1. 1983年6月下旬,瀬戸内海沿岸の種苗生産場で発生したブリ稚魚腹水症と,それから分離されYAVと名付けられた病原性ウイルスに実験的に感染させたブリ稚魚の病理組織学的観察を行なった。2. 自然発生病魚とYAV実験感染魚に共通する病変は膵臓と肝臓の壊死であり,また多くの病魚で肝出血がみられた。3. 主として実験感染魚の経時的観察からYAVに最も侵され易い器官は膵臓と判断されたが,死期に近いと考えられた魚では膵臓の重度の病変に加えて必ず肝臓にも重度の病変が起こっていたこと,膵臓壊死域の再生が起こっている個体では肝臓に病変がないか,あっても軽微であったことから,疾病の転機は肝臓病変の軽重に左右されると考えられた。4. 腎尿細管上皮細胞の壊死,胃粘膜下織の水腫,幽門垂・腸の粘膜の剥離性カタルが自然発生病魚,実験感染魚ともにみられたが,これらは副変化と考えられた。
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