこの分野を牽引するエキスパートの先生方に個々の取り組みを詳述していただいた.今後,医療はますます低侵襲診断治療の方向に向かうであろう.これらの技術は途についたばかりであり,後に続く次世代の臨床研究者諸氏の参考になれば幸いである.
  • 磯谷 周治, 山口 雷蔵, 堀江 重郎
    2013 年 26 巻 2 号 p. 146-151
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/05
    ジャーナル フリー
    医療の技術の進歩に伴い,医用画像は大きく変化した.現在ではマルチスライスCTを用い,簡単に0.5mmスライス厚で構成されたボリュームデータを手に入れることができるようになった.ボリュームデータを用いることにより,任意の方向から画像の再構築を行ったり,臓器の3Dモデルを作成したりすることが可能となり,手術支援を目的とした応用も試みられるようになった.本稿では帝京大学泌尿器科が取り組んでいる泌尿器科領域の医用画像利用について,画像処理システムから,手術プランニング,シミュレーションと臓器モデルの作成,及びトレーニングモデルの作成について概説し,今後の泌尿器科領域の医用画像利用の方向性について述べる.
  • 宋 成浩, 西尾 浩二郎, 岡田 弘
    2013 年 26 巻 2 号 p. 152-157
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      【背景】3次元画像を用いた下部尿路の形態,動態変化から,排尿機能を解析する試みを行い,排尿障害の病態を画像解析結果から考察した.
      【対象と方法】対象は,夜尿または昼間尿失禁を主訴に受診し,尿流検査での閉塞性パターンと排尿時膀胱尿道造影で狭窄が疑われた男児20症例のうち,排尿時多列CT撮影(voiding-CT)を行い,3次元モデルとバーチャル内視鏡(VES)動画が得られた18症例.さらに,その他の疾患の診断で行われたCT,MRI検査の画像ファイルを用いた.方法はDICOMビューワと医療用CADアプリケーションを使用して,下部尿路3次元モデルの作成とVES動画を構築した.排尿時の膀胱尿道3次元モデルと骨盤腔の位置関係と排尿症状について検討した.CADで測定した尿道内腔の壁面の曲率と,内腔径をVES画像に同期し,定量性をもたらした.3次元モデルを利用して尿流の水力学シミュレーションを行った.
      【結果】排尿異常患者群の3次元モデルによる膀胱と尿道形態は,3つのタイプに分類された.それぞれのタイプ別に定量データを比較すると明らかに違いを認めた.最も多いのは膀胱が前屈した形態で,膀胱底の下垂と尿道の屈曲が,膀胱内圧を上昇させ膀胱壁肥厚の原因となっていることが3次元モデルから確認された.VES画像とCADデータの同期画像は,排尿時の膀胱頸部から尿道にかけての内腔の平滑性と曲率を理解するのに役立った.3次元モデルを利用した尿流の水力学シミュレーションを作成することが可能で,形態の変化による尿流の変化を検討した.
      【結語】3次元バーチャル技術を利用した膀胱尿道排尿モデルの作成は,従来の検査法では観察不可能な情報を提供し,排尿異常の病態を理解するのに有効である.今後,神経的な事象から,筋組織の動き,そして膀胱尿道全体の連続的な構造の変化をシミュレーションするマルチフィジックスなモデルの作成により,病態の理解と適切な治療方針の決定に役立つものと進化するだろう.
  • 井上 啓史, 福原 秀雄, 執印 太郎, 倉林 睦, 降幡 睦夫, 渡邊 裕修, 谷村 正信
    2013 年 26 巻 2 号 p. 158-162
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      体内に投与され腫瘍に特異的に過剰集積した光感受性物質や蛍光物質に,特定波長の光を照射し励起すると蛍光を発光する.光化学反応によるこの現象を医療技術に応用したものが,光力学診断(photodynamic diagnosis(PDD))である.
      光感受性物質である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid(ALA))よりミトコンドリア内で生合成される蛍光物質プロトポルフィリンⅨ(Protoporphyrin IX(PpⅨ))を青色可視光(375-445nm)で励起すると,赤色蛍光(600-740nm)を発光する.このALAを用いたPDD(ALA-PDD)は,膀胱癌や脳腫瘍の術中診断法として欧米では既に医療承認されており,現在日本でも高度医療(第3項先進医療)や医師主導治験など薬事申請に向けた取り組みを実施中である.
      また,蛍光物質であるインドシアニングリーン(Indocyanine Green(ICG))を近赤外光(ピーク波長805nm,750-810nm)で励起すると,より長波長の近赤外光(ピーク波長 835nm)を蛍光発光する.このICGを用いたPDD(ICG-PDD)は,乳癌・悪性黒色腫のセンチネルリンパ節の同定薬,心臓バイパス手術における血流評価など循環機能検査用薬として薬事承認を取得し,広く臨床使用されている.また,泌尿器科領域においても泌尿器科癌のリンパ節の同定や腎移植術における血流評価など臨床試験を試行中である.
      いずれのPDDも安全性に優れた疾患特異的な診断法であり,従来の診断さらには治療の精度向上が大いに期待できる.

    Endoscopic surgery using fluorescence navigation
  • 波多野 孝史
    2013 年 26 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      腫瘍径4cm以下の小径腎癌に対する治療としては,腎部分切除術が推奨されている.しかし多種多様な合併症等により手術が困難な症例も少なからず存在する.このような症例に対しより低侵襲の治療法として,凍結治療やラジオ波焼灼治療などのenergy ablative therapyが行われている.
