日本臨床救急医学会雑誌
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17 巻 , 4 号
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原著
  • —バンコマイシン投与量決定プロトコル導入前後の比較—
    大谷 美奈子, 小野 雄一郎, 伊藤 岳, 垣尾 尚美, 兵頭 純子, 松本 敏明, 高岡 諒, 当麻 美樹
    2014 年 17 巻 4 号 p. 497-503
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    目的:バンコマイシン塩酸塩(VCM)の治療効果と副作用発現は血中濃度と相関しており,治療薬物モニタリング(TDM)が重要である。当院でも以前からTDMを実施していたが,抗菌薬適正使用を目的として,薬剤師が積極的に介入する投与プロトコルを作成し,今回その有用性を検討した。方法:プロトコル運用前にVCMを投与された45症例(非介入群)と運用後に投与された43 症例(介入群)の2 群間の比較検討を行った。結果:初回ローディング実施率は介入前後で50.0%から92.7%へと上昇,初回トラフ値が目標内であった割合は非介入群に比べ,介入群で有意に上昇していた。結論:介入群ではより適切なTDMが実施できており,プロトコルは有用であるといえる。適切な抗菌化学療法の実施は,医師のみならず,薬剤師の積極的な介入が必要であり,その結果,良好な臨床成績につながる可能性がある。
  • 高橋 哲也, 武居 哲洋, 伊藤 敏孝, 平野 雅巳, 竹本 正明, 八木 啓一
    2014 年 17 巻 4 号 p. 504-508
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    目的:診断が遅延したWallenberg 症候群の特徴を検討すること。方法:2005年4月1日から7年間に横浜市立みなと赤十字病院へ入院した新規発症脳梗塞1,331例のうち,神経内科医によりWallenberg症候群と診断された症例の特徴を後方視的に検討した。また初診時に正診された群(初回診断群)と後日診断が確定した群(遅延診断群)の比較検討を行った。結果:調査期間内のWallenberg症候群は23例で,神経学的異常所見は失調歩行が47.8%と最多であった。遅延診断群は11例(47.8%)で,初診時診断名と外来転帰は末梢性めまい(帰宅3例/入院5例),片頭痛(帰宅2例/入院1例)であった。初診時に頭部MRIを施行された3例中2例に異常所見を認めなかった。遅延診断群は初回診断群と比較し,発症から来院までの時間が有意に短く(4.1 ± 5.7 vs 17.8 ± 19.5時間,p<0.05),神経学的異常所見数が有意に少なかった(1.2 ± 1.0 vs 2.5 ± 1.5,p<0.05)。結論:発症早期に神経学的異常所見が少なく,MRIでも偽陰性となる場合があることがWallenberg症候群の診断遅延の要因と考えられた。
  • ―CLSIガイドラインに基づいて―
    影山 憲貴, 柴田 泰史, 飯野 幸永, 本間 博
    2014 年 17 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    はじめに:血液ガス分析の検体撹拌はClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)ガイドラインで標準法が提唱されているが徹底されておらず,またわれわれは同一患者検体において撹拌の違いによる総ヘモグロビン(tHb)値の乖離例を経験した。目的:CLSI標準法に基づいた血液ガス検体撹拌時間の妥当性を明らかにする。対象・方法:当院職員(15名)の健常人検体を対象とし,各健常人検体の血漿を用いてtHb値を6.0 g/dlおよび15.0 g/dlに調整したものを使用した。そして,それらをシリンジに採取し,5分・10分・30分間水平放置したサンプルを30秒〜1分の撹拌時間で各系列をn=15としてtHb値を測定した。また,各健常人検体の血漿およびヴィーン®F輸液を用いて,それぞれのtHb値を3.0 g/dlに調整したものを使用した場合についても検証した。結果:tHb値15.0 g/dlでは全系列で測定誤差が± 3 %以内となった。tHb値6.0 g/dlでは全放置時間で撹拌時間40秒以上が測定誤差± 3 %以内となった。tHb値3.0 g/dlではサンプルの放置時間が30分で撹拌時間40秒について検証したが,いずれの場合も測定誤差は± 3 %以内となった。考察:tHb値の低濃度サンプルにおいて全放置時間で撹拌時間40秒以上が許容範囲内となった。さらに,tHb値の超低濃度サンプルにおいては撹拌均一性を得るのが最も困難と思われるものについて撹拌時間40秒が許容範囲内となったことから,40秒間の撹拌で検体の撹拌均一性が得られると考えられた。
