日本臨床救急医学会雑誌
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18 巻 , 4 号
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原著
  • 兼古 稔, 梅津 英嗣
    2015 年 18 巻 4 号 p. 563-569
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    僻地においては高次医療機関までの距離が遠く,地元医療機関ではマンパワーや機材を欠くため,カテーテル治療などの高度医療は不可能である。当町ではこれらの問題点のなかで,救命率を向上させるためさまざまな取り組みを行ってきた。今回当町での取り組みに効果があったかどうかを知るため,2005年から2013年までに搬送された院外心肺停止症例を分析した。2005年1月から2013年12月までに当院に搬送された院外心肺停止症例は100例であった。心拍再開例は23例(23.0%),1カ月生存例は10例(10.0%),社会復帰例は7例(7.0%)であった。市民に目撃された心原性心肺停止例は16例で,1カ月生存例は7例(43.8%),社会復帰例は6例(37.5%)と全国平均より有意に高かった(p<0.001)。僻地救急においてもマンパワーの確保,教育,情報伝達の工夫で救命率は向上できると考えた。
  • 山口 陽子, 田中 博之
    2015 年 18 巻 4 号 p. 570-574
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:救急車で搬送される意識消失症例の実態について調査した。方法:対象は当院へ救急車で搬送され,意識消失をきたしたと記載のあった982例とした。結果:982例の年齢は48±23歳(平均±標準偏差),中央値44歳であった。失神は666例(67.8%)で,血管迷走神経性失神を含む反射性失神が386例,体位性低血圧が134例,心原性失神が21例であった。失神と鑑別すべき病態は316例で,このうち,てんかんが179例であった。結論:意識消失・失神をきたした症例には,時に重篤な病態も含まれていた。したがって,病歴や身体的所見から,その中に潜む重篤な病態を疑い,原因究明に努めるべきと考えた。また,意識消失の原因の多くを占める血管迷走神経性失神も適切に診断するためにhead-up tilt testをより積極的に実施すべきであると考えた。
調査・報告
  • 千田 いずみ, 田中 秀治, 高橋 宏幸, 喜熨斗 智也, 白川 透, 島崎 修次
    2015 年 18 巻 4 号 p. 575-584
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    背景:2011年10月に発表された救急蘇生法の指針に,心肺蘇生の学校へのさらなる普及の重要性が示された。目的:小学生の心肺蘇生法に対する理解力および実技能力を検討すること。対象方法:小学6年生96名を対象に心肺蘇生の知識の確認試験および1〜6年生214名を対象に実技試験を行った。結果:心肺蘇生法に関わる知識ではほとんどの問題で80%以上の正答率を得た。実技では高学年でも平均圧迫深さが30mmと十分な圧迫深度に達しなかった。人工呼吸では十分な吹き込みができたのが64%,AED操作は100%正しく操作することができた。考察:心肺蘇生に対する理解力は小学6年生で十分備わっていることが判明した。胸骨圧迫の確実な実施は難しいものの,人工呼吸やAED操作は正しく実施する可能性が見出せた。結論:中学生の体格では胸骨圧迫の実施が可能であると報告されていることから,小学生への心肺蘇生法教育の目的は今後の成長を見越した知識の習得および技術の獲得にあるといえる。
  • 田中 拓, 内藤 純行, 長島 梧郎, 加藤 晶人, 上村 美穂, 藤原 正三, 馬野 由紀, 田北 無門, 平 泰彦
    2015 年 18 巻 4 号 p. 585-590