      【MRI透視ガイド下凍結治療】経皮的アプローチで凍結治療を行う際,穿刺におけるガイドとしての画像診断装置には病変の描出能,穿刺針の視認性,透視画像のリアルタイム性や簡便性などが求められる.MRIを画像ガイドとして用いる場合,従来のX線透視下のインターベンションにはない以下のような特徴がある.①放射線被曝がない,②多方向から任意の断層画像を得ることが可能である,③組織分解能に優れる,④温度感受性画像が描出可能である.特に凍結治療においてはMRI上凍結領域が低信号領域として描出され,周囲の非凍結領域との境界が明瞭であるため,術中のモニタリングとしてMRIの有用性は極めて高いと考える.
      一方,透視画像のリアルタイム性や簡便性に関して,MRIは超音波やCT透視に比べて劣ることは否めない.しかしMRIの持つ高い組織コントラストは病変の描出に優れ,任意の方向から断層図が得られるため,あらゆる方向からの病変のアプローチが可能となる.またMR透視では多断層同時透視や多方向同時透視が可能であり,穿刺針と病変の立体的な位置関係を把握しながら穿刺針を進めることができる.
      【今後の展望】現在国内において画像ガイド下経皮的凍結治療は肺癌,乳癌,肝癌,骨腫瘍等に対して施行されている.本治療法は低侵襲であり,今後幅広い領域で応用されるものと考える.
特集2:連載“長期成績” ―IX. Brachytherapy―
  • 斉藤 史郎
    2013 年 26 巻 2 号 p. 170
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      ヨウ素125シード線源を用いた密封小線源治療(シード治療)が国内で始まって今年で10年になるが,これまで全国116施設において計27,000例程の治療が実施されている.日本でのシード治療はアメリカよりも10年以上遅れて始まったが,その分,アメリカでのそれまでの経験やエビデンスを踏まえて治療を開始することができた.また早い時期から,アメリカにおいて豊富な経験をもつ医師を招き,その指導を受けることもできたため,日本でのシード治療は全体的に高いレベルで実施されてきている.その証拠に,最近報告されている国内での長期のアウトカムは,アメリカでのシード治療優良施設に比べて勝るとも劣らないものになっている.10年目を迎えたシード治療を,今回本学会誌においてとりあげていただいたことを機に,国内におけるシード治療を長期で見た有効性と安全性を確認したいと考えている.
      また,本特集のもう一つのねらいは,シード治療にあまり関わっておられない泌尿器科の先生にもこの治療のことを詳しく知っていただくことにある.というのも,この治療は実施されている施設が限られているため,他施設から,場合によっては遠方から来られて治療を受けられることも多いと思われる.そのため,治療後は患者の地元の施設で経過観察をされることも少なくないだろう.その場合,シード治療にあまりなじみのない医師が見ることになり,シード治療後の特異なPSAの変動や有害事象に戸惑うこともままあると思われる.PSAバウンス,放射線治療後のPSA再発の定義,晩期の有害事象の出現などは是非多くの泌尿器科医に認識しておいてもらいたい事項である.
      前立腺癌治療を受けた患者の生活の質(QOL)において,排尿機能,排便機能,性機能の低下は大きく影響するものである.手術,外照射,シード治療,どのような治療法を行っても,これらの機能の低下は少なからず見られるが,シード治療においては比較的QOLは保たれやすいと考えられている.国内において長期的にそれを確認することはシード治療を評価する上で重要だと考えている.特に性機能の温存はシ?ド治療を選択する患者の大きな期待であり,この治療を選択する一つの要因となっている.アメリカでの報告通り,日本人でも治療後の性機能の温存が叶っているのかは是非明らかにしておきたい事項である.
      シード治療が国内に導入された当初,この治療は低リスク症例のみが適応と考えられていた.しかし,アメリカにおいて中・高リスク症例においても外照射やホルモン療法と併用することで良好な治療成績が得られることが確認され,シード治療の適応範囲が拡大されている.NCCNガイドラインにおいてもシード治療はどのリスクにおいても推奨されている.国内におけるシード治療の有効性,安全性のエビデンスを得るべく,全国規模の多施設共同研究が3つ行われており,それらから得られる結果は世界においても注目されるものと期待されている.これらの研究も本特集で紹介したいと考えている.
      シード治療も10年が経過すると少数とはいえ再発例も経験されてきている.シード治療後に局所再発があった場合,次に何を行うかは今後考えていかなければならない事項である.本特集において,問題提起としてこのことにも少し触れたいと考えている.
  • 津村 秀康, 佐藤 威文, 石山 博條, 田畑 健一, 川上 正悟, 小森 承子, 早川 和重, 岩村 正嗣
    2013 年 26 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      前立腺癌に対する密封小線源療法は,優れたQOL保持やPSA非再発率などの長期治療成績が本邦でも確立されつつあり,その「治療効率」の優位性からも本邦の窮迫した医療現場に合致した治療と言える.このような密封小線源療法後のフォローアップにおいて,PSA再発の定義や,PSA bounce等に代表される特徴的な症候については,日常診療において泌尿器科医や放射線腫瘍医が必ず理解しておくべき事項であると思われる.特にPSA bounceについては,密封小線源療法を施行した症例全体の30-50%に認められる一般的な症候であり,若い症例に多く認められる傾向や,PSA bounceを呈した症例は良好な予後が期待される報告が近年続いている.このPSA bounceに対する臨床現場での対応として,診察している主治医の不安がそのまま患者に伝わりかねないものであり,V100,D90等に代表される治療後のDVHを再確認し,画像での再発・転移が否定され,implant qualityが十分で治療後3年以内のPSA bounceであるならば,患者に説明してまずは腰を構えて経過観察をすることも時として重要である.
