農作業研究
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52 巻, 1 号
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研究論文
  • -現行のサトウキビ収穫・運搬作業の類型化と実作業量の推定-
    赤地 徹, 吉原 徹, 前田 建二郎, 玉城 麿, 宮平 守邦, 正田 守幸, 安仁屋 政竜, 亀山 健太, 井上 英二
    2017 年 52 巻 1 号 p. 5-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    沖縄県南北大東島では,サトウキビ収穫機や運搬用トラックが老朽化し代替時期を迎えている.これを契機に大型化した機械化体系を見直すなど,現地では作業機のダウンサイジングも念頭に種々の試みが行われている.筆者らは,南北大東島における効率的かつ持続的な収穫・運搬作業体系モデルを開発・策定することを目的にまず基本的な作業情報を整理し,現行の収穫・運搬作業を組み合わせた主要な作業体系について類型化を行った.その結果,南北大東島では大型収穫機を中心にした1類型,中型収穫機の6類型,小型収穫機の1類型の計8類型に分類された.また,運搬トラックが収穫機の伴走車を兼ねるなど収穫作業と運搬作業が相互に影響し合う類型について,製糖工場での原料受入れデータから実作業量を推定した結果,大型収穫機を中心にした類型で19.1~28.0 a/h,中型収穫機の類型で13.3~15.2 a/hであった.なお,収穫ほ場でのタイムスタディによる作業量の実測値にGPSデータを基にした運搬トラックの稼働状況の解析結果から得られた実作業率を加味しながら実作業量の推定値を検証し,本推定方法が実用上妥当であることを確認した.
研究報文
  • 元木 悟, 北條 怜子, 染谷 美和, 藤尾 拓也
    2017 年 52 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    露地夏秋どりミニトマトの新栽培法である「ネット誘引無整枝栽培」(通称:ソバージュ栽培,以下,同じ)は全国的に普及し始めているものの,作業性については主枝1本仕立て栽培(以下,慣行栽培)と比較検討した報告がない.そこで本研究では,ソバージュ栽培の栽培体系の確立を目指し,ソバージュ栽培と慣行栽培の各作業工程における作業時間および作業姿勢および収量を比較した.その結果,ソバージュ栽培では,慣行栽培に比べて収穫作業以外,特に誘引および薬剤散布の作業時間を大幅に短縮できた.しかし,ソバージュ栽培は,ミニトマトの生産拡大の課題になっている収穫作業が全作業工程の90%を占め,慣行栽培に比べて顕著に高かった.ソバージュ栽培は,慣行栽培に比べて栽植密度が低いにも関わらず,単位面積当たりの収量は同等以上であり,夏季の高温強日射時の影響を受ける8~9月の出荷が可能であった.そのため,ソバージュ栽培は,栽培管理の省力化や軽作業化が図れるミニトマトの露地夏秋どりの新栽培法として期待できるものの,さらなる作業時間短縮のためには,作業時間の大半を占める収穫方法の改善が必要であると考えられた.
資料
  • ザン ユーピン, 荒木 肇
    2017 年 52 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    アスパラガスはルチン,サポニン,多糖類や有機セレン(セレニウム)が豊富に含有される高付加価値野菜の1つである.現在,中国は世界有数のアスパラガス生産国である.それはこの約20年間での急速な生産面積拡大により,アスパラガスは中国における巨大な産業になった.1990年代初頭,中国はアスパラガスの特に缶詰の輸出国であり,生産地において主にホワイトアスパラガスが栽培されていた.90年代中盤から,中国国内でのグリーンアスパラガスの消費やお茶,ジュース,薬や粉末等の多様な加工品の重要拡大により,グリーンアスパラガスの生産が徐々に増加した.このような国内での変化は収穫若茎の国内重要の増加と輸出量の減少につながった.アスパラガス若茎の収量や生産性の向上のために,冷涼気候の中国北部において,ホワイトアスパラガス栽培はグリーン生産に転換された.一方,中国の中央部や南部では,プラスチックハウス内において,立茎栽培と呼ばれる長期生産体系が始まった.この栽培体系では約3か月育成した種苗を定植して翌年からの収穫となる.定植と収穫は手作業で,株上からの霧状散水と土壌への点滴潅漑で水が供給されている.夏の遮熱対策として,遮光ネットを配置されている.2008年の世界経済危機においてアスパラガス生産も減少したが,2009年以降回復した.茎枯病と呼ばれる病害の被害は深刻で,特に中国南部においてはこの病害が,アスパラガス生産の持続的発展を制限する重大要因になっている.茎枯病に抵抗性を有する国内品種を育成の国家プロジェクト研究が遂行されている.
  • 津野 佑規, 長谷川 英夫
    2017 年 52 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/20
    ジャーナル フリー
    トラクタ,コンバイン,田植機などの農業機械は,水稲作10a当たりの作業時間を1964年の147時間から2010年の26時間にまで短縮することに貢献した.しかし,農業生産の能率化に貢献を果たした農業機械化において,農作業事故という弊害が指摘されている.本稿では2014年度に新潟県内で発生したトラクタ転覆・墜落事故の事例を報告する.水稲作において国内有数の生産地である新潟県のトラクタ転覆・墜落事故の実態を調査・分析することで,今後の農作業事故防止に貢献することが目的である.事故事例は新潟県農業共済組合連合会(NOSAI新潟)の協力により,2014年度農機具共済支払実績報告書から抽出した.対象事故は4月から5月に件数がピークに達し,この2か月で全体の53%を占めた.10月は収穫後の整地や秋打ちの作業により事故の割合も増大した.さらに,12月には除雪作業に関連する事故が4件発生した.新潟県において4月と5月に事故が集中した一因として,他の都道府県に比べトラクタの使用が水稲作に集中していることが挙げられる.4月と5月に発生した事故状況を抽出すると,道路を移動中の事故,圃場の進入・退出での事故,代掻き作業中の事故など水稲作に関連した事故が多発した.冬はトラクタを使用する頻度が低下することから,農閑期後のヒューマンエラーに起因する操作ミスや農業機械管理および整備の不備が事故の原因になり得る.
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