老年歯科医学
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25 巻, 2 号
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総説
原著
  • -地域包括支援センター職員の口腔に関するアセスメントの実態-
    堤 千代, 原 等子, 宮林 郁子
    原稿種別: 原著
    2010 年 25 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    予防給付における口腔機能向上加算サービスは, 平成18年4月の介護保険制度改正から実施されている。しかし, その給付実績は, 運動器機能向上と比較して低調である。本研究の目的は, 指定介護予防支援事業に従事している地域包括支援センター職員を対象に, 口腔機能向上サービスに対する意識や口腔に関するアセスメントの実態を明らかにし, 口腔機能向上サービスのプラン立案に及ぼす影響について検討することである。郵送法で無記名による自記式質問紙調査を行い, 有効回答467名を対象に解析した結果, 口腔機能向上のサービスの効果を認めている者は半数に満たず (47%), 口腔観察の実施者は低く (17~25%), 口腔観察者としての自覚をもつ者も低かった (14%)。口腔機能向上サービスのプラン立案数を促進するアセスメント項目は, 「治療の必要な歯や歯肉の観察 (p<0.001) 」, 「食物残渣や歯垢の観察 (p<0.01) 」であり, 「義歯や歯の清掃方法の確認」は, 口腔プラン件数の増加に対し負の影響を及ぼしていた (p<0.001)。口腔機能向上サービスの実施において, プランナーの影響は大きい。プランナー自身が第一次スクリーニングを担当する専門職としての自覚をもち, 口腔に関するアセスメント能力を向上させる必要がある。
  • 寺岡 加代, 森野 智子
    原稿種別: 原著
    2010 年 25 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    高齢者の意欲 (Vitality Index) の1年後の変化ならびに変化に関連する背景因子の分析を目的とする縦断調査を実施した。
    調査対象は介護老人福祉施設在住の要介護高齢者118名 (男性25名, 女性93名, 平均年齢 : 84.2±7.7歳) である。
    意欲の評価指標は介護者の観察による客観的評価であるVitality Indexを使用した。また意欲の背景因子のうち口腔機能として, 現在歯数, 簡易機能歯ユニット, 改訂水飲みテスト, その他の因子として, 年齢, 性別, 要介護度, 食形態, 食事の自立度, 体格指数, 血中アルブミン値, 共存疾患数, 認知機能を評価した。
    分析の結果, 対象者の約6割は1年後にVitality Indexが低下すること, ならびに低下に関連する因子は食事動作の自立度であることが認められた。したがって, 要介護高齢者の意欲の低下を予防するためには, 食事動作の自立を維持することが重要であることが示唆された。
  • 植田 耕一郎, 向井 美惠, 森田 学, 菊谷 武, 相田 潤, 渡邊 裕, 戸原 玄, 中山 渕利, 佐藤 光保, 井上 統温, 飯田 貴 ...
    原稿種別: 原著
    2010 年 25 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    摂食·嚥下障害に対する義歯型の補助具が, 舌, 頬, 口唇, 軟口蓋などの運動や感覚の補助, 安定した咬合位の確保, および咀嚼や嚥下機能の維持, 改善のために使用されている。しかし, 義歯型補助具の使用状況や適応患者がどの程度存在するかの実態は把握されていない。そこで歯科診療所3,000カ所, 歯学部付属病院29カ所, 一般病院歯科500カ所を対象に, 郵送法による質問紙自記入方式によって義歯型補助具に関する実態調査を行った。
    義歯型補助具作製の有無は, 歯学部付属病院および一般病院歯科の全体で, 「ある」が34.3%, 「ない」が65.3%であり, 歯科診療所全体では「ある」が3.0%, 「ない」が96.9%であった。補助具作製が行われない理由は「費用弁償がない」「補助具に関心がない」が上位であった。
