老年歯科医学
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30 巻, 3 号
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総説
Reviwe Article
  • Yu Chuan-Hang
    2015 年30 巻3 号 p. 302-307
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    The aged population and the number of disabled people in Taiwan continue to increase. Dental treatment for patients with severe disabilities or more complicated oral conditions is usually handled in a specialized medical facility with special equipment. Home Dental Care is a dental service that reaches out to patients who cannot reach a dentist by themselves. It has been well established in Japan for more than 20 years. In Taiwan, however, it is not widespread. In this article, I will introduce the current status of Home Dental Care in Taiwan as well as how it is carried out.
原著
  • 武井 典子, 石川 正夫, 石井 孝典, 高田 康二, 堀 信介, 浅井 啓太, 魚住 龍史, 別所 和久
    2015 年30 巻3 号 p. 308-317
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    施設職員のオーラルケアに対する問題解決力を高め,日常の場で主体的にオーラルケアを実践できるようなマネジメント法を試作して,その効果を口腔環境の変化と肺炎発症率から検討した。対象者は京都府京丹後市にある某特別養護老人ホーム入所者(定員 58 名)である。2010 年から 2013 年の 3 年間で半年ごとに 7 回の検査を行った。 オーラルケアマネジメントは口腔清掃と摂食嚥下機能訓練の支援に分けて設定した。口腔清掃の支援は,唾液湿潤度およびカンジダ数の検査結果から肺炎のハイリスク者をスクリーニング後に,Takei らが開発した口腔清掃分類表を活用し,個々の状況に応じたオーラルケア法を職員に提案した。また,摂食嚥下機能訓練の支援は,フードテストの結果から機能訓練が必要な対象者をスクリーニングして,昼食時の直接訓練に加え必要に応じて間接訓練を提案した。最初の 1 年間は 1〜2 カ月に 1 回のオーラルケアマネジメントを行い,その後 2 年間は半年ごとに検査結果の提供を行った。肺炎などによる入院状況は,全入所者が利用する近隣病院からカルテを基に入手した。今回の調査では,すべての入所者に対して日常のオーラルケアの向上を目指してオーラルケアマネジメントを行ったことから,3 年間で継時的に入所者が入れ替わっていく変化の要素を含め,入所者の口腔環境および肺炎発症率の変化を解析評価した。その結果,カンジダ数ならびにアンモニア濃度の減少,嚥下機能の改善が認められたが,肺炎による入院回数 1 回以上の入所者の割合は,有意に減少しなかった。今後,さらに肺炎発症率抑制に有効なオーラルケアマネジメント法について検討・改善を行う予定である。
臨床報告
  • 坂本 由紀, 柳本 惣市, 松下 祐樹, 六反田 賢, 鳴瀬 智史, 梅田 正博
    2015 年30 巻3 号 p. 318-325
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    超高齢社会の到来とともに高齢口腔癌患者の治療を行う機会も増えてきた。今回,当科における 90 歳以上の超高齢者の口腔癌患者の治療法について検討した。 2011 年 4 月〜2014 年 6 月に当科を受診した 90 歳以上の口腔癌患者は 5 例で,後ろ向きに手術および術前,術後の QOL などを評価した。 治療法は手術が 4 例,非治療が 1 例であった。手術例は,後発郭清も含めるといずれも頸部郭清を含めた手術を施行した。手術例 4 例では術前後の QOL にほとんど変化はなかった。 高齢者でも手術を第一選択とする施設が多くみられるようになってきている。本研究の 4 症例に手術を行い,患者の QOL はほぼ変化がなかった。高齢口腔癌患者の手術適応基準に苦慮するなかで最近注目されているのがフレイルの評価法であり,今後はこのような方法も治療計画に入れていくべきである。 90 歳以上の超高齢者においても個々の状況に応じて手術も含めた根治療法を行うことが推奨される。