  • 矢木 康人, 西山 徹, 戸矢 和仁, 萬 篤憲, 斉藤 史郎
    2013 年 26 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      【目的】前立腺癌永久挿入密封小線源治療(BT)の長期治療成績について検討する.
      【対象・方法】2003年9月から2008年4月まで,BTを施行し5年以上経過観察が可能であった990例を対象に,全生存率,疾患特異的生存率,臨床的非再発率およびPSA非再発率を算出した.PSA再発はPhoenix定義(Nadir + 2ng/ml)を使用し,明らかなバウンス症例は除外した.
      【結果】全生存率は9年91.8%,疾患特異的生存率は9年99.4%,臨床的非再発率は9年92.4%であった.PSA非再発率は9年91.0%であり,リスク別では,低,中間,高リスクの順で9年98.0%,89.2%,76.7%であった.PSA再発に関する因子の単変量解析ではPSA(P<0.001),Gleason Score(P<0.001), 臨床病期(P<0.001), 生検陽性コア率(P<0.001), 外照射の有無(P=0.003),Biologically Effective Dose:BED(P=0.010)にて有意差が認められ,多変量解析ではPSA(P=0.013),Gleason Score(P<0.001),臨床病期(P=0.007),生検コア陽性率(0.028)が独立した因子であった.
      【結論】前立腺癌に対するBTの長期治療成績は良好であり,低リスクのみでなく,中間・高リスクにも選択されるべき治療法であることが明らかにされた.
  • 三木 健太
    2013 年 26 巻 2 号 p. 182-183
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      有害事象の発生時期については外部照射などの放射線治療とブラキセラピーでやや異なっている.通常の放射線治療では急性期は開始後3ヶ月までとし,その後半年までを亜急性期,それ以降を晩期としている.いっぽうヨウ素125線源を使用するブラキセラピーでは超低線量率のため,急性反応が数ケ月続くことが多く,挿入後9ヶ月ないし1年までを急性期にまとめ,それ以降を晩期とすることも少なくない.本項では1年までを早期として紹介する.
  • 丹治 進, 中村 隆二, 薮内 伴憲, 高田 亮, 伊藤 明人, 小野田 充敬, 松浦 朋彦, 加藤 廉平, 加藤 陽一郎, 岩崎 一洋, ...
    2013 年 26 巻 2 号 p. 184-192
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      限局性前立腺癌I-125挿入小線源治療の性機能へ与える影響について,治療後の経時的勃起能維持率より検討した.さらに,勃起能維持に影響を与えるED(erectile dysfunction)のリスク因子について統計学的解析を加えた.
      SHIM(Sexual Health Inventory for Men)スコアが治療前に12点以上で,かつ治療6か月後に8点以上の小線源治療患者55例における6,12,24,36,48および60か月後の勃起能維持(同スコア12点以上)患者率は80,55,46,54,51および56%であった.つまり,治療前に中等症以上のEDがなく,かつ治療直後に性生活の営みや性行為の機会を有すると思われる患者の半数では,治療後5年の長期にわたり勃起機能が維持されていた.治療6か月後から36か月後までの勃起能維持患者群と非維持群間におけるEDリスク因子についての検討では,治療前の勃起能の程度が6か月後において,治療時の年齢が36か月後において両群間に有意の差を認めた.また,治療前の下部尿路症状の程度や陰茎球の被曝線量もEDのリスク因子となりえた.
  • 田中 宣道, 平尾 佳彦, 藤本 清秀, 浅川 勇雄, 長谷川 正俊
    2013 年 26 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      ヨウ素125シード線源を用いた前立腺小線源治療(ブラキセラピー)が本邦で開始され10年目を迎えた.新しい根治療法が加わり,治療成績のみならず治療後のQOL(quality of life)を含めた総合的な見地からの治療選択が必要である.手術,外部照射およびブラキセラピーには,それぞれ特有の有害事象があり,治療後QOLの変化もそれぞれ異なる経過を示す.ブラキセラピー後にみられる特徴的な有害事象の一つは,尿路刺激症状でありQOLに大きく影響を与える.疾患特異的QOL調査票のEPIC(The extended prostate cancer index composite)を用いた検討では,排尿に関する下位尺度の中で,排尿刺激・下部尿路閉塞スコアがブラキセラピー後に著明に低下することが知られており,手術や外部照射と比較してもこの傾向は特徴的である.一方,排便に関するQOLスコアは外部照射で最も低く,性機能に関するスコアは手術が最も低い.性機能温存について,ブラキセラピーは他の治療法と比較して最も良好であるのが特徴である.ブラキセラピー後の長期QOLは比較的良好であり,排尿刺激と排便に関するスコアは改善を示す.一方,尿失禁のスコアは外部照射と同様に低下する傾向がある.今後,手術および外部照射と並んでブラキセラピーは,根治療法の一翼を担っていくことが期待されるが,ブラキセラピー特有の有害事象とQOL変化を十分に把握した上で治療選択を行うことが肝要である.
