日本臨床救急医学会雑誌
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17 巻, 3 号
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原著
  • 小島 好子, 雲野 博美, 角田 圭佑, 前原 多鶴子, 渡邉 美智子, 上原 里程, 草野 英二, 鈴川 正之
    2014 年 17 巻 3 号 p. 395-402
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:医療ソーシャルワーカー(MSW)が救命救急センターのソーシャルハイリスク(SHR)患者に早期から支援を実施することの意義と,介入の必要な患者の特性を検証する。方法:MSWが救命救急センターのカンファレンスに参加するようになった平成23年4月からの6カ月間と,参加前の6カ月間の患者の特性を比較した。また,平成23年4月から6カ月間に支援を行った患者のSHRについて,救命救急センターと他の診療科とで比較した。結果:相談実件数は,カンファレンス参加前と比べて3倍に増加し,支援開始までの日数が有意に短縮した(p=0.01)。カンファレンス参加後の在院日数は,有意ではなかったが短縮する傾向にあった(15日 vs 22日,p=0.053)。また,SHR項目のうち,不慮の事故,独居・身寄りなし,精神疾患,家庭内暴力・虐待(疑い),自殺企図は,他の診療科と比較し,援助の必要性が高い項目として有意差が認められた。結論:MSWがカンファレンスに参加し,早期にSHR項目を重視しながら対応していくことは,平均在院日数の減少をもたらす可能性があり,救命救急センターの運営にとって有用である。
  • 門口 直仁, 田中 聡, 山本 創一, 服部 暁昌, 喜多村 泰輔, 村田 厚夫
    2014 年 17 巻 3 号 p. 403-407
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:当院救命救急センターおよび集中治療室入室患者において実施したバンコマイシン(VCM)血中濃度解析結果について,予測性の検討を行った。方法:対象は,2010年7月から2011年6月までに救命救急センター及び集中治療室においてVCMの治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring,以下TDMと略す)を実施した症例49例とした。予測性の評価指標として,予測の偏り(ME),予測の正確さ(MAE),予測の0(RMSE)を算出して用いた。結果:実測濃度を用いた予測において有意な予測の偏りがみられるが,予測精度は向上する可能性が示唆された。持続血液濾過透析施行の有無による比較では,予測精度は変動しなかった。結論:救急・集中治療領域においては,早期に薬剤師が介入し,状況に応じて予測性を考慮しながらTDMを行うことが重要であると考える。
  • 岩下 具美, 市川 通太郎, 徳永 健太郎, 望月 勝徳, 今村 浩, 岡元 和文
    2014 年 17 巻 3 号 p. 408-413
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:医師不足と偏在により,救急医がon-line medical control(以下,OMCと略す)に対応できない地域がある。「管轄区域内の非救急医よりも,区域外の救急医が対応するOMCの方が,救急救命士の特定行為実施率と蘇生率を向上させる」と仮説をたて,後方視的に検証した。方法:救急医不在地域のOMCを他医療圏の救急医が対応開始した2012年8月から1年間を後期,本運用開始前の1年間を前期として,院外心肺停止搬送記録から特定行為・転帰について比較した。結果:特定行為の指示要請率(前期53→後期85%)と実施率(気管挿管4→19%・静脈路確保26→58%)は有意に増加したが,特定行為成功率と転帰に差はなかった。結論:他医療圏の救急医が救急医不在地域のOMC を担当することは,特定行為の実施を増加させたが転帰の改善はなかった。今後,救急救命士の特定行為経験値上昇に伴う成功率向上と転帰改善が期待される。高質で常時・即時的なOMC構築のために,救急医不足地域では区域外の救急医にOMCを移譲・分担することが一方策と考える。
調査・報告
  • 賀来 典之, 六車 崇, 篠原 真史, 青木 一憲, 馬場 晴久, 李 守永, 杉森 宏, 原 寿郎, 前原 喜彦
    2014 年 17 巻 3 号 p. 414-417
