老年歯科医学
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30 巻, 2 号
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Review Article
Original Article
  • 小谷 祐子, 佐藤 裕二, 北川 昇, 下平 修, 竹内 沙和子, 磯部 明夫, 髙松 直也, 田中 里実 , 原 聰
    2015 年 30 巻 2 号 p. 68-79
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,若年有歯顎者や高齢無歯顎者における口蓋粘膜の粘膜性状と疼痛閾値の関係を明らかにすることを目的とした。 被験者は,インフォームドコンセントが得られた口腔粘膜に異常を認めない,高齢無歯顎者 17 名とした。測定部位は上顎口蓋正中部,左側中間部,左側側方部の 3 カ所とした。超音波厚さ計の探触子で各部位を加圧(1 N/sec)し,被験者が主観的に疼痛を感知した時点で信号発生器のスイッチ押下を指示した。その時の超音波厚さ計の波形を記録し,ひずみゲージで求めた荷重量を同時に記録した。これらから,粘膜性状のパラメータを「厚さ」と「弾性率」,疼痛閾値のパラメータを「沈下量」,「圧力」,および「圧縮率」とした。17 名の若年有歯顎者と比較した。各部位の厚さと疼痛閾値の関係をマン・ホイットニーの U 検定およびスピアマンの順位相関係数を用いて測定した。 先行研究である,若年有歯顎者 17 名の結果と比較した。厚さは高齢無歯顎者の粘膜が厚く,弾性率,圧力,圧縮率は高齢無歯顎者のほうが小さかった。正中部と側方部の沈下量は高齢無歯顎者と同程度の大きさであった。厚さと沈下量においては,有意な相関は認められなかった。 これらの結果から,高齢無歯顎者の粘膜は厚く軟らかく,疼痛を生じやすいことから負担能力が低い可能性が示唆された。
原著
  • 土屋 淳弘, 横山 隆, 尾関 創, 山原 覚, 原田 亮, 加藤 大輔, 久保 勝俊, 村上 弘, 伊藤 裕, 前田 初彦, 服部 正巳
    2015 年 30 巻 2 号 p. 80-90
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    これまでわれわれは,粉末飼料飼育による咀嚼刺激の減少が,認知症の中核症状の 1 つである学習記憶能力の低下を早期に発症することを報告した。そこでわれわれは,粉末から固形飼料へと飼料性状を変更し,咀嚼刺激を回復することが,老化促進モデルマウス P8 の海馬に及ぼす影響を病理組織学的に検討した。 実験群は,5 カ月齢までと 7 カ月齢まで飼育する群とし,固形飼料のみで飼育する群,3 カ月齢にて粉末から固形飼料へと変更する群,5 カ月齢にて粉末から固形飼料へと変更する群,粉末飼料のみで飼育する群とした。飼育後,各マウスの脳切片を作製し,Nissl 染色を行った。その後,海馬の錐体細胞数と細胞面積を計測した。 学習記憶能力の低下前に粉末から固形飼料に飼料性状を変更し,咀嚼刺激を回復させることにより,海馬の錐体細胞数の減少を抑制する傾向が示唆された。 これにより,早期に咀嚼刺激を回復させることは,認知症の予防において重要であると考えられた。
臨床報告
  • 中島 丘, 岩﨑 妙子, 長坂 浩
    2015 年 30 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    患者は 73 歳の女性で,下顎左側臼歯部の腫脹・疼痛を主訴に来院した。既往歴は,高血圧,脂質代謝異常,腎機能不全による左腎摘出と両側下肢静脈瘤の術後であった。 モニタを装着し,浸潤麻酔が奏功していることを確認し,腫脹部を穿刺,排膿させた。その後,疼痛緩和目的に麻酔薬を追加注入したところ,突然の徐脈をきたし,顔面は蒼白となり,眼球は上転し,意識を消失した。呼名反応,呼吸・脈拍はなく,ただちに 119 番通報し,同時に歯科治療用の椅子を水平位とし胸骨圧迫を 1 回行ったところ開眼した。しかし,意識レベルは JCS200 であったので,AED を装着し,酸素を吸入させ,輸液・救急薬品を準備した。その間,少量の嘔吐が 3 回あったが,約 2 分後には意識は清明となった。通報から 7 分後に救急隊が到着し,精査目的に救急病院に搬送したが,頭部 CT 検査,心エコー・心電図検査に異常は認められなかった。 後日,AED から得られた心電図解析では除細動の適応はなく,波形では P 波消失による洞不全と軽度の ST 低下がみられた。排膿のための圧迫が予期しない痛みを与え,さらに追加の局所麻酔薬注入の痛みにより,迷走神経亢進状態に陥った結果と推測された。 自らの予測能力,対応能力の限界を認識し反省すべき事例であった。緊急時対応訓練の重要性を再確認するとともに,常に危機意識をもち,さまざまな場面に対応できる準備を行っておく必要を痛感した。
調査報告
  • 原 修一, 三浦 宏子, 川西 克弥, 豊下 祥史, 越野 寿
    2015 年 30 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2015/10/30
    ジャーナル フリー
    構音ならびに摂食嚥下機能は,ともに口腔と密接な関連性を有する生活機能であるが,高齢期の地域住民における両者の直接的な関連性については,知見の集積が少ない。本研究では,自立高齢者における構音機能と誤嚥リスクとの関連性について調べた。 対象者は,宮崎県北部地域と北海道後志地域に居住する自立高齢者 266 名である。構音機能の評価には,オーラルディアドコキネシスを用い,誤嚥リスクの評価には地域高齢者誤嚥リスク評価スコア(DRACE)を用いた。 本研究の全被験者における 4 種のオーラルディアドコキネシススコアと DRACE スコアとの間には,いずれにおいても有意な関連性が認められた。交絡要因を除外するためにステップワイズ重回帰分析を行ったところ,DRACE スコアと最も関連性が高かった項目は,複合音節/pataka/のオーラルディアドコキネシスであった。 自立高齢者においては,複合音節/pataka/のディアドコキネシス回数の減少は,誤嚥リスクの増大と有意な関連性がある。
講演抄録集
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