家族性腫瘍
Online ISSN : 2189-6674
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5 巻, 2 号
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巻頭言
特集 : 家族性腫瘍患者の長期管理
  • 渡邉 聡明, 武田 祐子
    2005 年 5 巻 2 号 p. 67-
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 小山 基, 森田 隆幸, 村田 暁彦, 木村 憲央, 諸橋 一, 佐々木 睦男
    2005 年 5 巻 2 号 p. 68-72
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:家族性大腸腺腫症(FAP)に対する結腸全摘回腸直腸吻合術(IRA)の長期的な術後成績から,本術式の長期管理と問題点ついて検討を加えた. 対象: 1970 年から1990 年までのFAP 初回手術例は42 例であった.このうち直腸病変が非密生型であること,下部直腸に癌の合併がないこと,術後定期的追跡調査ができることを前提にIRA を29 例に施行した. 結果: IRA 初回手術29 例の性別は男性16 例,女性13 例で,平均年齢は28.9 歳.平均19.7 年の術後観察期間において,残存直腸からの発癌が8 例(27.6 %)で認められた.その内訳は,男性3 例,女性5 例であり,初回手術時の平均年齢は30.3 歳であった.初回手術から残存直腸発癌までの平均期間は15.0 年(1.3 〜30 年)であり,1 年に1 〜2 回の定期的検査を継続していたが,5 例がmp 以深の進行癌であり,2 例は残存直腸の発癌のため死の転帰をとった. 結語: IRA 術後の一生涯にわたる残存直腸の長期管理の維持・継続は難しく,早期の段階での発見も困難である.FAP に対する予防的手術の術式としては,原則としてIAA もしくはIACA を選択すべきことが確認できた.
  • 上 奈津子, 渡邉 聡明, 畑 啓介, 名川 弘一
    2005 年 5 巻 2 号 p. 73-76
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    結腸全摘回腸直腸吻合術(IRA)後の家族性大腸腺腫症(FAP)症例は,残存直腸癌発生のリスクがある.IRA術後症例の長期成績を検討し,サーベイランスにおける問題点について検討した.経過観察可能であったIRA 後FAP の11 家系16 症例を対象とし,臨床病理学的因子及び長期成績を検討した.男性9 例,女性7 例,密生型1例,非密生型15 例で,初回治療時平均36.2 歳だった.経過観察期間の中央値13 年8 カ月で,4 例に残存直腸切除・直腸粘膜抜去・回腸嚢肛門吻合術が施行された.4 例の平均年齢は59.8 歳,経過観察期間の中央値は16 年9 カ月だった.残存直腸に進行癌を認めた1 例は過去4 年間内視鏡的サーベイランスを施行していなかった.他の3例は,内視鏡的サーベイランスにて残存直腸病変に対して内視鏡的切除術を繰り返し施行し,最終的に,内視鏡的切除不能な早期癌の疑いで手術が施行された.IRA 術後は,定期的な内視鏡的サーベイランスが必要と考えられた.
  • 冨田 尚裕, 岡村 修, 中田 健, 大里 浩樹, 田村 茂行, 杉本 圭司, 相原 智彦, 三木 宏文, 橘高 信義, 金 致完, 瀧内 ...
    2005 年 5 巻 2 号 p. 77-81
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は頻度的にも高く,多重癌や若年者癌発生などの点からも,患者および家系全体を対象とした長期的なマネージメントが重要であるが,実地臨床上では多くの問題点が存在する.1,適切なサーベイランスに組み入れるための最初の診断に関して,一般病院におけるHNPCC の診断率は極めて低い.2,診断基準に関して,本邦の臨床診断基準は基準自体が緩すぎHNPCC の拾い上げの点からは効率が悪く,またアムステルダム基準もHNPCC 関連癌のスペクトラムやde novo 発端者の見逃しの可能性などの問題点を有している.3,診断の一助としてのMicrosatellite instability(MSI)解析や確定診断・保因者診断としての遺伝子診断(Genetictesting)があるがいずれも保険適応がなく,また臨床研究としてサポートする公的予算も極めて少ない.4,サーベイランスのプロトコール自体未だ確立しておらず,サーベイランスの検査自体も保険適応がない.5,遺伝性疾患として必要となる遺伝診療や遺伝カウンセリングを提供できる医療施設や専門医療者が極めて少ない.以上,HNPCC患者のマネージメントにおける問題点を我々の多施設共同研究や全国登録の結果などから考察する.