  • 伊藤 重彦, 井上 征雄, 木戸川 秀生, 田口 健蔵, 正代 荘一, 板山 隆志, 西中 徳治, 長嶺 貴一
    2014 年 17 巻 4 号 p. 515-521
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    精神科ソフト救急が抱える問題点を明らかにする目的で,福岡県におけるソフト救急患者の搬送時間帯別の受入れ先,来院時の精神症状と転帰,重症度との関連性,搬送・受入れの負担要因と負担改善策について検討した。身体合併症のないソフト救急1,269件において,精神科医療機関の受入れ率は平日時間帯の44.6%に比べ,時間外・休日の32.8%と低値であった。精神科救急情報システムを利用した受入れはわずか4.0%であった。ソフト救急患者の8割以上は外来対応で済む軽症者であった。救急病院の負担要因は,身体合併症のない患者搬送が多いこと,時間外・休日に精神症状に対応してくれる精神科医療機関がないことである。精神科医療機関は身体合併症のないソフト救急患者を積極的に受入れるべきである。精神科救急情報システムはソフト救急に対応していないため,精神科医が時間外に直接外来診療できる新たなシステムが必要である。
調査・報告
  • 久保 佑美子, 岡本 博照, 小泉 健雄, 山口 芳裕, 松田 剛明, 照屋 浩司, 和田 貴子
    2014 年 17 巻 4 号 p. 522-529
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    二次救急医療サービスにおいて,地域特性や地理的要因等が救急搬送患者の入院にどのような影響を与えるかを検討する目的で調査・研究を行った。西多摩医療圏にある二次救急病院(T病院)の平成17年度から7年間分の救急搬送患者資料を収集し,匿名化して用いた。患者の転帰(帰宅か入院)を従属変数とし,多重ロジスティック回帰分析を行った。解析対象者11,400人中,入院の転帰となったのは3,006人(26.4%)で,患者が入院となる有意な要因は65歳以上の高齢者(OR=5.29,p<0.01)の他,搬送救急隊(福生消防署OR=1.13,p=0.02,秋川消防署OR=1.89,p<0.01,奥多摩消防署OR=2.06,p<0.01,都下の消防署OR=1.62,p<0.01,他県の消防署OR=1.97,p<0.01)であった。その理由として,秋川・奥多摩・他県の消防署では管内の医療過疎が,都下では地域の救急医療サービスの一時的停滞が,また全消防署に共通して地形や道路網等の地理的要因が示唆された。また,本結果は急性期医療サービスの病床が高齢者に利用されている現状を示唆した。
  • 後藤 千栄, 小笠原 康雄, 長崎 信浩
    2014 年 17 巻 4 号 p. 530-534
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    近年,集中治療領域においても医療従事者の職種連携とチーム医療による診療の質の向上が重要となっている。従来,広島市立安佐市民病院では1名の薬剤師が他病棟との兼任でICUを担当していたため,ICUにおける病棟滞在時間が短く,必要な時に情報提供ができない状況が続いていた。2012年10月に薬剤師2名へ増員したところ,薬剤師の病棟滞在時間,カンファレンス参加日数,他の医療スタッフから薬剤師への質問が増加した。特に腎機能低下患者への薬物投与設計の相談が大幅に増加したことなどから,循環動態が不安定な患者が多いICUでは薬剤師が積極的に薬物療法に介入する必要があることが示唆された。
  • 市川 宏紀, 山口 均, 野田 孝浩, 田中 敬介
    2014 年 17 巻 4 号 p. 535-542
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    2010年に厚生労働省よりチーム医療の推進について「画像診断等における読影の補助」という旨が通知された。当院では30年以上前より,医師の指示のもと診療放射線技師による1次読影レポート作成を実施している。2012年1月以降,診療放射線技師の救急日勤・夜勤は2名体制(うち1名はCT業務担当者)となり,夜間・休日救急診療のCT検査においても1次読影レポート作成が義務化された。2011年の1名体制時と2012年で救急担当医におけるCT所見の読影不十分に対する件数の比較を行った結果,2012年では緊急に加療が必要となる読影不十分の件数は半分以下になり,レポートを作成することで所見報告が遅れた場合も翌日診療科でレポート参照され,所見が指摘されるメリットがみられた。夜間・休日救急診療における診療放射線技師によるCT読影補助業務は多忙を極める医師の負担軽減の一助となり,医療安全面でも貢献できる可能性が示唆された。
