本研究では水田裏作に栽培した数種のイネ科カバークロップの飼料栄養価について検討し,水田を有効活用したわが国独自のCrop-Livestock system構築の基礎資料を得ようとした.得られた結果の概要は,以下のとおりである.
1)カバークロップの風乾物中の栄養成分は,カバークロップ種および刈取時期により有意な差異が認められ,これらの交互効果も認められた.一方,土壌窒素レベルによる差異は微小に留まった.
2)刈取り時期について,4種のカバークロップの平均値をみると粗脂肪含有率は,3月で2.56%に対し,4月では1.67%と減少し,粗蛋白質含有率も同様に3月では19.7%に対し4月では12.1%と減少した.これに対し,粗繊維含有率は3月で14.8%に対し4月では19.3%と増加し,可溶性無窒素物でも3月で45.9%に対し4月で48.7%と増加した.
3)カバークロップ種別の飼料栄養価を比較すると,粗脂肪,粗蛋白質および粗繊維においては,ライムギ>エンバク=ライコムギ>コムギとなったが,粗灰分では,ライコムギ≧コムギ≧エンバク>ライムギであった.
4)カバークロップの乾物収量は土壌窒素レベル別に影響を受け,高レベル>低レベルとなった.また,カバークロップ種別では,乾物収量,粗蛋白質収量およびエネルギー収量には年次間差が認められ,2001年ではライムギ>ライコムギ=エンバク=コムギとなったが,2002年ではコムギ>ライムギ=ライコムギ=エンバクとなった.
5) 4月に刈取った作物中のNO
3-Nの含量(DM換算)は,75.6~282ppmであり,硝酸塩中毒防止のための対策は必要でないと認められた.
6) 4月に刈取を行ったライムギでは,粗蛋白質含有量が7%前後でありかつ粗繊維含有率も23~26%を示し,市販のチモシー乾草と比較してもほぼ同等の品質を示している.ライムギは,乾物収量およびエネルギー収量とも他のカバークロップより高いことから,飼料用の水田裏作カバークロップとして期待できるものと考える.
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