老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
12 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 海野 雅浩
    1997 年 12 巻 1 号 p. 1
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 明子, 鈴木 章, 稲葉 繁
    1997 年 12 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢者におけるう蝕の予防対策に取り組むため, まず将来う蝕が発生する危険性のある者の定義を明確にして, う蝕発生を予測する手段を開発することが必要である。
    本研究は, 日常臨床で使用される唾液を用いた臨床試験および口腔診査から, 高齢者う蝕の発生予測を調べる目的で実施された。対象は, 日本歯科大学歯学部附属病院高齢者歯科診療科に来院した歯根面露出のある患者で, 本研究の主旨を説明し同意を得た61~82歳の62名, 男性31名, 女性31名,(平均年齢71.4歳) である。
    3種類の微生物検査を含む6種類の唾液検査と口腔診査によるベースライン診査の結果と, 1年間に発生した露出根面部う蝕との関係を検討し, 以下の結論を得た。
    1) 初診時のう蝕罹患者率は, 歯冠部が42.0%, 露出根面部が50.0%であった。ベースライン診査1年後のう蝕発生者は, 歯冠部が19.4%, 露出根面部が32.3%であった。
    2) Mutans Streptcocci (SM) 陽性群潜血反応陽性群のいずれも, その陰性群に比べて露出根面部う蝕の発生が有意に高かった。
    3) 露出根面部う蝕発生群の唾液分泌速度はう蝕非発生群と比べて有意に低かった。
    4) SM, 潜血反応, 分泌速度の3試験の組み合わせにより, 露出根面部う蝕の発生予測度が向上した。
    5) ベースライン診査1年後に露出根面部う蝕の発生がみられたもののうち, 67.0%は初診時にう蝕罹患者であった。
  • 山賀 保, 糸坂 直志, 吉田 奈々, 野首 孝祠
    1997 年 12 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    人口の高齢化が進むにつれて, 口腔においても種々の問題が生じるが, その一つである少数歯残存症例においてはオーバーデンチャーの適応症となることも多い。この支台歯として歯根を保存する方法の1つであるノンコーピング法においては, 露出した象牙質を保護する必要がある。
    象牙質においては, 有機成分も多いことから, 著者らは歯質の有機, 無機両成分を強化するタンニン・フッ化物合剤 (HY剤) を義歯床に適用し, 支台歯齲蝕に対して良好な予防成績を得てきた。今回は, 簡便な齲蝕予防法として, HY剤を配合したタンニンセメント (HYc) を支台歯内部に適用する方法を考案した。
    支台歯は歯肉縁から2~3mmの高さまで切断したのち, 根管口部に窩洞形成し, 窩底をHYcにて裏層してからレジンにて充填し, 切断歯面の研磨を十分に行い, 経過観察を行った。
    支台歯は歯肉縁から2~3mmの高さまで切断したのち, 根管口部に窩洞形成し, 窩底をHYcにて裏層してからレジンにて充填し, 切断歯面の研磨を十分に行い, 経過観察を行った。
    この方法は, HYcを支台歯内部に用いて歯質を強化するため, 義歯床に対して齲蝕予防のために特に処置する必要がなく, 高齢者の補綴法として有効であることを観察中である。
  • 第3報診療経過からみた歯科医療の必要性と問題点について
    金 容善, 丹羽 均, 高木 潤, 崎山 清直, 市林 良浩, 神吉 利美, 久山 健, 松浦 英夫
