Japanese Journal of Endourology
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28 巻, 2 号
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特集1:JUA/JSEプロクター認定制度
  • 寺地 敏郎
    2015 年 28 巻 2 号 p. 147
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     2006年にわが国にロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術が導入され,2012年には同術式がロボット支援手術として初めて保険収載された.泌尿器科においては今またロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術についても,他科領域に先駆け先進医療Bから保険収載への道を拓こうとしている.このようにロボット支援手術において先陣を切る我々泌尿器科医には,本手術において医療事故を起こしてその発展にブレーキを掛けることを何としても避ける義務があると考えている.  
     2004年に開始され2014年の審査で満11年を迎えた泌尿器腹腔鏡技術認定制度は,泌尿器腹腔鏡手術の術式の標準化と質の向上,合併症の減少に役立ったことが示されており1),当初,ロボット支援手術においても同様の技術認定制度の設立が日本泌尿器内視鏡学会ロボット支援手術部会で検討された.しかし, ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術は細かな手順の違いに優劣は付けがたく,また繊細な操作を可能にするロボットの鉗子による手術操作においては技術のスコア化も困難との考えから,技術認定制度の設立は難しいとの判断に至った.一方で,ロボット支援手術は医師のみならず看護師,メディカルエンジニア等のチーム医療としての側面が大きく,その安全な導入には外科医のテクニカルな部分だけでなく手術室全体を俯瞰,指導する立場の医師が必要との議論がなされた.  
     こうした議論の下に,学会として,ロボット支援手術を行う医療チームを評価,指導する医師をプロクターとして認定し,学会員がロボット支援手術そのものの導入,あるいは新しい術式の導入を試みるときには,必ずプロクター認定取得医を招聘して手術を行う事を義務付けることとした.そして,日本泌尿器科学会と日本泌尿器内視鏡学会合同での制度委員会の発足,審査委員の選出に続き,2015年2月に最初のプロクターの審査が行われ,2015年4月1日,わが国独自の泌尿器ロボット支援手術プロクター制度が発足した.
  • 後藤 百万
    2015 年 28 巻 2 号 p. 148-150
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     本邦におけるロボット支援手術の導入は急速に進み,180台以上のダ・ヴィンチ手術システムが稼働し,2014年度は8,400件のロボット支援前立腺全摘除術が施行されている.ロボット支援腎部分切除術も,今までに340例以上施行され,先進医療Bでの臨床研究も終了し,2016年の保険改訂で保険収載される見込みである.このような状況において,安全なロボット支援手術の普及と発展のためには,学会主導による取り組みが重要となる.日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡学会ではガイドラインの策定に加え,2014年度から日本初のプロクター認定制度を創設し,95名のロボット支援手術プロクターを認定した.ロボット支援手術の導入における安全で円滑な手術の実施には,手術のプロクタリングに加えて,チームの連携,手術準備,安全な患者体位の確保など,包括的なプロクタリングが必要となり,総合的なプロクタリング技能を有するプロクターの育成は,本邦におけるロボット手術の発展においては重要な課題である.
  • 白木 良一
    2015 年 28 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     本邦におけるロボット支援手術は前立腺癌に対する健康保険適応が2012年4月に認可され,その後より急速に普及した.2014年末までに約200台のダビンチ・サージカルシステムが国内に導入され米国に次ぐ世界第2位の保有国となった.ダビンチは鉗子操作性の自由度が3次元となり,コンソールでの立体視による手術操作が可能となった.泌尿器科が専門とする,後腹膜腔や小骨盤内などの狭小な空間で剥離,縫合を施行する手術ではダビンチにより低侵襲手術の質的向上は明らかである.一方,ダビンチによるロボット手術は触覚が無いため手術操作習得には独自の教育プログラムおよびラーニング・カーブが必要となる.このような状況下に於いて,円滑且つ安全なロボット支援手術の導入に寄与するよう日本泌尿器科学会(JUA)/日本泌尿器内視鏡学会(JSE)は泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度を制定した.これにより本邦における泌尿器ロボット支援手術の健全な普及と進歩を促し,ひいては国民の福祉に貢献することが期待される.本プロクター認定制度は国単位の学術学会が中心となって制定したものとしては世界で初めてであり,2015年より本格的に運用が開始される.
  • 吉岡 邦彦
    2015 年 28 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     ロボット支援手術の急速な普及に伴い,米国泌尿器科学会(American Urological Association:AUA) は,ロボット支援手術の技術認定制度の確立,実行を関連各施設に推奨しており,現時点では各施設が独自に作成した技術認定制度のもとでロボット支援手術を開始している.AUAをはじめ各種ロボット支援手術関連団体(Foundation of Robotic SurgeryやSociety of Urologic Robotic Surgeons)は技術認定制度にプロクターシステムを組み込むことを推奨しているが,このプロクターシステムは企業(Intuitive Surgical Inc.:ISI社)主導で施行されている.その役割は,施設として特定の術者に当該手術の技術認定を与える上での最終評価項目であるとともに,導入期の安全性を担保することである.米国のプロクター医師は,特定の術者が単独で手術を安全に効果的に行うためのパフォーマンスや能力を観察,評価するオブザーバーであり,患者の安全面に法的責任を持たないため困難な局面に遭遇した場合でも積極的に手術に介入することはない.プロクター医師は術者の手術技術評価表を施設長に報告し,その結果として当該術者は当該手術の今後の施行に対して施設長からの全面的あるいは制限付き許可を得るか,場合によっては以降の当該手術を計画する前に更なるトレーニングを課せられる.本稿では我が国とは異なる定義で施行されている米国のプロクターシステムについて論ずる.また本稿ではプロクターとして指導に当たる医師をプロクター医師,指導を受ける術者をプロクター術者,そしてプロクター医師を招聘しての教育的手術をプロクター手術と記す.
  • 武中 篤
    2015 年 28 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     2015年度より,日本泌尿器科学会および日本泌尿器内視鏡学会による泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度が開始され,初年度に95名のプロクターが認定された.今後本制度をどのように運用をしていくのか,内外から大きな注目を浴びている.
