老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
29 巻 , 4 号
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原著
  • 力丸 哲也, 大倉 義文, 栢 豪洋
    2015 年 29 巻 4 号 p. 329-339
    発行日: 2015/04/08
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    近年,高齢者における介護予防やリハビリテーションの手段として,口腔ケアは注目されている。これまでの研究で口腔内ブラッシング等の口腔ケアと大脳活性化との関連が報告されてきたが,口腔内ブラッシング刺激と大脳前頭前野の活性化との関連は不明瞭な点も多い。本研究では,成人若年男性 13 名を対象に口腔内ブラッシング刺激による大脳前頭前野の活性変化について非侵襲的な脳機能イメージングである近赤外線分光法を用い検討した。 口腔内ブラッシングの一つである歯肉部のブラッシング(歯肉マッサージ)は,歯面のブラッシングと同様に,大脳前頭前野の血流増加を示した。特に,前頭前野の機能局在部位である左前頭前野の腹外側(VL)領域と学習系課題遂行時に活性化される左背側前頭皮質領域において有意な血流増加が認められた。しかしながら,その血流増加作用は,対照課題として用いた学習系課題による血流増加作用に比べ低かった。 歯面ブラッシングや歯肉マッサージの刺激は,学習系課題と比べ作用は小さいものの,機能局在部位である左前頭前野腹外側(VL)領域と左背側前頭皮質領域の血流増加作用を示した。これらの機能局在部位における血流増加は同領域の神経活動の活性化を示しており,口腔内ブラッシング刺激が大脳前頭前野の活性変化を介して介護予防や認知機能に対するリハビリテーションの手段として活用できる可能性が示唆された。
  • 佐藤 博, 菊池 雅彦, 江刺 香苗
    2015 年 29 巻 4 号 p. 340-349
    発行日: 2015/04/08
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    口腔内カンジダ菌は,通常は病原性を発揮しないが,免疫機能の低下などにより日和見感染として口腔カンジダ症を発症することがあるので,高齢者の口腔内カンジダ菌に関連する要因を明らかにすることは重要である。そこで先行研究の対象者に寝たきり者を含む施設入所者を追加することで,自立した高齢者から寝たきりの高齢者まで,さまざまな状態にある高齢者群を対象に,口腔内カンジダ菌と口腔衛生に関する事項との関連について検討した。 対象者は,訪問診療を含む歯科診療を受診した 70 歳以上の高齢患者 396 名(平均 81.5±6.9 歳,男性 126 名,女性 270 名)である。頰粘膜を滅菌綿棒で擦過して採取した検体をカンジダ菌検出用簡易試験液・ストマスタットに入れ 37℃で 24 時間培養後,陰性,疑陽性,陽性のいずれかに判定した。口腔衛生に関する要因については,年齢,性別,住居の状況,口腔に関する要因,歩行に関する要因,全身疾患に関する事項を調査した。 その結果,口腔内カンジダ菌の検出と年齢・性別との関連は認められなかったが,施設入所者,口腔清掃不良者,現在歯数が少ない人,歩行が困難な人,認知症や他の全身疾患がある人で多く検出された。ロジスティック回帰分析の結果からは,口腔清掃状態および歩行能力の 2 つがカンジダ菌検出と関連する重要な独立した因子であることが明らかとなった。義歯装着や,全身疾患は,カンジダ菌検出と有意な関連を示さなかった。
  • 村田 尚道, 山本 昌直, 小林 幸生, 前川 享子, 東 倫子, 森 貴幸, 江草 正彦
    2015 年 29 巻 4 号 p. 350-356
    発行日: 2015/04/08
