老年歯科医学
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29 巻, 2 号
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原著
  • 原 豪志, 戸原 玄, 近藤 和泉, 才藤 栄一, 東口 髙志, 早坂 信哉, 植田 耕一郎, 菊谷 武, 水口 俊介, 安細 敏弘
    2014 年 29 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 2014/10/16
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術は,経口摂取が困難な患者に対して有用な栄養摂取方法である。しかしその適応基準はあるが,胃瘻造設後の経口開始基準や抜去基準はない。 われわれは,胃瘻療養中の脳血管障害患者の心身機能と摂食状況を,複数の医療機関にて調査したので報告する。133 名 (男性 72 人,女性 61 人)を対象とし,その平均年齢は77.1±11.3 歳であった。患者の基本情報,Japan Coma Scale (JCS),認知症の程度,Activities of daily living (ADL),口腔衛生状態,構音・発声の状態,気管切開の有無,嚥下内視鏡検査 (Videoendoscopic evaluation of swallowing,以下 VE)前の摂食状況スケール (Eating Status Scale,以下 ESS),VE を用いた誤嚥の有無,VE を用いた結果推奨される ESS (VE 後の ESS),の項目を調査した。 居住形態は在宅と特別養護老人ホームで 61.3%を占め,認知症の程度,ADL は不良な対象者が多かったが,半数以上は口腔衛生状態が良好であった。また,言語障害を有する対象者が多かった。対象者の82.7%は食物形態や姿勢調整で誤嚥を防止することができた。また,VE 前・後の ESS の分布は有意に差を認めた (p<0.01)。胃瘻療養患者に対して退院後の摂食・嚥下のフォローアップを含めた環境整備,嚥下機能評価の重要性が示唆された。
  • 村松 真澄, 守屋 信吾
    2014 年 29 巻 2 号 p. 66-76
    発行日: 2014/10/16
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    全国の介護施設(介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設)の口腔ケアに関する看護管理的な取り組みの実態を明らかにするために,看護管理者を対象に無記名自記式質問紙調査を郵送法で実施した。質問紙は 2,947 施設に郵送し,質問紙の回収施設は 800 施設,回収率 27.1%であった。有効回答と判断された 740 部 (25.1%)を分析対象とした。 「口腔ケアは,ヘンダーソンの『看護の基本となるもの』によって用いられる看護の質の指標の 1 つとなっていますか」に「はい」と回答した施設は 80.4%であったこと,介護施設ではケアの担い手である看護師や看護助手・介護福祉士・介護士などの教育が 十分に行われていないこと,口腔アセスメント表を使用している施設は 2 割に満たなく,口腔ケアの看護手順があるという施設が半数に満たないこと,などが明らかとなった。歯科との連携があると回答した施設が 9 割を超えていたが,口腔機能維持管理体制加算を算定している施設は 40.3%,口腔機能維持管理加算を算定している施設は 15.7 %であった。 また,介護施設のうち,介護療養型医療施設では看護師が多く配置されているので看護師が口腔ケアの担い手になり,口腔ケアの標準的看護手順がある割合が高かった。今後の口腔ケアに関する看護管理的取り組みの課題は,入居者の口腔衛生状態を維持向上させるためには,看護,介護スタッフへの教育体制の整備および口腔アセスメントと口腔ケアの看護手順の整備,そして歯科との連携体制を整備することである。
調査報告
  • 濵本 有美, 木原 琢也, 三村 純代, 熊谷 宏, 田地 豪, 二川 浩樹
    2014 年 29 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2014/10/16
    公開日: 2014/10/25
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎えた日本では,高齢者の誤嚥性肺炎が増え問題となっている。その誤嚥性肺炎を防止するためにも,口腔嚥下機能の低下に合わせた高齢者用食品が必要であり,現在は誤嚥を防止する目的で液状食品や飲料に適度なとろみを付与する増粘剤が広く利用されている。しかし,これまでの研究では増粘剤に関する物性解析がまだ十分に進んでいないのが現状である。そこで本研究では,嚥下食調理時に使用される増粘剤の濃度,添加する味,温度がテクスチャーと離水率に与える影響について検討を行った。 濃度別試料は,増粘剤の量を調整することで変化させ,味別試料は,甘味・塩味・酸味を溶媒に加えて作製した。これらの各試料を,5℃/25℃/37℃に調整した後,それぞれテクスチャー解析し,硬さ・凝集性・付着性を求めた。離水率は,試料表面にろ紙を置き離水を吸い取り,ろ紙の重量を測定することにより求めた。 物性評価の結果,濃度や温度の変化に関わらず,硬さ・凝集性・付着性のほぼすべてが嚥下食ピラミッドの開始食を示し,本研究における増粘剤は濃度および温度によって物性が大きく変化しないことが示唆された。しかし,味の添加による物性評価から,増粘剤に酸味や塩味を添加すると,まとまりにくくなる可能性があると考えられた。離水率測定の結果,酸味の試料の離水率が大きく,酸味を添加することにより食品のテクスチャーは変化しやすくなると示唆された。
講演抄録集
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