農作業研究
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42 巻, 2 号
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原著論文
  • 佐藤 達雄, 松浦 京子, 成松 次郎, 米山 裕
    2007 年 42 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    キュウリ半促成栽培の適量施肥方法を確立するために,施肥窒素の総量を一定にした3種の施肥方法を設定し,それらのキュウリ生育・収量・土壌中硝酸体窒素・窒素吸収量を調査して2週間毎の窒素吸収量を推定するパラメータを検討した.施肥総量を同量とするが,2週間ごとの窒素施肥量を増減させた3区を設けてキュウリを栽培した.その結果,収量や生育には大きな差が見られず,窒素施肥量の一時的な変動に対して土壌は緩衝的に働いた.作物体窒素吸収量と増加葉数には高い正の相関が認められ,窒素吸収量(g/m2/14日)=葉の増加数(/m2/日)×0.0441+2.189(R=0.666,1%水準で有意)の単回帰式が得られた.以上のことから,14日に一度,増加葉数を調べて前記式から吸収された窒素量を推定し,次の14日間の施肥量に反映することにより,施肥効率上昇による窒素施肥量の削減が実現できる可能性が示唆された.
  • 小松崎 将一, 甲斐 良輝, 中村 豊
    2007 年 42 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究では水田裏作に栽培した数種のイネ科カバークロップの飼料栄養価について検討し,水田を有効活用したわが国独自のCrop-Livestock system構築の基礎資料を得ようとした.得られた結果の概要は,以下のとおりである.
    1)カバークロップの風乾物中の栄養成分は,カバークロップ種および刈取時期により有意な差異が認められ,これらの交互効果も認められた.一方,土壌窒素レベルによる差異は微小に留まった.
    2)刈取り時期について,4種のカバークロップの平均値をみると粗脂肪含有率は,3月で2.56%に対し,4月では1.67%と減少し,粗蛋白質含有率も同様に3月では19.7%に対し4月では12.1%と減少した.これに対し,粗繊維含有率は3月で14.8%に対し4月では19.3%と増加し,可溶性無窒素物でも3月で45.9%に対し4月で48.7%と増加した.
    3)カバークロップ種別の飼料栄養価を比較すると,粗脂肪,粗蛋白質および粗繊維においては,ライムギ>エンバク=ライコムギ>コムギとなったが,粗灰分では,ライコムギ≧コムギ≧エンバク>ライムギであった.
    4)カバークロップの乾物収量は土壌窒素レベル別に影響を受け,高レベル>低レベルとなった.また,カバークロップ種別では,乾物収量,粗蛋白質収量およびエネルギー収量には年次間差が認められ,2001年ではライムギ>ライコムギ=エンバク=コムギとなったが,2002年ではコムギ>ライムギ=ライコムギ=エンバクとなった.
    5) 4月に刈取った作物中のNO3-Nの含量(DM換算)は,75.6~282ppmであり,硝酸塩中毒防止のための対策は必要でないと認められた.
    6) 4月に刈取を行ったライムギでは,粗蛋白質含有量が7%前後でありかつ粗繊維含有率も23~26%を示し,市販のチモシー乾草と比較してもほぼ同等の品質を示している.ライムギは,乾物収量およびエネルギー収量とも他のカバークロップより高いことから,飼料用の水田裏作カバークロップとして期待できるものと考える.
  • 住田 憲俊, 澤村 篤, 糸川 信弘
    2007 年 42 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ハーフサイズ角形ベール二段積み機構とラップサイロ用ハンドリング機構を用いて,牧草の調製作業能率の向上を図ることである.
    1)ハーフサイズ角形ベール二段積み機構は,プッシュアーム,プレート,回転支点,ローラ付き固定支点から構成され,ロールベーラ用リフトアーム式ベールラッパのリフトアームに取り付けることで機能を発揮する.その効果は,従来作業に比較した作業能率の向上やラップフイルムの安定した巻き付けによりサイレージ発酵品質の低下を防止できると考えられた.
    2)ラップサイロ用ハンドリング機構は,マスト,上部押えアーム,下部押えアーム,アームストッパ,ローラ,油圧シリンダにより構成されており,トラクタに装着したフロントローダあるいはフォークリフトに取り付けることができる。ストレッチフイルムで密封被覆した角形ラップサイロのフイルム破損を発生させず,荷降ろし等の取り扱い操作ができる.
  • M. ファイズ シュアイブ, 森泉 昭治, 清水 浩
    2007 年 42 巻 2 号 p. 91-103
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    本研究は初心者と熟練者のトラクタ操作技能に関する基礎的データを求め,初心者教育や作業安全に役立てる目的で始めたものである.本論文では,乗用型トラクタによるプラウ耕うん作業における運転者の生理的負担,作業精度および動作時間の測定データを用いて,トラクタ操作の習熟過程を人間工学的視点で考察した.なお,本報では被験者を熟練者,普通自動車免許所有の初心者(免許所有初心者),普通自動車免許無しの初心者(無免許初心者)に3区分し比較・検討した.
    プラウ耕うんのトラクタ操作において,生理的負担(心拍数増加率,RMR)は初心者と熟練者間で総体的な差異が認められなかった.ただし,無免許初心者の場合,実験回数3回まで心拍数増加率が他の被験者に比べ明らかに高い値を示した.