  • 鈴木 眞一, 鈴木 興太, 河原 正典, 旭 修司, 中野 恵一, 福島 俊彦, 関川 浩司, 竹之下 誠一
    2005 年 5 巻 2 号 p. 82-88
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    MEN1 型,2 型はいずれも病変の一つに副甲状腺病変を伴う.以前より我々はMEN における副甲状腺機能亢進症とさらに家族性孤立性副甲状腺機能亢進症(familiar isolated hyperparathyroidism ; FIHPT)をふくめた家族性副甲状腺機能亢進症(familial hyperparathyroidism ; FHPT)例につき報告してきたが,今回は術後の長期経過観察の結果について報告する. 対象は当科でFHPT として手術を施行し,1 年以上経過した19 例(12 家系)である.その内訳はMEN1 型が13 例(8 家系),MEN2 型 2 例(2 家系),FIHPT 4 例(2 家系)である.平均観察期間は59 カ月(12 〜51カ月)である.過形成は11 例(うち1 例は過剰腺部が再発癌化している),腺腫8 例である.遺伝子検査施行例は16 例である.全例現在まで当科外来でフォローアップされている. 結果;術後2 例が死亡(1 例はガストリノーマ,1 例は事故死)し,他の17 例は生存中である.副甲状腺病変の再発を認めたものは過剰腺症例の1 例である.また,腺腫例では1 例も再発を認めていない.経過中にMEN の他臓器病変の発症を認めたものは1 例で,プロラクチノーマと副腎病変(AIMAH)を発症し薬物療法と外科手術で軽快している.5 腺以上の過剰腺症例は3 例あり,うち2 例は4 腺切除のまま90 カ月以上を経てもCa,PTH ともに正常である.未婚者5 例中,手術後の結婚例は未だないものの,既婚者では術後に第2 子を出産した例が1 例ある.遺伝子検査拒否の3 例での遺伝子検査施行の希望はいまのところない.術直後の家系調査以外ではその後家系内での発症は認めていない. 以上,当科におけるFHPT 例の術後長期経過観察につき検討したが,他の内分泌臓器への発病も極めて少なく,また新たな家系内発症もなく,本疾患の経過は比較的緩やかであることがうかがえた.今後はさらに長い視点でのフォローを行わなければならないと考えている.
