老年歯科医学
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26 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 服部 万里子
    原稿種別: 総説
    2011 年 26 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル フリー
    It has been twelve years since Nursing Care Insurance was introduced in Japan. The population of Needed Long-Term Care exceeded five million in 2012, which is twice of that in 2000, the year the insurance started. The majority of them are over 85 years old. Care manager supports nursing-care service synthetically by assessing the need of Needed Long-Term Care and preparing plans for care.
    At care management, the condition of oral is hard to figure out just by seeing from outside and it is also difficult to let people open their mouths. This is the reason why the observation of oral condition is missed in many assessments of care needs. Most of the time both senior citizens and caregivers do not mention about their oral conditions unless they have pain or problems in biting. The problems of oral are gathered as“consumption ability”.
    In the research Hattori did in 2011, which objected care managers, the existence of dentistry in assessments was asked. Thirty-one percent answered that it is barely included and 33 percent answered that 10 percent of the assessments includes it. For the question, which asked about cooperation with dentists in the stage of care planning, 36 percent answered almost none and 52 percent answered that it is carried only for about 10 percent of the total case. It is clear that the cooperation with dentists and care managers is very little in the actual situations.
    It is required to not giving up eating by using mouths, to prevent infectious diseases by oral care and to position the management of tooth loss or conformity of artificial tooth.
原著
  • 内藤 善仁, 成田 達哉, 塩田 洋平, 近藤 雄学, 福本 宗子, 竹内 健, 由木 智, 祇園白 信仁
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル フリー
    咀嚼嚥下において舌は重要な役割を担っており, 咀嚼運動で嚥下に適した食塊を形成し, 形成された食塊を咽頭に正しく送り込むことが舌運動として必要不可欠である。本研究では, 舌運動の評価を行うために若年有歯顎者および高齢有歯顎者の一連の咀嚼過程における口蓋への舌接触圧の変化に着目し, 加齢による咀嚼運動の変化の中で舌運動がどのような影響を受けているかを解明することを目的とした。
    被験者は, 20歳代の若年有歯顎者11名 (Y群) および65歳以上の高齢有歯顎者11名 (E群) とし, 口蓋床に設置した圧力センサにてグミゼリー咀嚼時における舌接触圧を測定した。分析項目は最大舌接触圧, 舌接触時間, 舌接触圧積分値および咀嚼全過程のトータル時間とトータル舌接触時間の比率 (TDT/MT : Ratio of total duration time to mastication time) とした。
    最大舌接触圧は, 全咀嚼期におけるすべてのセンサでY群およびE群間に有意差を認めなかった。舌接触時間およびTDT/MTは, 全咀嚼期の口蓋後外側部以外の部位においてY群に比較してE群で有意に大きい値を認めた (p<0.05)。舌接触圧積分値は, 全咀嚼期の口蓋後外側部でY群に比較してE群で有意に小さい値を認めた (p<0.05)。
    以上より, 若年有歯顎者と高齢有歯顎者の咀嚼時舌運動様相を比較すると高齢有歯顎者では加齢による種々の変化に対し, 口蓋後外側部を除く広範囲での舌接触時間を延長することで咀嚼時の食塊形成に必要な仕事量を補償していると推察された。
  • -第1報 : 健常者の開口力, 握力および年齢との比較-
    戸原 玄, 和田 聡子, 三瓶 龍一, 井上 統温, 佐藤 光保, 飯田 貴俊, 鰕原 賀子, 岡田 猛司, 島野 嵩也, 石山 寿子, 中 ...
