日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
19 巻 , 2 号
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解説
  • 酒井 昇
    2018 年 19 巻 2 号 p. 57-78
    発行日: 2018/06/15
    公開日: 2018/07/10
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    筆者は,最適な加熱操作の検討を目的として,種々の加熱法を用いた食品の加熱操作について工学的に研究を行ってきた.ここでは以下の4つのテーマに分け,その内容を概説した.(1)熱水分移動と収縮変形:加熱操作で最も基本となる熱移動と水分移動の理論的解析を示した.さらに加熱操作時に問題となる食品の収縮変形とクラック生成の解析法を示した.(2)対流を伴う熱移動:容器内で対流が発生すると熱移動速度は伝導食品に比べてはるかに大きくなり,自然対流の計算が必要になる.非ニュートン流体の液状食品でも見かけ粘度を用いることにより温度変化が予測できることを示した.また,CFDを用いた鍋内対流の解析について概説した.(3)内部発熱を伴う加熱操作:マイクロ波加熱および通電加熱では食品の内部から加熱できるため,従来の加熱法よりも速く加熱できるが,加熱むらも発生する.温度分布を予測するための,電磁界解析と熱伝導解析を連成した解析手法を説明した.(4)加熱に伴う化学反応:加熱に伴い種々の化学反応が起こり,食品の品質に影響を及ぼす.ここでは,魚焼成過程のタンパク質変性と焼き色の呈色を例として,反応の速度論的解析について説明した.

  • 萩原 知明
    2018 年 19 巻 2 号 p. 79-88
    発行日: 2018/06/15
    公開日: 2018/07/10
    ジャーナル フリー

    氷結晶の再結晶化の理解を深め,その予測と制御ならびに高品質な凍結貯蔵技術の実現を目指した筆者らの研究成果を概説した.再結晶化に伴う氷結晶の形状変化は,フラクタル解析を用いることで,定量的に評価できた.種々の凍結糖溶液中の氷結晶の再結晶化進行速度は,NMRから求められる凍結濃縮相の水の拡散係数およびスピン-スピン緩和時間T2,誘電緩和から得られる水の緩和時間とよい相関があり,これらの値を測定することで,再結晶化速度定数の大小関係を推定可能なことが示唆された.凍結スクロース溶液中の氷結晶の再結晶化速度は,ガラス転移温度以下で急激に小さくなった.これらの結果は,凍結濃縮相の水の運動性は氷結晶の再結晶化速度を支配する重要な因子であることを示しているものと考えられた.氷結晶の再結晶化の進行を効果的に遅らせる働きのある不凍タンパク質(AFP)の再結晶化抑制能を定量的に評価し,1型AFPは1μg/mL程度の濃度でスクロース溶液中の再結晶化を有意に抑制した.東北地方の水産物からのAFPの探索を行い,AFPを含む魚種としてマダラおよびマコガレイの2種類を見出すとともに,マダラに関しては,漁獲時期ならびに加熱処理が再結晶化抑制能におよぼす影響についても明らかにした.

原著論文
  • 神津 博幸, 王 政, 王 在天, 中嶋 光敏, Marcos A. NEVES, 植村 邦彦, 佐藤 誠吾, 小林 功, 市川 創作
    2018 年 19 巻 2 号 p. 89-101
    発行日: 2018/06/15
    公開日: 2018/07/10
    [早期公開] 公開日: 2018/05/19
    ジャーナル フリー

