老年歯科医学
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24 巻, 1 号
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原著
  • -口腔ケア・マネジメントの確立に向けて-
    吉田 光由, 菊谷 武, 渡部 芳彦, 花形 哲夫, 戸倉 聡, 高橋 賢晃, 田村 文誉, 赤川 安正
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    口腔ケア・マネジメントを確立していくうえで, 肺炎リスクを疑うべき口腔の問題を明確にしておくことは必須の課題である。そこで今回, 全国19カ所の介護施設入所者172名 (男性46名, 女性126名, 平均年齢84.0歳) を対象に肺炎リスク群を選定し, それらの口腔にかかわる問題点を検討した。その結果, スクリーニングにより選別された肺炎リスク群は56名 (男性18名, 女性38名, 平均年齢84.0歳) であり, これらの者では, 要介護度が有意に高く, 開口保持, 咀嚼運動が困難やできない者が有意に多いことが示された (p<0.05) 。以上のことは, 口腔機能の低下した者で肺炎リスクが高まることを示唆しており, 歯科医療者との連携による口腔機能の評価が効果的で効率的な口腔ケア提供体制の確立には重要であることを示している。
  • 川村 泰行, 新庄 文明, 福田 英輝
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 歯科診療所において長期間のメインテナンスケアーを利用している, 中高年期の受診者の歯の喪失に関連する危険因子を明らかにすることである。
    大阪市内の2つの歯科医院のいずれかにおいて, 15年間以上メインテナンスを受け, かつ2004年7月-10月の4カ月間に来院した者のすべてを対象とした。対象者の1年あたり喪失歯数は, 初期治療終了後の1回目のメインテナンス受診開始時(ベースライン時)と, 上記期間最終の来院時の歯の本数の差により算出した。
    最終来院時の対象者平均年齢は67.5歳で, 対象者371人の平均メインテナンス期間は, ベースライン時年齢が40歳未満は27.5年間, 40歳以上は25.8年間であった。
    第三大臼歯を除く, 年平均喪失歯数は40歳未満が0.040本, 40歳以上が0.115本であった。重回帰分析の結果, ベースライン時年齢が40歳未満は, 現在歯数が少ないことと4mm以上の歯周ポケットの有無が年喪失歯数との関連が示された。一方, ベースライン時年齢が40歳以上は, 失活歯数, 4mm以上の歯周ポケットの有無, および糖尿病の有無と喫煙習慣が年喪失歯数との関連が示された。本研究の結果, 長期メインテナンスを継続的に実施する場合でも, 40歳以降の受診者については歯周病だけではなく, 喫煙習慣および糖尿病などの健康管理に配慮するとともに, 生涯を通じて歯髄の失活を防ぐことが中高年期における歯の喪失の予防に重要であることを示唆している。
  • 高橋 賢晃, 菊谷 武, 田村 文誉, 須田 牧夫, 福井 智子, 片桐 陽香, 戸原 雄
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 介護老人福祉施設に入居する要介護高齢者に対して摂食時の外部観察評価と嚥下内視鏡検査 (以下, VE検査) を行い, VE検査で観察される舌の動きが咀嚼運動の評価として適切であるか検討することを目的とした。
    対象は, 2007年4月から2008年3月の間に, 摂食機能の評価を希望した介護老人福祉施設に入居する要介護高齢者29名 (平均80.9歳, 男性14名, 女性15名) である。対象者が日常摂取している食事を用いて摂食時の外部観察評価およびVE検査を施行し, それに基づき食形態指導を行った。さらに, 本研究にあたり記録された外部観察とVE検査のビデオ画像より, 以下の項目について評価した。評価項目は, 外部観察評価では下顎の回転運動, 口角の引きとし, VE検査では, 咀嚼機能評価として舌根部の側方運動, 嚥下機能評価として, 咽頭残留および喉頭侵入・誤嚥とした。これらの関係について検討した。
    舌根部の側方運動は34.5%が不良であり, 咽頭残留は62.1%, 喉頭侵入・誤嚥は48.3%に認められた。評価項目のうち, 外部観察評価の下顎の回転運動とVE検査による舌根部の側方運動の評価との間に (p<0.001) , 口角の引きと舌根部の側方運動との間に (p<0.001) , 有意な関係が認められた。また, これらの評価を検討した結果, 評価に応じた食形態の指導をしていた。
    VE検査で観察される舌根部の動きの特徴と外部観察評価とを組み合わせることで, 咀嚼時の舌運動機能を適切に評価できる可能性が示された。
  • 寺岡 加代, 森野 智子
    原稿種別: 原著
