老年歯科医学
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24 巻, 4 号
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原著
  • 阿部 貴惠, 柏崎 晴彦, 山口 友隆, 兼平 孝, 岡田 和隆, 伊藤 耕一, 松原 良次, 井上 農夫男
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 4 号 p. 337-343
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/21
    ジャーナル フリー
    統合失調症患者は, 自己管理の低下や抗精神病薬の副作用などによる口腔環境の劣悪性が指摘されており, 口腔衛生の支援が必要とされている。また, 統合失調症は治療が長期に及ぶため, 長期入院患者の高齢化や退院遅延も問題になっている。近年, 口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防, 摂食·嚥下機能の向上, 栄養改善などに有効であることが報告されているが, 統合失調症患者に及ぼす効果は明らかにされていない。そこで本研究では, 統合失調症で入院中の高齢患者に口腔ケアを施行し, その口腔環境に及ぼす効果について検討した。
    慢性統合失調症のために札幌花園病院·精神科に入院している患者20名 (男性10名, 女性10名, 平均年齢69.2歳) を対象とした。週1回·16週間の歯科医師による口腔ケアを行い, 口腔ケア介入前, 介入8週後および介入16週後に口腔内診査を行った。また, 唾液を採取し, 各種唾液ストレスマーカーを測定した。
    口腔ケア介入により口腔衛生状態, 口臭, 口腔乾燥などの口腔環境の改善を認めた。また, 唾液ストレスマーカーについては, 介入16週後にアミラーゼ活性値が有意に減少した。
    以上より, 統合失調症患者への定期的かつ継続的な口腔ケア介入は, 精神的ストレスを増強することなく口腔環境を改善することが示唆された。
  • 佐藤 仁, 加藤 深雪, 祇園白 信仁, 岩崎 洋子, 豊島 浩実, 塩田 洋平, 成田 達哉, 浜中 一将, 清水 政利, 和泉 憲一
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 4 号 p. 344-353
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/21
    ジャーナル フリー
    機能時における義歯床下組織の負担圧分布様相を解明し, 負担圧分布状態を勘案した義歯製作を行うことで, 顎堤状態の保全が可能と考えられる。本研究は義歯床粘膜面にフィルム状の面圧分布測定センサシートを貼付し, 義歯が機能している口腔内での義歯床下粘膜の負担圧分布様相を, リアルタイムで測定するシステムを構築することを目的とした。その第一段階として, センサを設置した被験義歯による義歯床下組織の負担圧測定システムを構築した。
    総義歯に面圧分布測定センサシートを改良し設置したものを被験義歯とした。センサ設置部位は, 前歯相当部, 口蓋部, 左右犬歯相当部および左右臼歯相当部の計6ブロックとした。測定は中心咬合位および右側方咬合位での咬みしめについて各5回ずつ行った。
    その結果, 前歯相当部の負担圧は, 中心咬合位と右側咬合位では最大を示した。右側咬合位での荷重は, 作業側への荷重負担増加が有意に認められた。同時に平衡側の負担は有意に小となることが認められた。前歯相当部においても側方咬合時に負担荷重が有意に大となることが判明した。基礎的研究において既知となっている様相に近い負担圧分布状態で表示されることが判明した。
    以上の結果から, 改良型センサを使用したリアルタイム可視化システムは, 口腔内での機能時の義歯床下の負担圧分布様相を, 臨床的かつ視覚的リアルタイムに把握するシステムとして有用であると示唆された。
  • 久野 彰子, 菊谷 武, 田代 晴基, 田村 文誉, 濱田 了
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 4 号 p. 354-359
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/21
    ジャーナル フリー
    われわれは口腔内細菌数を口腔ケアのアセスメント指標として用いるため, 試料採取の規格化に取り組んでいる。そこで, 本研究では試料採取のためにスワブにかける圧力が, 採取される細菌数に及ぼす影響について検討した。
    被験者は健康成人35名とし, 舌背から細菌を採取した。試料採取圧は設定した圧のみがかかる装置を用いることで一定とし, 採取圧を5 g, 20 g, 40 gの3種類とした。この3種類の圧によって舌を擦過し, 採取された細菌数を比較した。細菌数測定には誘電泳動インピーダンス法 (Dielectrophoretic Impedance Measurement) を応用した簡易型細菌数測定装置を用いた。