     プロクターの役目は,手術準備・セッティングと技術指導に大別されるが,初期症例においては前者の重要度がより高いと思われる.プロクターは,プロクタリング招聘までに,当該施設の情報収集,症例の情報収集,機器・準備物品の確認などを行っておく必要がある.プロクタリング時には,まず術者と手術における取り決めを確認し,セッティングや体位について指導を行う.また,術者操作上の注意点として,エンドリスト挿入操作,触覚・力覚欠如の認識と補完,クラッチ機能・カメラ移動の重要性,3rdアームの活用法,バッティングの回避法についても指導を行う.また,チーム医療の重要性を伝え,術者だけではなく手術チーム全体に目を配り,各スタッフ間で円滑なコミニュケーションがとれるよう援助することも大切な役目である.
     現在,本邦のロボット支援手術においてプロクタリング業務の模範となる指針はなく,今後,泌尿器ロボット支援手術プロクター認定制度が他領域の雛型となっていくものと思われる.
特集2:TURBTの工夫と新技術
  • 藤本 清秀
    2015 年 28 巻 2 号 p. 168
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)は体外衝撃波砕石術に次いで最も施行件数が多い泌尿器科手術であり,筋層非浸潤癌に対する初期治療のみならず膀胱癌診療全体において最も重要な手技であります.しかしながら,筋層非浸潤癌に対する初回TURBT単独治療後の非再発率は30~70%と報告によるばらつきが大きく,high grade T1腫瘍に対するsecond TURでの腫瘍残存率も25~75%と,初回TURBTの質の施設間格差が非常に大きいことが窺えます.再発は膀胱癌の生物学的特性によるところも大きいのですが,TURBT自体の技術的な問題として単純な見落とし,不十分な切除,微小病変やcarcinoma in situなど視認しづらい平坦病変の存在が原因にもなっており,TURBTは不確実な手術手技と言えます.術者がレジデントの場合と専門医の場合では再発率に差があり,手技の標準化を目指した教育プログラムにより治療成績の向上が得られることからも,TURBTの手技自体の重要性を再認識すべきと考えます.
     一方,様々な膀胱内注入療法など再発予防治療がこれまで評価を受け,多くの臨床試験の結果,BCG膀注療法や抗癌剤の術直後単回膀注療法の有効性が証明され,ガイドラインでも推奨されています.しかしながら,BCG維持療法や単回膀注療法については報告者によって有用性の結論は必ずしも一致を見ていません.もちろん,臨床試験の規模,対象症例の背景,病理診断の質もそれぞれの研究で異なりますが,それと同時にTURBTの手術手技のあり方が臨床試験の結果に少なからず影響しているのではないかと感じています.TURBTは不確実な手術手技であり,TURBTの質が均一でない臨床試験の結果が再発予防治療の意義を真に評価しているとは言えず,内視鏡診断やTURBT手技を標準化したうえで,術後再発予防治療の評価が必要ではないかと考えています.
     蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断は検出感度に優れ,無再発生存期間を延長させるとして日欧米のガイドラインにおいて推奨されています.また,ヘモグロビンに吸収されやすい波長の光を照射することで病変を明確にする狭帯域光観察(Narrow band imaging)など,内視鏡映像の分光処理システムによって診断精度を向上させる技術も登場しました.一方,バイポーラーによる安全・確実な切除を目指したTURis(TUR in saline),腫瘍を切り刻むことなく一塊に切除し正確なstagingを可能にするTURBO(TUR of Bladder tumor in One piece)など,TUR機器の改良と切除法の工夫もあります.本教育プログラムでは,TURBT手技の工夫と新規技術について,その経験豊富な4名のエキスパートの先生方から解説していただき,TURBTの手技やそのあり方を見直す機会といたしました.
  • 庵谷 尚正
    2015 年 28 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     TURisは当初,閉鎖神経反射やTUR反応を回避する目的で,導電性で点滴可能な生理食塩水を潅流液にすることで開発された.その過程で非常に鋭い切れ味を有することが分かり,特にTURBTに於ける有用性が評価されて現在多くの施設で使用されている.従来のTURでは生体との接触点にしか起こらないアーク放電がTURisではループ全体に発生し,しかも生体とループの接触状態によらず安定し持続することがTURisの鋭い切れ味の要因である.アーク放電はループ周囲を包むように発生した気泡内で生じており,アーク放電を開始させるためにはまず気泡を生成しなければならない.実際には,通電してもアーク放電が発生しない放電ミスの原因が起こったり,通電後すぐにアーク放電が起こらず突沸を伴った放電が起こって予想外の深い切開の原因となることもある.TURisの電源には種々の改良が加えられ,気泡生成からアーク放電成立までの過程がスムーズに進むようになってきたが未だ十分とは言えず,second TURなど膀胱壁の層構造を意識したより繊細なTURBTがもとめられる状況では,この原理を理解することが必要と考えられる.従来のTURとTURisを比較してこれらの原理,要因について解説した.また,TURisの止血,凝固における特性や突沸の問題,発生するガス等についても言及した.
  • 松尾 良一
    2015 年 28 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術TURBO(Transurethral resection of bladder tumor in-one piece)は,腫瘍を一塊として除去し正確な病理診断が可能な,表在性膀胱腫瘍に対する理想的な内視鏡手術である.しかし,標準的な手術法である経尿道的膀胱腫瘍切除術TURBT(Transurethral resection of bladder tumor)よりも手技がやや複雑で若干の慣れが必要であり,さらに,腫瘍が大きい場合の対処方法にも工夫が必要であるため,広く普及していないのが現状である.今回,TUEB電極を用いた手技を中心に,粘膜下薬液注入法,NBIモード法,TURisVなどを組み合わせたTURBOの方法について紹介する.