  • 小中 弘之, 並木 幹夫
    2013 年 26 巻 2 号 p. 200-209
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
特集3:腎盂形成術
  • 柿崎 秀宏
    2013 年 26 巻 2 号 p. 210
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      腎盂形成術には泌尿器科における再建・形成手術の重要なポイントがすべて含まれている.腎盂から上部尿管まで組織の血流に留意しながら丁寧に剥離し,必要に応じて異常血管の剥離操作を行い,通過障害となっている病変部位を切除し,緊張がかからない状態でfineな糸で粘膜が外反しないように縫合を行う.これらが腎盂形成術のポイントであり,粘膜縫合の際には,粘膜自体を手術器具で保持しないnon-touch methodが理想的である.経験を積んだ小児泌尿器科医が小児の腎盂形成術を開放手術で行う場合,サージカルルーペを使用して小さな皮膚切開で腎盂形成術の重要なポイントを忠実に順守して手術を遂行することが可能であり,手術成績もきわめて良好である.腹腔鏡手術の普及により,成人に対する腹腔鏡下腎盂形成術は多くの施設で施行されるようになり,小児に対する腹腔鏡下腎盂形成術の経験も蓄積されつつある.これまでの腹腔鏡下腎盂形成術の報告をみると,開放手術と同等の手術成績が報告されている.しかし,これらの報告は腹腔鏡手術の症例数が比較的多い施設からの報告であり,腹腔鏡手術の更なる普及に伴い,腹腔鏡下腎盂形成術の良好な成績が維持されるかどうか,今後の推移を注意深く見守る必要がある.
      2013年度から,泌尿器腹腔鏡技術認定制度の審査対象術式に腹腔鏡下腎盂形成術が追加された.腹腔鏡下腎摘除術や腹腔鏡下副腎摘除術が皆無あるいはきわめて症例数が少ない特に小児病院に勤務する泌尿器科医にとっては,腹腔鏡技術認定の審査対象術式の拡大は朗報であろう.このような制度の拡充と共に,腹腔鏡下腎盂形成術の技術向上のために教育内容の更なる充実を図ることも日本泌尿器内視鏡学会の重要な責務である.
      以上のことを踏まえて,本特集が企画された.本特集では,腹腔鏡下腎盂形成術のためのトレーニング法,後腹膜アプローチ及び経腹膜アプローチによる腹腔鏡下腎盂形成術の手技のポイント,小児に対する腹腔鏡下腎盂形成術,そして小児の左側の腹腔鏡下腎盂形成術における経腸間膜的アプローチの有用性など,既に腹腔鏡下腎盂形成術の経験がある中堅医師,あるいはこれから腹腔鏡下腎盂形成術に取り組みたいと考えている若手医師のいずれにとっても重要なテーマが取り上げられている.本特集が腹腔鏡下腎盂形成術を解説するバイブル的な存在として長く読み継がれることを期待したい.
  • 守屋 仁彦, 野々村 克也
    2013 年 26 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      腹腔鏡下腎盂形成術は成人の腎盂尿管移行部狭窄症に対する標準術式の一つとなっている.しかしながら腎盂・尿管の吻合を意識した腹腔鏡下での腎盂・尿管の切開や体腔内での縫合操作など,腹腔鏡下腎盂形成術は泌尿器科腹腔鏡下手術の中でもやや難易度の高い手術に分類される.そのため,比較的経験の浅い術者が技術を習得するには,術前のdry boxやsimulatorを用いたトレーニングが重要となる.これまでいくつかのモデルが報告されているが,本稿ではトロント小児病院から報告されたゴム風船とピンポン玉,およびペンローズドレーンも用いた腹腔鏡下腎盂形成トレーニングモデルを用いて,トレーニングの実際とその結果について報告する.このモデルを用いたトレーニングは安価で手軽であり,単純な切開や結紮の繰り返しを行うトレーニングに比べて継続するモチベーションが保ちやすく,吻合部の状態が確認できること,時間を計測することなどにより上達が確認できることなどから,経験の浅い術者が腹腔鏡下腎盂形成術を始めるに当たり有用な方法であると思われる.今後,このようなモデルを用いたトレーニングの教育プログラムなどを作成することにより,さらなる腹腔鏡下腎盂形成術の普及が期待される.
  • 河 源
    2013 年 26 巻 2 号 p. 216-221
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      我々が行っている後腹膜アプローチによる腹腔鏡下腎盂形成術の手術方法について,特に注意すべき点を加え紹介する.器具は腹腔鏡下腎摘除術に準じたものを用いるが,尿管および腎盂切開時において,刃先の方向を変えることができる剪刀を用いると切開操作が非常にやりやすい.トロカーポート位置は腹腔鏡下腎摘除術に準じ,後腹膜腔の作製も同様に行う.腎傍脂肪組織を剥離し,外側円錐筋膜を切開する.Gerota筋膜後面において剥離を進め,尿管を同定する.右側においては下大静脈の側面が自然に露出されることが多い.その後の操作や器機の出し入れにおいて下大静脈を損傷することがないよう注意する.尿管の剥離時には鉗子で尿管を直接把持するような操作は避ける.形成方法は,狭窄の距離,交差血管との位置関係等を勘案して決定する.狭窄部の中枢側から狭窄部位へと向かうような切開を加え,狭窄部を開放する.尿管の縦切開を追加(spatulate化)し,腎盂と尿管の縫合操作に移る.安全確実な縫合操作のためには,右手,左手で同等に持針器を扱えなければならない.縫合操作は吸引補助用ポートから行うと容易となる場合も多い.尿管縦切開の末梢端(谷となる部分)と,対応する腎盂側の切開線の端をまず結節縫合する.この部の正確な縫合が本術式における最重要ポイントと考える.尿管の末梢端と腎盂との結節吻合が完了したら,その横から新たに連続縫合を加え,適当なところでダブルピッグテイルカテーテルを留置する.縫合完了後充分な洗浄を行い,気腹圧をやや下げて出血や吻合部からの尿流出がないことを確認,ドレンチューブを挿入し手術を終える.