    その結果, 試料の採取圧が高いほど, 採取される細菌数が多くなり (p<0.01), 採取圧5 gと20 g, および5 gと40 gの間で統計学的有意に採取される細菌数に差が認められた (p<0.01)。試料採取のために舌を擦過する圧には個人差があるため, アセスメント指標として口腔内細菌数を測定するためには, 試料採取圧を一定にする必要性が示された。スワブの安定性と被験者の感覚から, 20 gの圧が舌からの試料採取には適切であると考えられる。
臨床報告
  • 間島 徹, 阪本 知二
    原稿種別: 臨床報告
    2009 年 24 巻 4 号 p. 360-365
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/21
    ジャーナル フリー
    歯科関連の異物誤飲·誤嚥は, 歯科治療時だけでなく, さまざまな状況下でも生じる可能性がある。多くの場合, 支障なく消化管を通過して排出されるが, 食道びらん, 虫垂炎, 気道閉塞や肺炎といった重篤な合併症を生じることもある。今回われわれは, 2005年12月から2008年12月の期間に当院内視鏡科で治療した歯科関連の異物誤飲·誤嚥症例7例を調査した。
    患者の内訳は男性5例, 女性2例であり, 平均年齢70.7±20.5歳であった。異物が胃に停留したものは3例, 気管支に停留したものは2例, 食道, 咽頭に停留したものはそれぞれ1例ずつであった。すべての異物が内視鏡あるいは気管支鏡により摘出可能であった。摘出物は歯科補綴物や根管治療器具, 脱落歯であった。
    誤飲·誤嚥を防止するために適切な予防策をとることに加えて, 合併症の誘発を避けるために, 各施設でこれらの事故に対するガイドラインが作成されることが推奨される。
調査報告
  • 中島 丘, 浅野 倉栄, 三宅 一徳, 山本 真樹, 岡田 春夫, 礒部 博行, 加藤 喜夫, 長坂 浩, 深山 治久
    原稿種別: 調査報告
    2009 年 24 巻 4 号 p. 366-373
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/21
    ジャーナル フリー
    高齢者歯科医療の場に発生しやすいインシデント, アクシデントを収集することを目的に, 横浜市緑区·青葉区歯科医師会に所属する187施設へのアンケート調査を行った。
    97施設から回答があり (回収率51.9%), 116件のインシデント, 34件のアクシデントが収集できた。65歳以上の高齢者のインシデント事例では, 報告が多い事項から「診療補助」, 「補綴」, 「保存」, 「受付·対応」, 「投薬」などであった。アクシデント事例は「保存」, 「投薬」, 「口腔外科」, 「受付·対応」, 「説明·同意」, 「インプラント」などの報告があった。
    原因は, 確認不足, 不注意, うっかりミス, 思いこみなど多岐にわたっていた。すべての年齢層を対象とした他の調査に比較すると, 高齢者特有のインシデント, アクシデントも散見された。
  • 水橋 史, 小出 馨, 戸谷 収二, 北川 哲太郎, 森田 修己
    原稿種別: 調査報告
    2009 年 24 巻 4 号 p. 374-380
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/21
    ジャーナル フリー
    本研究では, 口腔乾燥患者に対する各種検査について口腔乾燥患者を対象に調査し, 年齢層の影響とともに各検査の関係を比較検討することを目的とした。
    被験者は口腔乾燥患者37名とし, 被験者を65歳未満の群13名と65歳以上の群24名の2群に分類した。検査は, 安静時唾液, サクソンテスト, 舌粘膜における口腔水分量, RSSTの4つの方法で行った。分析は, 65歳未満の群と65歳以上の群における各検査の比較をマン·ホイットニ検定により行った。また, それぞれの検査の相関関係をスピアマンの順位相関係数の検定により分析した。
    年齢による65歳未満と65歳以上の2群間では, 各検査の測定値に有意差は認められず, 安静時唾液, サクソンテスト, 口腔水分量は正常値よりも低値を示した。各検査の相関関係を分析した結果, 65歳未満の群においては各検査項目間に有意な相関関係は認められなかった。65歳以上の群においては, サクソンテストとRSST間 (r=0.44, p<0.05) に有意な正の相関関係を認めた。
    口腔乾燥患者を対象に日常臨床で行われている各検査を行った結果, 年齢にかかわらず口腔乾燥を示すことが明らかとなり, 安静時唾液, サクソンテスト, 口腔水分量の測定はいずれも有用な検査方法であるといえる。またRSSTはサクソンテストと相関関係があり, 刺激唾液が少ないほど嚥下の機能低下を生じている可能性が示唆された。
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