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:重篤小児救急患者の診療実績比較におけるmodified observed-expected chart(modified O-E chart) の有用性を検討する。方法:2009〜11年の3年間での大学病院救命救急センター(施設A)と小児専門施設(施設B)の重篤小児救急患者(術後・院内急変を除く15歳以下のICU入室,外来死亡患者)について,診療録をもとに後方視的に検討した。予測致死率はPIM2(Pediatric Index of Mortality 2)から算出した。結果:両施設での症例数・平均予測致死率・実致死率は,施設A(299例・17.8%・12.7%):施設B(904例・7.1%・5.3%)であった。また超過生存はそれぞれ16:29例(入室100例に対し5.4:3.2例),また施設Bでは予測外死亡例が認められた。考察:重篤小児救急患者の診療体制整備のため,多施設での診療成績データの解析が必要である。modified O-E chartは,重症度分布,超過生存,予測外死亡例などを一覧性をもって,かつ定量的に比較することが可能であり,有用と考えられた。
  • 笠井 武志, 大川 元, 小村 隆史
    2014 年 17 巻 3 号 p. 418-424
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    香川県では,傷病者の搬送調整を含む病院前救急医療体制が円滑に機能することを期して,デジタルペンとスマートフォンを活用した救急医療情報システムを開発,導入した。特徴としては,救急隊が現場などからデジタルペンを用いて傷病者観察メモに記入すると,ペン先に内蔵されたカメラが筆跡を記録,スマートフォンを介して県サーバーに傷病者情報を格納,インターネット端末やスマートフォンからサーバーへアクセスすることにより傷病者情報,県内全出場救急隊の動向,県内医療機関の救急車受け入れ状況等のリアルタイム情報を消防機関と医療機関の双方で共有できる。これにより救急隊側では,収容医療機関の集中回避,医療機関への収容依頼問い合わせ回数の減少,覚知から医療機関収容までの時間短縮,適正医療機関への早期搬送などに寄与すると考える。また,医療機関側では,早期に傷病者の詳細情報を得ることにより,受け入れ体制を整え,収容直後から適切な治療を行うことができる。それにより効率的な医療資源の活用が可能となり,傷病者の円滑な受け入れ,専門性の高い治療への連携が可能となり,ひいては救命率の向上,入院期間の短縮,早期の社会復帰などに寄与すると考える。
  • ―精神保健福祉士(PSW)の介入による入院期間・転帰・連携に与える影響―
    濱口 満英, 丸山 克之, 植嶋 利文, 中尾 隆美, 細見 史治, 村尾 佳則
    2014 年 17 巻 3 号 p. 425-430
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:PSW配属前後で,自殺企図に伴う外傷症例において入院期間や転帰がどう変化したか調査した。対象:介入前12症例,介入後13症例で検討した。入院日数,術後から退院までの日数,転帰に関して調査した。結果:入院日数は,介入前:71.8 ± 19.1(日),介入後:62.8 ± 28.6(日)。術後から退院までの日数は,介入前59.3 ± 20.7(日),介入後39.3 ± 22.6(日)であり有意に減少した。転帰は,介入前はリハビリ病院への転院2症例(16.7%),介入後は8症例(61.5%)と増加した。結語:PSWが配置され,救急医と精神科医の連携が円滑になった。PSW介入によって,入院期間や術後から退院までの日数が減少した。われわれ救急医は身体的治療に専念できるようになり,大幅に負担が軽減した。患者にとっては,本来必要なリハビリ加療を適切な環境で受けられる症例が多くなったことが大きな利点である。
  • 蕪木 友則, 須崎 紳一郎, 勝見 敦, 原田 尚重, 原 俊輔, 安田 英人, 酒井 拓磨, 片岡 惇
    2014 年 17 巻 3 号 p. 431-434