  • 岩村 正嗣, 西 盛宏
    2013 年 26 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)に対する腹腔鏡下腎盂形成術は,1993年Schuesslarらにより初めて報告された1).本術式は交差血管の処理や腎盂の形成法などが開放手術と同様のコンセプトで行えるため,鏡視下手術の低侵襲性を維持しつつ開放手術に匹敵する良好な治療成績が期待でき,腎盂尿管移行部閉塞(UPJO)に対する新たな低侵襲外科的治療法として本邦でも普及しつつある2)
      腹腔鏡下腎盂形成術の到達法には経腹膜アプローチと後腹膜アプローチがある.われわれは1998年より本術式による治療を開始,2013年3月までに162尿管に対して施行,うち161例(99.2%)は経腹膜アプローチで行った3).いずれの到達法を用いても治療成績や合併症発生率には差がないとの報告が多く,到達法の選択は術者の技量や嗜好により決定してよいと考えられる.しかし経腹膜アプローチで得られる広いワーキングスペースは,特に体腔内縫合に不慣れな初心者にとっては大きなアドバンテージとなり得る.Davenportらは,初期17例を後腹膜アプローチで開始したものの治療成績が悪く,その後,経腹膜アプローチに変更し施行した66例の成功率は92%に向上したと述べている4).特に後腹膜腔がより狭い小児例や,術後再狭窄などの二次狭窄例では経腹膜アプローチを第一選択とすべきと考える5).また,後天性の閉塞原因の50%前後を占めるとされる交差血管の確認や処理も経腹膜アプローチの方が容易とする報告もある6)
      本稿ではわれわれが基本術式としている経腹膜アプローチによる腹腔鏡下Anderson-Hynes法の手術手技を紹介し,各ステップにおける留意点について解説する.
  • 河内 明宏, 内藤 泰行, 山田 恭弘, 三木 恒治
    2013 年 26 巻 2 号 p. 228-230
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
  • 小島 祥敬, 佐藤 雄一, 小川 総一郎, 熊谷 伸, 片岡 政雄, 熊谷 研, 岩崎 充晴, 羽賀 宣博
    2013 年 26 巻 2 号 p. 231-237
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      私たちは,2000年より成人に対する腹腔鏡下手術(根治的前立腺全摘除術,根治的腎摘除術等)を開始し,2005年より小児に対する腹腔鏡下手術を開始した.2013年5月までに約230例の先天性尿路生殖器疾患に対し,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔鏡下手術において,先天性尿路生殖器疾患の中で最も難易度の高い手術は,腹腔鏡下腎盂形成術である.成人例と小児例では基本的には同じ手術術式であるが,それぞれの特徴を十分に理解して手術する必要がある.特に小児例に対する腹腔鏡下での縫合は極めて難易度が高く,技術を習得するのに時間を要する.また腹腔鏡手術の専門的知識のみならず,小児泌尿器科の専門的知識が必要となる.本稿では,私たちの本手術の手術手技を中心に述べたのち,成人例と小児例の特徴と手術成績について概説した.成人例と小児例の特徴を熟知し,それぞれのポイントを理解しその両方を経験することにより,腹腔鏡下腎盂形成術の手術手技の改善が期待される.

    Laparosocpic pyeloplasty─Comparison between adults and children
体腔鏡手術
  • 小林 将行, 滑川 剛史, 今村 有佑, 齋藤 允孝, 小丸 淳, 深沢 賢, 市川 智彦, 植田 健
    2013 年 26 巻 2 号 p. 238-245
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      【目的】ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RALP)の初期治療成績につき検討を行った.
      【対象】2011年9月より2012年12月までにRALPを行った120例を対象として検討した.
      【結果】平均出血量は85ml,輸血は自己血のみが2例,術中に開腹手術への移行は認めなかった.平均手術時間は273分,平均コンソール時間は204分,術者のラーニングカーブは良好であり20例ほどの経験で安定した手術を行えるようになった.pT2の断端陽性率はdorsal vein complexの無結紮法導入前は40.9%に認めたが,導入後は8.7%と改善を認めた.全体の95.2%がクリティカルパス通りに退院可能であった.尿の禁制率もsafety pad(0-1枚/日)の確率が術後3月,6月で82.1%,100%と良好であった.
      【結論】腹腔鏡下前立腺全摘除術の経験はなくともスムーズにRALPの導入,移行ができると考えられた.合併症も少なく,患者にとっても利益の大きい治療であると考えられた.