  • 立神 勝則
    2015 年 28 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     膀胱癌は約70%が表在性すなわち筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC;non-muscle invasive bladder cancer)であり, この場合は経尿道膀胱腫瘍切除術(TURBT;transurethral resection of bladder tumor)により完治が可能であるが,その再発率は50%以上といわれる.この原因のひとつに,腫瘍が膀胱内の様々な部位に発生する多中心性発癌であり,TUR時に確認できない腫瘍が時間を経て発育することが示唆される.また,粘膜下層まで浸潤するT1腫瘍に対しては,筋層への浸潤や残存腫瘍の見落としがあることも指摘され,TURの再施行(re-TUR,second TUR)が推奨される.内視鏡による微小癌病変の同定の限界はあるものの,腫瘍の残存がデバイスの機能や術者の技量に左右されることも事実である.
     近年,蛍光色素を利用した膀胱鏡やイメージングによる検出技術を利用した膀胱鏡が開発され,膀胱癌の診断や治療におけるその有用性が報告されている.Narrow Band Imaging(NBI)は,狭帯域化した光を利用したイメージング検出技術であることから,腫瘍検出のための光感受性物質の投与は不要で患者に与える負担も少ない.NBIによる膀胱癌の同定に関するこれまでの報告によると,NBIによる観察では通常の白色光(WLI;white light image)に比べ,特異度は劣るものの感度に優れ,陰性的中度が高いことから,除外診断に有用であるといわれている.またTUR時に使用することで,腫瘍の見落としを減らし,膀胱癌の再発に寄与することも報告されており,膀胱癌の診断や治療にその使用が広まりつつある.
  • 井上 啓史, 福原 秀雄, 執印 太郎
    2015 年 28 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid(ALA))を光感受性物質として体内に投与すると,数段階の酵素反応の後,ミトコンドリア内で蛍光物質プロトポルフィリンⅨ(ProtoporphyrinIX(PpⅨ))が腫瘍特異的に過剰集積する.このPpⅨを青色可視光(375-445nm)で励起すると,赤色蛍光(600-740nm)を発光する.この光化学反応を応用した診断技術が,光力学診断(photodynamic diagnosis(PDD))である.ALAを用いたPDD(ALA-PDD)は,癌に共通する生物学的特性に基づく技術であり,観察対象が癌細胞自体で,赤色蛍光による識別が容易で再現性も高い.
     近年,筋層非浸潤性膀胱癌(non–muscle-invasive bladder cancer(NMIBC))におけるALA-PDDの診断精度やALA-PDD補助下経尿道的膀胱腫瘍切除術(transurethral resection of bladder tumor(TURBT))(PDD-TURBT)の術後膀胱内再発に関する良好な臨床成績が,メタ解析や系統的レビューなどエビデンスレベルの高い報告として示されている.欧米では,ALA塩酸塩が脳腫瘍,ALA誘導体(ALAヘキシルエステル塩酸塩hexaminolevulinate hydrochloride(HAL))が膀胱癌の術中診断薬として医療承認されている.日本でも,ALA塩酸塩が脳腫瘍の術中診断薬として2013年に承認され,現在は膀胱癌において薬事申請に向けた取り組みが行われている.
特集3:連載“長期成績”─ⅩⅢ.前立腺癌の局所療法の長期成績─
  • 杉村 芳樹
    2015 年 28 巻 2 号 p. 192
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     1980年代より始まったPSA検査の臨床応用,超音波ガイド下での安全確実な前立腺生検法の確立,そしてMRIによる画像診断の進歩により,前立腺癌の早期発見と局所診断が可能となり,近年では転移の無い局在性前立腺癌患者が急増している.局在性前立腺癌には,積極的な治療を要しないようなvery low risk癌から,PSA値とグリソンスコアの高いintermediate risk癌,さらにMRIにて被膜浸潤を疑うhigh riskの局所進展性癌(T3a)も含まれる.これら局在性前立腺癌に対しては,手術治療あるいは放射線治療を基盤とした多種多様な局所療法が開発され臨床応用されている.
     手術治療に関しては,開放的前立腺全摘除術(RRP)が最も一般的であるが,近年では,腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)が普及し,とくにロボット支援による腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP)が多くの施設で施行されるようになり,前立腺全摘除術の低襲侵化が急速に進んでいる.一方,放射線治療においては,3D-CRTからより副作用の少ない強度変調放射線治療(IMRT)の時代へと移行している.さらに,小線源療法(brachytherapy),高密度焦点式超音波療法(HIFU),および重粒子線治療などの新規治療法もこの10年間で着実な発展を遂げ,良好な成績が報告されている.最近では,高エネルギーを利用し癌病巣のみを治療し正常組織を可能な限り温存する局所療法(focal therapy)も注目されている.
     癌治療の第一目標は長期にわたる癌制御(cancer control)であるが,高齢患者の多い前立腺癌治療においては,いかに合併症を少なくし,低侵襲化し,QOLを維持するかが治療成績の鍵となっている.本特集では,前述した前立腺癌局所療法の国内におけるパイオニアあるいはエキスパートの先生に,それぞれの治療法の長期成績を中心に,手技,適応,治療コンセプト等を概説していただいた.本特集は多様性に富む前立腺癌局所療法に関する最新情報が簡潔にまとめられており,局在性前立腺癌患者の治療方針決定の場において大いに役立つことを期待したい.
  • 藤元 博行
    2015 年 28 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     過去,開腹による恥骨後式前立腺全摘は30年間実施されてきた治療法であり20年30年にわたる治療成績が多数報告されており最もよく研究されてきた治療法の一つである.前立腺全摘をPSA<10ng/ml,Gleasonスコア7以下,T1c-T2bの前立腺癌に実施した場合には治療成績は最も良いとされている.しかしこのようなリスクの低い前立腺がんに対する前立腺全摘については生存率向上に前立腺全摘が寄与しているか,という疑問があった.この点についてScandinavian Prostate Cancer Group-4(SPCG-4)のランダム化試験の長期成績の解析で,65歳以下でintermediate riskの症例では手術のメリットがあると報告されている一方,高齢者ではメリットが減少することが報告されている.High risk群に対する前立腺全摘は治療成績に限界があるが,その治療成績がホルモン併用の放射線治療より格段に劣ることはなく,これを適応外とする理由はない.前立腺全摘における性機能,あるいは尿失禁は大きな問題であるが,若年者に手術を実施した場合には長期にわたり機能は温存されている治療法であるとされている.開腹前立腺全摘に長期成績について概説した.