  • 山口 陽子, 佐藤 淳一, 山田 嘉仁, 田中 博之
    2014 年 17 巻 4 号 p. 543-550
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    緒言:2009年4月から当院は二次救急医療機関に指定された。対象・方法:2009年4月以降3年間に当院へ救急車で搬送された8,914例を検討した。結果:年齢は49±23歳(平均±標準偏差),中央値44歳で,男性4,462例,女性4,452例であった。東京消防庁搬送例に比べて,女性が多かった。初診が6,068例(68.1%/8,914例),かかりつけは880例(30.9%/初診以外2,848例)であった。外傷例は20〜30歳台男性と80歳台女性が多く,機転は一般負傷と交通外傷が多く,部位は頭部・顔面と四肢が多かった。疾病群は若年,特に20歳台女性が多かった。診断は急性アルコール中毒,過換気症候群の順に多かった。軽症が約3/4と多かった。来院時心停止は21例で,1例で心拍再開が得られた。考察:当院は昼間人口の多い地区に近く,近隣に多くの救命救急センターが存在する。このような環境の影響を受けた疾患構成は,当院へ若年者・軽症例が多く搬送された理由の1つと考えられる。
  • 長村 敏生, 市川 光太郎
    2014 年 17 巻 4 号 p. 551-557
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    2011年からのインフルエンザ菌b型,肺炎球菌ワクチン公費助成開始を機に,京都第二赤十字病院,北九州市立八幡病院小児科に入院した細菌性髄膜炎34例,インフルエンザ菌または肺炎球菌性髄膜炎および菌血症(小児侵襲性細菌感染症)112例の2007〜2012年の年次推移を調査した。同期間の入院患者は増加傾向にあったが,年間数例みられていた細菌性髄膜炎は2011年に5例とやや減少し,2012年は1例と激減した。なお,両菌が起因菌の73.5%を占めていた。2009年14例,2010年9例認められたインフルエンザ菌性侵襲性感染症は2011,2012年には各1例に減少した。肺炎球菌性侵襲性感染症は2009年(17例)より2011年まで緩やかに減少したが,2012年は激減して1例になった。両市の2011,2012年度の両ワクチンの0歳児接種率は約100%で,両菌性侵襲性感染症の2012年の急激な減少は公費助成の影響と考えられた。
  • 浦田 晋, 六車 崇, 野坂 宜之, 辻 聡
    2014 年 17 巻 4 号 p. 558-565
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    背景および目的:小児傷病者に対する病院前救護の応急処置実施状況の報告は少なく,現状を振り返り,課題を提示する。方法:2011年5月〜2012年12月に成育医療研究センター救急外来で応需した救急車搬送のうち,高エネルギー外傷(19例),頭部外傷(50例),痙攣(236例),アナフィラキシー(37例)で入院となった15歳未満の症例について後方視的検討を行った。結果:頭部外傷の処置施行率は,酸素投与/頸椎/全脊柱固定が38/38/30%と他の傷病に比べ低く,特に0〜4歳で顕著であり,処置指示率も低かった。処置の指示/施行率は外傷重症度と関連なく低い傾向であった。考察:応急処置の指示/施行率が低い要因として,小児ゆえの観察・処置の困難さ,救急隊の処置経験不足,統一した処置基準がない,医師による指示の不十分などが推定される。救急隊の資機材整備の状況把握とともに,救急隊への教育,統一した処置基準の策定,オンラインメディカルコントロールの整備が必要である。
症例報告
  • 澤田 悠輔, 青木 誠, 金子 稔, 村田 将人, 神戸 将彦, 萩原 周一, 中村 卓郎, 大山 良雄, 田村 遵一, 大嶋 清宏
    2014 年 17 巻 4 号 p. 566-570
