口腔機能向上は, 介護予防のために非常に重要である。今回, 施設, 病院で介護を受ける高齢者の日常の食事における現状を把握し, 食べこぼしに影響する要因の分析を行い, 機能改善を図るための指針を得ることを目的として本研究を行った。
対象は, 東京都内某介護老人保健施設利用者および静岡県内某長期療養型病床の入院患者95名である。対象者に対し, 摂食機能不全の症状を, 昼食時の観察をもとに評価した。評価は, 摂食・嚥下リハビリテーションを専門とする歯科医師3名, 言語聴覚士1名が行った。摂食・嚥下機能の評価項目から, 食べこぼしの症状に関連すると予測された9項目 (食形態, 食形態の適否, 食事姿勢, スプーンのボール部, 食事の自立度, 食事時間, 先行期 (認知期) 障害, 口唇閉鎖機能, 咀嚼運動) について検討を行い, 以下の結果を得た。
1.
x2検定の結果, 食形態, 食事時間, 先行期 (認知期) 障害, 口唇閉鎖, 咀嚼運動の5項目において, 食べこぼしと有意な関連性が認められた (p<0.05) 。
2.多重ロジスティック解析を行った結果, 口唇閉鎖不全 (p<0.001) と咀嚼運動 (p<0.05) が「食べこぼし」と有意な関連性を示した。
以上の結果から, 摂食・嚥下機能不全の改善には, 食環境, 口腔内環境の整備, 摂食・嚥下機能に関連した口腔機能訓練が必要と考えられた。
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