  • 星 昭夫, 寺地 敏郎
    2015 年 28 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【背景】わが国における腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)は1999年に開始され2013年までの15年間に約13000例が施行された.当科では2002年からLRPを開始し10年以上が経過した.本稿では当科で施行したLRPの術後QOL,制癌効果を中心に長期成績について解説する.
     【対象と方法】2002年4月から2015年3月までに当科でLRPを施行し,解析可能であった586例を対象とした.術後QOLの評価は自己記入型QOL問診票Expanded Prostate Cancer Index Composite(EPIC)を用い,EPICにてパッド1日0-1枚と解答した症例を尿禁制ありと定義した.
     【結果】年齢は中央値65歳(45-75歳),術前PSA値は中央値7.14 ng/ml(1.13-50 ng/m).NCCNリスク分類では低リスク177例,中リスク278例,高リスク131例であった.術前ホルモン療法は90例で施行されており,神経温存は283例の症例で行われた.手術時間は中央値250分(125-640分),尿込み出血量は中央値262ml(9-2044ml)であった.病理学的結果はpT2が473例,pT3が99例,pT4が1例,断端陽性は18.6%であった.尿禁制率は12ヶ月で79%となりその後は横ばいとなったが,EPIC尿失禁スコアは12ヶ月以降も緩やかな改善傾向を認めた.EPIC性機能スコアは術後12ヶ月で改善傾向が明らかとなり,その後の改善はごく緩やであった.5年PSA非再発率は89.3%であった.
     【結語】術後尿失禁および性機能は12ヶ月でほぼ回復し,その後の回復は緩やかであった.この傾向は神経温存症例で顕著であった.制癌効果は断端陽性率,PSA非再発率とも諸家の報告と同等であり,LRP単独でも良好な長期成績であった.
  • 橘 政昭, 大野 芳正, 大堀 理
    2015 年 28 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     近年,局所限局前立腺癌に対する局所治療は各種手術療法,密封小線源療法を含む放射線治療,他の局所療法など多岐にわたっている.特に手術治療に関しては従来の開創前立腺全摘術,内視鏡下前立腺全摘術(小切開を含む) に加え, ロボット支援下内視鏡的前立腺全摘術(RARP)がその保険収載を契機に急速な普及を見るに至っている.このRARPは2000年から欧米を中心に普及が始まった術式であり比較的新しい手技のため,その真の有用性,他の手術術式との間での正確な癌制圧および術後の機能予後に関する成績評価が未だ定まっていないのが現状である.本項では各種論文におけるmeta-analysisの成績を基に当該術式の治療成績を各術式間で検討した.その結果,RARPはその安全性に関しては従来の術式に比し出血量の軽減,合併症発生率の低値など安全性に関しては優れた術式と言える.しかしながら,癌のコントロールあるいは機能予後に関しては未だ前向きのコントロール研究が少ない状況で明らかな優位性を結論できるものではないと考えられた.また,術者の当該術式に係わる習熟度がその成績を左右する大きな因子であると思われる.当該内視鏡支援ロボットシステムという機能をより有効に活用した新たな手術術式の開発・工夫の必要性が強く求められるものと考えられた.
  • 斉藤 史郎, 矢木 康人, 西山 徹, 中村 憲, 青木 啓介, 室 悠介, 小津 兆一郎, 白石 悠, 戸矢 和仁, 萬 篤憲
    2015 年 28 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     ヨウ素125シード線源永久挿入密封小線源療法(シード治療)が日本で開始されて12年が経過するが,各施設からこの治療の有効性と安全性を示したデータが報告されている.現在までに全国117の施設で治療が実施されたが,最近は症例数の多い施設と少ない施設が明確に分かれており,センター化の傾向にある.シード治療は低リスク症例のみならず,中間リスクや高リスク症例に対しても外照射や一定期間のホルモン療法と併用することで高い治療効果が得られることが国内外で示され,本治療の適応範囲を広げる施設が増えている.東京医療センターでは現在まで2,500例を超す治療を経験しており,そこでの長期成績において(n=1,036,経過観察中央値6.8年),全生存率は5年96.7%,10年89.8%,疾患特異的生存率は5年99.8%,10年99.5%,生化学的非再発生存率は5年95.4%,10年90.7%であった.また,リスク分類別(NCCNガイドラインの分類)の生化学的非再発生存率は,5年と10年でそれぞれ低リスクが98.9%と98.2%,中間リスクが94.7%と87.8%,高リスクが86.9%と78.6%であった.限局性前立腺癌の根治療法として一般的な前立腺全摘術(RRP), 外照射療法(EBRT),シード治療の治療に関わる生活の質(QOL)の変化をEPICにより解析すると,RRPでは尿失禁,性機能低下のためにQOLが低下し,EBRTでは晩期の直腸出血のために低下している.シード治療では治療直後の排尿刺激症状により一時的にQOLが低下するものの,3つの治療の中ではQOLが最も保たれやすい治療であった.
  • 幡野 和男, 此枝 紘一, 遠山 尚紀, 小玉 卓史, 小林 将行, 小丸 淳, 深澤 賢, 植田 健
    2015 年 28 巻 2 号 p. 215-219
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     前立腺癌に対する放射線治療は,3D-CRTの時代からIMRTの時代へと移行しつつあり,3D-CRTの時代に問題となっていた直腸出血は,IMRTを用いることにより,その頻度を従来の20%程度から5%以下に軽減させることが可能となった.これにより更なる線量増加によってもたらされる治療成績向上が期待されている.中リスク群においては5年の生化学的無再発生存率はほとんどの施設が80%程度の成績を報告しているが,ASCO GU 2015で,中リスク群においては短期のホルモン療法と放射線療法との併用は,放射線療法単独よりも,生化学的再発を抑制し,無病生存期間(DFS)を改善することが,前向き多施設共同ランダム化フェーズ3試験で明らかになってきている.また,高リスク群においても手術成績と遜色ない治療成績であるが,高リスク群においてはホルモン療法との併用が重要であり,今後はその最適な期間の検討が待たれる.また,T3a以上の症例においてはホルモン療法併用だけでなく,腫瘍活性の高い領域への局所的な線量増加も検討されている.骨盤リンパ節への予防照射の意義については議論のあるところである.