    微小油滴を包括させたエマルションハイドロゲルは,その力学特性と組成が容易に調整できることから,モデル食品として使われている.著者らが開発してきたヒト胃消化シミュレーター(Gastric Digestion Simulator; GDS)は,胃のぜん動運動を模擬可能であり,消化中の食品の崩壊過程の再現と観察をすることができる.本研究では,GDSを用い,様々な力学特性を有するエマルションハイドロゲルの胃消化挙動について検討することを目的とした.微小油滴(大豆油)を包括させたエマルションハイドロゲルを,次の4種類のゲル化剤の組合せで調製した:寒天(AG),寒天+ネイティブ型ジェランガム (AG-NGG),脱アシル型ジェランガム(DGG),脱アシル型ジェランガム+ネイティブ型ジェランガム(DGG-NGG).GDSを利用したin vitro消化試験において,DGGとDGG-NGGのエマルションハイドロゲルは,ぜん動運動により発生微小油滴が放出されることなくゲル粒子が収縮した.一方,AGとAG-NGGのエマルションハイドロゲルでは,ゲル粒子が崩壊し,微小油滴が放出された.また,AGと比較してAG-NGGの方が,崩壊率と放出率が共に低くなることがわかり,崩壊率と放出率には線形の相関関係があることが明らかになった.これら2つのエマルションハイドロゲルでは,破断応力と破断歪率がそれぞれ異なっていた.本研究の結果により,ヒトの胃において,脂質の含有量を変えることなく,ゲル粒子からの脂質放出量を制御できる可能性が示唆された.

  • 白 至桓, 鈴木 市郎, 武田 穣, 小泉 淳一
    2018 年 19 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2018/06/15
    公開日: 2018/07/10
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    ゴチュジャン(gochujang)は韓国の代表的な発酵食品である.近年,消費者の嗜好から添加物不使用の製品となり,そのためガス発生による膨れ事故が発生するようになってきている.耐塩性酵母または乳酸菌が膨れ事故の原因とされてきた.本研究では,実際の膨れ事故を生じたゴチュジャンから,各種の微生物学的試験を通して耐塩性,耐酸性でガス発生微生物を単離したが,それらは酵母や乳酸菌ではなかった.単離した微生物の16S rRNA遺伝子DNA配列からの判定ではBacillus amyloliquefaciensおよびB. licheniformisの類縁菌であった.これらで新鮮なゴチュジャンを汚染させたところ,両者からガスの発生が観測され,B. amyloliquefaciens または(and/or)B. licheniformis の類縁菌が,ゴチュジャンの“膨れ”事故の原因微生物と推定できた.

  • 堀江 茜音, 小林 敬, 安達 修二
    2018 年 19 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2018/06/15
    公開日: 2018/07/10
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    イサダ(学名ツノナシオキアミ,別名アミエビ)は,三陸沿岸で早春に漁獲される小型のアミで,資源量は豊富である[2,3].水揚げ直後のイサダは鮮やかな桜色であるが,強い酵素活性により,数時間で黒色し,異臭を生じる[4].地元では,水揚げ後すぐに蒸煮し,乾燥した半乾燥イサダが食用として販売されているが,大半は養殖魚の餌やつり餌(撒き餌)としての利用に留まっている.しかし,イサダはドコサヘキサエン酸(DHA),エイコサペンタエン酸(EPA),アスタキサンチンなどの機能性脂質を含有する[5].さらに,EPAの8位が水酸化された8-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(8-HEPE)という強力な抗肥満成分を含有することが見出された[7].イサダからこれらの脂質を取り出し,機能性食品素材として利用する試みが行われている.その工程では,廃棄物として水溶性残渣が生成する.

    常圧では水は100℃で沸騰し気体(水蒸気)になるが,高山ではそれより低い温度で気化する.一方,圧力鍋の中や深海の底では,沸点は100℃より高くなる.すなわち,沸点は圧力に依存し,圧力が高いと水は374℃(臨界温度)まで液体状態を保つ.このように,常圧での沸点である100℃から臨界温度の範囲で,加圧することにより液体状態を保った水を亜臨界水または加圧熱水という.常温常圧の水に比べて,比誘電率が低く,イオン積が大きいという2つの特徴がある[8,9].前者の特徴から,亜臨界水は常温の水には溶け難いものを溶解することができる.また,後者の特徴から,亜臨界水は水素イオンと水酸化物イオンの濃度が高く,種々の反応を促進する.このような性質を利用し,未利用資源や廃棄物から有用なものをつくろうとする研究が活発に行われている[10‒12].筆者らは水が亜臨界状態となる条件でイサダを処理すると,生臭さが消え,エビ風味が増強されることを見出した[13‒15].