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    背景:自傷行為による外傷患者への対応面では,さまざまな問題がある。目的:当院の過去8年間における精神疾患をもつ患者の鋭的損傷症例を調査・検討し,課題を見つけ,改善策を考えた。結果:症例数は93例であった。精神疾患をもつ患者は,入院日数が長く,精神科病院への転院が必要となる割合が高かった。課題として,入院中の精神科的治療・看護が不十分である可能性があった。しかし,身体的問題が解決しないと精神科病院への転院は困難であった。そこでわれわれは,身体的問題が完全に解決していなくても,患者の状態によっては,精神科病院に早期に転院し,必要に応じて当センター医師が往診に行き,外傷治療を継続している。結論:精神科疾患をもつ外傷患者で全身状態が安定している場合は,早期に精神科病院へ転院し,必要に応じて救命センター医師が往診に行くという体制を構築した。
  • 伊藤 正博, 中 智章, 中森 靖, 和田 大樹, 藤見 聡
    2014 年 17 巻 3 号 p. 435-439
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    外傷初期診療ガイドラインでは,プライマリーサーベイにおいてCT検査は推奨されていない。しかし当センターでは,初期段階でCT検査を積極的に行い早期に的確な治療を開始することで,患者の予後を改善できると考えた。そこで今回,初療室を取り巻く環境を見直し,新たな高機能初療室(hybrid emergency room)を構築するため,初療室に世界で初めてIVR-CT装置を導入し,患者搬入時より装置の寝台を初療台として活用する方式を考案した。そこでは,初療室の機能に加え,CT検査,IVR,緊急手術が行えることを設計の目標とし,その結果,高機能初療室の運用の有効性が認められたので報告する。
  • 関本 裕美, 河合 実, 中蔵 伊知郎, 服部 雄司, 本田 芳久, 定光 大海
    2014 年 17 巻 3 号 p. 440-444
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    当センターで,2008年5月〜2012年8月の期間に遺伝子組み換えトロンボモデュリンα(Recombinant Thrombomodulin-α;rTM)を投与された症例の性別,年齢,投与前推算糸球体濾過量(以下,eGFR),投与開始量,累積投与量,悪性腫瘍の合併の有無,診療科を調査した。また,腎機能別に投与開始量で分類し,DIC離脱時期を調査し,腎機能低下におけるrTMの用量について検討した。調査症例83例(男性58例,女性25例,66.0 ± 15.2歳),DIC離脱率は80.7% で,rTM投与後にDIC離脱できた症例を有効例とした場合,各要因による有効 / 無効に違いはなかった。腎機能別の患者背景では, 年齢(p=0.0164),投与開始量(p=0.0003)に違いがみられたが,累積投与量には差がなかった。重篤な腎機能障害時の初回投与量によるDIC離脱日数にも差がなく,本研究結果から,重篤な腎機能障害を考慮しても投与量による離脱率の違いは認められなかった。今後は副作用モニタリングをすすめながら,重篤な腎機能障害時のloading効果について検討していくことを課題とする。
  • 〜要請理由と要請状況の詳細〜
    小池 朋孝, 新井 正康, 森安 恵実, 服部 潤, 黒岩 政之, 山田 由香里, 稲垣 泰斗, 相馬 一亥
    2014 年 17 巻 3 号 p. 445-452
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    目的:北里大学病院でRapid Response System(RRS)導入後20カ月の経過を分析した。方法:RRS 導入以前より活動していたRespiratory Support Team(RST)の活動を基に,重症患者の診療サポートの要請を受けることが多くなったことからRRSの構築に至った。導入に際しては,RRSの教育期間を十分にとった。RRS要請記録より,要請状況を集計し分析した。結果:2013年3月までに184件の要請があった。要請理由は,SpO2 92% 以下が88件(48%)と最多であった。患者に対して何か心配な時に要請するworried callは37件(20%)であった。呼吸困難は17件(9%),気管挿管・気管切開チューブの問題は14件(8%)であった。RRSの介入後にICUへの緊急入室は13件(7%)あった。考察:当院のRRSは海外の報告に比べ,気道・呼吸に関する要請が多くあった。これはRRSがRSTの活動を礎に導入されたためであると考えられる。要請状況からはRRSは有効に機能していると考えられるが,今後客観的な効果判定を行う必要がある。