     IMRTを用いることによって,晩期有害事象を増加させることなく,治療成績向上が得られることがわかってきたが,残念ながら我が国においては,まだ標準治療とはなっていないが,今後,マンパワーの確保によるさらなる実施可能施設増加が期待される.
  • 辻 比呂志
    2015 年 28 巻 2 号 p. 220-223
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     重粒子線治療は,前立腺癌に対する放射線療法としては,理想的な治療法と考えられる.過去20年に及ぶ2000例を超える放医研での結果は,副作用の点でも,治療効果の点でも,重粒子線治療の有用性を明瞭に示すものである.さらに放医研では治療期間の短期化を推進して,効率の向上と同時にさらに良好な治療結果に結びつけることに成功している.今後は,さらに技術開発を推進して,より短期で安全な治療を実現する必要があると考えている.また,前立腺癌は重粒子線の特徴を生かした治療が実践できる対象疾患の一つであり,この治療の普及においても大きな役割を担うと考えられる.そうした観点からは重粒子線治療の有用性をより明確にするために,国内重粒子線治療施設で設立されたJ-CROSという研究グループで多施設共同研究を行い,信頼性の高い結果を短期間で獲得することが必要と考えている.
  • 小路 直, 日暮 太朗, 川上 正能, 中野 まゆら, 内田 豊昭
    2015 年 28 巻 2 号 p. 224-231
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     局所療法は,根治的治療とActive Surveillanceの中間に位置する治療概念と考えられ,患者の予後に影響すると考えられる癌病巣を治療する一方,正常組織を可能な限り温存し,癌治療と患者の機能温存を両立することを目的とするものである.高密度焦点式超音波療法(high intensity focused ultrasound,以下HIFU)は,治療領域を自由な形に設定できること,数ミリ単位で治療領域,非治療領域の組織変化の違いを鮮明にして治療することができることから,前立腺癌に対する局所療法に適した治療法として期待される.しかし,これまでに報告された局所療法の臨床成績は,その目的の一つである機能温存については,有用性が示されている一方,治療効果判定方法が施設間で異なり,経過観察期間も短期間である研究が多いため,その治療効果の有用性については,明らかではない.現在,われわれは,HIFUを用いた局所療法の確立のために必要と考えられる,“前立腺癌の局在診断”,“正確な治療の実施”,そして“治療効果判定および再発評価”の方法について,基礎的,臨床的研究を行っている.今後,国際的なコンセンサスや,これらの研究結果を考慮して作成されたプロトコールのもとで治療が行われ,さらに多施設共同研究,他治療とのランダム化比較試験により,HIFUを用いた局所療法の有効性について,評価が行われることが望まれる.
  • 三木 恒治, 鴨井 和実, 沖原 宏治
    2015 年 28 巻 2 号 p. 232-235
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     前立腺癌に対するフォーカルセラピーはその副作用とコストの点から前立腺全体の根治的治療に対抗する治療手段と考えられている.フォーカルセラピーは主に低および中リスクの前立腺癌に対して行われているが,一部の片側性高リスク癌に対しても行われている.多くの研究では生検病理とmultiparametric MRI所見を組み合わせて適応症例が決められている.前立腺癌に対する初回治療として行われた臨床試験は高密度焦点超音波(HIFU),凍結療法,小線源治療,光線力学的療法(PDT),非可逆的電圧穿孔法(IRE),組織内レーザー照射法(LIT)などである.現時点で確認された前向き試験の結果では,前立腺癌フォーカルセラピーの周術期,機能的,腫瘍学的予後は良好であり,問題となっている前立腺癌の過剰治療を軽減させる可能性がある.前立腺癌フォーカルセラピーの確立のためにはさらなる評価が必要である.
腹腔鏡手術
  • 岡本 雅之, 田口 功, 奥野 優人, 石田 貴樹, 岡村 泰義, 川端 岳
    2015 年 28 巻 2 号 p. 236-240
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】腹腔鏡下腎部分切除術におけるキドニークランプ®を用いた腎実質クランプ法の有用性について検討を行った.
     【対象と方法】2011年10月から2014年10月までに腹腔鏡下腎部分切除術を施行した42症例を対象とし,腫瘍切除の際にキドニークランプ®を用いて腎実質クランプ法を施行した20例と腎門部クランプ法を行った22例に関して比較検討を行った.
     【結果】両群間で手術時間,出血量に有意差を認めず,キドニークランプ®を用いた腎実質クランプ群で有意に阻血時間が短く,両群とも重篤な合併症を認めなかった.術後のeGFRは腎実質クランプ群で良好な傾向にあった.
     【結論】本法は腫瘍の部位により適応は限定されるが,腎実質を直接クランプし,血流を制御することで,安全に手術を施行できた.腎機能維持の面に関して腎門部クランプ群より優れている可能性が示唆された.
  • 兼松 明弘, 樋口 喜英, 上田 康生, 鈴木 透, 呉 秀賢, 東郷 容和, 橋本 貴彦, 山田 祐介, 長澤 誠司, 嶋谷 公宏, 白石 ...
    2015 年 28 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     2003年より13年まで100 例の生体ドナーからの用手補助腹腔鏡下移植腎採取術を施行した.年齢は平均57歳.採取側は右21例,左79例で,アプローチは経腹膜と経後腹膜が97例と3例であった.4例で開腹移行した.気腹時間は平均242±66分で輸血例はなかった.温阻血時間(WIT)は平均5±2分でドナー側要因によるdelayed graft functionはなかった.高BMI症例と複数腎動脈例ではWITが有意に延長したが,気腹時間,出血量,初尿時間に影響はなかった.合併症はClavien分類1度12例,2度8例であった.ドナーの推定糸球体濾過率は術後1ヶ月で術前の60.9%と低下した後,1年目に術前の64.7%に回復した.本術式はドナーの安全性と移植腎機能をともに保持しうる低侵襲手術である.
