日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
17 巻, 5 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著
  • —泉州版小児の重症度・緊急度判定基準の検証—
    安達 晋吾, 問田 千晶, 六車 崇, 松岡 哲也
    2014 年 17 巻 5 号 p. 649-655
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    緊急度の高い患者の救命には,病院前救護における迅速かつ適切な処置と搬送施設選定が必要である。しかし,緊急度・重症度の根拠に基づいた搬送基準は存在しない。われわれは,2006年に小児搬送のための重症度・緊急度判定基準を策定した。その有効性を検証する目的で,2007年6月から2011年5月の4年間に救急隊現着時に痙攣が持続していた16歳未満の患者を対象として診療録を後方視的に検討した。68例が搬送され,全例に酸素投与とモニタリングが行われていた。痙攣が頓挫後に搬入された24例では,気管挿管や集中治療管理は不要であった。一方,搬入まで痙攣が持続していた44例では,8例(19%)が気管挿管され,7例(16%)が複数の抗痙攣薬の投与を必要とし,12例(28%)が集中治療管理を要した。救急隊現着時に痙攣が持続している小児を救命救急センターに搬送する基準は緊急度・重症度を識別するために有用である。
  • 中野 諭, 篠原 真史, 六車 崇
    2014 年 17 巻 5 号 p. 656-662
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    はじめに:小児急性脳症において,頭蓋内圧(ICP)/脳灌流圧(CPP)と神経学的転帰の関連は明らかにされていない。目的:小児急性脳症の患者に対し,ICP/CPP値を指標とした脳保護療法を行い,神経学的転帰との関連を調査すること。方法:2007年1月〜2013年8月までの6年8カ月間に,当院ICUに急性脳症の診断で入院し,ICPモニタリングを行った16歳未満の患者32例を対象とし,後方視的に検討した。結果:神経学的転帰不良の症例は,転帰良好の症例に比べ,有意に経過中のICP最大値,ICP 20mmHg以上の時間,ICP 20mmHgを基準としたpressure time index(PTI)の高値を認めた。またCPPに関しては,転帰不良の症例は年齢基準値を基準としたPTIが有意に高値であった。結論:小児急性脳症においてICP値と神経学的転帰に関連性がみられた。またPTIという時間概念を用いた要素を検討することで,CPPに関しても神経学的転帰との関連が示された。ICP/CPP管理により神経学的転帰を改善できるかは,今後症例の集積が必要である。
  • 藤田 基, 古賀 靖卓, 中原 貴志, 戸谷 昌樹, 宮内 崇, 金子 唯, 金田 浩太郎, 河村 宜克, 小田 泰崇, 鶴田 良介
    2014 年 17 巻 5 号 p. 663-669
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当院で初期治療を行った急性一酸化炭素(以下CO)中毒患者69例を24時間以内に行った治療で気管挿管群(9例),酸素マスク群(20例),HBO群(40例)に分け,高気圧酸素(以下HBO)治療が間歇型の発症予防及び間歇型・遷延型の症状改善に有用かを後方視的に検討した。間歇型を気管挿管群1例,酸素マスク群1例,HBO群2例に,遷延型を気管挿管群2例,酸素マスク群1例,HBO群1例に認めたが,どちらも各群間で症例数に有意差は認めなかった。間歇型症例は全例発症後に複数回HBO治療が施行され,酸素マスク群の1例を除く3例で症状は改善した。遷延型症例はHBO群の1例のみ慢性期に繰り返しHBO治療が施行され,症状改善を認めた。当院のプロトコールによるHBO治療では間歇型の発症予防効果は明らかでなかった。発症した間歇型・遷延型の治療としてのHBO治療は有用である可能性が示唆された。
調査・報告
