老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
10 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 工藤 逸郎
    1995 年 10 巻 2 号 p. 89
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 日常生活時と歯科診療時との比較
    木田 正芳, 岡田 幸明, 竹腰 将典, 伊藤 恒生, 加藤 隆正, 池岡 憲之, 倉賀野 勲, 鳥居 則成, 片桐 知之, 岡田 好史, ...
    1995 年 10 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    一般に歯科治療は, 患者にとって何らかのストレス要因になっていることは周知の事実である。また, 高齢者においてはこの様なストレスから予期せぬ事態に発展することもしばしばありうる。なかでも循環器系合併症が最も多く見られる様である。このことは, 基礎疾患の種類や治療内容にもよるが, 高齢者における心肺機能の予備能力の低下が影響しているように思える。したがって, 高齢者, とりわけ在宅高齢者の歯科治療に際しては, 補綴治療といえども本来の基礎疾患はもちろん, 患者自身が受けるストレスについて評価する必要がある。このような視点より, 我々は健康記録票により, 患者の日常時の循環動態パラメータ (収縮期・拡張期血圧, 心拍数) および生活状態を把握し, 歯科治療時のそれらと比較することによって, ストレスを評価し, 未然に重篤な合併症へ移行するのを防いできた。今回は歯科治療中におけるストレスの程度をさらにくわしく知るたあに, 対象者を一般疾患群と循環器系疾患群とに分け, 各群の日常時および歯科治療時における循環動態パラメータについて比較検討を行い, 以下の結果を得た。
    1. 一般・循環器系両群の循環動態パラメータの平均値は, 日常時と治療時との間で変化はみられなかった。
    2. 循環器系群における収縮期血圧の変動値は, 治療時にやや増大が認められた。
    3. 循環器系群における心拍数の変動値は, 治療時で有意に増大が認められた。
  • 竹腰 恵治, 小谷 順一郎, 上田 裕
    1995 年 10 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    痴呆性老人に対する義歯装着可否の目安を探る目的で, 装着状況と日常生活動作 (Activities of Daily Living: ADL) ならびに改訂長谷川式簡易知能評価スケール (Revised Hasegawa's Dementia Scale: HDS-R) との関係を検討した。対象は, 特別養護老人ホームに入所の痴呆性老人86名 (平均79.6歳) で, 疾患内訳ではアルツハイマー病が最も多かった。方法は, ADLを6項目 (歩行, 排泄, 食事, 入浴, 衣服の着脱, 洗面) に, 自立度を3度 (自立, 一部介助, 全介助) に分類し, 各自立度を3, 2, 1点として各人のスコアー合計値を算出した。ADL各項目と義歯装着可否との関連性については, 分割表モデルを用いて赤池情報量規準 (Akaike's Information Criterion: AIC) による分析, 検討を行った。その結果,
    1. 「歩行」を除くすべての項目で, 自立度が高い程, 義歯装着率が高かった。
    2. 「歩行」を除く5項目のADL平均点は, 義歯装着者群10.9点 (15点満点), 非装着者群7.3点であった。
    3. AIC分析から, 「歩行」を除く5項目で, 7点以下は義歯装着困難が, 10点以上では義歯適応の可能性が高いことが示唆された。また, 義歯適応の可否を予測する上で最も有効な情報を提供する項目は, 「洗面」と「衣服の着脱」であった。
    4. 疾患別 (アルツハイマー病, 脳血管性痴呆, 混合型) にみたADL平均点は, 義歯装着者群で10-11点, 非装着者群で7点とほぼ一定の値を示したが, HDS-Rの平均点にはバラツキがみられた。したがって, 重度の痴呆性老人における義歯の適応基準を判定する指標としては, HDS-RよりもADLの方が有用と考えられた。
  • 菊谷 武, 包 隆穂, 佐藤 裕, 田中 秀太郎, 鈴木 章, 稲葉 繁, 河村 博
    1995 年 10 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    高齢歯科患者の外来受診時の血圧, 脈拍における白衣効果を知る目的で診療室入室30分前から入室10分後まで5分毎に血圧, 脈拍の変動を測定し検討を行った。