  • 上仁 数義, 永澤 誠之, 小林 憲市, 水流 輝彦, 瀧本 啓太, 吉田 哲也, 影山 進, 成田 充弘, 河内 明宏
    2015 年 28 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】単孔式腹腔鏡下腎盂形成術(LESS-P)は,開放腎盂形成術(OP),腹腔鏡下腎盂形成術(LP)に比べると術創が小さく整容性に優れている.3つの術式の手術成績,合併症について比較することで,LESS-Pが,腎盂尿管移行部通過障害の標準術式になりうるかを検討した.
     【方法】2001-2014年にDismembered pyeloplastyを施行したOP群 31例(平均5.5歳),LP群 10例(平均28.7歳),LESS-P群 5例(平均36.4歳)を対象とし,手術成績,合併症について検討した.
     【成績】再手術を要した例を除き,全症例で水腎症は軽快改善した.OP群は他群よりも経口開始が有意に早かったが,手術時間,再手術率,Clavien-Dindo Grade III以上の合併症率,鎮痛剤の使用回数,術後在院日数は,3群間で差を認めなかった.
     【結論】LESS-Pは,手術成績,合併症においてもOP,LPと同等で,高い整容性からも標準術式になりうると考えられた.
  • 志賀 淑之, 杉本 真樹, 岩渕 敏久, 横山 大司, 大岩 祐一郎, 針生 恭一, 河野 義之, 大森 洋平, 新堀 萌香, 山本 隆次
    2015 年 28 巻 2 号 p. 253-257
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     泌尿器腹腔鏡手術において,後腹膜臓器のターゲットへ無駄のない,simulatedなポート位置を作成することは,効率的なオペをする意味において非常に重要である.画像解析アプリケーションOsiriXで患者の解剖,血管走行,内臓の位置関係や腫瘍などのターゲットを体表にoverlayし,体表から内臓へとレンダリングすることで,血管を避けたポート作成ができ,直感的にターゲットへ向えるようになる.今回われわれは,患者データをリアルな画像として投影するプロジェクションマッピングを応用したMixed Reality Surgeryを経験したので,実症例を提示しながら,その教育的,臨床的有用性と課題についても言及し報告する.
  • 松尾 光哲, 西原 聖顕, 名切 信, 陶山 俊輔, 築井 克聡, 植田 浩介, 林 秀一郎, 川口 義弘, 井川 掌
    2015 年 28 巻 2 号 p. 258-262
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】当院では術前にhigh risk症例のdown stagingや前立腺体積の縮小などを目的としてneoadjuvant hormonal therapy(NHT)を施行している.今回我々はNHTを施行した腹腔鏡下前立腺全摘除術について臨床的検討を行った.
     【対象・方法】2012年6月から2014年5月までの30例を対象とし,手術時間・出血量・カテーテル留置期間などについて検討した.年齢の平均はNHT施行群/未施行群で65.3/ 68.3歳,iPSAの平均は10.8/ 10.7ng/ml,術前前立腺体積の平均は24.3/ 30.6ml,NHT施行期間は平均8.27ヶ月であった.手術は全例後腹膜到達法・順行性アプローチにて行った.
     【結果】手術時間は平均208.2/ 201.8分,出血量は平均573.5/ 600.4ml,カテーテル留置期間は平均5.3/ 5.9日であった.NHT施行群における病理結果は組織学的治療効果判定でGrade 0b:3例,Grade 1:3例,Grade 2:4例,Grade 3b:11例であった.またRM 1症例は2例(6.7%)であった.
     【結論】high risk症例についてはNHT施行により組織学的治療効果の高い症例の割合が比較的多く,またNHT未施行群と比較して手術時間や出血量についての差は見られず,断端陽性率は低かった.
  • 善山 徳俊, 木村 高弘, 田代 康次郎, 坂東 重浩, 田畑 龍治, 佐々木 裕, 三木 淳, 山田 裕紀, 古田 昭, 三木 健太, 頴 ...
    2015 年 28 巻 2 号 p. 263-269
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】腹腔鏡下前立腺摘除術(LRP)の下部尿路症状(LUTS)に与える影響を明らかにするため,術前LUTSの有無と排尿QOLの変化について検討した.
     【対象および方法】LRPを施行した196例に対し,術前後に排尿関連QOL調査(IPSS,QOLスコア,UCLA-PCI)を行った. 術前IPSSによりLUTS群, 非LUTS群に分けて,術後排尿QOLの変化を検討した.
     【結果】LUTS群は非LUTS群に比べ術後排尿QOLの早い回復を認めた.IPSSおよびQOLスコアは,LUTS群では術前に比べ有意な改善を認めた.術前IPSSは術後QOLスコア回復の有意な予測因子であった.
     【結論】LUTS患者は非LUTS患者に比べ,LRPにより術後排尿QOLが早く回復し,排尿症状は術前より改善することが示唆された.
  • 中村 美智子, 岩原 直也, 鈴木 英孝, 川口 愛, 秋野 文臣, 福澤 信之, 田中 博, 原田 浩, 関 利盛
    2015 年 28 巻 2 号 p. 270-275
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     腹腔鏡下膀胱全摘術を術前腸管処置なく行ったので報告する.対象は膀胱癌に対して2010年2月以降2014年5月までに腹腔鏡下膀胱全摘・腸管利用の尿路変更を行った34例.後半の17例(NBP群)は腸管処置なく同手術を施行,その直前まで腸管処置を行っていた17例(BP群)と比較検討した.尿路変更に回腸導管を行った症例の手術時間は中央値480分,540分,推定出血量は中央値400ml,600ml,腎尿管全摘術同時施行例を除きNBP群で有意に手術時間が短かった.飲水・食事開始は同群とも中央値で術後1日,3日,術後イレウスは,NBP群4例,BP群5例,術後在院日数中央値はそれぞれ22日,32日であった.腸管処置なしでも問題なく手術可能であり,患者・医療者双方の負担軽減が可能である.