  • 松原 康博, 石飛 奈津子, 山森 祐治, 新納 教男, 越崎 雅行, 森 浩一, 石田 亮介
    2014 年 17 巻 3 号 p. 453-460
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    近年の救急外来におけるトリアージの重要性に対する意識の高まりと,平成24年度より院内トリアージ実施料の診療報酬算定が可能になったのを機に,電子カルテシステムに連動した救急外来トリアージツールを作成した。院内トリアージ実施料の算定要件を満たすこと,トリアージの労務量を増加させないことを念頭に,JTASに準拠して,従来紙運用で行ってきたトリアージ基準および手順を整理した。携帯端末に表示される救急外来診療状況一覧のトリアージ編集タグから初期トリアージ画面を開き,入力を開始する。まず重症感の有無,気道,呼吸,循環,意識の異常,次に主訴,血圧,呼吸数,GCS(グラスゴー・コーマ・スケール),体温,既往歴,常用薬,アレルギー,最後に疼痛スコア,出血リスク,高リスク受傷機転,包括的指示についてそれぞれの入力画面より入力する。再トリアージも行え,携帯端末に入力した結果は電子カルテに自動的に反映される。電子カルテの後利用システムによってデータ収集が容易であり,院内トリアージ実施料の算定要件のうち最も手間を要する事後検証が適切に実施できる。
  • 城川 雅光, 笠井 あすか
    2014 年 17 巻 3 号 p. 461-467
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    2004年度から2012年度の小笠原諸島の急患搬送記録を調査し,現状と課題を検討した。搬送例は合計266例であった。搬送患者の特徴は,外傷,脳血管障害,虫垂炎など手術やICU管理を要する症例が多かった。搬送時間は,全島平均で9時間34分と長時間を要する。一方,空港のある硫黄島からの患者搬送は,地理的に遠いにも関わらず,父島と母島の平均搬送時間と比較して45分程度短い。また搬送要請の過程で,結核患者の搬送が問題となっていた。空港建設が進まない現状で搬送時間短縮に有効な手段の一つとして,航続距離,巡航速度,着陸場所の条件を満たすティルトローター機の就航が考えられる。感染症患者搬送については,病原体や利用する航空機を問わず安全性を確保する上で,簡易アイソレーターの搭載が有効であろうと考える。しかし航空機搭載基準を満たしている製品は,国内で取扱い中止となっており,既存の製品で運用試験を行うことが課題である。
症例報告
  • 森本 健幹, 前田 晃祐, 神原 永長, 大里 恭章, 岩井 敦志
    2014 年 17 巻 3 号 p. 468-472
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    高齢者は加齢と共に腎機能低下が起こるため,腎排泄型薬剤の投与に関しては投与量の調節が必要である。また容易に脱水傾向になり急性腎不全に陥りやすい。われわれは,メチルジゴキシン(以下,MDXと略す)を服用していた高齢者が,添付文書上の腎機能に応じた量よりも減量されたアシクロビル(以下,ACVと略す)を服用したにもかかわらず,腎機能障害を来した症例を経験したので報告する。症例は80代男性。近医にて帯状疱疹と診断されACVが開始となった。服用後7日目に意識障害が現れ,8日目に摂食不可となり当院に救急搬送となった。来院時現症および検査所見より薬剤性腎障害が疑われたため,第1病日にACV,MDXが中止となり,輸液にて経過観察となった。第2病日から徐々に意識が改善し,第7病日に軽快退院となった。薬剤ごとに吸収,代謝,排泄の動態が異なるため,それらを踏まえた服薬指導が重要であると考えられた。
  • 五十嵐 一紀, 山口 陽子, 小林 由佳, 黒岩 貴之, 小山 要, 田中 博之
    2014 年 17 巻 3 号 p. 473-477