  • 寺西 正充, 森山 史就, 原 直之, 安食 健一, 園山 智宏, 横手 克樹, 平野 榮作, 後藤 澄子, 岩成 治
    2014 年 17 巻 5 号 p. 670-674
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    常用薬の服用に関連する緊急入院症例に対する薬剤管理指導業務の内容を検討し,今後の業務改善に役立てることを目的として,2010年1月から2012年12月までの3年間に入院した患者について発現症状と原因薬剤,薬剤師の介入などを後方視的に調査した。入院症例数は10,152例,常用薬の服用を確認できた症例は4,095例,常用薬による症状・徴候が原因で入院したと思われる症例は142例,薬剤師が積極的に原因究明に介入した症例は31例であった。主な原因の多くは副作用(疑い)で,発現症状は電解質異常,循環器障害,出血徴候などが多かった。その原因薬剤として,血圧降下薬(利尿薬を含む),漢方薬,血液凝固阻止薬,抗血小板薬,糖尿病用薬などがあった。薬剤師が介入して常用薬や服薬状況などの情報を収集・評価して医師へ情報提供することで,より的確な診断と治療を行うために有用であるとともに医師の業務負担の軽減につながると推察された。
  • 金原 佑樹, 山田 秀則, 北川 喜己, 市川 敦子, 長瀬 亜岐, 筧 裕香子
    2014 年 17 巻 5 号 p. 675-679
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    精神科病床のない救命救急センターである当院において,精神科病院から紹介・救急搬送された身体合併症患者の診療改善点を見つける目的で,当院の現状と傾向を調査・検討した。2007年6月1日〜2012年5月31日の5年間における,近隣10施設の精神科病院から救急搬送され入院となった患者全303症例に対して診療録から後ろ向きに観察し,精神科基礎疾患,診断名,疾患分類,転帰,在院日数について調査・検討した。結果,統合失調症患者の身体合併症には肺炎,骨盤・下肢骨折,イレウス,低Na血症の頻度が高い特徴があり,また精神科疾患を基礎に持ち身体疾患を合併した患者の入院加療は,病棟運用に影響を及ぼすことがわかった。身体合併症の重症化を未然に防ぐ取り組みと,精神科病院との連携によるスムーズな診療,精神疾患に対する正しい知識と的確な看護における負担感の把握が,今後の病棟運用改善の重要課題である。
  • 村上 典章, 津田 裕士, 中島 浩司, 橋本 泰広, 西島 雄三, 大石 泰男, 筈井 寛, 秋元 寛
    2014 年 17 巻 5 号 p. 680-686
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    近年,わが国の高齢化は急速に進み,高槻市も同様に超高齢社会を迎えている。それに伴い高齢者の救急需要は増し,ドクターカー(以下,特別救急隊)の出場も増加の一途をたどっている。この現状を踏まえ,高齢者福祉施設で発生した心肺停止(cardiopulmonary arrest,以下CPA)に対する特別救急隊運用の現状と今後の課題を考察した。対象は平成22年からの3年間に高槻市で発生した高齢者福祉施設でのCPA症例147件で,救急活動記録票をもとに検証した。147件に対して特別救急隊が出場した症例は80件であった。また,80件中1カ月生存は2名のみであり,9名が特別救急隊同乗医師により現場死亡確認に至っていた。高齢者福祉施設で発生したCPA症例に対する特別救急隊出場は,傷病者予後に関して意義を認めなかったことから,今後,特別救急隊同乗医師による現場死亡確認も特別救急隊出場の意義の一つになる可能性があると考える。
  • 今西 孝至, 南谷 怜亜, 中野 愼治, 髙山 明
    2014 年 17 巻 5 号 p. 687-692