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル フリー
    超高齢社会である日本では摂食·嚥下障害への対応は急務であるため, 簡便な評価方法が過去に複数考案されてきた。ただし, いずれの評価方法も嚥下もしくは咳反射の有無や可否などを観察するものであり, 嚥下の強さの判定を目的とする簡便なテストはなかった。嚥下時に収縮する舌骨上筋のうち複数の筋肉が開口筋であることに着目して, 嚥下機能の評価を目的として開口力測定器を作成し, 基礎的なデータを採取するために平均年齢44.7±12.6歳, 64名の健常者に対して開口力の測定を行った。対象者全員の開口力の平均は約8 kg, 男性は約10 kg, 女性は約6 kgであり, 男性の筋力が有意に高いが年齢との開口力の相関は認められず, 過去に報告された結果とも同様の数値が得られた。また, 身体他部位の筋力である握力と開口力は有意に相関したことからも, 開発した筋力計を用いて有効な評価ができていると考えられた。また, 健常な60代の舌骨上筋には加齢に伴う筋力低下がみられなかった。
  • 堤 千代, 原 等子, 宮林 郁子
    原稿種別: 原著
    2011 年 26 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル フリー
    予防給付における口腔機能向上加算サービスの給付実績は, 全国的に低調である。その要因を明らかにするためにわれわれは, 口腔機能向上サービスのプラン立案に関わる指定介護予防支援事業に従事している地域包括支援センター職員を対象とした実態調査を行い, 口腔機能向上サービスプラン立案を促進する影響要因について報告した。本調査は続報として阻害要因に着目した分析を行った。
    郵送法で無記名による自記式質問紙調査を行い, 有効回答447名を対象に解析した結果, 口腔プラン立案を全く行っていないプランナーが多い反面, 担当案件中に口腔機能に問題があると思う案件も認識していた。口腔機能に問題があると思う件数と口腔プラン件数の差に影響する, プランナーが考える阻害要因は, 利用者·家族の認識不足がある (p<0.001), サービス提供者の認識不足がある (p=0.003), プランナーの認識不足がある (p=0.02) であり, 利用者からの希望がないは負に有意であった (p=0.01)。地域には口腔機能向上サービスが必要な対象者が潜在している可能性があり, これらの人々を適切に介護予防サービスにつなげるためには, サービスの必要性に対する認識の向上が必要であり, この啓発活動にもプランナーの役割が期待される。
臨床報告
  • 須佐 千明, 三串 伸哉, 尾崎 研一郎, 村田 志乃, 鈴木 瑠璃子, 高島 真穂, 梅田 慈子, 柴野 荘一, 中根 綾子, 植松 宏
    原稿種別: 臨 床 報 告
    2011 年 26 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/20
    ジャーナル フリー
    定型抗精神病薬の長期服用によって, オーラルジスキネジアが発現することが知られている。オーラルジスキネジアは口腔領域に認められる不随意運動であり, 難治性である場合が多い。今回, われわれは咀嚼時のみにジスキネジアを生じた症例を経験したので報告する。
    患者は64歳の女性で, 舌の不随意運動による咀嚼困難を主訴に来院した。既往歴として, うつ病があり10年以上抗精神病薬を服用していた。咀嚼ができないため食事摂取量が減少し, 体重が減少していた。他院にて遅発性ジスキネジアと診断され薬物治療が行われていた。当科初診時の評価では, 安静時および舌の随意運動時にジスキネジアは出現せず, 水分など咀嚼を伴わない食塊の嚥下は正常であった。一方, 固形物は咀嚼中に口腔周囲および舌にジスキネジアが出現し, 食塊形成が困難であった。そこで栄養摂取量を確保するために食事摂取方法の指導を行った。神経内科にて薬物治療を継続しながら, 機能訓練としてガム咀嚼の訓練を指導したが, 明らかな症状改善を認めなかった。しかし初診から5カ月後, ハロペリドールの内服開始直後にジスキネジアが消失し, 常食摂取可能となり体重増加を認めた。
    本症例では, ジスキネジアが咀嚼時のみに出現した点で希有な症例であった。ジスキネジアによる摂食·嚥下障害を生じ, また治療に長期間を要したことから, 機能状態に応じた食事摂取方法の指導を行うことが重要であった。
講演抄録集
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