農作業研究
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50 巻, 4 号
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研究論文
  • 川口 岳芳, 南田 秀樹, 川本 靖信, 佐藤 彩佳, 尾崎 行生
    2015 年 50 巻 4 号 p. 91-101
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    ワケギの球根の植付けは,一球ずつ中腰・手作業で行うため身体への負担が多大である.筆者らは,これまでワケギ球根の植付けが可能な簡易移植機とこれを利用した球根の植付方法を開発した.本報では開発した球根対応簡易移植機による植付時の作業時間,作業姿勢および自覚的運動強度に及ぼす影響を調査し,ワケギ球根の生育に及ぼす影響を明らかにすることで,作業性および栽培の面から実用性を評価した.OWAS法による作業評価において,手作業では “できるだけ早期に改善すべき姿勢(AC3)”が90%以上を占めたのに対し,本機を用いると“改善不要(AC1)”および“近いうちに改善すべき姿勢(AC2)”が90%以上を占め,作業姿勢の改善効果がみられた.修正Borg Scaleに基づく作業終了時の自覚的運動強度の主観評価は,手作業では腰が5.7~7.7,腿が3.3~8.8および膝が1.3~5.7であったのに対し,本機では腿が0.7,膝が0.3および脹脛が1.0となり大幅な軽労化効果が得られた.植付作業時間は大幅に短縮されたが,準備作業を含めた作業時間全体としては短縮効果が認められなかった.この対策として全体の59~83%を占める連結紙筒への球根の装填作業の効率化を図る必要があると考えられた.本機で植付けた球根の萌芽日,発根,栽培期間中および収穫時の生育は,慣行の手作業で植付けた球根と同等であった.
研究報文
  • 冠 秀昭, 大谷 隆二, 関矢 博幸, 中山 壮一, 齋藤 秀文
    2015 年 50 巻 4 号 p. 103-113
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    水田の減水深の制御が可能な乾田直播栽培技術の実用化を目指して,作土の土性がLiC(軽埴土)の3 ha規模の黒泥土水田においてプラウ耕鎮圧体系乾田直播の実証試験を行った.また減水深低減に必要な鎮圧強度を容易に判断するため,土壌硬度を指標とするための室内締固め実験を行った.その結果,土壌含水比が34%以上で土壌硬度が山中式土壌硬度計で20 mm程度まで鎮圧することにより,飽和透水係数が日減水深の目標値20 mmd-1に相当する2.3×10-5 cms-1まで低下することが明らかとなった.水田での鎮圧作業では圃場全面をケンブリッジローラにより4回鎮圧することよって,地表下5 cmの土壌硬度がおよそ20 mmに達し,飽和透水係数は2.3×10-5 cms-1に近い値となった.鎮圧を行った3 ha圃場および2 ha圃場の日減水深は12 mmd-1,10 mmd-1と日減水深の目標値以下となった.湛水期間中の暗渠内水位の調査から,鎮圧圃場の田面水位と暗渠内の水位は不連続であったが,無鎮圧圃場の田面水位と暗渠内水位はほぼ一致しており,田面と暗渠との間の水みちが連続していたことから,鎮圧圃場では地表下5 cm以下の鎮圧層で田面水位が維持されていることが確認された.以上のことから,乾田直播栽培において,土壌硬度を目安に行われた圃場面の鎮圧によって減水深が低減できることが明らかとなった.
  • 本林 隆, 吉田 稔, 山口 史哉, 松川 孝治
    2015 年 50 巻 4 号 p. 115-126
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル フリー
    ポット苗による水稲の移植栽培は,移植直後の生育停滞が少なく,茎数の確保が容易とされることから主に寒冷地で行われている.ポット苗のこのような特性は,生育初期の水稲の根を加害するイネミズゾウムシによる被害軽減に有効ではないかと考えた.そこで,圃場およびワグネルポットに移植したポット苗と慣行苗に対してイネミズゾウムシを一定個体数接種し,水稲の生育,収量,茎葉部乾物重,根部乾物重および出液量などを比較した.圃場で栽培した水稲では,イネミズゾウムシ接種によって生育初中期(移植後40~50日間)の茎数は非接種区に比べて低く推移した.非接種区に対する接種区の茎数の比率を比較すると,慣行苗区に比べてポット苗区の比率が高く推移した.また,ポット実験においても,イネミズゾウムシ接種により茎葉部乾物重,根部乾物重および出液量は低下したが,ポット苗区は慣行苗区に比べていずれの値も高い傾向がみられた.しかし,イネミズゾウムシ幼虫による直接的な加害がなくなる移植後50日以降の生育は年次によって異なっており,加害を受けた水稲の茎数が回復する場合は,生育初中期にみられたポット苗によるイネミズゾウムシの加害を軽減する効果は収量にまで反映されなかった.
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