鳥害対策はかかしを始め,音,光,形などを用いて鳥を脅かして追い払う機器が数多く考案されているが,鳥は危険がないことを学習してしまうため効果は一時的である.確実な方法は,鳥と作物を物理的に遮断することにより,作物を鳥から守る防鳥網であるが,設置の手間やコストがかかるなどの問題がある.そこで,農研機構では防鳥網を簡易に設置する技術「らくらく設置2.0」と「らくらく設置3.5」を開発した.また,カラスに関しては,テグスにより防除できることが判明したので,テグスを利用した果樹園の対策「くぐれんテグス君」と,畑作物の対策「畑作テグス君」を開発した.鳥による被害の特徴と対策の難しさを解説した後に,上記4技術について紹介する.最後に,今後の鳥害対策について述べることとする.
近年,飼料用トウモロコシ栽培において,Solar Corridor Cropping System法といった群落内の空間的配置を変化させ,太陽光利用率を最大化し,作物の収量増加や子実の良質化を狙った2条植え栽培が注目されている.トウモロコシにおける2条植え栽培は,個体間の養分などの競合の減少や過密ストレスを軽減させることで,収量が高まることがある.しかし,必ずしも2条植えが1条植え以上の子実収量になるわけではないことから,子実収量を増収させる栽培技術であるかは明らかではない.そこで本研究では,関東南部において1条植えと2条植えの違いが飼料用トウモロコシの生育と収量に及ぼす影響を調査した.生育調査より,第12期以降にLAIは2ヶ年とも2条植え区が1条植え区に比べ有意に高い値を示した.R1期の地上部乾物重は両栽植様式において違いはみられなかった.収量調査では,2ヶ年を通して子実重,100粒重,子実粒数ともに栽植様式間において差はみられなかった.これらの結果より,乾物収量,収量調査ともに2条植えが1条植えに比べ劣るということはなく,むしろLAIの拡大から収量増加の可能性が見受けられた.以上のことから,2条植えの効果については,今後さらに調査が必要であると考えられる.
小規模経営が多い沖縄本島南部地域で収穫機械化を進めるには,現在使われているサトウキビ収穫機より小型かつ高性能な収穫機が必要と考えられる.本研究では,沖縄県で稼働している最も小型の36 kW収穫機にGPSロガーと車載カメラを取り付け,収穫機の作業実態を調査した.試験機にGPSロガーを取り付け,1秒ごとの収穫機の軌跡を記録し,GISを用いて解析を行った.その結果, 2017/2018年期では圃場作業量は0.013(ha/h),有効作業量は0.030(ha/h)であり,有効作業効率は0.45であった.現在普及している小型収穫機(73.5 kW)と比較すると,圃場作業量および有効作業量は約3割の値を示した.車載カメラの映像から,サトウキビの倒伏により,茎の切断が困難で,サトウキビを収穫機内に取り込めず,刈り取り作業が停止し,作業能率が低下していることが確認できた.また,有効作業効率を土地改良区とその他の圃場で比較を行った.土地改良区内の圃場における有効作業効率は0.42,改良区外の圃場の有効作業効率は0.28であり土地改良区の方が大きい値を示した.本試験で用いた小型収穫機は性能面で普及小型機に劣るため,本島南部の状況を考えた場合,作業最適化の方法を検討しながら導入を進める必要がある.
水稲の流入施肥法は省力的な施肥を可能とするが,肥料の散布精度が懸念される.本研究では,従来よりも散布精度の高い流入施肥法の確立を目指して,灌漑水の流量変動に対応して液肥の滴下流量を変動させる新たな流入施肥装置を2方式開発した.
装置Aは,灌漑水の流量変化に応じて適切な液肥の電動弁開度を決定する電動弁開度調節方式を採用した.本装置を用いた圃場実験の結果,水田への液肥の供給量を一定とした従来の施肥装置よりも流入施肥後の田面水窒素濃度分布がより均一になることが明らかとなった.
一方,簡易かつ高精度な流入施肥装置を目指した装置Bは,ベンチュリ効果を活用して液肥を吸引し灌漑水へ混入させるアスピレータ吸引方式を採用した.装置Bの開発にあたり,液肥の吸引方法についての基礎的な研究を行い,市販品の組み合わせによって流入施肥に適した装置の仕様を明らかにした.圃場試験の結果,灌漑水流量に比例して液肥の吸入量が変化したものの,その変動幅は想定より大きく,流入施肥後の田面水窒素濃度分布のばらつきが大きくなり,肥料の散布精度が悪化した.