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    症例1:30代女性。朝から突然の呼吸困難を自覚し当院を受診。歯科治療時に同様の既往があり,家族歴で祖母の窒息死と叔父の全身性浮腫があった。頸部聴診で狭窄音,両足背に浮腫を認め,喉頭内視鏡検査では著明な喉頭浮腫を認めた。遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema; HAE)を疑い,C1インヒビター(C1-INH)製剤を投与したところ喉頭浮腫は改善した。血液検査でC4濃度及びC1-INH活性が低下しており,HAEと診断した。症例2:20代男性。HAE治療のため他院通院中。腹痛と嘔気,嘔吐が出現し当院を受診。HAE急性発作と考えC1-INH製剤の投与で消化器症状は改善した。HAEの疾患認知度はまだ十分とは言えないが,救急領域では気道緊急や急性腹症を引き起こす疾患として重要である。HAE急性発作に対しては迅速な判断と即座にC1-INH製剤を使用できる体制構築が必要である。
  • 三島 健太郎, 関井 肇, 井上 照大, 高橋 恵利香, 水野 慶子, 小松 孝之, 坂本 壮, 高見 浩樹, 野村 智久, 杉田 学
    2014 年 17 巻 4 号 p. 571-574
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は特記すべき既往のない40代の男性。自殺企図からインスリングルリジン合計300単位を皮下注射し,約12時間後に自宅玄関で倒れている患者を妻が発見して当院へ救急搬送された。来院時の意識レベルは200/JCSで血糖値14mg/dlと著明な低血糖を呈しており,ブドウ糖の経静脈的投与により速やかに意識清明となった。適宜血糖値を測定しつつ経静脈的投与または経口摂取によりブドウ糖投与を行った結果,血糖降下作用はインスリン皮下注射から少なくとも33時間遷延し,合計270gのブドウ糖投与を必要とした。自殺企図によるインスリン大量皮下注射の報告の中でも超速効型インスリン単独による症例はまれであり,グルリジンによるものは検索した限り本例が初である。インスリンが大量に皮下注射された場合は血糖降下作用の持続時間を予測しづらい場合が多く,慎重な経過観察が必要である。
事例報告
  • 岸 泰宏
    2014 年 17 巻 4 号 p. 575-578
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    救急医療現場に精神・行動の問題を合併した症例が搬送される機会は多い。身体疾患の治療とともに精神科医が並行して治療していくのが理想だが,現実的には精神科専門医療が利用できない医療施設も多い。このような現実から,救急医療スタッフを対象に,精神科医がいない状況での精神・行動の問題をもつ患者への標準的初期診療のための教育コース(Psychiatric Evaluation in Emergency Care:PEEC)が開発された。PEEC教育コースは,救急医療から精神医療へのつなぎを目的の一つとしている。現在のコンサルテーション・リエゾン精神医学の主要テーマは,身体疾患治療現場における精神・行動の障害のマネジメントと他(多)職種との連携である。コンサルテーション・リエゾン精神科医はPEEC教育コースの展開に積極的に関与し,医療の質の向上ならびに救急スタッフと精神医療スタッフの連携に努めたい。
  • 山田 浩二郎, 福島 憲治, 直江 康孝, 清田 和也, 五明 佐也加, 上笹貫 俊郎
    2014 年 17 巻 4 号 p. 579-584
    発行日: 2014/08/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    2006(平成18)年より,埼玉県は消防局の機動救助隊,県防災航空隊,埼玉DMAT(災害派遣医療チーム)から構成される埼玉県特別機動援助隊を編成し,多数傷病者発生事案を想定した訓練を行っている。当初3枚綴りのトリアージタッグ(以下タッグと略す)の運用は,1枚目を災害現場(救護所からの搬出時),2枚目を搬送担当機関(救急隊),3枚目を収容医療機関が保管する方法としていたが,本方法では災害現場における傷病者情報を本部がタッグを用い収集できなかった。そこで2008(平成20)年より1枚目をトリアージポスト,2枚目を救護所から医療機関へ搬出時に剝がし本部が回収する方法へと変えた。この変更により,本部はトリアージ傷病者数・重症度把握が容易となり,傷病者一覧表のより早期の作成開始が可能となり,タッグ1枚目と2枚目を照会し現場から医療機関へ搬出された傷病者の同定が可能となるなど,災害現場の傷病者情報管理を改善し得ると考える。
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