  • 多田 実, 船越 大吾, 堀祐 太郎, 佐藤 亜耶
    2015 年 28 巻 2 号 p. 276-284
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     腹腔内精巣の最も確実な診断法は腹腔鏡検査である.しかし,腹腔鏡下精巣検索および手術に難渋した症例を経験したので報告する.
     腹腔内精巣100精巣のうちの14例(18精巣)を原因別に分けて検証する.
    ①long vasによる精巣血管と精管血管の見誤り,5 cases(6 testes)
    ②spleno gonadal fusion 1 cases(1 testis)
    ③HCG試験偽陰性例 1 case(1 testis)
    ④Beckwith-Wiedemann症候群合併症としての腹壁破裂 3 cases(5 testes)
    ⑤複数回の腹膜炎手術後の癒着状態 1 case(2 testes)
    ⑥prune belly症候群 1 case(1 testis)
    ⑦横断性精巣転位 2 cases(2 testes)
     MRI検査にて精巣が判明する症例もあり,健側の代償性肥大がない場合は施行して,腹腔鏡下精巣検索時の補助診断としていくべきである.またHCG試験陰性例のなかに腹腔内胚細胞陽性例が認められるため,注意を要する.腹腔内高位精巣の場合,将来,胚細胞腫瘍発生防止のため,最低限,見落としを避けることが大事である.
  • 矢澤 浩治, 川村 正隆, 伊藤 拓也, 松山 聡子, 松井 太, 松本 富美, 島田 憲次
    2015 年 28 巻 2 号 p. 285-289
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】われわれの施設ではこれまでに男子小子宮/男性膣に対して様々な方法で手術を行ってきた.最近では腹腔鏡下摘除術を行うようになってきており,その症例につき臨床的検討を加えた.
     【対象・方法】1992年より2014年10月までに大阪府立母子保健総合医療センターで男子小子宮/男性膣に対して腹腔鏡下摘除術を行った5例を対象とした.手術時間,出血量,術後の合併症について検討を行った.
     【結果】手術時間は,159±19.4分,出血量は,6.6±3.1mlであった.術後,Clavien-Dindo分類でGradeⅠの合併症も認めなかった.
     【結論】男子小子宮/男性膣に対する腹腔鏡下摘除術は,開腹手術よりも良好な視野で手術が可能であり非常に有用な手術方法と思われる.
Endourology
  • 東 剛司, 佐藤 雄二郎, 長瀬 泰, 押 正也
    2015 年 28 巻 2 号 p. 290-293
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】隆起性病変を伴わない尿細胞診陽性患者に対する5-アミノレブリン酸による蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断の有用性を検討した.
     【対象と方法】2011年6月から2012年7月までの期間に,当施設において尿細胞診でclassⅢ以上を認めたが,明らかな隆起性腫瘍病変を認めなかった21例を対象とし,5-アミノレブリン酸による蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断を施行した.
     【結果】蛍光膀胱鏡の感度は96.6%,特異度は62.7%であった.また尿路上皮癌と診断された病変のうち,蛍光膀胱鏡でのみ診断しえた病変が54.2%を占めた.3年無再発生存率は71.4%であった.
     【結論】隆起性病変を伴わない尿細胞診陽性患者に対する5-アミノレブリン酸による蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断は有用であった.
  • 黒田 晋之介, 伊藤 悠城, 田部井 正, 藤川 敦, 松崎 純一
    2015 年 28 巻 2 号 p. 294-300
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】腎結石に対するTUL併用PNL(Endoscopic combined intrarenal surgery:ECIRS)における術前砕石効果予測因子を検討した.
     【対象と方法】大口東総合病院にて腎結石に対して施行されたECIRS 267例を対象とした.術後1か月のCTにて残石を認めない,または5mm未満の場合はStone free(SF群),5mm以上の残石を認める場合はNon-stone free(Non-SF群)と定義し,二群間で患者背景および結石因子を比較し,砕石効果予測因子を多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した.
     【結果】Stone free rateは65.4%であった.多変量解析にて,第12肋骨下縁と結石上端の距離(P=0.033),Stone surface area(P<0.001),結石数(P=0.042),結石の枝数(P=0.003),および結石のある腎杯数(P=0.004),の計5因子が独立した砕石効果予測因子であった.
     【結論】ECIRSの砕石効果予測因子について本邦で初めて報告した.
  • 井上 貴昭, 室田 卓之, 岡田 真介, 浜本 周造, 木下 秀文, 松田 公志
    2015 年 28 巻 2 号 p. 301-307
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     我々は軟性腎盂尿管鏡(fURS)トレーニングにおけるinstructional training, visual feedback trainingの有用性について評価した.fURS naïve 3人とfURS経験<10例の2人を含む5人の若手医師がこの研究に参加した.5人の医師はinstructional training, visual feedback trainingを受けるトレーニング介入群と非介入群に振り分けられた.task completion time(TCT)とvisual rating scaleが測定され評価された.Task 1,2においてTCTは両群ともに有意にトレーニング最後には短縮されたが,Task 3はトレーニング介入群のほうが非介入群に比べ有意にTCTは短縮した.またvisual rating scaleもトレーニング介入群で有意に増加していた.Instructional training, visual feedback training指導はfURSトレーニングにおいて有用である.
前立腺
  • 小路 直, 平岩 真一郎, 橋本 亜樹生, 日暮 太朗, 川上 正能, 朝長 哲朗, 中野 まゆら, 花井 一也, 橋田 和靖, 遠藤 じゅ ...
    2015 年 28 巻 2 号 p. 308-316
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     【目的】今回,われわれは,MRI-TRUS融合画像リアルタイムガイド下経会陰式前立腺標的狙撃生検による前立腺癌診断の有用性について検討した.
