家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
11 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集:見逃してはいけない家族性腫瘍
  • 鈴木 眞一, 青木 大輔
    2011 年 11 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
  • 市川 喜仁
    2011 年 11 巻 1 号 p. 2-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    現在判明している家族性子宮体癌は,ほとんどがリンチ症候群に属する.本稿では「見逃してはいけない家族性腫瘍」という観点から家族性子宮体癌を紹介する.リンチ症候群では子宮体癌患者を発端に見つかる家系も多く,近年「センチネル癌」としての子宮体癌が注目されている.この点から,リンチ症候群の発見に果たす婦人科医の役割は重要であるが,婦人科医における同症候群の認知度は必ずしも高くない.現在,関係する学会において,新アムステルダム診断基準の周知等が図られている.リンチ症候群では大腸癌と子宮体癌を重複発生する患者が多く,異時性重複では両癌の初発頻度はほぼ同等である.第2 癌診断までに,婦人科と消化器科の間で患者情報を共有することが重要だが,現状では有効な連携システムが機能しているとは言えない.子宮峡部から発生する癌とリンチ症候群の関連や,リンチ症候群の子宮体癌ではhMSH6 の関与が大きい点などが最近報告されている.これらの研究が進むことで,リンチ症候群における発癌メカニズムの更なる解明が期待される.
  • 大竹 伸明, 中田 誠司, 鈴木 和浩, 山中 英壽, 鈴木 慶二, 深堀 能立
    2011 年 11 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    われわれは1994 年より,一家系に複数の前立腺癌患者のいる,家族性前立腺癌について検討を行っている.われわれの提唱した定義により,遺伝性前立腺癌42 家系139 人(一家系に3 人以上の前立腺癌患者,H 群),家族性かつ非遺伝性前立腺癌219 家系438 人(一家系に2 人の前立腺癌患者,F 群),散発群11,664 人(S 群)の3群で比較検討したところ,診断時年齢でH 群,F 群ともS 群より有意に若く,H 群はF 群よりさらに若かった.また前立腺癌特異生存率でH 群,F 群がS 群に比べて予後が悪かった.1997 年にわれわれは一家系に2 人(親子または兄弟)の前立腺癌患者のいる家系の正常男性家族20 人に対してPSA によるスクリーニングを施行したところ,20 人中5 人が基準値4 ng/ml を上回っており,3 年の経過で5 人全員から前立腺癌が発見された.最終的な癌発見率は25%(5/20)となり,家族性前立腺癌家系のPSA スクリーニングの重要性が示された.われわれは家族性前立腺癌家系を確定するのに,必ず病理組織学的診断を一人の病理医が行っている.患者から得られた情報が病理学的にどのくらい確定できたか調査したところ,259 件中195 件(75.3%)に過ぎなかった.病歴聴取のみでなく,病理学的所見の確認が重要であると考えられた.
  • 窪田 正幸
    2011 年 11 巻 1 号 p. 11-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    神経芽腫(NB)は小児固形悪性腫瘍の約10%を占め,交感神経節または副腎から発生する.ほとんどの症例は散発性で,家族発症は1%程度である.一方,腎芽腫(WT)は,全体の5%程度で腎を発生母地とし,家族発症は1〜3%と神経芽腫よりは発生頻度が高い.限られた家族発症例の検討からは,遺伝形式は優性遺伝形式であるが,その発現にはかなり症例差が認められている.NB 家族発症の責任遺伝子として,16p12–13 が最初に報告されたが全ての家系にあてはまらず,4p16 や4p12 が提唱され,さらに2p と12p の異常が協同的に作用する説もある.一方,WT ではWT1(11p13)が癌抑制遺伝子として注目されているものの,やはり全ての家系で異常があるわけではなく,WT1 遺伝子異常に見られる無虹彩や泌尿器異常などの異常は家族例では認められない.近年,FWT1(17q12–21)やFWT2(19q13)があらたに提唱されているが,FWT1 は癌抑制遺伝子ではないとされている.NB やWTの家族発症には多くの遺伝子異常が関与し,腫瘍の多様性が家族発症の研究からも認識される結果となっている.
  • 宮下 俊之, 桐生 麻衣子, 齋藤 加代子, 杉田 克生, 遠藤 真美子, 藤井 克則
    2011 年 11 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    母斑基底細胞癌症候群(NBCCS,Gorlin 症候群)は骨格を中心とする小奇形と高発癌を特徴とする常染色体性優性遺伝疾患である.今回行った全国調査で311 例のNBCCS 患者が報告された.欧米の報告と比べて基底細胞癌の発症率が低く(38%),発症年齢も高い(37.5 歳)点が注目された.また,現在までに行った35 家系における責任遺伝子PTCH1 の解析の結果,32 家系(91%)で遺伝子欠失(5 家系)を含む何らかの遺伝子異常が検出された.
  • 下平 秀樹, 西條 憲, 添田 大司, 小峰 啓吾, 高橋 雅信, 石岡 千加史
    2011 年 11 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    内科医の日常診療において家族性腫瘍に出会う頻度は多いとはいえないが,家族性腫瘍の知識をもって診療に当たることは家族性腫瘍を見逃さず,適切なフォローアップやスクリーニング検査を推奨する上で非常に重要といえる.そのためには,まず家族歴をできるだけ詳細に聴取することや典型的な身体所見に注意することにより家族性腫瘍を見落とさないことが必要である.また,家族性腫瘍に関する知識を発端者および家族に提供し適切なカウンセリングを行うことは,発端者の診療だけでなく保因者の発症を早期に発見するために必要である.本稿では家族性腫瘍に注意しながら内科診療を行うことの重要性について実例を挙げながら概説する.
症例報告
  • 田中屋 宏爾, 藤原 裕子, 森廣 俊昭, 竹原 清人, 荒田 尚, 清田 正之, 中川 仁志, 青木 秀樹, 竹内 仁司, 山崎 理恵
    2011 年 11 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2018/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】Lynch 症候群はミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞変異を原因とし,大腸癌,子宮体癌,胃癌などを好発する.【症例】62 歳,男.【家族歴】母: 78 歳で胆管癌,弟A : 34 歳で直腸癌,58 歳で胃癌,結腸癌.弟B : 38 歳で胃癌.【既往歴】54 歳:胃癌にて噴門側胃切除(tub2,pT2N0M0).【現病歴】胃癌の手術後8 年目に行った上部消化管内視鏡のサーベイランスにて,残胃に胃癌を指摘された.【経過】残胃全摘術を施行した.切除した残胃には,術前指摘された20mm 大の0-Ⅰ病変以外に,肉眼的に指摘困難な平坦型癌病変が2 か所,病理検査により確認された.術後経過良好にて退院となった.【考察】Lynch 症候群においては,同時性・異時性多発胃癌のリスクが比較的高いことから,多発胃癌を考慮したサーベイランス,十分な術前の評価が必要と考えられた.また,同時性・異時性多発胃癌への対策として胃全摘術も術式の選択肢になると考えられた.
解説
関連集会報告
feedback
Top