    1997 年 12 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    特別養護老人ホーム (定員300名) と精神薄弱者更生施設 (定員100名) を併設する社会福祉施設において歯科を開設して以来2年6ヵ月の間に, 歯科を受診し実際に何らかの処置を行ったホーム入所者156名の診療経過を分析し, 考察を加えた。歯科には常勤の歯科衛生士が1名配属され, 当講座からは非常勤の歯科医師が1名ずつ週に2回派遣された。
    初診時の年齢分布では, 80歳代が最も多く, 平均年齢は79.7歳で, 男女比は1: 1.7であつた。初診時の主訴の内容は, 義歯関連が55.8%, 腫脹・疼痛が34.0%であり, 加齢とともに義歯関連の主訴が増加していた。受診回数は延べ1, 724回で, 一人平均は11.1回であった。
    処置の内容は, 義歯関連が延べ183名, 局所麻酔下での処置が延べ175名であった。延べ歯数は, 抜歯が248本, 補綴・修復処置は192本, 歯内治療は109本であった。診療が進むにつれて歯内治療と歯冠補綴・根面板が増加し, 義歯関連は減少した。
    2年6ヵ月の間に, 156名のうち19名が亡くなられ, 死亡平均年齢は84.6歳であった。
    施設内に歯科があれば入所者の定期的な受診と先を見据えた診療が可能で, 大きな成果を挙げることができる。しかし, ホーム入所者の口腔衛生状態や全身状態は不良で, 治療に際しては, 誤嚥防止のための患者の姿勢保持や基礎疾患に対する全身管理は必須である。また, 長い年月をかけて顎位が失われ, 残存歯の状態も厳しい症例がほとんどで, 義歯作製にあたっては, 創意工夫が必要である。
  • 三浦 香, 野村 修一, 河野 正司, 紋谷 光徳, 加茂 剛介, 岩片 信吾
    1997 年 12 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢顎関節症患者の実態を把握するため, 60歳以上の顎関節症患者40名を対象に初診時の臨床所見, 診断治療法, 口腔内の状態 (義歯装着者, 咬合支持域数) について調査した。また, 本院総合診療室にて現在治療中, またはリコールで術後管理されている60歳以上の患者と, 口腔内状態を比較した。
    顎関節症患者の主訴は, 疹痛80%, 関節雑音12.5%, 開口障害7.5%であった。症型分類では皿型, IV型の頻度が高く, 女性に重症例が多かった。治療はスプリント療法, 義歯調整を中心とした咬合治療と理学療法の併用が主に行われ, 77.5%の症例で, 症状が消失または軽快した。重症例, 義歯装着者や義歯を必要とする症例, 咬合支持域数の少ない症例は, 治療が長期化した。
    同年齢層の一般歯科受診者に比べ, 顎関節症患者は, 義歯装着者の割合が低く, 咬合支持域数が多いことから, 必ずしも咬合の崩壊は進んでいなかった。しかし, 一度顎関節症を発症すると, 義歯装着者や残存歯の咬合接触が少ない症例では, 治療が長期化する傾向がみられた。
  • 高井 経之, 小笠原 正, 渡辺 達夫, 笠原 浩
    1997 年 12 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    我々は3回の脳梗塞の既往を持つ心房細動を伴った拡張型心筋症患者の歯科治療を経験した。患者は65歳の男性で, 左上犬歯の修復物脱離を主訴として来院した。術前評価として, 脳梗塞後遺症により片麻痺が残っているものの自力歩行は可能であり, 心不全症状はなかった。心エコーでは, 左室内腔の増大, 左室の収縮機能の低下がみられるものの僧帽弁などの閉鎖不全は認められなっかた。さらに慢性心房細動があるが, 安静時心拍数は90回/分, 血圧160/90mmHgであったので, 通常の歯科治療は可能と判断した。
    しかし, 突然死が多い拡張型心筋症であり, 血圧も高めであったので, モニタリング下での慎重な対応が必要であると思われた。常用薬としてワーファリンを内服していたが, TT値は47%であったので, 歓血的処置時の止血に際しては問題ないと判断した。
    実際の歯科治療は, 心電図, 血圧, 心拍数のモニター下にて笑気吸入鎮静法と3%プリロカイン.(1/30万エピネフリン含有) の局所麻酔を併用し, 無痛的な歯科治療を心掛け, 抜髄から前装冠装着までの治療を計6回で行った。治療中は一過性の心拍数の上昇と散発性の心室性期外収縮が数回出現したが, 重篤な合併症を起こすことなく歯科治療を行うことができた。
