神経芽腫(NB)は小児固形悪性腫瘍の約10%を占め,交感神経節または副腎から発生する.ほとんどの症例は散発性で,家族発症は1%程度である.一方,腎芽腫(WT)は,全体の5%程度で腎を発生母地とし,家族発症は1〜3%と神経芽腫よりは発生頻度が高い.限られた家族発症例の検討からは,遺伝形式は優性遺伝形式であるが,その発現にはかなり症例差が認められている.NB 家族発症の責任遺伝子として,16p12–13 が最初に報告されたが全ての家系にあてはまらず,4p16 や4p12 が提唱され,さらに2p と12p の異常が協同的に作用する説もある.一方,WT では
WT1(11p13)が癌抑制遺伝子として注目されているものの,やはり全ての家系で異常があるわけではなく,
WT1 遺伝子異常に見られる無虹彩や泌尿器異常などの異常は家族例では認められない.近年,
FWT1(17q12–21)や
FWT2(19q13)があらたに提唱されているが,
FWT1 は癌抑制遺伝子ではないとされている.NB やWTの家族発症には多くの遺伝子異常が関与し,腫瘍の多様性が家族発症の研究からも認識される結果となっている.
抄録全体を表示