要介護高齢者にみられる低栄養はADLや認知機能との関連が指摘され, 誤嚥性肺炎の危険因子とも言われている。そこで今回, 要介護高齢者の低栄養の実態を把握し, 口腔機能との関連を明らかにする目的で本研究を行った。対象は某介護老人福祉施設の利用者104名であり, 1) 栄養アセスメント, 2) ADL, 3) 認知機能, 4) 口腔機能, について調査した。
その結果, 以下の知見が得られた。
1. 血清アルブミンが3.5g/dl以下の低栄養者は, 28.8%であった。また, 身体計測によっても低栄養の存在が認められた。
2. 天然歯において咬合支持が得られず, 義歯によっても回復されていない者は39.4%であった。
3. 食事中にむせを生じるなど嚥下機能が低下した食事の問題ありの者は25.0%であった。
4. 血清アルブミンと上腕周囲長, 下腿周囲長, 上腕三頭筋皮下脂肪厚の計測値パーセンタイルとの間に, 有意な正の相関が認められた。
5. Barthel Indexと血清アルブミン, 上腕筋囲, 下腿周囲長の計測値パーセンタイルとの間に, 有意な正の相関が認められた。
6. 食事の問題ありと評価された者は下腿周囲長, 上腕三頭筋皮下脂肪厚の計測値パーセンタイルにおいて有意に低値を示した。
以上より, 要介護高齢者の低栄養状態が高頻度に見られることが明らかになり, 低栄養の評価には身体計測が有用であることが確認された。また, 低栄養の改善には口腔機能, 特に嚥下機能を考慮した取り組みが必須であることが示された。
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