    全国の義歯型補助具に関する臨床推計の結果, 必要な義歯型補助具のうち, 歯学部付属病院では4.5%, 一般病院歯科では53.8%, 歯科診療所では82.1%が作製されていなかった。義歯型補助具が適応とされる患者は年間16,368例であり, それに対して約11,922例に義歯型補助具が作製されていないことが推計された。さらに要介護高齢者214名を対象に摂食·嚥下機能の調査を行い, そのうちの2割ほどが義歯型補助具の対象になることが推察され, 器質的ばかりでなく, 脳卒中や認知症をはじめとする運動性の摂食·嚥下障害においても潜在的需要が少なからず存在することが示唆された。
臨床報告
  • 中山 渕利, 戸原 玄, 阿部 仁子, 飯田 貴俊, 井上 統温, 佐藤 光保, 和田 聡子, 植田 耕一郎
    原稿種別: 臨 床 報 告
    2010 年 25 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは口底癌術後に重度の摂食·嚥下障害を併発した症例に対して, バルーン拡張法を行った一症例について報告する。
    症例は60歳男性で, 口底癌のため, 当院の口腔外科にて腫瘍切除術を行った。術後に重度の摂食·嚥下障害が認められたため, 当科に精査および訓練を依頼された。初診時, 咀嚼や食塊の送り込みなどの口腔期の障害に加えて, 喉頭挙上, 食道入口部開大の障害が認められた。そこで, 栄養方法を経鼻経管栄養法から間欠的経管栄養法に変更し, バルーン拡張法を行った。バルーン拡張法を開始して4週間後の嚥下造影検査において, 咽頭残留の減少, 喉頭挙上量と食道入口部の開大量の増大が認められたため, バルーン拡張法を終了し, 全粥とペースト状の副食の経口摂取を開始した。その後1年3カ月が経過した時点では, 食道入口部の開大量と嚥下圧はわずかに減ったものの, 咽頭残留は認められなかった。今回の症例により, バルーン拡張法は口底癌術後に食道入口部の開大不全が認められた患者に対して有効な訓練手技である可能性が示唆された。また, この症例においてバルーン拡張法終了後の後戻りはないと推測した。
調査報告
  • RSST評価からの一考察
    浜元 一美
    原稿種別: 調 査 報 告
    2010 年 25 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    歯科衛生士は, 口腔機能に関する評価を行う一職種として, 評価を行うとともに介護予防にかかわる必要がある。K女子短期大学歯科衛生学科では, 学生の高齢者施設における歯科保健指導や口腔機能評価に関する実習を取り入れ, 集団を対象とした歯や義歯の清掃方法や嚥下に関する講話を行うとともに, 個別に口腔清掃および口腔機能評価を実施している。しかしながら, 要介護高齢者に対する口腔機能訓練の実施には至っていない。本報告では, 歯科衛生士学生による要介護高齢者に対する口腔機能評価実施の取り組みを通して, その結果を紹介した。要介護高齢者62名の対象者について, RSSTの評価結果が3回未満の者をA群, 3回以上の者をB群とし, オーラル·ディアドコキネシスおよび舌の運動に関する評価結果を比較した。その結果, オーラル·ディアドコキネシスの評価結果は, 両群ともにそれらの回数は低く, A群とB群間で, /pa/, /ta/, /ka/, その繰り返しのすべてで有意差は認められなかった。舌の運動の評価結果は, A群よりもB群のほうが「左右往復可能」「上下往復可能」の者の割合が多かった。ただし, 今回の評価からは, 舌の運動の速度やリズムなどについては不明であった。両群ともに, 口腔ケアを行ってから各口腔機能評価を行い, 誤嚥性肺炎などのリスクを回避する必要性が示唆された。
  • 杉山 明子, 玉井 利代子, 伊藤 榮一, 岡 琢弓, 鎌田 政善, 鈴木 康生, 清浦 有祐
    原稿種別: 調 査 報 告
    2010 年 25 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    高齢者の口腔内から分離したカンジダ叢 23菌株の抗真菌薬に対する感受性を調べた。カンジダ叢 の内訳はCandida albicansが21菌株, Candida tropicalisが2菌株であった。それらの菌株の各種抗真菌薬に対する最小発育阻止濃度を酵母真菌薬剤感受性キットを使用して測定した。抗真菌薬はamphotericin B, fluconazole, itraconazole, voriconazole, flucytosineの5種類を用いた。その結果, Candida albicansの2菌株とCandida tropicalisの1菌株がitraconazoleに対して耐性を示したが, その他に上記の薬剤に対して耐性をもつ菌株は認められなかった。
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