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病状進行に伴い,誤嚥や窒息のリスクが高まることは知られているが,どの段階で摂食嚥下障害が重症化するのかは明らかになっていない。リスク回避のためには,摂食嚥下障害が重症化する前に嚥下機能評価を行い,適切な栄養管理が必要になる。本研究は,ALS の評価尺度と摂食嚥下機能評価について関連性を明らかにすることを目的に実施した。 対象は,嚥下造影検査を行った ALS 患者 57 名(男性 38 名,女性 19 名,平均年齢 66.1±12.9 歳)であった。摂食嚥下障害の項目は,嚥下造影検査の所見より,誤嚥,喉頭侵入,咽頭残留,舌機能低下を抜粋した。ALS 評価尺度は,ALSFRS-R およびModified NorrisScale の四肢症状尺度,球症状尺度の合計点数を用いた。 何らかの摂食嚥下障害の所見が 49 名に認められた。中でも,咽頭残留や舌機能低下は 75%以上と高頻度に認められた。ALS の評価尺度と摂食嚥下障害との関連について検討した。ALSFRS-R,四肢症状尺度では関連性は認められなかった。球症状尺度の数値が低い者に,誤嚥,喉頭侵入,舌機能低下の所見を多く認めた。 球症状が出現した ALS 患者には,摂食嚥下機能の低下が認められることが示された。ALS 発症の早期から嚥下機能評価を行った上で安全に経口摂取を進め,誤嚥や窒息の対応が必要と考えられた。
臨床報告
  • 田代 宗嗣, 本多 康聡, 大平 真理子, 山本 昌直, 酒寄 孝治, 大久保 真衣, 杉山 哲也, 石田 瞭, 眞木 吉信, 平田 創一郎
    2015 年 29 巻 4 号 p. 357-361
    発行日: 2015/04/08
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    舌は咀嚼や食塊の形成,移送などに大きく関わるため,摂食嚥下機能の評価において舌機能を評価することは重要である。そこでわれわれは,舌圧測定器 (TPM-01,JMS 社,広島)を用いて,摂食嚥下障害者の舌圧測定を行い,摂食機能療法による最大舌圧の変化を評価した。対象は病院で歯科訪問診療を行った摂食嚥下障害患者8名 (平均年齢64.8±20.8 歳;男性4名,女性4名)とした。週に1度の摂食機能療法 (頸部,肩部関節可動域訓練,舌抵抗訓練を含む口腔周囲筋訓練,口腔清掃) を約5カ月間行った。初回から1カ月ごとに最大舌圧測定と藤島による摂食・嚥下能力グレード (以下,Gr) の評価を行った。その結果,対象者において Gr の変化はみられなかったものの,最大舌圧は有意に上昇した。また,最大舌圧は初めの2カ月で大きく上昇し,その後変化なく推移した。摂食機能療法を行うことで,介入初期に舌の筋力が向上し,継続によりそれを維持できる可能性が示唆された。
  • 佐々木 力丸, 高橋 賢晃, 田村 文誉, 元開 早絵, 鈴木 亮, 菊谷 武
    2015 年 29 巻 4 号 p. 362-367
    発行日: 2015/04/08
    公開日: 2015/04/15
    ジャーナル フリー
    介護老人福祉施設に入居している要介護高齢者に対して,摂食嚥下機能評価と栄養支援を行い,その効果について明らかにすることを目的とした。 対象は,2011年3月から 2013年2月までの期間において,某介護老人福祉施設より日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科に摂食嚥下機能評価依頼があった入所者31名(男性3名,女性28 名,平均年齢 88.8±6.7 歳)である。対象者に対して食事時の外部観察評価と嚥下内視鏡検査を行い,その結果に基づき食形態,食内容,摂食方法を提案した。それを受けて施設の管理栄養士と施設職員は栄養ケア計画を立案し実施した。介入前後の評価項目は,体重,BMI,食形態,摂食量,食事時間,食事姿勢,食事介助方法の変更,水分の半固形化の有無,食事自立度とした。得られた評価結果より介入前後の比較を行った。 対象者 31 名中,食形態の変更を行った者は 22 名(71.0%)であり,食事姿勢の調整をした者 8 名(25.8%),食事の介助方法を変更した者 17 名(54.8%)であった。栄養支援の介入前後において,摂食量の増加した者は7名(22.6%),食事時間の減少した者は3 名 (9.7%),食事の自立度が変更した者は6名(19.4%),体重増加を認めた者は24名 (77.4%)であった。31名の介入前後での BMI は 19.6±3.2 から 20.0±3.2 となり,有意に増加した (p<0.05)。摂食嚥下機能評価,食支援等の整備に基づいた栄養支援は施設入所高齢者の栄養改善に効果的であることが示された。
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