高齢社会に突入した現在において, 要介護高齢者の口腔ケアに対する知識・技術は多くの職種に普及し, 近年レベルアップしている。より効率よく口腔ケアを行うためには, 口腔内の細菌や全身状態のリスクファクターを簡便に評価し, 口腔ケアシステムを標準化する必要性がある。今回, 要介護高齢者の口腔内でみられる日和見細菌を指標に, 全身的状況, 口腔機能, 清掃状態などの要因と比較し分析を行った。
対象者は, 日和見感染菌の検出がみられた訪問歯科医療を受けた要介護高齢者28名, 平均年齢82.3±7.6歳で, 口腔ケア手技を規格化し, 口腔内カメラによる光学的手法も使用して, 介護者にもわかりやすい方法で口腔ケアの標準化を行った。細菌培養は「日和見感染菌検出キット」を用い, 日常, 易感染性宿主のいる臨床現場で, 口腔・上気道で散見される10種の日和見感染菌について定性分析を行った。
標準的口腔ケアの結果, 日和見感染菌の検出率は低くなったが, 緑膿菌に関して複合感染する率が高く, 検出率も高かった。また, 肺炎桿菌の検出率はより低くなったが, 緑膿菌, カンジタ, MSSAは介入後の検出率は高くなった。口腔ケア介入前後の菌の減少に関連する因子として「歯ブラシ操作;できる」が検出された (p<0.01) 。
したがって, 細菌検査により口腔細菌叢の日和見菌種を調べ, 全身の口腔清掃要因を中心とした関連因子をみることで, これからの口腔ケア方法の一助になることが示唆された。
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