日本食品微生物学会雑誌
Online ISSN : 1882-5982
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35 巻, 2 号
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特別講演
総説
原著
  • 稲崎 倫子, 板持 雅恵, 名古屋 真弓, 佐賀 由美子, 稲畑 良, 滝澤 剛則, 小渕 正次
    2018 年 35 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    2013年4月に富山県内で発生し,行政検査において原因未特定であった食中毒疑い事例の有症者検体について,次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析により病原体遺伝子の検索を試みた.その結果,すべての検体からSaV GV.2のリードが検出された.当衛生研究所で実施しているリアルタイムRT-PCR法に用いるプライマーおよびプローブの塩基配列を参照株(NGY-1株)と比較したところ,その結合部位にミスマッチがみられた.そこで,NGY-1株に特異的なプライマーを作製してnested RT-PCR法により再検索したところ,すべての検体からSaV GV.2の遺伝子が検出された.PCR増幅産物の塩基配列は検体間で100%一致し,NGY-1株と99.8%相同であった.したがって,本事例はSaV GV.2が原因であったと断定された.さらに,2010~2014年のウイルス不検出の胃腸炎症例検体についてSaV GV.2の検索を行ったが,ウイルスは検出されなかった.しかしながら,2010~2014年に県内で採取した下水流入水からSaV GV.2の検出を試みたところ,本事例の発生と同時期にNGY-1様株が検出されたことから,不顕性感染等による本ウイルスの浸淫が事例発生につながった可能性が示唆された.以上から,原因不明の集団胃腸炎事例の病原体検索にNGSによるメタゲノム解析が有用であることが示された.

  • 高橋 迪子, 山口 奈月, 安田 祐加, 高橋 肇, 久田 孝, 木村 凡
    2018 年 35 巻 2 号 p. 88-95
    発行日: 2018/06/30
    公開日: 2018/09/20
    ジャーナル フリー

    本研究では製パン現場を想定したノロウイルスの挙動を詳細に解析することを目的とした.代替ウイルスであるMurine norovirus strain 1(MNV-1)を用いて,製パン現場におけるMNV-1の移行性や焼成中のパン生地におけるMNV-1の生残性を調査した.はじめに,製パン現場で起こり得るラテックスグローブやスライサー等の表面からパン生地や焼成後のパンへのMNV-1の各種移行性を調査した.その結果,MNV-1はスライサーやラテックスグローブ表面から食パンへ複数回連続して移行した.さらに,生地に含まれる砂糖や乳脂肪分含量がMNV-1の加熱耐性に与える影響を検証した.異なる濃度のスクロースあるいは乳脂肪を含むパンケーキ生地にMNV-1を接種し,60℃で5分間加熱した.生地に著量の砂糖や乳脂肪分が含まれることで,生地中におけるMNV-1の生残率が高まった.本研究で得られたデータは,細菌性食中毒のリスクとして認識されてこなかったパン類がノロウイルス食中毒のリスクになりうることを認識するための有用な情報になると考えられる.

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