日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
14 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • ―指導効果の長期持続性―
    黒川 貴幸, 浅川 洋子, 古賀 真実, 犬塚 奈美子, 西川 みつ子, 南里 久子, 小林 尚子, 本田 裕一, 妻鳥 元太郎
    原稿種別: 原著
    2011 年 14 巻 6 号 p. 631-638
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    目的:胸骨圧迫手技につきテンポ・深度を1回指導した後,その効果の持続期間を検討する。方法:2分間の胸骨圧迫手技を1対1で1回指導した後,経時的に手技を観察し,そのテンポや有効深度に達した回数を前半,後半各1分間に分けて検討した。また指導8か月後に各対象者に観察結果をフィードバックし,フィードバックによる効果も観察した。結果:当院看護師11名を対象とした。テンポは前半,後半とも指導後8か月まで指導効果が持続した。深度は前半では指導後1か月まで成績は向上し,以後それが8か月まで持続したが,後半では指導後1か月までに成績が低下した。だがフィードバック後の手技観察で後半の圧迫深度の成績が向上した。結論:胸骨圧迫手技の指導効果は,テンポに関して少なくとも8か月程度,圧迫深度に関して1か月程度持続し,一度低下するも手技の評価をフィードバックすることで改善された。

調査・報告
  • 黒川 雅代子 , 村上 典子, 中山 伸一, 小澤 修一, 鵜飼 卓, 村本 洋子, 井上 祥子, 坂口 幸弘
    原稿種別: 調査・報告
    2011 年 14 巻 6 号 p. 639-648
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    目的:CPAOA状態で搬送された患者の遺族のニーズと満足度を明らかにし,家族・遺族支援について検討する。方法:2003年8月から2006年12月にA救命救急センターに病院到着時心肺停止状態で搬送され,入院に至らずに亡くなった患者の遺族395名に質問紙調査を実施した。結果:有効回答数は103であった。医師の説明は「理解できた」87%,看護師は「やさしかった」34%と回答した。患者治療中に家族の助けになったことは「待合室が個室」31%,「医師の説明」25%,「家族・友人の支え」20%であった。お別れの時間は43%が「不十分」と回答した。また44%が治療場面の立会を希望した。受けた医療は87%が「満足」,「だいたい満足」と回答した。死別後は「体調を崩した」36%,「生きがいの消失」29%,「経済的不安」23%を体験していた。結論:受けた医療については満足していた人が多かった。しかし,お別れの時間の確保,治療場面の立会などの課題も明らかになった。

  • ―海での溺水事故に対するプレホスピタルケアの意義―
    中川 儀英, 青木 弘道, 日上 滋雄, 辻 友篤, 渡辺 泰江, 山本 利春, 小峯 力, 稲垣 裕美, 猪口 貞樹
    原稿種別: 調査・報告
    2011 年 14 巻 6 号 p. 649-655
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    目的:ライフセーバーの活動調査から,国内海水浴場における水難事故の実状とライフセーバー活動の意義を明らかにする。方法:日本ライフセービング協会(JLA)が2003年から2009年に行った国内海水浴場でのライフセーバー活動調査を検討した。結果:おもな活動は,ファーストエイド(FA)平均15,000件/年,レスキュー1,700件/年であった。レスキューが必要となった要因は離岸流が44%で多かった。海中で溺れそうな利用者を,資器材を利用し陸地に移送する安全移送は1,560件/年,溺者への対応は125件/年で意識障害をきたす前に救助した。心肺蘇生(CPR)施行は8件/年で,病院前心拍再開(ROSC)率は42%であった。FAではクラゲ刺傷の処置(45%)が最も多かった。結論:ライフセーバーがかかわった,わが国の水難事故の実態が明らかになった。ライフセーバーは水難事故のプレホスピタルケアの重要な担い手といえる。

症例報告
  • 秋山 久尚
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 14 巻 6 号 p. 656-661
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は67歳の男性で,特記すべき基礎疾患はなし。突然の意識障害,高熱で当院外来に緊急搬送された。不穏状態,失語様の高次脳機能障害,極軽度の右上下肢不全片麻痺,項部硬直を認めたが,頭部単純MRIでは頭蓋内に異常はなかった。脳脊髄液検査より細菌性髄膜炎と診断し,のちに各種寒天培地にてListeria monocytogenesを認め,リステリア(L. monocytogenes)髄膜炎と確定診断した。抗菌薬治療にて後遺症なく退院した。免疫不全状態や慢性消耗性疾患などの基礎疾患をもたない比較的若い高齢者に,リステリア髄膜炎の発症頻度は少ない。今後,高齢化が急速に進行している本邦で,脳症を伴う有熱性中枢神経疾患の診察時には,確定診断が困難であるリステリア髄膜炎も積極的に鑑別することが必要と考える。

  • 貴島 孝, 川手 浩史, 吉原 秀明
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 14 巻 6 号 p. 662-665
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性。フグ調理師免許のない患者が,譲渡されたフグをシロサバフグと誤認し,肉と肝臓を摂取した。摂取2時間後に口唇粘膜面のしびれ,3時間後に呼吸困難,眩暈,両上肢のしびれが出現し,摂取5時間後当院救急センターヘ搬送された。来院後胃洗浄施行し,活性炭投与後同日緊急入院となった。入院翌日,摂取したのはドクサバフグであることが判明した。四肢末梢のしびれ,呼吸困難は1日目に消失し,嘔気,食欲不振は数日間持続,眩暈,運動障害は5日前後持続した。症状軽快したため入院8日目に退院となった。今回の症例の背景には,フグ調理師免許をもたない者がフグを調理し,民間で食べている風習がある。全身有毒のドクサバフグは,全身無毒のシロサバフグと判別がきわめて難しく,また本来日本近海に生息しないフグである。今回経験したドクサバフグ中毒は,温暖化に伴い今後増加することが予想される。ドクサバフグ中毒の現状につき統計を含め報告する。

  • 田邉 三思, 石井 圭亮, 塩月 一平, 中嶋 辰徳, 兼久 雅之, 竹中 隆一, 土肥 有二, 江口 英利, 和田 伸介, 古林 秀則
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 14 巻 6 号 p. 666-669
    発行日: 2011/12/31
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    気道緊急を生じる代表的疾患の1つに顔面外傷による窒息があり,気道確保までの時間が予後を大きく左右する。現状では, こういった患者に対する救急救命士の特定行為は認められていないため,医療機関への搬送時間が救命率に大きく関与しているといえる。しかしながら,救急覚知から医療機関到着までの時間は全国平均で30分を超えており,病院前にて低酸素脳症,呼吸停止,心停止となり医療機関に搬送される患者も少なくないと推定される。救命率,社会復帰率の向上のためには,手段としてドクターヘリやドクターカーなどを用いた病院前への医師派遣が必要であると考えられる。今回,顔面外傷による鼻腔・口腔内への活動性出血により窒息,気道緊急を呈したが,呼吸停止直後に外科的気道確保を行い,引き続く止血処置にて社会復帰を果たした1例を報告する。ドクターカーによる医師派遣が奏功し,予後を劇的に改善させたと考えられた。

feedback
Top