家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
Print ISSN : 1346-1052
15 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
臨床経験
  • 松澤 岳晃, 近 範泰, 田島 雄介, 鈴木 興秀, 石畝 亨, 傍島 潤, 隈元 謙介, 福地 稔, 熊谷 洋一, 石橋 敬一郎, 持木 ...
    2015 年 15 巻 2 号 p. 27-30
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】遠隔転移を伴う大腸癌を合併した家族性大腸腺腫症の治療成績を検討する.【対象】2000 年9 月から2014 年3 月までに当科で初回外科治療を行った6 例.【方法】臨床病理学的事項と治療方法・結果に関する事項を診療録から抽出し,後方視的に検討した.【結果】男性2 例,女性4 例.年齢35(32〜65)歳.進行大腸癌の局在は,横行結腸3 例,下行結腸1 例,直腸S 状部 1 例,上部直腸1 例で,遠隔転移巣は,肝転移4 例,肝転移および遠隔リンパ節転移2 例であった.原発巣に対し大腸全摘・回腸嚢肛門管吻合術1 例,結腸全摘術4 例およびハルトマン手術1 例を行い,二期的治療(術前化学療法含め)により4 例で転移巣の治癒切除が可能であった.全例オキサリプラチンベースの化学療法を行い,累積3 年全生存率は66.7%であった.【まとめ】遠隔転移を伴う大腸癌を合併した家族性大腸腺腫症であっても,新規抗癌剤投与と遠隔転移巣切除を伴う結腸(ないし大腸)全摘術を行うことにより,良好な予後が期待できる可能性がある.
特集:遺伝性乳がん・卵巣がん
  • 野水 整, 中村 清吾
    2015 年 15 巻 2 号 p. 31-
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
  • 赤間 孝典, 野水 整
    2015 年 15 巻 2 号 p. 32-38
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    星総合病院は日本で古くから家族性乳がん患者の診療を行ってきた施設である.当院のBRCA 遺伝子検査は昨年1 年半の期間では9 例だが,ここ数年の検査数は年間0 例〜10 例以下である.海外に比べBRCA 遺伝子検査数は東北地方では非常に少ない印象がある.今回,家族性乳がんリスクのある患者の遺伝カウンセリング記録からBRCA 遺伝子検査に関わる会話を抽出し患者の反応として分析した.その結果,経済因子に分類される会話が69%の者から抽出され,その中の78%の者は経済的理由から遺伝子検査を受けられていない東北地方の現状が示唆された.逆に,高額な治療費を強いられながらも患者家族の努力や臨床研究者の努力があることで遺伝子検査の経済因子をクリアしようとしている現状も認められた.BRCA 遺伝子検査の適切な在り方の検討を含め医療関係者・研究者・行政・当事者が協同し遺伝カウンセリング体制を構築していく必要があると考えられた.
  • 櫻井 晃洋
    2015 年 15 巻 2 号 p. 39-41
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer : HBOC)は患者数も多く,適切な診療のためには乳腺外科,婦人科,遺伝医療部門が有機的に連携することが不可欠である.そのひとつの方法として,地域における情報共有や情報収集,情報発信を行うネットワークの構築が考えられる.北海道ではこうした目的で「北海道HBOC ネットワーク」という私的な団体を結成して活動を開始した.現在では日本医学会の主導のもとに,全国レベルでのHBOC 総合診療体制の整備が進められている.
  • 杉本 健樹, 小河 真帆, 沖 豊和, 田代 真理, 花崎 和弘, 執印 太郎
    2015 年 15 巻 2 号 p. 42-46
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    米国ではBRCA1/2 の同定から20 年を経て,遺伝性乳がん卵巣がん(以下,HBOC)が一般診療の中に深く浸透している.一方,日本ではカウンセリング・遺伝子検査に保険適応がなくリスク低減手術はごく一部の施設でしか行われていない.HBOC 診療の普及を妨げているのは,乳癌診療に携わる医療者の知識不足から来る無関心が主因であると考えている.当院がある高知県は人口約73 万6 千人で急激に過疎が進み,人的資源の制限が大きい.その中で,既存の研究会・NPO 法人など乳癌診療に携わる医療者のネットワークを最大限に利用して啓発活動を繰り返し,県内の医療者の中でHBOC 診療普及への機運を高めると同時に,当院の乳腺外来を軸に乳癌診療部門が既存の遺伝診療部門と連係することで比較的円滑にHBOC 診療が導入することができた.当院でのHBOC 診療開始までの過程と県内の乳癌診療に関わる医療者に深く浸透した現状を紹介し,今後の課題について考察する.
  • 安藝 史典, 伊藤 末喜, 杉本 健樹, 平野 浩紀
    2015 年 15 巻 2 号 p. 47-52
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    【はじめに】乳癌の5〜10%が遺伝性で,BRCA1/2 遺伝子変異が知られている.年間3,500〜7,000 人に遺伝カウンセリングと遺伝子検査がおこなわれる可能性があり,乳腺専門クリニックでも対応することが望まれている.遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC)乳癌では,温存乳房再発,対側乳癌の発症リスクが高いことが知られている.【対象・方法】平成22 年1 月〜平成26 年1 月の乳癌303 例について,NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology; Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breastand Ovarian にそってHBOC を拾い出しカウンセリングおこなった.昭和63 年4 月〜平成26 年4 月に温存乳房内再発した40 例,両側乳癌同時性17 例異時性39 例,平成22 年1 月〜26 年4 月の乳癌330 例のintrinsic subtype と手術術式について検討した.【結果】HBOC の可能性がある患者を114 例拾い出し,遺伝カウンセリングおこなった.局所再発はER 陰性が33.3%(p=0.0201866)と有意に多かった.異時性乳癌の第2 癌の23.1%が第1 癌より進行していた.triple negative,HER2 陽性で有意に乳房切除が多かった(p=0.0212811).【まとめ】乳癌患者だけでなく,検診受診者についてもHBOC を拾い出し,カウンセリングをおこなう必要がある.BRCA1/2 遺伝子検査は,保険診療としてみとめられていないが,乳癌手術術式決定に有用であり考慮していく必要がある.
  • 谷口 智子, 新井 正美, 喜多 瑞穂, 野村 秀高, 的田 眞紀, 岡本 三四郎, 近藤 英司, 尾松 公平, 加藤 一喜, 竹島 信宏
    2015 年 15 巻 2 号 p. 53-57
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/12/19
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝子検査にてBRCA 遺伝子変異陽性と診断された卵巣・卵管がん10 症例の臨床的特徴を後方視的に検討した.診断時年齢の中央値は52 歳.卵巣がん発症前に遺伝子診断を行った症例は2 例で,サーベイランス中に発症した卵巣がんIIIc 期の1 例を含む.卵巣がん発症後に遺伝子診断を行った症例は8 症例で,卵巣がん発症を契機として遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を疑い診断に至った症例を4 例認めた.腫瘍の組織型は漿液性腺癌が6 症例と最も多く,報告の少ない粘液性境界悪性腫瘍を2 例に認め,この2 例はいずれもBRCA2 遺伝子変異陽性であった.初回治療は10 例中9 例で腫瘍減量手術が行われ,7 例で完全切除となった.また5 例に再発を認めたが,再発腫瘍摘出および化学療法にて全例が生存(18〜164 カ月)しており,過去の報告のとおりBRCA 遺伝子変異陽性者の卵巣・卵管がんの短期予後は比較的良好と考えられるものの長期予後に関しては検討が必要である.
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