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    災害時には持病の悪化が考えられる。災害時マニュアルでは災害発生に備えてあらかじめ準備しておく必要があるツールを設定しているが,項目数が多いために全てを準備できないのが現状である。そこで今回,災害時に悪化しやすいと考えられる高血圧,糖尿病,腎疾患,気管支喘息,関節リウマチに注目し,患者・医療従事者に対して一般的ツールおよび疾患別支援ツールの比較検討,さらに医薬品の備蓄の必要性について調査を行った。その結果,一般的ツールでは両群間で必要度に大きな差は見られなかったが,疾患別支援ツールについては一部の項目で患者群よりも医療従事者群で必要度を高く評価しており,有意な差が認められた。また,医薬品の備蓄については両群ともに必要と回答した。このことから,日頃の病態コントロールは医療従事者に依存している傾向が示唆され,災害時に備えて病態をコントロールする意識を患者に持ってもらう必要があると考える。
  • —4年間のアンケート調査—
    福地 貴彦, 川﨑 貞男, 益満 茜, 足川 財啓, 大路 剛, 岩田 健太郎
    2014 年 17 巻 5 号 p. 693-698
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    当院では,救命救急科をローテートする研修医が,軽症から重症までのほぼ全ての患者を指導医とともに初療する体制を採っている。入院が必要と判断された患者の場合,臓器特異的な疾患である場合を除き,初診を担当した研修医が引き続き退院まで担当することを原則にしている。また感染症専門医が救命救急科に常勤し,外来から入院患者のフォローまで研修医とディスカッションを繰り返すことで感染症診療を教育しており,さらに週1回抗菌薬の講義を行うことで基礎的な理論を補っている。この診療教育体制の中で,当院救命救急科で研修を受けた研修医48人にアンケート調査(回収率96%)をしたところ,当院救命救急科での研修は感染症診療に関して満足度の高い内容であった。免疫不全患者,臓器移植患者の診療など一部不足する診療内容は存在するが,感染症専門医が常駐している新型救命救急センターは,感染症診療を修練するのに適した医育機関であると考える。
症例報告
  • 青木 誠, 村田 将人, 金子 稔, 澤田 悠輔, 神戸 将彦, 萩原 周一, 中村 卓郎, 大山 良雄, 田村 遵一, 大嶋 清宏
    2014 年 17 巻 5 号 p. 699-703
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,男性。近医定期受診日に全身状態問題なく,肺炎球菌ワクチンを接種された。同日夜間より39度台の高熱が出現した。2日後には両側性の難聴も併発し,近医を再受診した。白血球数の著増を認め,当院を紹介受診した。ワクチン接種部の蜂窩織炎による敗血症と考え抗菌化学療法を開始した。その後全身状態に改善を認めたが,蜂窩織炎以外に明らかな感染源は不明であった。肺炎球菌ワクチンによる重篤な全身反応,敗血症様反応は本邦でも数例報告されているが,難聴を呈した例の報告はない。今後,肺炎球菌ワクチン接種に関わる医療従事者は接種により重篤な副作用を生じうる可能性を十分に理解する必要がある。
  • 石井 亘, 荒井 裕介, 飯塚 亮二, 榊原 謙, 小田 和正, 檜垣 聡, 北村 誠
    2014 年 17 巻 5 号 p. 704-707
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    墜落外傷により消化管穿孔を伴わない腹腔内遊離ガスをきたした1例を経験したので報告する。症例は30歳代, 男性。木に登って作業中,約9mの高さから墜落。搬入時,GCS E4V5M6であり,Focused assessment with sonography for trauma(迅速超音波検査法,以下FASTと略す)は陰性であった。右胸部痛あり。胸部臥位Xp検査にて右気胸を認めたため胸腔ドレーンを挿入。腹部は平坦・軟であり,筋性防御は認めなかった。軽度の炎症所見の上昇および肝酵素の上昇を認めた。CT検査では,右肺挫傷・縦隔気腫・腹腔内遊離ガスを認めた。以上より,右気胸,右肺挫傷,特発性気腹症として絶飲食のうえ保存治療を行い,経過良好にて退院となった。特発性気腹症の治療は,原因がいずれであっても基本的には保存加療にて軽快することが多く,予後も良好な疾患である。しかし,消化管穿孔と診断され手術治療を選択していることが散見される。本症例では,墜落時の衝撃による胸腔内圧の上昇により,縦隔的経路にてガスが腹腔内に到達したと推測された。
