救急救命士活動の現況を把握し,その問題点を明確にするために救急救命士国家試験受験前の救急隊員300名に対するアンケートを行った。アンケート実施時期は平成11年5月である。救急隊員として救急救命士による特定行為を実際に見学したことがある者は,気道確保48%,電気的除細動31%,前胸部叩打22%,静脈路確保35%であった。所属機関の教育体制については,II課程または標準課程で十分な実技訓練指導がある機関が15%,救急活動基準などのマニュアルが整備されているのが42%,定期的な実技訓練や学習の機会があるのが55%であった。救急活動経験5年ないしは2,000時間以上の救急隊員のうち,現場で特定行為を見学したことがあるものは,特定行為による気道確保でも約半数ときわめて少ないことが判明した。また所属機関の教育体制や実技指導に関しても十分に整備されているとはいえない結果が得られた。現況では救急隊員が資格取得後,直ちに特定行為を問題なく施行することは難しく,実地研修期間を設けるなど各所属本部における教育体制の改善がメディカルコントロール体制を充実させるうえでも重要と考えられた。
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