日本食品工学会誌
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7 巻, 3 号
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  • 古田 武
    2006 年 7 巻 3 号 p. 153-161
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    液状フレーバーの粉末化技術は, 安定化と操作性の向上を促す必須技術である.シクロデキストリン (CD) は環状マルトオリゴ糖であり, 分子空洞に疎水性物質を包接し, 安定化させる機能を有している.包接には水の存在が必須であり, CDに特有な最低水分量が存在することが明らかになった.CDに包接された疎水性フレーバーの徐放特性は, CDやフレーバーの種類, 徐放温度と関係湿度によって著しく変化した.中でも関係湿度の影響は顕著であり, 包接されたフレーバーの放出にも水の存在が深く関わっていることが明らかになった.疎水性フレーバーのO/Wエマルションを噴霧乾燥する時, 原液中のエマルションサイズが噴霧乾燥前後のフレーバー保持率に顕著な影響を与えた.噴霧乾燥フレーバーの徐放特性や酸化速度は, 保存温度や湿度に著しく影響され, 保存中の賦形剤構造の変化, 賦形剤のガラス転移温度が密接に関連していることが明らかになった.噴霧乾燥粒子のmorphologyやフレーバーの徐放挙動を共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM) で定量化する手法を提案した.
  • 八幡 淑子, 福岡 美香, 崎山 高明, 渡辺 尚彦
    2006 年 7 巻 3 号 p. 163-173
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    米粒や麺線のようなデンプン食品を短時間ボイルすると食品の表面部分と中心部分は糊化の進行が異なるため水分保持能力が異なる状態となる.ここで加熱を中止し乾燥を防ぎながら室温で長時間放置すると, 中心部は低含水率, 周辺部は高含水率のまま平衡になり, 均一な含水率分布は得られない.これは当初均相系 (均一系) だった食品物体が平衡含水率の異なる各相からなる多相系に変化したと考えることができる.このように調理過程で多相系に転じるような食品中ではFickの拡散法則はそのままでは適用できない.このような系に適用できる拡散モデルとして著者らは相対含水率モデル (Relative Water Content model) を提案している.相対含水率モデルでは食品の吸水能力の指標となる標準含水率を適宜定義して用いる.実用的な標準含水率 (standard water content) として, 食品を純水に浸漬させたときに得られる平衡含水率を食品の吸水容量 (WHC=Water Holding Capacity) と名付けて採用することができる.
    本研究では小麦粉ドウのWHCの測定を試みた.小麦粉ドウは加熱処理時の温度や含水率によってWHCが変化すると考えられるので, 加熱処理条件の異なるドウを調整した後, 円筒状のガラス枠に詰め水 (25℃) に浸漬してドウ円筒中心部の含水率の時間変化を重量法で測定した.同時にドウの円筒軸方向の含水率分布を磁気共鳴画像法でモニタした.ドウ円筒中心部の含水率は, 一部で平衡に近づくものもあったが, 予想に反して平衡値に達することなく, 浸漬した7日間にわたって上昇を続けるものが多かった.
    一般に小麦粉ドウはグルテンの作る網目の中にデンプン顆粒が埋め込まれた構造をしており, 糊化したデンプン顆粒が吸水して膨張しようとする力と, 伸びたグルテンの網目によって発生する抵抗力とがバランスして平衡が保たれると考えられる.ところが本研究で用いた小麦粉はうどんの製造に使われる中力粉であってタンパク含量が少ないためグルテンの網目が吸水したデンプンの膨張力によって少しつつ破壊されて平衡値が変化した可能性がある.
    一方, 磁気共鳴画像法によりモニタした含水率分布は浸漬後, 2日ないし3日たつとフラットな含水率分布を示した.この含水率分布がフラットになるのと同じ時期にドウ中心部の含水率上昇の速さが変化することがわかった.そこでこの時期の含水率上昇を2本の直線で近似し, 直線が交差する点での含水率をfirst stage water-holding capacityと名付け, 実用的な標準含水率の候補とした.種々の加熱処理条件により作成した小麦粉ドウ試料を水へ浸漬させた実験によりfirst stage water-holding capacityを測定し, first stage water-holding capacityに対する加熱処理時の含水率, 加熱温度の影響をグラフにまとめた.さらにその値を用いて, 温度勾配熱処理を施した小麦粉ドウ中の水分移動のシミュレーションを, 多相多層モデルを用いて行なった.
  • 新井 千加子, 國方 敏夫, 中村 次郎, 政木 直也, 岩城 完三, 福田 恵温
    2006 年 7 巻 3 号 p. 175-179
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    黒酢には脂質代謝改善作用があるといわれている.そこで, 我々は超音波照射と黒酢投与を併用し, ラットでの血清脂質パラメータへの影響を調べた.一般的に超音波照射には脂肪分解作用があるといわれている.ラットに黒酢4mg/kgまたは400mg/kgを1日1回, 週5回ゾンデで1ヶ月間投与した.その間, 週2回715kHzの超音波を30分間照射した.黒酢投与14回 (超音波6回) , 24回後 (超音波10回) に尾静脈から採血し, TGおよびFFAを測定した.その結果, 黒酢投与のみではTGおよびFFAに変化は認められなかったが, 黒酢と超音波の併用では投与18日後に黒酢4mg/kg群で, 投与32日後に黒酢400mg/kg群で有意なFFA値の低下が認められた.さらに1ヶ月目に超音波照射の前後で比較すると, 併用群ではTGおよびFFAの上昇率が黒酢の濃度依存的に高い現象がみられた.以上の結果から, 超音波照射が黒酢による脂肪分解効果をさらに高めていると考えられる.