  • 伊藤 秀明, 稲村 聡, 関 雅也, 多賀 峰克, 三輪 吉司, 横山 修
    2013 年 26 巻 2 号 p. 246-251
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      2002年1月~2012年12月までに福井大学において鏡視下腎摘除術を施行した腎腫瘍121例の臨床成績をまとめた.手術施行の時期別に鏡視下腎摘除術導入直後のⅠ期16例,ハンドアシスト法を基本術式として施行したⅡ期33例,執刀医を2名に固定し基本術式をpure laparoscopy法に再変更したⅢ期18例,2名が技術認定医を取得し指導医として手術参加したⅣ期54例に分類して検討した.それぞれの時期の腫瘍径の平均値,手術時間,出血量の中央値,開腹移行率は5.0 / 4.3 / 3.2 / 3.7 cm,224 / 216 / 186 / 202分,140 / 100 / 28 / 20 ml,12.5 / 0 / 5.5 / 7.4%であった.病理結果が腎細胞癌であった113例のうち,手術時に遠隔転移のなかった103例の5年非再発率と疾患特異的生存率は,それぞれ89.4%,96.7%であった.当科においては,手術時間の有意な短縮は見られなかったものの,出血量は経験とともに減少した
  • 並木 俊一, 石戸谷 滋人, 伊藤 明宏, 海法 康裕, 齋藤 英郎, 山田 成幸, 三塚 浩二, 山下 慎一, 中川 晴夫, 荒井 陽一
    2013 年 26 巻 2 号 p. 252-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
      2006年1月から2012年12月まで東北大学病院で原発性アルドステロン症に対して腹腔鏡下副腎摘除術を施行した218例(右側85例,左側98例,両側35例)について腹腔鏡下副腎摘除術後の出血について検討した.術前に比較して術後に血清ヘモグロビン値が3 g/dl以上低下しCTで血腫を認めたものを後出血と定義した.後出血を4例(1.8%)に認めた.手術部位は右側1例,左側2例,両側(右側切除及び左側部分切除)1例であった.4例中3例は輸血を要した.2例は保存的に経過観察した.1例はCTで出血部位が同定できたので塞栓術を施行した.1例は画像検査で出血部位が同定できなかったが,再手術(腹腔鏡下)にて出血点が同定でき止血した.腹腔鏡下副腎摘除術における後出血を疑った場合はCTが有用である.画像検査で後出血が不明な場合は外科的処置を躊躇しないことが肝要である.
  • 内海 孝信, 加賀 麻祐子, 佐塚 智和, 柳澤 充, 川村 幸治, 神谷 直人, 今本 敬, 二瓶 直樹, 納谷 幸男, 鈴木 啓悦, 市 ...
    2013 年 26 巻 2 号 p. 257-262
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      原発性アルドステロン症(PA)は外科的に治癒が可能な二次性高血圧であるが,全症例で術後降圧薬内服を全て中止することができる訳ではない.今回,当院でPAに対し片側の腹腔鏡下副腎摘除術を受けた102例を対象に術後降圧薬内服に関して統計学的検討を行った.43.1%の症例で術後降圧薬内服を全て中止できた.多変量解析の結果,術前降圧薬内服におけるアルドステロン拮抗薬の割合が0.5以上(オッズ比[OR]10.6;p<0.01)及び6年以下の高血圧罹患歴(OR5.0;p<0.01),女性(OR4.0;p<0.01)が,術後降圧薬内服の中止に関する予測因子となった.多くの文献で,術前降圧薬の種類の少なさ(2種類以下)が予測因子として報告されているが,内服の数だけでなくその内容も検討するとアルドステロン拮抗薬を用いた術前血圧コントロールの重要性が示唆された.
  • 高橋 正幸, 小森 政嗣, 香川 純一郎, 仙崎 智一, 布川 朋也, 武村 政彦, 高橋 久弥, 山本 恭代, 山口 邦久, 井崎 博文, ...
    2013 年 26 巻 2 号 p. 263-269
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      当科において小児の低形成腎/機能低下腎に対する鏡視下腎摘除術を再検討した.1993年12月より,低形成腎/機能低下腎の小児10例に対し,鏡視下腎摘除術を施行した.年齢の中央値5.5歳,男1例,女9例.尿管異所開口に伴う低形成腎8例,巨大尿管症,高度VURによる機能低下腎が各1例.手術は,経腹膜的アプローチ5例,後腹膜的アプローチ5例,手術時間中央値は167分.術中合併症はなく,術後合併症は,皮下気腫1例,発熱1例.術後鎮痛剤は,3例は使用なし,7例は術後に坐薬を1~数回使用.食事開始は中央値で術後1日目,歩行開始日中央値は術後1.5日.術後入院期間中央値は4.5日,術後から退院可能日までの中央値3.0日.小児の低形成腎/機能低下腎に対する鏡視下腎摘除術は,術後の疼痛も少なく,美容的にも良好で,標準的な低侵襲手術である.
  • 多田 実, 小林 堅一郎, 佐藤 亜耶
    2013 年 26 巻 2 号 p. 270-278
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      【目的】腹腔内精巣における腹腔鏡下精巣固定術について手術方法,手術成績および今後の課題を検討した.
      【対象】65症例70精巣(T)を対象とした.
      【方法】手術方法:(1)精巣温存の可否,(2)精巣動静脈の距離,(3)精管の患側鼠径管への進入,(4)精管の距離が本手術のポイントであり,術中にこれらを判定しながら手術を進めた.
      【結果】術後精巣発育の温存率はLO 37/38T 97%,ⅠsFSLO 5/7T 71%, ⅡsFSLO 16/19T 84%であった.