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    アルコール摂取に伴う意識障害,ならびに迷惑行為は救急医療機関にとって避けられない問題である。今回,2012年1月から2013年9月までの21カ月間に,当院へ救急受診した急性アルコール中毒166例を対象に振り返り,これらについて性別,年齢,エタノール血中濃度,意識レベル,外傷の有無,暴言・暴力の有無について検討した。平均年齢は45.1±19.3歳,男性120人,女性46人であった。エタノール濃度が計測されている症例は129例あり,平均エタノール濃度は207.9±99.6mg/dLであった。約10%の16例で,医療従事者に対する暴言・暴力行為があり,うち4例が警察介入を要した。暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり,平均年齢は36.2±17.4歳と若く,血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり,また,医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり,適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。
症例報告
  • 山代 栄士, 佐藤 史織, 河村 聡志, 内藤 英二, 森 一生
    2015 年 18 巻 4 号 p. 591-594
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    スルピリドおよびオメプラゾール投与中に心室頻拍および心室細動を認めた80代女性の症例を経験した。第1病日昼頃,顔面蒼白,呼吸停止状態で発見された。意識消失を繰り返すため,救急搬送となった。血液検査,心エコー,心臓カテーテル検査を施行したが原因不明であった。心電図分析と持参薬鑑別の結果,スルピリドおよびオメプラゾールによるQT延長症候群が疑われ中止とした。中止後,第2病日にはQTc時間が短縮し,それに伴い心室頻拍がコントロール可能となった。他の要因は認められなかったことも併せ考え,スルピリドまたはオメプラゾール関与の心室頻拍および心室細動であったと考えられた。
  • 五十嵐 昂, 山田 賢治, 守永 広征, 松田 岳人, 玉田 尚, 宮内 洋, 樽井 武彦, 松田 剛明, 山口 芳裕
    2015 年 18 巻 4 号 p. 595-8
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    骨盤骨折を伴わない外傷性腰動脈損傷が原因で出血性ショックとなり,経動脈的塞栓術が奏功した2例を経験した。1例目は80代,女性。乗用車に下肢を踏まれ受傷し,ショック状態で搬送された。左下肢の開放骨折からの出血および腰椎骨折を認め,創外固定の装着後もショックが遷延するため血管造影を行い,右第1,2腰動脈からの出血に対し塞栓術を施行し血圧上昇を得た。2例目も80代,男性。変形性股関節症に病的臼蓋底骨折を合併し他院入院中,肺動脈血栓塞栓症疑いに対しヘパリン化されていた。ベッド柵で左腰部を打撲後,ショック状態となり転院搬送された。CT所見にて左後腹膜血腫内に造影剤の漏出があり,血管造影を行い左腸腰動脈と左第4腰動脈から出血を認め,塞栓術を施行し血圧上昇を得た。ショックを呈する外傷傷病者では,骨盤骨折を認めない場合にも後腹膜血腫の存在に注意し,積極的に経動脈的塞栓術の適応を考慮する必要がある。
  • 佐藤 史織, 山代 栄士, 河村 聡志, 中島 竜太, 稲垣 伸洋, 森 一生
    2015 年 18 巻 4 号 p. 599-604
    発行日: 2015/08/31
    公開日: 2015/08/31
    ジャーナル フリー
    症例は肺炎治療および食道裂孔ヘルニア術後で入院中の80代女性。もともとリバスチグミン経皮吸収型製剤を使用中であった。術後排尿困難に対してジスチグミン臭化物を1回だけ投与した。その1週間後に喀痰増加,気道分泌の漿液化,嚥下困難,徐脈傾向などのコリン作動性クリーゼ様症状を呈した。アトロピン硫酸塩の持続投与および被疑薬の中止により,気道分泌物の減少,脈拍数の回復,呼吸状態の安定を認め,コリン作動性クリーゼを脱したと判断した。本症例はジスチグミン臭化物が慎重投与とされる低体重の高齢者であり,コリンエステラーゼ(ChE)阻害作用を持つリバスチグミンとジスチグミン臭化物を併用していた。加えて,ジスチグミン臭化物投与時の絶食で生体利用率が上昇したこと,下痢による低栄養により体内ChE絶対量が低下していたことなどが複合的に作用し,コリン作動性クリーゼを発症したと考えられた。複合的な要因の関与についての文献的考察を含め,報告する。
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