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    25年前に糖尿病と診断された63歳の女性。呼吸困難が増強し,当院へ搬送された。搬入時,血液濃縮,BUN・creatinine値の上昇,高血糖,尿糖・尿中ケトン体強陽性,anion gap増大を伴う代謝性アシドーシスなどから糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と診断した。同時に腹部CTで膵管拡張を認めた。腫瘍マーカーは高値,腹部MRI・MRCPで膵管途絶・膵体尾部の膵管拡張を,内視鏡超音波検査で腫瘍影を認めたため,膵頭十二指腸切除術を実施した。膵腫瘍の病理所見は浸潤型膵管癌であった。本症例は,約半年間の治療中断および肺炎の併発が誘因となってDKAを発症したと推定された。ただし,インスリン分泌が枯渇していた可能性があり,1型糖尿病の発症を否定できないが,併発していた膵癌が膵β細胞のインスリン分泌能を低下させ,DKAの発症に影響した可能性は低いと考えられた。しかし,本症例のようにDKAをきたした症例には,より積極的に膵癌の検索を行うべきではないかと考える。
  • 藤井 公一, 宮武 諭, 石山 正也, 大木 基通, 冨岡 秀人, 加瀬 建一, 小林 健二
    2014 年 17 巻 3 号 p. 478-480
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    2011年1月から2013年1月の2年間に,肺塞栓症と診断され失神を伴った5例について,その特徴を診療録より後方視的に検討した。平均年齢73.6歳。2例は随伴症状を認めなかった。来院時のvital signsは,収縮期血圧低値1例,頻脈2例,SpO2低値1例であった。D-dimer 値は全例で上昇していた。心電図異常4例,心エコー検査による右心負荷所見は全例で認めた。治療は全例で抗凝固療法が施行され,うち1例に血栓溶解療法が施行された。失神を伴わなかった肺塞栓症患者12例との比較では,平均年齢が高く(p=0.045),右心負荷所見を認める割合が高かった(p=0.049)。心エコー検査とCTを施行するまでの時間は,失神を伴っていた患者で長くなる傾向がみられた。失神を伴う肺塞栓症患者は典型的症状に乏しく,心エコー検査やD-dimer測定は失神患者の原因検索としても有用である。
  • 猪熊 孝実, 長谷 敦子, 泉野 浩生, 山野 修平, 田島 吾郎, 平尾 朋仁, 山下 和範, 山梨 啓友, 齊藤 信夫, 田﨑 修
    2014 年 17 巻 3 号 p. 481-485
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    症例:30代の男性。8月上旬,悪寒戦慄を伴う発熱,全身性皮疹が出現し当院を受診。来院時,意識清明,呼吸数18回/ 分,心拍数73回/ 分,血圧127/71mmHg,腋窩温38.1度。体幹部から手掌,足底に至るまで径10mm以下の紅斑が散在。掻痒感なく,刺し口を認めなかった。来院時血液検査所見ではWBC4,900/μl,CRP1.29mg/dl,血小板11.9万/μl,AST60IU/l,ALT51IU/l。血液培養,尿培養では菌を同定できなかった。39度以上の発熱,皮疹が持続した第4病日にリケッチア感染症を疑い,ミノサイクリンの点滴投与を開始した。翌日より解熱を認め,第9病日に軽快退院となった。約3週間後のペア血清で日本紅斑熱に対する抗体が上昇しており,日本紅斑熱と診断した。結語:高熱と全身性紅斑の原因として日本紅斑熱を念頭におき,診断が確定する前に時期を逸することなく抗菌薬投与を開始することが肝要である。
  • 多田 祐介, 北岡 寛教, 伊藤 真吾, 川井 廉之, 關 匡彦, 則本 和伸, 福島 英賢, 瓜園 泰之, 畑 倫明, 奥地 一夫
    2014 年 17 巻 3 号 p. 486-490
    発行日: 2014/06/30
    公開日: 2015/01/23
    ジャーナル フリー
    症例は50代男性。嘔吐,腹部膨満を主訴に近医に救急搬送された。CT検査にて胃軸捻転による著明な胃拡張像を認めたため,緊急上部消化管内視鏡にて脱気・胃管挿入が行われた。しかしその後も呼吸・循環動態が不安定であったため当センターへ転院搬送となった。当センターで施行した造影CTでは,胃壁の造影不良が認められた。不安定な循環動態の改善には胃の切除が必要と考え,手術室での開腹術を予定していた。しかし,手術待機中に収縮期血圧が50mmHgまで低下し,輸液・昇圧剤に反応が悪く,手術室入室まで数時間を必要としたため,ICUにて緊急開腹手術を行った。40分間で壊死した胃を摘出し,再建は行わずに閉腹した。術後,ICUにて全身状態の改善を図り,翌日にRoux-Y再建術を行った。本症例は比較的まれな胃軸捻転症によるショックであったが,ICUにて緊急開腹術を行い,二期的手術により救命し得た。
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