    その結果, 入室によって収縮期血圧および脈拍数は有意に上昇を示した (p<0.01) 。その上昇量は個人差が大きく, 10mmHg以上上昇を示した白衣効果陽性症例は46.5%に認あられた。高血圧症の既往のあるものは既往のないものに比較して収縮期血圧の白衣効果を示す頻度が高かった (p<0.05) 。また, 加齢と共に白衣効果陽性の頻度が増加した (p<0.01) 。しかし, 性差, 当日の診療内容は白衣効果の発生頻度に影響を与えなかった。また, 来院回数および安静時の収縮期血圧と入室時上昇量との間に相関は認められなかった。一方, 来院時の血圧と入室時血圧の間には強い正の相関が認められ (r=0.64, P<0.01), 来院時の血圧の高い症例は安静によって血圧が低下を示してもストレスによって再び上昇する可能性が示唆された。
  • 加齢による影響
    各務 秀明, 重冨 俊雄, 林 常敏, 瀬古 和秀, 牧 かおり, 大野 雄弘, 上田 実
    1995 年 10 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    Burning mouth syndromeは, 口腔内の持続的なひりひり感ないし痛みを訴えるが, 器質的変化を認めない疾患である。更年期以降の女性に多いことから, 更年期障害あるいは加齢変化との関わりが指摘されているが, この点についての詳細な研究は少ない。今回われわれは, 名古屋大学医学部附属病院歯科口腔外科においてburning mouthsyndromeと診断された患者49名のうち女性40名に対し, 全身合併疾患, 内服薬, アレルギーの既往, 疼痛部位, 血液学的異常, 安静時全唾液量, 心理テストによる心理面の評価, タイプ分類, 治療成績を評価し, 加齢の影響について検討した。患者を更年期と考えられる42-56歳, 老年期として65歳以上, そしてその間の年齢として57-64歳の3群に分け比較検討を行ったところ, 更年期および老年期の患者にそれぞれ特徴的な所見が認められた。更年期のburning mouth syndrome患者は一般に合併疾患や投薬が少なく, 唾液分泌量も正常で, 高コレステロール血症を除けば臨床検査上の異常もわずかであった。また。CMIによる心理面の評価でも多くがIないしII領域であった。一方65歳以上の老年期患者では, 合併疾患や投薬の増加, 唾液分泌量の減少, CMIによる心理的問題点など種々の肉体的, 精神的問題をかかえており, それらの要因とburning mouth syndromeの発症との間に深い関連が推測された。
  • 金 昇孝, 山内 六男, 小川 雅之, 谷口 信一, 伊藤 幸司, 関根 一郎
    1995 年 10 巻 2 号 p. 120-127
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    最近, 超音波によって簡単に口腔粘膜の厚さを測定できる装置“SDM®”(クルップ社)が開発・発売された。本装置が実際に口腔粘膜の厚さ測定に応用できれば臨床的に有用な診断機器となる。そこで今回われわれは, 本装置が口腔粘膜の厚さ測定に応用できるかについて, 刺入法との相関性や再現性の観点から検討を加えた。
    SDMによる測定値と刺入法との測定値はよく相関した。SDMにより粘膜厚さを10回測定した場合の変動係数は平均5.2%であった。分散分析の結果, 測定日を変えても測定値には差は見られなかった。このことから, SDMによる測定は信頬性および再現性があると言える。
    SDMによる無歯顎の粘膜厚さの測定結果は従来から報告されている超音波による測定値とほぼ一致していた。フラビーガムの症例では, フラビーに一致して粘膜厚さは正常な無歯顎の粘膜厚さより厚く, また頻回の調整により疼痛の解消しない総義歯患者では, 粘膜厚さは正常な無歯顎の粘膜厚さよりも薄く, 臨床所見とSDMによる粘膜厚さの測定結果はよく関連していた。
    以上の結果から, SDMによる粘膜厚さ測定は十分臨床に応用できることが示唆された。
  • 青木 聡, 武田 秀勝, 平井 敏博, 池田 和博, 石島 勉, 矢嶋 俊彦
    1995 年 10 巻 2 号 p. 128-136
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    顎口腔系機能の老化と全身の老化との関連についての基礎的情報を得ることを目的に, 高週齢ラットにおける加齢, 咬合関係, 飼育飼料の全身持久性に及ぼす影響を検討した。
    49匹のWistar系雄性ラットを用い, 固形飼料にて飼育した対照群, 粉末飼料にて飼育した粉末飼料群, 45週齢の時点で臼歯部歯冠部を切除し, 粉末飼料にて飼育した臼歯切除群の14匹ずつを設定した。50週齢および75週齢の時点で, 各群7匹ずつについて, 体力限界に至るまでの遊泳持続時間, クレアチンフォスフォキナーゼ (CPK) 値, 遊離脂肪酸 (FFA) 値を測定した。なお, 予備飼育群として, 実験開始前の35週齢, 7匹についても同様の測定を行った。
    得られた結果は以下の通りである。
    1. 75週齢における粉末飼料群の体重は, 対照群に比して, 有意な増加が認められた (P<0.01) 。
