日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
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23 巻, 1 号
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解説
  • 吉本 則子
    2022 年 23 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    タンパク質のPEG化は安定性を向上することが知られているが,反応制御は難しく,複数の修飾異性体が生成する.これらの修飾体の分離には,イオン交換クロマトグラフィー(IEC)が用いられる.タンパク質に対して構築されたIECの分離機構モデルをPEG化タンパク質に適用することができれば,分離条件を合理的に決定可能となる.このためmono-PEG修飾体としてPEG化BSAを,random-PEG修飾体としてPEG化lysozymeを用い,それらの溶出時の塩濃度勾配と溶出塩濃度を,機構モデルを用いて解析した.いずれのPEG修飾体においてもモデルの適用が可能であり,担体上の結合部位の数は未修飾のものとほぼ同じ値をとることがわかった.また,機構モデルから算出される分配係数に基づき,移動相塩濃度を設定すると,PEG化と同時にカラムから反応生成物を脱離させることや,リサイクル型の連続反応分離操作も可能であった.

原著論文
  • 附野 翔平, 坂元 仁, 朝田 良子, 井上 周子, 平田 利雄, 狩山 昌弘, 土戸 哲明
    2022 年 23 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/05
    [早期公開] 公開日: 2022/03/05
    ジャーナル フリー

    粉粒体食品の殺菌のために近年開発された湿熱超高温極短時間殺菌装置の殺菌性能について検討した.この殺菌装置では,粉体を高速流の飽和蒸気によって超高温で極短時間加熱処理後,この殺菌機が装備する特殊ノズル通過時に急速減圧して急冷する.粉末食品として細菌汚染が顕著な乾燥魚粉(炒り子)を選び,その粉末から3種の胞子形成細菌を分離した.これらの菌は,中温性のBacillus subtilisおよびBacillus amyloliquefaciens,好熱性のGeobacillus stearothermophilusと同定されたが,製品が常温流通されること,中温性ながら高い耐熱性をもつこと,汚染数が特に多いことから,B. amyloliquefaciens胞子を制御対象危害菌に設定した.ラボ試験によって本菌胞子の測定可能な低温加熱温度域で熱死滅特性値であるD値とz値を求め,その結果をもとにより高温での処理後の生残数を予測した.一方,この装置を用い,上記魚粉食品を140,150,160℃の各温度で0.16秒間処理して生残数を調べた結果,いずれの温度でも中温性細菌胞子数は予測値をかなり下回り,その有効性が示唆された.また,より高温の216.2℃で0.2秒間処理後でも魚粉の外観にほとんど変化はなく,色変化もL*a*b*評価によりΔE値は2以下と軽微であったことから,品質劣化が少ない点でも優れていることが示された.

  • 山谷 健太, 伊藤 克洋, 竹井 亮, 髙橋 肇, 勝野 那嘉子, 西津 貴久
    2022 年 23 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    米菓は昨今,臨床医療分野において,咀嚼能力テストなどにも用いられており,米菓を喫食した際の人の咀嚼動態に着目した研究が報告されている.本研究では,米菓側の挙動に着目し,咀嚼段階ごとの食塊の内部構造を可視化することで,飲み込みやすい米菓食塊の特徴について考察した.まず,ビーズ式破砕機を用いて,飲み込みやすさの異なる米菓10種の人工食塊を調製した.人工咀嚼時間ごとの食塊の構造変化をX線CTスキャナにより可視化し,物性はテクスチャーアナライザーにより測定した.凍結乾燥により,咀嚼の各段階で酵素反応と唾液吸水を停止させた,人工食塊の内部構造の可視化が可能となった.人工食塊の構造特徴は3種あり,飲み込みやすさと凝集性の間には正の相関があった.飲み込みやすい米菓とは,唾液浸透が速く,咀嚼後期では溶けて流動性があるもの,あるいは咀嚼後期まで残留した米菓片を溶解した澱粉が覆い,まとまった食塊となるものであった.

技術論文
  • 小林 敬, Ratchanon CHANTANUSON, 奥山 奈名実, 西堀 功規, 赤木 美佳, 廣塚 元彦, 長嶺 信輔, 高村 仁知 ...
    2022 年 23 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/04/05
    ジャーナル フリー

    人口増加への対策として,植物ベースの新たなタンパク源の確保が課題となっている.本研究では,大豆を利用した代替肉の作製を実施した.大豆粉をベースとしてアルギン酸,繊維,油脂などを原料とし,凍結後にカルシウムによる架橋処理を施しゲルを作製した.このゲルに再度凍結・解凍,タンパク質溶液の浸潤・ゲル化を施すことで,層状の肉様組織化構造物を作製した.そして,冷凍による組織状構造の形成挙動や,繊維の有無が構造物の物性に及ぼす影響を明らかにした.また,官能評価から,食感は木綿豆腐よりも有意に好まれ,より畜肉に近かった.これらの結果から,提案した新規構造物作製法は,より畜肉に近い食感を有する大豆ベースの代替肉の製造手段として有望であることが示唆された.

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