救急救命士養成教育制度開始後20年が経過した。養成所でのシミュレーション訓練は,座学による知識と現場活動を結びつける教育手法として,重要な位置にある。名古屋市消防局救急救命士養成所でも開設以来,実際の現場に即した,人形を使った訓練を繰り返してきたが,そのほとんどが心肺停止傷病者に対する特定行為であった。平成21年の消防法改正に伴い,各種の重症病態に関する知識とスキルの総合的な習得がより重要となると考えられる。名古屋市消防局救急救命士養成所の学生(30名)を対象とし,心肺停止傷病者に対するプロトコール訓練と並行し,重症度・緊急度の高い疾患を対象とする机上訓練を行った。その後,同疾患の救急現場を想定した病態活動訓練,情報を医療機関に伝達する訓練を合わせて実施し,机上訓練の結果を評価したうえでのフィードバックを行った。机上・活動バイタルサイントレーニングでは,80%以上の学生が有用であると評価した。傷病者の観察や観察内容の評価に対する重要性や意識づけに役立った。また机上・活動病態トレーニングでも同様に80%以上の学生がその必要性を感じていた。重症傷病者の観察や病態変化の予測に関してはほとんど経験がなく,病態悪化を避けることの重要性を認識できたとの意見が得られた。少人数の養成所である故に,座学および実際の現場を想定した,人形を使用した訓練を実施し,フイードバックを繰り返すことで,より理解度の高いトレーニングが行えると思われた。
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