    2009 年 24 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    高齢者のQOLに影響を与える意欲と口腔機能および背景因子との関連性を検討した。
    調査対象は, 介護老人福祉施設在住の要介護高齢者140名 (男性28名, 女性112名, 平均年齢 : 84.2±7.7歳) である。
    意欲の指標は, 介護者の観察による客観的評価法であるVitality Indexを使用した。また口腔機能として, 現在歯数, 簡易機能歯ユニット, アイヒナーインデックス, 改定水飲みテスト, その他の背景因子として, 年齢, 性別, 要介護度, 食形態, 食事の自立度, 体格指数, 血中アルブミン, 共存疾患, 認知機能を評価し, 意欲との関連性を分析した。
    その結果, 意欲に関連する因子は, 軽中等度の要介護高齢者では簡易機能歯ユニット, 食事の自立度であり, 重度の要介護高齢者では改定水飲みテスト, 認知機能であった。したがって, 要介護高齢者の意欲には, 口腔機能の指標である臼歯部の咬合支持や嚥下機能が関連することが示唆された。
調査報告
  • 古屋 純一, 織田 展輔, 長谷 理恵, 阿部 里紗子, 鈴木 哲也
    原稿種別: 調査報告
    2009 年 24 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    岩手医科大学附属病院歯科医療センターにおける1年6カ月の摂食・嚥下リハビリテーションの現状とその効果を明らかにするために, 口腔リハビリ外来を受診した患者104名 (男性64名, 女性40名) について臨床統計学的分析を行い, また, 介入による摂食・嚥下障害臨床的重症度 (DSS) と栄養摂取法の変化を検討した。患者の多くは, 頭頸部腫瘍, 脳血管障害を原疾患とする高齢者であり, 口腔期と咽頭期の障害が多く観察された。約70%の患者で摂食機能療法と専門的口腔ケアが必要で, 補綴歯科処置が必要な患者は約30%存在した。DSSのレベルは, 介入によって有意に改善し (p<0.001) , 特に食物誤嚥, 水分誤嚥, 口腔問題レベルで良好であった。唾液誤嚥から機会誤嚥のレベルが71%存在したが, 介入後は45%に減少した。栄養摂取法は, 初診時においては, 経管栄養のみで絶食が42%であったが, 介入後は21%に減少した。初診時のDSSと栄養摂取法の相関係数は0.52で, 摂食・嚥下機能と栄養摂取法の乖離が生じていたが, 介入後の相関係数は0.76と強い相関がみられ, 乖離が改善されたと考えられた (p<0.001) 。DSS改善の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果では, 直接訓練の実施がレベル改善に寄与していた (p<0.01) 。以上より, 当院における摂食・嚥下リハビリテーションの有効性が示唆された。
  • 伊藤 加代子, 葭原 明弘, 高野 尚子, 石上 和男, 清田 義和, 井上 誠, 北原 稔, 宮崎 秀夫
    原稿種別: 調査報告
    2009 年 24 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/06/08
    ジャーナル フリー
    2006年から介護予防事業の一つとして口腔機能の向上が取り入れられた。その評価項目の1つであるオーラルディアドコキネシスの測定法には, ICレコーダーで録音し回数をカウントする方法 (IC法) , 電卓のメモリー機能を用いる方法 (電卓法) , ペンで点を打つ方法 (ペン打ち法) などがある。今回われわれは, オーラルディアドコキネシス回数を自動的に測定することができる新しい口腔機能測定器「健口くん」を開発した。本研究の目的は, 従来のIC法, 電卓法および「健口くん」を用いる方法でオーラルディアドコキネシス回数を測定し, その結果を比較検討することである。
    79歳の高齢者49名 (男性26名, 女性23名) , および80歳の高齢者355名 (男性175名, 女性180名) を対象とした。対象者に, /pa/, /ta/, /ka/の順番でそれぞれ5秒間できるだけ早く繰り返し発音するように指示し, IC法, 電卓法, 健口くん法で測定した。健口くん法による平均値は/pa/で6.0±0.9回/秒, /ta/で6.0±0.9回/秒, /ka/で5.7±0.8回/秒であった。健口くん法とIC法には有意な高い相関が認められた。電卓法では相関が低く, 1秒間に7.0回を過ぎると電卓でのミスカウント数が大きくなっていた。電卓のキーを叩くタッピング運動の速度には限界があるため, 正確に測定できない可能性があると思われた。したがって, 新しい口腔機能測定器を用いる健口くん法は, オーラルディアドコキネシス回数の測定に有用であることが示唆された。
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