    本論文では,イサダから機能性脂質を取り出したあとの水溶性残渣を廃棄することなく,120~200℃の範囲で,水が亜臨界状態を保つ条件下で水溶性残渣を処理し,エビ風味を呈する調味液に効率的に変換する生産する条件について検討した.

    水溶性残渣は黄色を呈している.120℃での処理では色調は変化しなかったが,処理温度が高くなると処理液は褐色になり,高温ほど色調が強くなった(Fig. 1).亜臨界条件下での処理により(Fig. 2),固形物濃度がわずかに低下し,揮発性物質の生成を示唆した.また,処理温度が高いほど処理液のpHが高くなり,塩基性物質の生成を示唆した.さらに,処理温度の上昇に伴い処理液が示す抗酸化活性が上昇した.これはMaillard反応やカラメル化に起因すると思われる.水溶性残渣を処理する温度が処理液の臭気特性(エビ臭,香ばしさ,生臭さ,腐敗臭および焦げ臭)に及ぼす影響を20名のボランティアにより官能評価した(Fig. 3).140~180℃で処理すると,生臭さ,腐敗臭,焦げ臭という不快な特性が低下し,逆に好ましいエビ風味や香ばしさが強くなった.しかし,さらに高温の200℃では不快臭が強くなった.これらのことより,160~180℃での処理がもっとも好ましことが示された.

    エビ風味を呈する成分を特定するため香気成分のヘッドスペースGC-MS分析を行った(Fig. 4).未処理の水溶性残渣を含め,すべての液のヘッドスペースはトリメチルアミンを含んでいた.しかし,亜臨界条件下で処理した液では,それ以外にははっきりとした不快な成分のピークは認められなかった.140~200℃で処理した液からはピラジンやピリジン類が認められた(Table 1).とくに,エビ風味に関連する2-メチルピラジン,2,5-ジメチルピラジン,2,6-ジメチルピラジン,2,3,5-トリメチルピラジンといったピラジン類の強いピークが認められた.

技術論文
  • 川島 時英, 白井 隆明, 松田 寛子, 大迫 一史, 岡﨑 惠美子
    2018 年 19 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 2018/06/15
    公開日: 2018/07/10
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    板のりの商品価値は,一般に,色・つや・形・香りが良いものとされ,味や栄養成分は商品価値の指標とはなっていない.しかし,近年は,タンパク質含量の高い板のりが美味しい海苔として商品化されている.板のりの呈味成分は遊離アミノ酸などが調べられているが,板のりの呈味を構成している成分の同定や役割は調べられていない.そこで,官能評価により板のりの呈味有効成分とその役割を明らかにした.

    官能評価は,選定テストにより選ばれた20代から50代の男性3名,女性4名の合計7名で実施した.官能評価の方法は,始めに各成分の板のりの味への寄与について確認するために,各合成エキスの味の識別テストを,3点識別試験法を用い,有意差の有無を判定した.次に,選び出した試料が他の2つの試料に比べて,甘味,酸味,塩味,苦味,うま味の5種の基本味に濃厚感を加えた6項目についてどのように感じたかを評点法により評価した.

    板のりの呈味有効成分は遊離アミノ酸のAla,Glu,Asp,ほかにTau,ATP関連物質のIMPの5成分を同定した.また,板のりの呈味はうま味が主体で,うま味の強さは分析結果や官能評価とも一致した.板のりのもつうま味は主として,GluとIMPの相乗効果によると考えられるが,Alaもうま味の相乗効果に寄与していることが示唆された.各成分の呈味上の役割は,Alaは甘味,塩味,うま味,濃厚感,Gluは塩味,うま味,濃厚感,Aspは塩味,うま味,濃厚感,Tauは酸味,IMPはうま味,濃厚感に寄与していることが明らかとなった.

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