  • 宮本 和幸, 阿部 裕, 飯島 忠, 田中 幸太郎, 三宅 康史, 有賀 徹
    2014 年 17 巻 5 号 p. 708-710
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    腸重積症の90%は小児に発症し,成人での発症は稀である。症例は,30代の女性。2週間前から時に間欠的な腹痛,血便があった。2日前から頻回の水様性下痢・嘔吐・腹痛が出現した。便中ノロウイルス抗原が陽性で感染性腸炎と診断した。しかし,来院後も強い間欠性の腹痛が続いたため腹部CT を施行したところ,上行結腸癌が先進部となり回盲部が脾弯曲部まで重積していた。緊急手術で整復し,回盲部切除を施行した。ノロウイルスは冬季に流行し,成人では重症化することは稀なため,自宅で対症療法となることが多い。成人の腸重積症は典型的な症状を認めないことも多く,初期症状は感染性腸炎と類似する点も多い。しかし,85〜90%は器質的疾患が先進部となり,手術加療を要することが多く,感染性腸炎との鑑別は重要である。ノロウイルス抗原陽性でも,通常とは異なる強い腹痛を訴える症例では詳細な病歴聴取,CTなどの積極的な原因検索が必要と考えた。
  • 北村 淳, 宮部 浩道, 植西 憲達, 加納 秀記, 平川 昭彦, 原 克子, 小宮山 豊, 山中 克郎, 武山 直志
    2014 年 17 巻 5 号 p. 711-715
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    致死量の眠気予防薬を服用した急性カフェイン中毒の2 例を経験した。症例1:20代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計8g)した。入院後,鎮静薬投与下においてもカフェインの作用による興奮が強く,入院2日目まで痙攣を認めた。第20病日に退院となった。症例2:30代の男性。市販の眠気予防薬を大量内服(無水カフェイン計14g)した。入院後ただちに,血液吸着および血液透析を施行した。人工呼吸管理中に興奮や痙攣などを認めず,第11病日に退院となった。両症例のカフェインおよびカフェイン代謝産物の血中濃度を経時的に測定したところ,血液吸着および血液透析後に明らかな減少を認めた。臨床所見も考慮すると,血液浄化法の早期導入がカフェイン中毒に奏功したと考えられた。致死量を内服した急性カフェイン中毒には,血液吸着に血液透析を併用した迅速な血液浄化法も有効な治療手段の一つであると考えられた。
資料
  • 〜「専任から専従へ」その効果と課題〜
    中村 球恵, 佐藤 美佳
    2014 年 17 巻 5 号 p. 716-723
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2015/01/24
    ジャーナル フリー
    はじめに:救命救急センター(emergency center,以下ECと略す)の患者へのソーシャルワーカー(social worker,以下SWと略す)介入件数は年々増加傾向にある。これは病状が重篤であるうえ,その社会的背景も複雑化・多様化しているためと考えられ,円滑な病床回転にはSWの重点的介入が必要である。当院の実践:専従配置は,病院全体のSW増員なくしてその人員確保はできない。当院では2005年よりEC専任配置を開始し,以降5年間SW正職員増員計画に取り組んだが実現できなかった。しかし2010年より大学医学部に寄附講座が開設したため,その枠でSWを増員することができ,専従を開始できた。専従後の変化:SW介入患者数の増加,入院〜SW介入までの日数の短縮化,SW介入患者の平均在院日数の短縮化,を認めた。考察:効果として①病棟との密な連携,②患者家族への早期介入,③長期入院患者の減少に貢献等が挙げられる。結語:SWのEC専従配置は有効である。専従の定着のためには,SW配置基準について診療報酬への位置付け等を求める必要がある。
feedback
Top