    2. 対照群における遊泳持続時間は, 加齢に伴い有意に短縮した (P<0.01) 。
    3. 75週齢の臼歯切除群における遊泳持続時間時間には, 同週齢の対照群に比して, 有意な短縮が認められた (P<0.05) 。
    4. 全ての群において, 50週齢におけるCPK値は, 75週齢のそれよりも低い値を示した。
    5. 臼歯切除群におけるFFA値は, 他の群に比して, 著明な低値を示した。
    以上の結果から, 生理的加齢変化に加えて, 歯の喪失をはじめとする咬合関係とそれに伴う飼育飼料形態が全身持久力に大きな影響を及ぼすことが確認された。
  • 犬塚 博資, 能勢 達郎, 于 世鳳, 阿部 公生
    1995 年 10 巻 2 号 p. 137-149
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    Cysticfibrosisのモデル動物と考えられているレセルピンの連続投与ラットの顎下腺を用いて, m-およびp-オクトパミンとドーパミンの顎下腺に及ぼす作用を検索した。レセルピン (5mg/kg) を1日1回投与した群 (Group1), 1日1回2日間投与した群 (Group2) およびレセルピン (0.5mg/kg) を1日1回, 6日間連続投与した群 (Group3) に分け影響を調べた。著者らは前報22) で同じプロトコールのラットに5種類の異なるレセプターを刺激すると思われる分泌刺激薬5種類 (ピロカルピン, イソプロテレノール, ノルアドレナリン, クロニジンおよびフィサレミン) を用いて, レセルピン投与を行って化学的に交感神経を遮断したラット顎下腺の分泌応答を検索した。その結果, レセルピンによる化学的交感神経遮断下では上記の分泌刺激薬は当該ラット顎下腺の唾液分泌を著しく促進させること, 特にノルアドレナリンとフィサレミン刺激は顕著に冗進すること, また, チラミンの催唾作用は完全に抑制されることを述べた。前報22) に刺激され今回は, m-およびp-オクトパミンあるいはトーパミンの分泌作用を, 実験的老化状態と呼ぶことのできる, 化学的交感神経遮断下に検索した。実験動物には9週齢, 雄性のSD系ラット (最終の実験日が9週齢になるようプロトコールを調整) を各実験ごとに5-10匹ずつ用いた。分泌刺激薬にはm-オクトパミン (10mg/kg) およびp-オクトパミンとドーパミン (どちらも30, 50および100mg/kg) を腹腔内 (i.p.) に用い, カニュレーション法により1h間唾液を採取した。また各種の代表的な阻害剤 (プラゾシン, プロプラノロール, アトロピン, CdCl2) もp-オクトパミン (100mg/kg) と併用投与に用いた。分泌唾液量は重量法, タンパク濃度はLowry法, タンパク成分は各種の電気泳動法により検討した。いずれの分泌刺激薬もその催唾作用は, チラミンとは異なり, 化学的交感神経遮断下で完全に抑制されることはなかった。しかし, m-オクトパミンとドーパミンの催唾作用は, 投与量の多少にかかわらず, 顕著に抑制された。また, p-オクトパミンは低投与量時に抑制が認められた。タンパク濃度には大きい影響は認められなかったが, 総分泌タンパク量はm-オクトパミンおよびドーパミンに抑制が認められた。各種の阻害剤との併用実験では, プラゾシンに有意な分泌抑制がみられたのみで, その他の阻害剤には有意な作用は認あられなかった。また, タンパク成分のβ型からα型の変換は化学的交感神経遮断下では認あられず, プラゾシンによりα型からβ型への変換が認あられた。
    以上のことから, 今回用いた3種類のバイオアミンは, チラミンほどではないが, レセプターに直接に働く作用の他に, チラミンと同じように, 神経終末部よりノルアドレナリンを分泌させる作用も一部もつのではないかと推測された。また, これらのバイオアミンは, ノルアドレナリンと異なり22) , タンパク成分の変換機構には影響を与えないと思われた。また, 化学的交感神経遮断は分泌するタンパク成分に質的な変化を与えるとは考えられなかった。
  • 池田 和博, 平井 敏博, 矢嶋 俊彦, 金澤 正昭, 武田 秀勝, 青木 聡, 橋川 美子
    1995 年 10 巻 2 号 p. 150-158
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    高齢者においては, 顎口腔系の生理的加齢変化に加えて, 機能歯の喪失をはじめとする咬合関係の変化とそれに伴う摂取食品の形態や性状の変化, さらには, 全身疾患などの種々のストレスが原因となって病的老化が進行し, 咀嚼機能の低下に拍車がかかることが考えられる。そこで本研究では, 加齢と咀嚼が下顎骨の骨塩量に及ぼす影響を検索するために, 雄Donryuラットを用いて, 対照群として, 固形飼料にて飼育した30・43・47・60・74週齢の5群を, また, 粉末飼料群として, 43週齢になった時点で粉末飼料に代えて飼育した47・60・74週齢の3群を, さらに, 臼歯切除群として, 43週齢の時点で臼歯歯冠部を切除した後, 粉末飼料に代えて飼育した同3群を設定し, 下顎骨の相対的平均骨塩量指数 (以下BMDとする) を測定し, 比較した。得られた結果は以下の通りである。