  • 寺下 邦彦, 新庄 文明, 藤田 正俊, 松谷 文雄, 岩間 総一郎, 後藤 昭彦, 河村 忠成
    1997 年 12 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    大阪市に隣接した松原市において, 歯科医師会が1986年以来実施している成人歯科健診の結果を分析した。
    う蝕の未処置歯数および処置歯数には年代間に大きな差はみられなかったが, 喪失歯数は60歳以上の年齢区分において特に大きかった。この結果は, 一度治療した処置歯におけるう蝕の再発あるいは歯周疾患の罹患の結果として高齢期には喪失歯が増加することを示唆するとともに, 住民の口腔保健の実情が中高年層よりも青年層にかけて比較的に低下している可能性を示しており, 当該地域における早期からの対策の重要性が指摘している。
    健診の受診者は女性の40~59歳が特に多い傾向がみられたが, 診査結果においても, この年齢区分においては女性が男性よりも一人平均処置歯数, 一人平均喪失歯数, DMF歯数ともに有意に大きかった。
  • 新庄 文明, 寺下 邦彦, 藤田 正俊, 松谷 文雄, 岩間 総一郎, 後藤 昭彦, 河村 忠成, 高橋 進吾, 日野 陽一, 多田羅 浩三
    1997 年 12 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    大阪府松原市において歯科医師会が1986年以来実施している成人歯科健診の診査結果と健康状態に関する問診回答の結果を分析した。
    「現在医師にかかっている」と回答した人においては, 総数について一人平均喪失歯数と一人平均DMF歯数が有意に大きく, 年齢区分別には, 20~39歳の一人平均喪失歯数が大きく, 40~59歳の一人平均未処置歯数が有意に少なかった。「大病経験あり」の人においては, 20~39歳の一人平均未処置歯数とDMF歯数が有意に大きかった。
    本研究の結果は, 比較的に若年者において全身の健康と口腔の健康状態の関連が顕著に認められ, 若年者においては健康確保のたあに口腔保健に特に積極的な注意をはらうことが必要であることが示唆された。
  • 三浦 宏子, 荒井 由美子
    1997 年 12 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    我々は, 富士北麓地区にある某町において実施した住民意向調査の結果より, 高齢者の全身健康状態と咀嚼能力自己評価結果に関する解析を行った。
    調査対象は, 対象地域に居住している全住民のうち, 65歳以上80歳未満のすべての高齢者とした。その結果, 主観的健康度と咀嚼能力の自己評価との間では, 年齢を補正した場合でも有意な関連性 (p<0.01) を有することが示された。また, 話の理解度と咀嚼能力自己評価との間にも, 同様に有意な関連性 (p<0.01) を有することが示された。
    これらのことから, 高齢者においては, 咀嚼能力の機能の良否が全身の健康状態に密接に関連していることが示唆された。
  • 冨士田 益久, 木原 秀文, 藤本 嘉治, 吉田 裕, 山田 尚, 米虫 和子
    1997 年 12 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    大阪市東淀川区歯科医師会では, 高齢者歯科保健に役立てる目的で歯科健診を実施し, 口腔内状況を検討した。対象は, 東淀川区内にある6施設の老人ホームでデイケアサービスを利用する高齢者で, 1996年10月~11月に身体状態と口腔内状態を調べ現状を把握した。受診者数は総計124名で, その内訳は男性45名 (36.3%), 女性79名 (63.7%) であり, 平均年齢は75.75±8.19歳であった。