農作業研究
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43 巻, 4 号
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研究論文
  • 辻 博之, 大下 泰生, 君和田 建二, 石川 枝津子
    2008 年 43 巻 4 号 p. 165-177
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    コムギを利用したダイズのリビングマルチ栽培による除草必要期間の短縮効果を,イヌホオズキ,イヌビエ,オオイヌタデ,スベリヒユの4草種において検討した.リビングマルチ栽培は全ての雑草で,草丈または最長茎長の伸長速度を顕著に抑制した.地表面の相対照度が10%以下となる日をダイズの標準期播栽培C区で7月30日,その他の試験区で8月5日とし,その時点での草丈の上限を350mmとして,草丈の伸長速度から除草必要期間を推定した.その結果,リビングマルチ栽培の除草必要期間は慣行栽培よりも,イヌビエで約15日,オオイヌタデで約20日短縮された.同様の方法でイヌホオズキの除草必要期間を求めると,リビングマルチ栽培の除草必要期間は慣行栽培よりも約35日短縮されると計算された.しかし,雑草の生育量と汚粒源となる果実生産の抑制効果から除草必要期間を検証すると,この結果は過大であった.実際のイヌホオズキの除草必要期間は,機械収穫時のダイズの汚損粒などを考慮すると,リビングマルチ栽培によって20日程度短縮されると考えられた.また,スベリヒユの生育はリビングマルチによってほぼ完全に抑えられた.これらの結果から,北海道におけるダイズのリビングマルチ栽培における除草必要期間はおおむね30日以内と考えられた.
  • 石川 啓, 木村 秀也
    2008 年 43 巻 4 号 p. 179-186
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン園において,枯死ナギナタガヤ由来窒素のミカン樹および再発生ナギナタガヤによる吸収特性を明らかにするため,圃場条件下とポット条件下で15N標識ナギナタガヤを施用し,1年間の追跡調査を行った.
    5月下旬に枯死したナギナタガヤ由来窒素は,8月頃からミカン樹に吸収され始め,当年のミカン樹各器官や翌年の春季新生器官に移行した.同様に,再発生したナギナタガヤにも吸収され,1年後のミカン樹と再発生ナギナタガヤによる枯死ナギナタガヤ由来窒素の吸収量はほぼ同量であった.また,ミカン樹各器官の15N寄与率は春季新生器官や旧葉・細根で高く,収穫果では低かった.再発生したナギナタガヤの15N寄与率は樹体に比べて著しく高く,かつ地下部の方が地上部より高率であった.枯死ナギナタガヤ由来窒素の利用率は,樹体5.5%,ナギナタガヤ5.4%であり,施用から再発生したナギナタガヤが枯死するまでの間に,約11%の窒素が利用されることが明らかになった.
  • 小松崎 将一, 鈴木 光太郎
    2008 年 43 巻 4 号 p. 187-197
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,冬季乾燥期における秋冬野菜収穫地での土壌風食を防止するためにカバークロップを利用し,生産性と土壌・環境保全の調和した農作業システムを検討することを目的とした.ここでは,ハクサイ生育期間中の畝間にカバークロップを播種する体系を検討した.実験の要因として播種時期を3水準(10月および11月上旬,11月中下旬,および12月),カバークロップの種類を3水準(ライムギ,エンバク,無処理区)とし,3反復で行った.実験は,2004年8月から2005年4月までおよび2005年8月から2006年4月まで実施した.結果の大要は以下のとおりである.
    1) ハクサイの収量は,カバークロップ利用条件下でカバークロップの種類および播種時期の違いによる差異は認められなかった.
    2)カバークロップの草丈および乾物重はいずれの調査時期においても10月中旬および11月上旬播種区ではエンバクに比べライムギが大きく,播種時期が遅れるにしたがって,乾物重は小さくなった.
    3)風洞を用いた風速分布をみると,10月中旬および11月上旬播種区ではライムギ,エンバクともに地上5cmの高さでの風速が土壌風食の発生風速である3m/s以下に抑制された.
    4)カバークロップの乾物重と相対風速を累乗近似した結果,有意な相関関係が示された.カバークロップの乾物重が約50~100g/m2程度であれば今回用いたカバークロップ草種において風速を3m/s以下にすることが可能であり土壌風食を抑制すると考えられた.
    5) 以上の結果から,秋野菜栽培の畝間にイネ科のカバークロップを播種し,秋野菜収穫後それらの植生が地面の風速を抑制する農作業技術は,地域における持続的な農業確立のために一定の貢献する可能性がある.
研究報文
  • 堀元 栄枝, 藤井 義晴, 荒木 肇
    2008 年 43 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    ヘアリーベッチは2001年11月1日に4kg/10aで播種した.翌年2002年5月17日にヘアリーベッチをすき込みあるいは不耕起マルチとして水田に導入した栽培において,水稲の生育遅延・収量低下を克服するために,中苗移植の効果を慣行栽培である稚苗移植と比較した.移植後28日(6月20日)の葉身窒素含有量はHVすき込み区の中苗移植株が3.8%,HVマルチ区の中苗移植株が3.6%と慣行栽培の3.5%以上となった.移植後56日(7月18日)の水稲の草丈は慣行栽培で58.5cm, ヘアリーベッチを導入した水田の中苗移植株でも同様であった.茎数は慣行栽培の8.0/株に対し,HVすき込み区での中苗移植株は9.7/株と増加したが,HVマルチ区の中苗移植株は6.8/株と少なかった.ヘアリーベッチを導入した水田の中苗移植株のLAIは移植後78日(8月10日)に慣行栽培と同等であった.ヘアリーベッチを導入した水田で稚苗移植株の水稲収量は,慣行栽培の62.6%から67.3%の収量であった.しかし,中苗移植株では慣行栽培の81.4%から85.6%まで増加した.
    以上からヘアリーベッチ導入水田に生じる稲の生育遅延と収量低減は中苗を栽培することによって改善できる可能性が示された.
  • 三浦 重典, 小林 浩幸
    2008 年 43 巻 4 号 p. 207-212
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2009/06/25
    ジャーナル フリー
    秋播き性の高いオオムギおよびコムギ18品種をリビングマルチとして供試し,無中耕・無除草剤でダイズの栽培を行い,形態的特性や遮光能力等の違いが雑草の抑制やダイズの収量に及ぼす影響を比較した.7月上旬における遮光率は,品種の違いによる差が大きく,シンジュボシ,べんけいむぎで雑草の生育を顕著に抑制するとされる90%を超えていた.遮光率とムギ類の乾物重および乗算優占度との間には高い正の相関関係が認められた.また,8月上旬の雑草乾物重とムギ類の草高および乗算優占度との間には負の相関関係が認められた.このことから,雑草抑制効果を評価するには,乗算優占度が最も良い指標になりうると判断された.リビングマルチ栽培したダイズの収量は,全般に慣行栽培より低い傾向にあった.これは,試験圃場で雑草の埋土種子量が多く,比較的遮光に強いとされるヒエ類やタデ類が優占していたことから,初期に発生した雑草が残存したことが主な原因と推察された.
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