調製した総義歯の良好な予後を演出するためには, 歯科医師が理論的・技術的な研鐵を積むことも重要であるが, 無歯顎患者の総義歯に対する心理的側面を把握することも重要な事項である。本研究では, 総義歯調製を良好な予後に結びっけるため, 無歯顎患者が総義歯に対しどのような願望を持っているかを検討し, 以下の結論を得た。
1. 人工歯の色調では, シェイド番号A2, B2および104を無歯顎患者は望み, 無歯顎以外の患者では102, B2およびA3を強く望んでいた。このことは, 実際に調製された総義歯に使用した色調よりも, 主として若年者に調製する機会の多い陶材焼付鋳造冠に用いられることの多い色調であった。
2. 人工歯の形態では, ovoid型およびtaper型を無歯顎患者と無歯顎以外の患者共に強く望んでおり, 実際に調製された総義歯に使用した形態の頻度とは異なっていた。
3. 人工歯の大きさでは, モールド番号4および3を無歯顎患者と無歯顎以外の患者共に強く望んでおり, 実際に調製された総義歯に使用した大きさよりも小であった。
4. 歯列弓の形態では, ovoid型を無歯顎患者と無歯顎以外の患者共に強く望んでいた。
5. 義歯床の色調では, pale pinkとclear pinkを無歯顎患者が, pale pinkとlightpinkを無歯顎以外の患者が強く望んでいた。
6. 義歯床の大きさでは, 「できるだけ小さい方が良い」と無歯顎患者と無歯顎以外の患者共に強く望んでいた。
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