      【考察】FS法の必要度の目安である精巣動静脈の距離判定を必要最低限の剥離のみで行うことで21/26T,81%で精巣への血流保存が可能であった.精巣の位置による精巣温存目的手術法は内鼠径輪部ではLOが,中間部と腎部ではⅠsFSLOもしくはⅡsFSLOがやむをえない選択と考えられた.
前立腺
  • 中井 康友, 吉岡 靖生, 川村 憲彦, 中田 渡, 吉田 栄弘, 佐藤 元孝, 永原 啓, 藤田 和利, 植村 元秀, 辻村 晃, 野々村 ...
    2013 年 26 巻 2 号 p. 279-283
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      【目的】限局性前立腺癌に対して施行したHDR(high-dose rate) 組織内照射単独療法(45.5 Gy/7 fraction)の治療成績について検討すること.
      【対象】2005年1月から2011年12月までに大阪大学医学部附属病院で限局性前立腺癌に対して45.5 Gy/7分割でHDR組織内照射を受けた73例.
      【結果】5例にPSA再発を認め,3年および5年非PSA再発生存率はそれぞれ95%,91%であった.2例に臨床再発を認め,3年および5年非臨床再発生存率はそれぞれ98%,96%であった.グレード2の急性期および晩期有害事象をそれぞれ7例(9.6%),9例(12.3%)に認めた.
      【結論】限局性前立腺癌に対する45.5 Gy/7 fractionのHDR組織内照射は安全かつ有効に施行可能であることが示唆された.
  • 金 伯士, 朝長 哲郎, 小路 直, 島 正則, 原野 裕司, 小俣 二也, 長田 恵弘, 寺地 敏郎, 内田 豊昭
    2013 年 26 巻 2 号 p. 284-288
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      【目的】限局性前立腺癌に対する13年間の高密度焦点式超音波(high intensity focused ultrasound:HIFU)療法の治療成績を報告する.
      【対象と方法】1999年1月から2012年10月の約13年間にソナブレート(Focus Surgery, Indianapolis, IN, USA)で治療した限局性前立腺癌患者1,289例のうち,2年以上経過した872例を対象とした.生化学的再発は,Phoenixの定義(血清前立腺特異抗原値 nadir:+2ng/ml)を用いた.
      【結果】全患者の平均経過観察期間は50±32カ月であった.全体のD’Amicoのリスク群別生化学的非再発生存率は,低リスク,中間リスク,高リスク群別で各々,5年目78%,62%,47%,10年目70%,58%,41%であった.最新型のソナブレート500TCM群は,5年目リスク群別生化学的非再発生存率は,低リスク,中間リスク,高リスク群別で各々,95%,77%,60%であった.主な合併症は尿道狭窄(18.3%)であった.
      【考察】HIFU療法は,限局性前立腺癌に対する低侵襲で安全な治療法である.
Endourology
  • 太田 純一, 大竹 慎二, 南村 和宏, 澤田 卓人, 藤川 敦, 林 宏行, 森山 正敏
    2013 年 26 巻 2 号 p. 289-293
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(Transurethral resection of bladder tumor in one piece:TURBO)は,腫瘍を細切せず一塊に切除することで,より正確な病理診断が可能である.その治療成績と病理診断における有用性について報告する.膀胱腫瘍135例,173病変に対し経尿道膀胱腫瘍一塊切除(TURBO)を施行した.切除は1.marking,2.粘膜切開,3.水平切除,4.腫瘍摘出の順に施行した.腫瘍は膀胱内いずれの部位でも切除可能であり,合併症も許容される範囲であった.切除検体に筋層を含む症例は123例(91.1%)に認めた.pT1 23例中22例(95.7%)に粘膜筋板を認めた.粘膜筋板を超えない浸潤であったT1症例は進行例を認めないが,粘膜筋板を超える浸潤を認めた7例中4例に病期進展を認め,1例に上部尿路再発を認めた.TURBOにおける深達度診断は正確であり,粘膜筋板浸潤の有無は予後と相関する可能性が示唆された.
  • 志賀 直樹, 小森 ひろか, 梨井 隼菱, 越智 敦彦, 鈴木 康一郎, 太田 智則, 細川 直登
    2013 年 26 巻 2 号 p. 294-299
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      【目的】軟性腎盂尿管鏡を用いた経尿道的砕石術(f-TUL)においてしばしば経験する術後感染を低減するために,容易に実施可能な対策について検討した.
      【対象と方法】2009年6月から2011年8月に施行された症例のうち19件の術後感染例から危険因子を分析したところ,尿路設置物と対象結石による感染既往が有意に多かった.米国感染症学会(IDSA)・欧州泌尿器科学会(EAU)尿路感染症ガイドラインを参考に対策を強化し,2011年9月から2012年6月に施行された104件の術後感染率を調査した.
      【結果】術後感染の危険が高いContaminated症例で対策前19.8%から対策後5.6%へ有意に術後感染率を低減できた.
      【結論】感染症ガイドラインを有効に活用することで術後感染は飛躍的に改善できると考えられた.
  • 八木澤 隆史, 橋本 恭伸, 小内 友紀子, 前田 佳子, 清水 朋一, 田邉 一成
    2013 年 26 巻 2 号 p. 300-304
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      当院では2011年4月に軟性腎盂尿管鏡,Holmium:YAG laserによる経尿道的尿管砕石術(TUL)を導入した.尿路結石治療にTULは有効だが,術後急性腎盂腎炎を発症し,時に重症化することがある.今回,2011年4月から2012年10月に当院でTULを施行した全104例の治療成績,及び術後急性腎盂腎炎発症後,全身性炎症性反応症候群(SIRS)に至った症例に対する臨床的検討を行った.
