日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
17 巻 , 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著論文
  • 石川 大太郎, 小谷 容光, 藤井 智幸, 藤井 恵子
    2016 年 17 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/07/16
    ジャーナル フリー
    食の安全安心の観点から,食中毒の原因となる微生物の殺菌は重要である.しかし,過度の殺菌処理が施されると,品質が劣化するためプロセスの最適化が必要である.これまで微生物を標準的な培地で増殖させた後,被験食品に添加することで殺菌条件の検討が行われてきたが,食品中で増殖した微生物の死滅挙動については十分には解明されていない.そこで,本研究では,大豆系食品に対する殺菌プロセスの最適化のため,豆乳中で培養した大腸菌についてその熱死滅挙動の解析を行った.指標微生物として大腸菌(K-12株)を,培養用試料として,LB培地と豆乳(水分:89.6%脂質:2.7%タンパク質:5.0%),豆乳を遠心(70000 rpm,25℃,3時間)により分画して得られた上相(top part),中間相(middle part)と下相(bottom part)にLB培地粉末を溶解させた培地を準備した.各培地に大腸菌を植菌し,37℃,24時間振盪培養した.培養液を0.85%NaCl溶液に懸濁し,60℃で加熱処理を施した.高温条件下の大腸菌の死滅曲線は大豆抽出物添加培地培養(Test sample),LB培地培養(control sample)とも一次反応式で記述され,大腸菌は,大豆抽出添加培地で培養することにより耐熱性が増すことが示された.さらに,中間相の死滅速度は上相と下相より遅いことが確かめられた.中間相はリン脂質が豊富に含まれていることから,大腸菌のリン脂質含量を定量したところ,豆乳中で培養した大腸菌のリン脂質含量は,コントロールに比べ増加していた.リン酸緩衝液中で死滅させた場合においても,中間相の死滅が抑制される結果となった.したがって,大豆抽出物中のリン脂質の効果により,大腸菌の熱の耐性が向上する可能性が示唆された.また細胞膜に作用すると考えられる高圧試験を実施した結果,150および200 MPaの高圧処理においても,中間相の死滅速度は明らかにコントロールより遅くなった.以上の結果から,大腸菌の細胞膜が,大豆抽出物中のリン脂質によって強化される可能性が示唆された.すなわち,大豆系食品では,微生物の熱耐性が向上することを考慮して殺菌プロセスを構築することが重要であると考えられた.
  • 黒岩 崇, 勝又 徹, 助田 義一, 藁科 晶斗, 小林 功, 植村 邦彦, 金澤 昭彦
    2016 年 17 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/07/16
    ジャーナル フリー
    寒天およびその主成分であるアガロースのゲルビーズは,食品機能成分,薬理成分および各種細胞の包括担体として,またクロマトグラフィ用の分離担体として様々な分野で利用されている.内包物質の放出性,内包細胞への栄養や酸素の供給,およびクロマトグラフィにおける分離性能は,ゲルビーズの粒径の影響を受け,とくに微小かつ均一なゲルビーズの作製が望まれる.しかしながら,平均粒径が50μmより小さく,かつ粒径の均一性の高い寒天ゲルビーズの作製は難しく,効率的な生産につながる手法は確立されていない.
    筆者らは,均一性の高い寒天ゲルビーズの作製方法として,マイクロチャネル(MC)乳化法により作製した単分散油中水滴(W/O)エマルションを利用する方法を検討した.すなわち,ゲル化温度以上に保温した寒天水溶液を,乳化剤を含む有機溶媒中にMCを介して圧入することで,液滴径のそろったW/Oエマルションを作製し,これをゲル化温度以下に冷却することで均一径寒天ゲルビーズを作製することを試みた.MC乳化法は,低剪断場で直径数μm~数百μmの単分散液滴を作製でき,乳化プロセスにおける発熱もほとんどないため,酵素をはじめとする生理活性タンパク質や細胞の内包化にも適していると考えられる.
    本研究では,3種類の異なるMC構造を有する平板溝型シリコン製MC基板を使用した.まず,分散相である寒天水溶液への食塩(NaCl)の添加効果について調べた.MC乳化により寒天含有液滴を均一に作製するためには,十分な浸透圧を付与するための分散相へのNaClの添加が必須であった.0.2 MのNaClを含む1 wt%寒天水溶液を分散相,5 wt%のSpan 85(ソルビタントリオレエート)を乳化剤として含むイソオクタン溶液を連続相とした場合に,3種のMC基板を用いて平均液滴径15~34μm,変動係数(CV)10%以下の均一径W/Oエマルションを作製することができた.さらに,得られたエマルションを室温まで冷却することで,均一な粒径をもつ寒天ゲルビーズを作製できることを示した.MCからの液滴形成挙動をハイスピードカメラにより解析した結果,単一のMCから毎秒数個~二十個程度の液滴が形成されていることがわかった.適切な条件下では,MC基板に分散相が付着することなくスムーズに液滴が形成する様子が観察された.
    続いて,乳化挙動に及ぼす寒天濃度および温度の影響を調べた.寒天濃度0.5~2.0 wt%の範囲で,単分散または準単分散な寒天含有液滴を作製することができた.寒天濃度1 wt%の場合,40℃よりも低い乳化温度では均一な液滴の形成が可能であったものの,一部のMCで分散相による閉塞が認められた.このときの寒天水溶液のゲル化温度は約41℃であったことから,安定な乳化を行うためには分散相がゲル化しない温度での操作が望ましいことがわかった.40~50℃の温度帯では変動係数10%未満の均一径液滴を作製することができた.一方,50℃以上では,形成した液滴が直ちに合一することにより大きな液滴となり,液滴径は多分散化することが示された.以上の検討により,寒天濃度0.5~2.0 wt%,温度40~50℃の範囲でMC乳化を行うことで,均一性の高い寒天含有W/Oエマルションを作製できることが明らかとなった.
  • 北川 尚美, 廣森 浩祐, 博吉汗 斯琴髙娃, 関根 敬史, 天野 義一, 高橋 武彦, 木村 俊之, 米本 年邦
    2016 年 17 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/07/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,米ぬか油由来の脱臭留出物を原料とし,イオン交換樹脂を触媒・吸着剤とするビタミンE類回収法と,擬似移動層型クロマトグラフィによる精製法を組み合わせてトコトリエノールの高純度品製造を行った.まず,ビタミンE類の回収では,回収量が樹脂量に比例して増大し,800倍までの装置のスケールアップが樹脂の吸着能の低下なしに実現できた.その際,回収率はトコフェロールで100%,熱安定性が低いトコトリエノールでも73%となった.また,本回収法で得られたビタミンE類濃縮液の組成は,ビタミンE類以外の成分が遊離脂肪酸37 wt%のみであり,不純物の混入が大きく抑制された.次に,クロマトグラフィによる精製では,夾雑成分が遊離脂肪酸のみであるため,分離の1サイクルに必要な溶離液量や所要時間を各々20%以上削減でき,目的成分の回収率も1.2倍となった.これより,これらの手法の組み合わせがトコトリエノール高純度品を効率的に製造できることが示された.
feedback
Top