  • Kazuo Tamura
    2005 年 5 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    It is thought that malignant tumors occur through interactions of multiple environmental factors and personal genetic factors. A normal somatic cell having an intrinsic function is able to acquire the characteristics of a malignant cell under the influence of many factors. A small percentage of all tumors have obvious familial aggregation. These entities are called familial cancer. The familial cancer syndrome is well defined for colorectal cancer, breast cancer, endocrine neoplasia, and so on. Traits of familial tumors sequentially inherit to offspring through gametes in a Mendelian fashion, most commonly in an autosomal-dominant manner. Carcinogenesis requires multiple genetic events. A patient with a familial tumor is ahead of an individual without any germline mutation in the carcinogenesis process. In such a situation, patients frequently suffer from multiple malignant tumors at a young age. On the other hand, we recognize that 10% – 30% of malignant diseases are polygenic or multifactorial disorders. Candidate genes involved in these entities have characteristics of low-penetrance and high frequency in the population. Therefore, findings and information with regard to low-penetrance genes may provide great benefit to cancer prevention, adding the stratification by a lot of environmental factors. We should recognize the importance of low-penetrance genes, and should synthetically investigate environmental and genetic factors. (The contents of this article were presented in the third international symposium of Institute for Advanced Medical Sciences, Hyogo College of Medicine. Also, the details regarding the concept of familial cancer were already published in the official journals of the Japan Society of Clinical Oncology; Int. J. Clin. Oncol. 9: 232–245, 2004. Because the importance of familial cancer study has been recognized from the past and is unchangeable in future, I think that it is necessary for the implications to be made known to many members of The Japanese Society for Familial Tumors. Therefore, I describe the same purport repeatedly. In addition single gene disorders, I now advocate the necessity of studying low-penetrance genes, which are involved in cancer-induction and/or cancer-promotion)
  • 櫻井 晃洋, 内野 眞也
    2005 年 5 巻 2 号 p. 95-97
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    家族性腫瘍ではいくつかの疾患で患者会組織が作られ,お互いの交流や情報交換を行っている.MEN ではこうした患者同士が交流する窓口や機会がなかったため,われわれは医師,患者を交えた数人でMEN 患者・家族向けのニューズレターを作成することを企画し,一昨年から主にインターネットを通じて配信する方法で情報発信を開始した.内容としては,医療サイドからは疾患に関する質問への回答や学会報告,最新の医療に関する情報などを提供している.発刊後1 年以上を経過し,これまでの活動が患者・家族のニーズにどの程度応えていたか,また今後どのような形で活動することが患者・家族にとって有益となるかについて検討する時期になっている.
原著
  • 鄭 迎芳, 齋藤 民, 高橋 都, 矼 暎雄, 甲斐 一郎
    2005 年 5 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:大腸癌の家族歴(第1 度近親者と限定した)保有者と非保有者との比較を通じ,家族歴保有者の大腸癌に罹患するリスクの認識(以下,リスクの認識)を把握し,家族歴の有無とリスクの認識との関連を明らかにすることを目的とした. 方法: 2003 年10 月長野県S 市において大腸癌検診を受けた426 名の受診者を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した(分析対象387 名).分析項目は,「リスクの認識」,「大腸癌家族歴」,「健康状態」,「健康への関心度」,「大腸癌検診歴」,「日常健康行動」,「大腸癌のリスク因子に関する知識」,「特性不安」および基本的属性を用いた. 結果:家族歴保有者は56 人(14.5 %)であった.「リスクの認識」の得点は,家族歴保有者(8.2 ± 2.6)が非家族歴保有者(6.3 ± 2.7)より有意に高かった(p < 0.001).家族歴保有者で「リスクの認識」を構成した3 項目すべてに「そう思わない」あるいは「あまりそう思わない」と回答したのは18.5 %であった.重回帰分析の結果,リスクの認識と家族歴との双方に10 %未満の水準で有意に関連する変数の影響を調整してもなお,家族歴はリスクの認識に有意に関連していた(β= 0.222, p < 0.001). 結論:本研究の結果から,リスクの認識と大腸癌の家族歴の間に有意な関連が認められた.今後,大腸癌の罹患における家族歴などのリスク要因に関する正しい認識を普及させることにより,家族歴保有者における大腸癌検診受診率の向上が期待できる可能性が示された.
解説
  • 那須 淳一郎, 平家 勇司, 谷水 正人
    2005 年 5 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    遺伝相談のカルテに記載された家族歴や遺伝子診断の結果は,患者のみでなくその血縁者にも関わる重要な診療情報である.遺伝相談のカルテは一般診療のカルテとは独立した別カルテが望ましい.遺伝相談のカルテには,カウンセリング日時と同席者,クライアントの連絡先,背景,カウンセリング内容などを記載する.遺伝子診断に関する書類もあわせて管理する.カウンセリング終了後には,サマリーを記載し,カウンセリングによってクライアントのQOL が向上したかなどを検証している.
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