     【方法】対象は,2014年1月から11月までに,PSA値20ng/ml以下で,mpMRIにおいて,前立腺癌が存在する可能性が示唆された(PI-RADS classification 2-5)症例.各症例に対して,BioJet®(D&K Technologies GmbH,Barum,Germany)を用いた標的狙撃生検,および系統的12カ所生検を初回生検として行った.
     【結果】対象は,90症例.対象症例の年齢中央値は68歳,PSA中央値は6.7 ng/ml,前立腺体積中央値は37mlで,症例毎の生検穿刺数中央値は14カ所であった.51症例(57%)で癌が検出され,系統的生検コアおよび標的狙撃生検コアにおける癌検出率は,それぞれ6.0%および38%で有意差が認められた(p<0.0001).MRIにおいて癌が強く疑われた,いわゆるPI-RADS classification 4および5の病変における癌陽性率は,52%および82%であった.系統的生検コアおよび標的狙撃生検コアにおける癌組織長の中央値は,2mmおよび8mm(p<0.0001),癌組織の割合は,16%および58%(p<0.0001)であった.Gleason score中央値は,6および6.5(p=0.001)と有意差が認められた.標的狙撃生検により診断されたsignificant cancerの局在診断は,摘出標本におけるsignificant cancerの局在およびGleason scoreと,全症例(n=16)で一致が認められた.
     【考察】本検討における標的狙撃生検は,significant cancerの検出およびその局在診断において,有用である可能性が示唆された.
  • 東郷 容和, 嶋谷 公宏, 花咲 毅, 長澤 誠司, 山田 祐介, 橋本 貴彦, 上田 康生, 鈴木 透, 相原 衣江, 呉 秀賢, 兼松 ...
    2015 年 28 巻 2 号 p. 317-321
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     我々は,TUEBを施行した209症例(同時に施行された膀胱砕石術18例および前立腺生検14例を除く)を対象に,術後有熱性尿路性器感染症の発生頻度についての検討を行った.
     使用抗菌薬は第1世代セフェム系が最も多く105例(50.2%),次いで第2世代セフェム系82例(39.2%)であった.
     抗菌薬投与期間は単回が最も多く79例(37.8%),次いで2日58例(27.8%)であった.
     術後有熱性尿路性器感染症の発生頻度は6例(2.9%)であり, 急性前立腺炎4例(1.9%), 急性精巣上体炎2例(1.0%)であった.
     感染症発生の危険因子は術前残尿量(P=0.04)であった.
     術前膿尿の有無に関わらず,単回投与と複数回投与において術後感染発生に有意な差を認めなかった(P=1.00,1.00).
     しかし,経尿道的前立腺核出術における至適投与期間に関しては,前向きなランダム化試験が必要であろう.
  • 林 睦雄, 岡 清貴, 井上 勝己
    2015 年 28 巻 2 号 p. 322-330
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     限局性前立腺癌に対する高密度焦点式超音波(HIFU)の長期治療成績を検討した.12ヵ月以上経過観察可能症例202例,47-82歳(中央値69),PSA値2.8-100ng/ml(中央値7.3),Gleason score 5-10(中央値7),臨床病期T1 107,T2 95例,低,中,高リスク群は52,94,56例.腰麻下に直腸へプローブを挿入し前立腺全体を照射した.PSA failureか生検などで癌陽性を再発とした.12-137ヵ月の経過観察で20例(10%)に癌陽性を認め,62例に再発,25例にHIFU再治療を行った.5年非再発率は全体で79%,低,中,高リスク群では95,82,60%であり,予後はlost follow 11例,他疾患による死亡10例で,前立腺癌死は確認されてない.経過中排尿困難48例(21%),尿失禁22例(10%),尿道狭窄13例(6%)を認めたが,重篤な合併症はなかった.HIFUは限局性前立腺癌の高リスク群には検討を要するが,低,中リスク群には有効な治療法であり安全で再治療も可能である.
その他
  • 高沢 亮治, 北山 沙知, 内田 裕將, 辻井 俊彦
    2015 年 28 巻 2 号 p. 331-336
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     尿管鏡・腎盂鏡手術の進歩に伴い,個々の腎杯に統一的な名称を与える必要があるが,現在一般化した腎杯の命名法がない.我々は237腎のCT-Urographyの三次元画像を分析し,各腎杯の命名法と内視鏡操作に即した腎盂腎杯の形態学的分類を検討した.腎杯を腎上極から順にtop(T),upper(U),middle(M),lower(L),bottom(B)の5つの高さ,さらにU,M,Lをanterior(A),posterior(P)の前後2列,計8個に分けて命名した.分岐パターンの違いから, 腎盂腎杯の形態をI型(68.4%) とII型(31.6%)に分類した.I型のうち,標準的なIa型(56.5%),腎盂が凸型に広いIb型(4.6%),腎盂が凹型に狭いIc型(7.2%)に亜分類した.II型の腎盂腎杯は,T,Uへの枝とM,L,Bへの枝の二方向に分岐する.このように各腎杯を命名し,腎盂腎杯の形態を2つの型(亜型を含めると4つの型)に分類できた.
症例報告
  • 伊藤 寿樹, 栗田 豊, 田村 啓多, 細川 真吾, 牛山 知己
    2015 年 28 巻 2 号 p. 337-342
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/31
    ジャーナル フリー
     症例は22歳女性.主訴は左腰背部痛と発熱.馬蹄腎および左腎盂尿管移行部狭窄症に続発した左膿腎症と診断された.保存的加療に奏功せず,また左半腎機能の著しい低下を認めたため,腹腔鏡下左半腎摘除術を施行した.左腎動脈は2本存在し,そのうち1本は大動脈から直接に腎下極を栄養していた.また,重複下大静脈を合併していたため左半腎の剥離に注意が必要であった.峡部の離断はエンドGIA™(60AXT)を使用してほぼ無血的に施行し,追加縫合は不要であった.総手術時間は4時間30分,出血は少量であった.馬蹄腎に対する腹腔鏡下半腎摘除術は,術前に栄養血管の同定や峡部の離断方法を十分に検討することにより非常に有用な術式となる.
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