農作業研究
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45 巻, 4 号
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研究論文
  • 中山 秀貴
    2010 年 45 巻 4 号 p. 195-201
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
    トマト施設栽培において,安定的な着果を得るために,花へのホルモン処理は不可欠である.ホルモン処理は果房を機械的に振動させる振動受粉法(接触振動受粉)に比べ省力的であるが,空洞果比率が増加する可能性がある.一方,振動受粉の空洞果比率はホルモン処理に比べ小さいが大きな労働力を要する.
    筆者は,送風機を用い発生する風によりトマト果房を振動させる新しい振動受粉法(送風振動受粉)を開発した.そこで,送風振動受粉,接触振動受粉,およびホルモン処理実施時における作業時間,着果率,空洞果比率について調査した.
    着果促進処理に要する株あたりの作業時間は,送風振動受粉,接触振動受粉,ホルモン処理でそれぞれ2.8秒,7.5秒,6.7秒であった.送風振動受粉では週に2回から3回の処理が必要であったが,一方,ホルモン処理では週に1回の処理で十分であった.これらのことから,送風振動受粉の10aあたりの処理作業時間は96ないし82時間と試算され,ホルモン処理とほぼ同等であった.また,送風振動受粉とホルモン処理で作業強度に大きな違いがないことも推察できた.送風振動受粉における着果率はホルモン処理と同等であり,また,空洞果の発生は見られなかった.
    これらの結果により,送風振動受粉がトマトハウス栽培における安定着果に有効であることが示された.
  • 黒崎 秀仁, 大森 弘美, 高市 益行, 佐々木 英和
    2010 年 45 巻 4 号 p. 203-211
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
    トマトのハイワイヤー誘引栽培におけるつる下ろし作業は,作業者にとって大きな負担となっている.本研究では模擬実験により,作業者と誘引線の位置関係によって生じる筋力負担の差を表面筋電位の測定によって検証した.まず,実際のつる下ろしの際に生じる持ち上げ負荷を調査した結果,6ヶ月間の平均値は45Nであった.次につる下ろし作業を想定した模擬実験を行い,被験者の積分筋電位(iEMG)を算出した.10箇所の筋肉部位のiEMGを比較した結果,作業台車のステップから誘引線までの高さ(誘引線高さ)の変化に対して顕著な反応を示した筋肉は,僧帽筋上部と三角筋前部であり,支持負荷の増加に伴いiEMGは直線的に増加した.片腕のみ,両腕の作業でもこの傾向は同じだった.作業高さに対するiEMGの反応も片腕のみと両腕の作業では同じ傾向だった.作業者の身長比に換算した誘引線高さに対するiEMGの反応は,僧帽筋上部では身長比0.45~0.55付近,三角筋前部では身長比0.6~0.65付近が極小値となったが,実際の作業環境を想定した場合,誘引線高さ身長比0.6~0.8の範囲がつる下ろし作業の適正作業位置と判断できた.水平距離に対する反応は,僧帽筋上部では不明瞭だった.三角筋前部では距離が離れるほど筋力負担が増大する傾向が見られた.しかし,距離が近すぎればトマトの葉に干渉して作業が困難になるため,最適な水平距離身長比は0.25~0.3程度と判断された.
研究報文
  • 藤澤 弘幸, 守谷 友紀
    2010 年 45 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 2010/12/20
    公開日: 2011/06/20
    ジャーナル フリー
    JM1, JM7およびM.9vfを台木としたリンゴ‘ニュージョナゴールド’12年生樹を対象に,透湿性を有する白色ポリエチレン不織布を用いてマルチ栽培を行い,土壌水分,樹体生育および果実品質に及ぼす影響を検討した.
    1)土壌水分はマルチにより減少したが,比較的湿潤な水準(pF 2.0程度)にとどまった.
    2)いずれの台木樹でも,マルチ区の新梢伸長および果実重は無処理区に比べて低い傾向を示した.土壌水分の減少がその要因と推察された.
    3)果実ていあ部の着色程度は,いずれの台木樹でもマルチにより上昇する傾向が見られた.果実赤道部の着色程度は,JM7およびM.9vf台木樹ではマルチの影響を被らず,JM1台木樹ではマルチにより低下した.
    4)果汁の屈折計示度および酸含量は,いずれの台木樹でもマルチによる影響が認められなかった.
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