嚥下機能に関する機能療法について, 加齢による機能減退を中心に据えた専門性の高い機能療法はまだ開発段階にある。我々は機能減退による要介護高齢者の摂食・嚥下障害に対する新しい口腔機能向上のためのシステム開発を目的に簡便な器具を用いた12週間の口腔機能向上のプログラムを実施した。
都内の特別養護老人ホーム利用者18名 (平均年齢83.5±8.4歳) を対象として, リットレメーター
® (オーラルアカデミー社製) およびチューイングブラシ
® (藤原歯科産業社製) を用いた約5分間の簡便な口腔機能向上のためのプログラムを1日1回, 12週間実施した。測定項目は最大咬合力, 最大口唇圧, 安静時唾液分泌量, 刺激時唾液分泌量, 音節交互反復運動の5項目とし, 介入前および4週後, 8週後, 12週後に測定を実施した。また, 各項目の改善率と全身状況との関連について, 統計学的解析を実施した。
介入前と比較してすべての項目で改善傾向がみられ, 最大口唇圧および刺激時唾液分泌量に有意な差が認められた。また, 改善率と全身状況との関連では, 有意な関連の認められた項目は少なかった。これらの結果から, 簡便な器具を用いての継続した口腔機能向上のためのプログラムの実施により, 一定の機能改善を認めることができた。また, 改善率と全身状況の解析から, 年齢などの個人の全身状況に関わらず口腔機能の改善を図れる可能性が示唆された。
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