合併症では糖尿病 (19.4%), 脳血管疾患 (15.3%), 心臓病 (13.7%), 高血圧 (12.1%) が多く, これらで全体の約60.5%を占めた。口腔清掃については, 歯ミガキ指導を受けたことがある者は21.3%であった。歯の治療に対して「恐い・痛い」と思っている者は12名 (12.9%) あり, 定期的に歯科医院で受診する者は「時々」を含あると17名 (13.7%) であった。口腔内状態は, 軟組織に疾病ありが32名 (25.8%), 歯垢あり74名 (59.7%), 歯石あり71名 (57.3%) と良好ではなかった。歯の状態は, 1人当たりの平均現在歯数が10.5±3.2本で, 年代別で差が認あられたが, 性差はなかった。う蝕罹患者数は, 59名 (47.6%) で, 総現在歯数に占めるう蝕罹患率は18.7%となり, 1993年度に実施した寝たきり高齢者の口腔診査結果と比べて低かった。無歯顎者は29名 (23.4%) であった。義歯の保有者は80名 (保有率64.5%) で, そのうち義歯不適合は16名 (20.4%) にみられた。
    これらの結果, 45.2%に欠損補綴処置が, また48.4%に歯周病の処置が, さらに66.9%に口腔清掃法の改善がそれぞれ必要と認めた。今後, 高齢者にQOLの向上と高齢者歯科保健を推進していく上で, この健診結果を高齢者歯科診療に活かしたいと考える。
  • 栗原 由紀夫, 小野 毅, 鈴木 郁夫, 平川 彰生
    1997 年 12 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    三島市歯科医師会では, 三島市と協力して平成3年4月1日より在宅者訪問歯科診療事業を開始し, 平成8年12月31日までの5年9ヵ月間, 128名の患者の診療に従事した。
    総患者数128名のうち男性51名, 女性77名, 65歳以上の患者は106名 (82.8%), 寝たきり度ランクJ10名, A35名, B40名, C35名であった。寝たきり原因疾患は, 脳血管障害が32.8%と大部分をしめ, また, ADLの状況では, 全面介助を必要とする患者が37名いた。介護者は, 患者の配偶者が40.6%であった。
    主訴は, 義歯に関係するものが67.5%と大部分をしめ, 平行して処置内容も義歯製作, 義歯調整, 床裏装などが圧倒的多数をしめていた。
    本会の在宅診療事業については, 当初より社会保険三島病院の全面的な協力がある。本病院の役割は研修機能と, 後方機能として不測の事態発生時の患者受け入れがある。
    本回の在宅診療事業は, 実施主体である歯科医師会, 三島市 (行政), 社会保険三島病院 (後方支援) の3者が協力しあって, 円滑に運営されている。
  • 西宮 寛, 礒 和博, 篠塚 嚢, 川口 博子
    1997 年 12 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    佐原市香取郡歯科医師会では平成5年度から平成7年度まで, 佐原市における厚生省指定の在宅心身障害 (児) 者歯科保健推進事業を実施し, 本事業の当地区における今後の展望について検討した。
    対象者は, 佐原市在住の福祉手当て受給者172名の内, 本事業の受入れを希望した56名である。実施方法としては訪問歯科保健指導・歯科検診を主体として行い, 歯科治療は必要最小限度の応急処置とした。その結果以下の如き示唆を得た。
    1.当面, 当地区においては, 歯科保健指導に重点がおかれるべきである。
    2.歯科治療に関しては, 交通手段さえ確保できれば通院可能な者も多くおり, 通院の手段を補助すべきである。
    3.個々の在宅心身障害者の置かれた社会的環境およびニーズを考慮した処置方針が必要である。
    4.固定診療施設を設立したとしても, 巡回訪問歯科保健指導・治療は続けるべきである。
    5.在宅心身障害者のための近隣高次医療機関の受入れ体制の確立と, 大学での在宅心身障害者に関する学生教育の充実が望まれる。
    6.将来的には, 開業医の行う往診行為との明確な区分が必要と思われる。
feedback
Top