    作業誤差(直進性偏差,耕うん開始・終了位置誤差)は,無免許初心者が最も大きく次いで免許所有初心者,熟練者の順であり,これらの三者間に大きな差異が認められた.初心者の場合,普通自動車の運転経験が耕うん作業のトラクタ操作に役立っていることが検証された.また,前記の3種類の作業誤差値と作業回数の関係より,プラウ耕うん作業においてトラクタの直進性を向上させることが初心者にとって最も困難であることが分かった.初心者が直進性偏差で熟練者レベルに達するには65~68時間を要すると推察される.また,プラウ耕うん作業の生理的負担と作業誤差の諸測定結果より,初心者の習熟過程は2段階に分けうると判断された.そして場合によっては,第2段階(免許所有初心者 : 約3時間以降,無免許初心者 : 約43時間以降)の練習は,自習でもよいと考察される.
    トラクタの旋回所要時間では,3区分の被験者間で前記の作業誤差と同様に明確な相違が認められた.免許無しの初心者が当然最も長い旋回時間であるが,その主な原因はギヤーチェンジやプラウ反転操作を含む後退時にあった.
  • 庄司 浩一, 小林 伸哉, 堀尾 尚志, 川村 恒夫
    2007 年 42 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    収量計測コンバインを用いて水稲栽培試験における収量評価を行なう方法を提示し,事例として約0.5haの同一水田内に設定した疎植区(株間30cm)と対照区(株間23cm)との収量比較を行なった.コンバインで計測したデータは母集団を表しているとみなして収量比較の方法を検討した.
    1) 供試水田では,母集団の大きさと正規性を担保する観点から,収量比較のための小区画の寸法は5m×6mないしは10m×3mが適切と判断された.
    2)供試水田の低地部ほど収量が高い傾向が認められたので,高低差と収量の回帰を行なって高低差の影響を除去して比較するか,高低差の範囲を限定した母集団を用いる等の工夫が必要であった.供試水田で高低差の範囲を限定する場合は,上記1)と同様の理由により,±15mmが適当と判断された.
    3)上記1)および2)の条件下で母集団を作製して収量の比較を行なうと,疎植区と対照区との収量差は有意ではなかったと結論づけられた.
研究論文
  • 荒木 肇, 波田野 義文, 堀元 栄枝, 藤井 義晴, 伊藤 道秋
    2007 年 42 巻 2 号 p. 111-121
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    北陸地域においてカバークロップを導入した生産体系を確立するために,1998年と1999年の秋季にイネ科(コムギ,オオムギ,野生エンバク,ライムギ),マメ科(ヘアリーベッチ,コモンベッチ,クリムソンクローバ)およびアブラナ科(レープ)のカバークロップを播種し,翌年春季のバイオマス生産と雑草抑制およびカバークロップ残渣マルチ圃場での作物生産について調査した.
    1999年の刈り倒し時の地上部バイオマス(AGB)はライムギとヘアリーベッチで大きく,それぞれ10aあたり646kgと591kgの乾物重を示し,多量の有機物が圃場に投入された.特に,ヘアリーベッチは乾物あたり4.2%の窒素を含有し,24kg/10aの有機態窒素が圃場に投入された.ヘアリーベッチは地表面を完全に被覆したが,コモンベッチの被覆は不完全であった.刈り倒し後に,ライムギの切り株から萌芽が見られた.また,コムギ,オオムギおよびクリムソンクローバ圃場では落下した子実からの発芽によりリビングマルチが形成された.これらのカバークロップのデッドマルチを形成するには早期の刈り倒しが必要であった.イネ科カバークロップのAGBは1999年と2000年で大きな差異はなかったが,2000年のヘアリーベッチのAGBは積雪期間が長かったために,1999年のそれより著しく減少した.
    両年ともカバークロップ残渣マルチはマメ科よりイネ科で維持され,特にライムギと野生エンバクで残存率が高かった.カバークロップ残渣マルチ圃場での雑草の発生量と生長は,対照とした耕起圃場より少ないか同程度であった.ヘアリーベッチマルチ圃場では雑草発生量は少なかったが,発生した雑草の乾物重は耕起圃場より大きくなった.レタスの乾物重はヘアリーベッチとコモンベッチまたは野生エンバクのマルチ圃場で耕起圃場より有意に大きくなった.
    以上の観察から北陸地域において秋播きマメ科カバークロップとしてはヘアリーベッチがバイオマス生産と夏作物の生長促進から有望であるが,雑草抑制効果はマルチ形成後約1.5か月間であった.積雪下で越冬しても春季の生存率を向上させる技術が必要である.イネ科ではライムギがバイオマス生産と雑草抑制の視点から有望であるが,切り株からの萌芽を抑制する技術が必要であった.
  • 元林 浩太, 湯川 智行, 佐々木 良治
    2007 年 42 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/01/30
    ジャーナル フリー
    フレール型の専用収穫機と自走式ベールラッパ各1台による作業体系を想定して簡易なシミュレーションモデルを開発し,飼料イネのダイレクト収穫における作業時間の短縮・効率化の方策を検討した.
    1) 開発したモデルは,作業経路シミュレーションと作業時間シミュレーションの2つのモジュールで構成され,圃場区画や作物密度,作業経路等の条件設定値を変えた様々なシミュレーションが可能となった.
    2)実作業の作業時間解析を行い作業機の固有作業能率等のデータ収集を行った.この結果を用いて,圃場内でのロールベール運搬に関する両機の分担・連携条件と作業の効率化について解析が可能となった.
    3) 開発した本モデルは,表計算ワークシートとマクロプログラムで構成されるため,解析の目的に応じてモデルの改良・拡張が容易である.
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