    1.下顎頭部のBMDは, 対照群において, 47週齢までは加齢に伴い増加し, その後は, 減少する傾向が認められた。また, 粉末飼料群および臼歯切除群におけるそれは, 47週齢以降, 加齢に伴い減少する傾向が認められ, さらに, 対照群に比して有意に減少していた (p<0.01) 。
    2.咬筋付着部および切歯部のBMDは, 対照群において, 60週齢までは加齢に伴い増加し, その後は, 減少する傾向が認められた。また, 粉末飼料群および臼歯切除群におけるそれは, 60週齢以降, 加齢に伴い減少する傾向が認あられ, さらに, 対照群に比して有意に減少していた (p<0.05) 。
    3.下顎頭部, 咬筋付着部および切歯部におけるBMDについて, 対照群に対する粉末飼料群ならびに臼歯切除群の比を検討したところ, 下顎頭ではすべての週齢において, また, 咬筋付着部では60・74週齢群で, 切歯部よりも有意に低値を示していた (p<0.05) 。
    以上の結果から, 加齢および摂取食品, 咬合関係の変化に伴う下顎骨の力学的環境の変化によって, 下顎骨の粗鬆化が促進される可能性のあることが推測された。
  • 冨士田 益久, 山田 尚, 高橋 育江, 木原 秀文, 藤本 嘉治, 吉田 裕, 奥 忠之, 連 利隆, 米虫 和子
    1995 年 10 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    昭和58年2月の老人保健法の施行以降, 人口の高齢化に対応すべく, 成人と高齢者に対する歯科保健対策が実施されるようになり, 生涯を通じた歯科保健施策の推進が図られている。大阪市では, 次のような4つの事業を実施し, 歯科保健の向上と普及につとめている。それらは,
    1. 母親教室における歯科保健指導
    2. 1歳6ヵ月児歯科健康診査
    3. 3歳児歯科健康診査
    4. 老人保健法に基づく歯科健康相談
    である。
    私達は, 大阪市全区における市民健康診査 (以下, 市民健診と略す) 時に行われる歯科健康相談で得られた実績を基に以下の実態の比較検討を行った。
    1. 歯科健康相談の実施状況
    2. 歯の異常の有無の比率の年次推移について (平成元年度-6年度)
    さらに最近の実績である, 平成6年度 (平成6年4月-平成7年3月実施) の内容について
    1. 歯科健康相談者の構成 (年代別, 性別)
    2. 性別, 年代別相談者の異常の有無について
    3. 歯の異常ありの内訳について
    以上の統計的検討を行った。
    その結果, 相談者全体の70%が女性の相談者であった。全体に占める歯の異常ありの比率は, 約64%であった。男性の方が女性より異常ありの比率が高く, 年代別では, 60歳代, 50歳代に異常ありの比率が高かった。
  • 浅沼 直樹, 黒川 裕臣, 江面 晃, 佐藤 格夫, 深井 浩一, 新海 航一, 畑 好昭
    1995 年 10 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 1995/11/30
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    在宅診療患者における義歯の汚染状態, 義歯清掃に対する認識と現状を把握するために, 1991年1月から1993年8月までに日本歯科大学新潟歯学部在宅歯科往診ケアチームで義歯を装着した患者のうちリコールに応じた8名を対象として, 義歯の取り扱いを中心にした聞き取り調査, 歯垢染色液を用いたデンチャープラークの染色および微生物学的検査を行った。
    聞き取り調査の結果, 義歯装着時に義歯の取り扱い説明を受けたと答えたものは8名中4名で, 口腔内の清掃法について説明を受けたと答えたものは1名だけであった。歯垢染色液でデンチャープラークを染色した結果, 上下顎義歯ともに咬合面および唇側面のデンチャープラークが少なく, 粘膜面および頬側面で多くなる傾向が認められた。デンチャープラークの微生物学的検査の結果, 通性嫌気性グラム陽性球菌が多く認められ, いずれも口腔内常在菌であった。また, Candidaが3種同定されたが, 義歯性口内炎が認められたものはなかった。
    我々は, 義歯装着時に患者または介護者に対して義歯および口腔の衛生管理指導を行っている。しかし, 今回の調査結果から, 現在の指導方法ではその内容が十分理解されているとはいえず, 今後はメインテナンスのあり方も含めて改善していく必要があると考えられた。
feedback
Top