  • 古川 俊夫, 渡部 寛之, 榎坂 淳
    2006 年 7 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究は加工食品の品質評価において重要な役割を担っている色調の調整を左右する調味液の代表格である本醸造醤油の色番調整に関し, 加熱および非加熱濃色醤油の製法および品質差異について評価した.本醸造醤油のロット差に左右されない色素の濃縮法として, NF膜による膜濃縮法に着目した.このとき, NF膜による連続濃縮時の色素測定が課題であったが, Brix濃度の連続モニタリングが新規分析法として利用できることを見出した.NF膜エレメントの選定として色素の阻止率と濃縮時の醤油の粘度上昇を考慮して2種類のエレメントを用いる2段膜濃縮法を採用した.各種本醸造醤油の色番調整用に2種類の濃色醤油を添加し, 5種類のこいくち醤油の味と香りについて熟練パネルが評価した.NF膜法の超濃色醤油は, 加熱濃色醤油よりも試作した色番1のこいくち醤油で, 香りの嗜好性が有意に評価された.この理由は, NF膜によりこいくち醤油の特徴香であるHEMFなどの高沸点成分が濃縮強化されていることが考えられた.
  • ラフマン アイラ, 伊東 章, 城斗 志夫, 片岡 龍磨, 大西 正人, 渡辺 敦夫
    2006 年 7 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    前報で包装餅工場から排出される洗米等排水から溶質等成分を膜技術により分離することで排水を浄化・再生し, 透過液を洗米等用水としてリサイクルすることを目的に, 膜の選定に関する研究を行った.そして, 分画分子量15万Daのポリエーテルスルフォン系の中空糸限外濾過 (UF) 膜モジュールを用いることが適当であることを報告した.
    本研究では上記のUF膜モジュールを使用し, 洗米等次数別排水をUF処理し, それぞれの排水の80%を透過液として回収する際の操作条件について検討した.操作圧力および膜面線速を変化させ, 各操作条件における透過流束, 透過流束維持率, 水洗浄回復率および洗浄回復率への影響について検討し, 洗米等排水のUF処理に適した操作条件を決定した.
    3~5次洗米排水および浸漬排水に比較して, 1次および2次洗米排水の透過流束は著しく低く, 膜の洗浄回復性も低いことがわかった.そこで, 1次, 2次洗米排水は本研究ではリサイクルの対象から外すことにした.
    線速0.9m・s-1において, 3~5次洗米排水を洗浄次数別にUF処理する場合は圧力0.02MPa, 浸漬排水の場合は圧力0.1MPaで限界透過流束に達し, それ以上圧力をかけても透過流束が増加しなかった.濾過圧力を増加させると, 透過流束維持率, 水洗浄回復率および洗剤洗浄回復率が低くなった.
    透過流束は線速に依存し, 線速の増加につれて増加したが, 洗米排水 (圧力0.02MPaにおいて) および浸漬排水 (圧力0.1MPaにおいて) ともに, 線速0.9m・s-1においてほぼ定常値に達し, これ以上の線速では増加の割合はごく僅かであった.
    透過流束と洗浄回復性に対しては, 濾過圧力が大きく影響するのに比べて, 膜面線速の影響は小さかった.以上の結果から3~5次洗米排水の再生・リサイクルに適した操作条件は圧力0.02MPa, 線速0.9m・s-1で, 浸漬排水の場合は圧力0.1MPa, 線速0.9m・s-1であることが明らかになった.
  • 向井 勇
    2006 年 7 巻 3 号 p. 197-205
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    個装容器詰め食品のレトルト殺菌においては, 食品中心部温度の予測は工業的に価値の高い課題である.従来この課題は伝熱方程式の数値解法などにより解かれてきたが, これらは食品製造業や機械・設備製造業のいずれの現場においても使いこなすには難しすぎるという現実があり, より簡便な手法が求められていた.本論文で提案する「雰囲気温度スライド法 (ATS法) 」は, 食品の中心部温度履歴を実測したデータから伝熱を支配する2つのパラメータを推定し, 次いで, このパラメータを用いて様々な雰囲気温度の下で対象食品物体の中心部温度がどのように変化するかをシミュレーションしようとするものである.本法は食品物体を格子点に分割することなく, 食品の中心部温度を雰囲気温度から直接求める点に特色があり, 表計算ソフトを用いて簡単に計算することが可能で, しかも計算量が大幅に削減される.本論文では, スプレー式レトルト殺菌機を用いた実験により雰囲気温度スライド法の検証を行なった.食品としては固体食品から液体まで物性の大きく異なる5種類の個装容器詰め食品を用い, いずれも良好な結果を得た.
  • 岩田 均
    2006 年 7 巻 3 号 p. 211-213
    発行日: 2006/09/15
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
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