膵損傷の治療方針決定において主膵管損傷の有無の評価は重要である。近年,外傷以外の分野ではmultidetector row CT(以下MDCT)が主膵管病変の評価に有用とされているが,主膵管損傷をMDCTにより直接描出し得た報告は,われわれが検索し得たかぎりでは海外の報告が1編認められるのみであり,非常に少ない。今回,MDCTを用いて主膵管損傷を直接描出し得た鋭的膵損傷症例を経験したため報告する。症例は49歳の男性,腹部刺創のため当センターに救急搬送となった。MDCT所見では膵頭部に膵損傷分類2008(日本外傷学会)Ⅲb型損傷を認めた。術中所見では上腸間膜静脈の約1cm右側に主膵管損傷を伴う膵離断が確認され,膵頭側断端閉鎖・尾側膵管空腸吻合術を施行した。
本症例の主膵管損傷は,来院時のMDCTデータを再構成することにより,描出が可能で あった。その際,任意多断面再構成法(multi planer reconstruction)および最小値投影法 (minimum intensity projection)が有用であった。
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