      6例(5.8%)が術後急性腎盂腎炎からSIRSとなり,うち1例は敗血症性ショックに至り,最終的に腎摘を施行し救命した.術後急性腎盂腎炎発症の危険因子を検討したところ,珊瑚状結石であることが統計学的に有意であった.また,手術時間が2時間を超えた場合,危険因子となる傾向を認めた.
      TUL導入後,全体として安全かつ有効な治療が達成できていた.術前の十分なリスク検討,安全かつ正確な手術手技の習熟が重要である.
  • 井上 貴昭, 室田 卓之, 木下 秀文, 松田 公志
    2013 年 26 巻 2 号 p. 305-309
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      今回,我々は当院における2cm以上の腎結石に対して施行したsingle-session flexible ureteroscopy and Holmium laser lithotripsy(以下,f-URSL)の効果と安全性について検討した.対象は2010年9月から2012年5月までに当院においてf-URSLを施行された2cm以上の腎結石患者35例(37腎)で,術後のstone clearance,合併症についてretrospectiveに検討した.結果は平均手術時間97.8分,平均結石サイズ32.7mmであった.術後1日目のstone free(SF)は5例(5腎:13.5%)のみであったが,術後1ヶ月目のSFは22例(23腎:62.1%),さらに術後3ヶ月目のSFは25例(26腎:70.3%)と術後日数が経過するとともにstone clearanceは上昇した(P<0.001).また,結石サイズが30mm以上(n=19腎) と30mm未満(n=18腎) でのSFはそれぞれ52.6%と88.8%であった( P=0.0129).合併症は5例(14.2%)に認めたが,いずれもminorな合併症であった.2cm以上の大きな腎結石に対しても症例を選べばf-URSLは十分効果的で安全である.
  • 方山 博路, 青木 大志, 櫻田 祐, 石戸谷 滋人, 中野 磨, 田口 勝行, 金藤 博行
    2013 年 26 巻 2 号 p. 310-313
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      【目的と対象】経尿道的ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)を施行した前立腺肥大症患者363例に対し,有用性,合併症,偶発癌の出現について検討した.
      【方法】術前,術後1週間,3ヶ月,1年の国際前立腺症状スコア(IPSS),Quality of life index(QOL),最大尿流量,1回排尿量,残尿量,周術期合併症,病理組織を検索した.
      【結果】手術時間は中央値(範囲)105(20-519)分,核出重量41(6-257)gであった.術前,術後1週間,3ヶ月,1年の平均IPSSは18.9 → 7.6 → 5.9 → 4.2,QOL indexは5.1 → 1.6 → 1.6 → 1.3,最大尿流量は10.2 → 21.2 → 21.8 → 22.1と明らかに改善した.一回排尿量,残尿量も有意に改善した.Clavien分類でGrade Ⅲaの合併症を9例(2.5%)に経験した.偶発癌を24例(6.6%)に認めた.手術検体は良性だったが,術後新たに前立腺癌を5例(1.3%)に認めた.
      【考察】HoLEPは安全かつ有効な治療法であることが裏付けられた.
  • 梅田 俊, 宮本 圭輔, 杉浦 皓太, 内藤 和彦, 藤田 民夫
    2013 年 26 巻 2 号 p. 314-318
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      2005年1月から2012年7月に施行した,ホルミウムレーザー前立腺核出術(Holmium Laser enucleation of the prostate:HoLEP)を施行した前立腺肥大症(benign prostate hyperplasia:BPH)症例 362例を対象に,術前推定体積80ml以上群(Ⅰ群)88例と80ml未満群(Ⅱ群)274例に分けて,治療効果,周術期パラメーター,合併症につき比較検討した.治療効果において両群間とも有意な改善を認め,周術期パラメーターではⅠ群で手術時間が長い傾向を認めたものの,単位時間当たりの切除重量はより多く,Ⅱ群に比べ核出効率が良好であった.術後尿失禁等の合併症は両群間で差を認めず,術後尿閉はⅡ群でより多い傾向を認めた.以上よりHoLEPは80ml以上の大きなBPHに対しても低侵襲で安全な治療法であると考えられた.
症例報告
  • Tetsuya Shindo, Kohei Hashimoto, Naoki Itoh
    2013 年 26 巻 2 号 p. 319-320
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/16
    ジャーナル フリー
      A 79-year-old man having non-muscle-invasive bladder cancer received a second transurethral resection of bladder tumor (TURBT). An intravesical explosion occurred during the surgery. Although resection was performed at the anterior wall of the bladder, the posterior wall of the bladder was injured. Fat tissue from the bladder was observed. No obvious leakage to the peritoneum was seen in postoperative cystography. An intravesical catheter was indwelled for 14 days and his condition finally improved without additional surgery. Although bladder explosion is a rare complication, it may lead to a serious condition. Oxygen alone from the atmosphere is not detonatable. However, when mixed with hydrogen, it may become oxyhydrogen, a highly explosive gas, and detonation may occur during TURBT. All urologists should be aware of this complication and air bubbles must be removed during resection of tumors in the bladder dome or anterior wall.
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