Clinical Report
  • 木村 幸文, 詫間 滋, 渋谷 真希子, 藤澤 俊明
    2015 年30 巻3 号 p. 326-331
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    今回私たちは,重度の COPD を合併する 90 歳の超高齢患者の口腔外科手術の全身麻酔管理を経験した。術前の呼吸器検査では 1 秒率が 33.6%,1 秒量が 1.09 L と低値を示したが,術前の呼吸器内科医による抗コリン薬投与により,1 秒率が 42.2%,1 秒量が 1.36 L に改善した。 麻酔は肺損傷を回避し,術後の呼吸抑制の予防と早期離床のため,良好な覚醒を心がけた。麻酔維持は酸素,空気,セボフルラン,レミフェンタニルにて行ったが,フェンタニルは用いず,筋弛緩薬の使用は導入時のみとした。術中の人工呼吸は PEEP を使用せず,高炭酸ガス血症は容認し,気道内圧を低く保ち,肺損傷を予防した。これらの配慮により所定の手術を無事に終了することができ,覚醒も良好であった。 翌日の昼までは飲水可能だったが,午後,服薬の際,水でむせとともに嘔吐した。更にその夜,うがいの際,水でむせ,第 2 病日の午後に誤嚥性肺炎と診断された。酸素,抗菌薬投与が行われ,1 週間後には回復した。第 9 病日には患者は嚥下造影検査を受け,誤嚥の所見はなかったが,右梨状窩に食物の残留がみられた。 本症例の誤嚥性肺炎の発症原因として舌癌切除術後の嚥下能低下における経口摂取尚早が考えられる。また全身麻酔後の誤嚥性肺炎のリスクファクターとして,COPD の合併,高齢,男性,脳梗塞の既往,口腔外科手術を挙げる報告や,抗コリン薬が嚥下機能を低下させるという報告があり,背景因子としてそれらが関係していると思われた。
調査報告
  • 市村 和大, 戸原 玄
    2015 年30 巻3 号 p. 332-336
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    介護の現場では,食形態がより咀嚼の必要性が少ないものへ変更することがある。そしてその傾向は在宅よりも高齢者施設において顕著であるように感じる。よって今回,高齢者施設利用者と在宅療養者とでは,提供されている食形態に差があるか調査を行った。 調査は,むせ,痰のからみ,湿性嗄声,咽頭残留感,食塊移送不良などの摂食嚥下障害の疑われる症状がある者,もしくは経管栄養と併用で食事をしている者で,嚥下内視鏡検査による摂食嚥下機能評価を行った高齢者施設利用者 21 名(初回評価時平均年齢 82.6±7.24 歳,最高年齢 92 歳,最低年齢 58 歳),在宅療養者 10 名(初回評価時平均年齢 76.3±9.25 歳,最高年齢 96 歳,最低年齢 65 歳)を対象に行った。そして,摂食・嚥下障害臨床的重症度分類(DSS:Dysphagia Severity Scale)による摂食嚥下機能レベルと嚥下内視鏡検査結果,摂食嚥下機能評価前後で提供された主食および副食の食形態についてまとめ,高齢者施設利用者と在宅療養者の間に差があるかを調査した。 その結果,DSS による摂食嚥下機能レベルと嚥下内視鏡検査結果に関しては,高齢者施設利用者と在宅療養者の間に有意差は認められなかった。しかし食形態に関しては摂食嚥下機能評価前後で,主食,副食ともに有意に高齢者施設利用者のほうが在宅療養者よりも,咀嚼の必要性が低いものを提供されているという結果となった(p<0.001)。 よって今回の調査から,高齢者施設利用者のほうが在宅療養者より食形態を咀嚼の必要性が少ないものへ変更されやすい傾向が示唆された。
  • 森田 浩光, 山口 真広, 藤本 暁江, 縄田 和歌子, 湯川 成美, 牧野 路子, 加藤 智崇, 瀧内 博也, 米田 雅裕, 内藤 徹, ...
    2015 年30 巻3 号 p. 337-342
    発行日: 2015/12/31
    公開日: 2016/01/30
    ジャーナル フリー
    超高齢社会の現在,高齢者の介護施設の大幅な増加により,施設近隣の地域密着型急性期病院の役割は非常に大きい。また,急性期病院において,がん治療患者や高齢の肺炎患者などの免疫能が低下した患者への口腔からの感染や口腔内の合併症,さらには誤嚥性肺炎など死に至る全身の合併症の予防のため,歯科介入の重要性が認識されてきている。このような状況の下,本学(福岡歯科大学)総合歯科・高齢者歯科では近隣の歯科診療施設をもたない地域密着型急性期病院と連携し,平成 26 年 5 月より歯科介入を開始した。 今回,介入開始から平成 27 年 3 月までの活動調査を行った。この急性期病院で歯科介入を依頼された患者は 79 人で,65 歳以上の高齢者が 75 人と 95.0%を占め,そのうち寝たきりの患者は 89.4%とほとんどであった。入院に至る主病名は肺炎が最も多く,心不全,骨折と続いた。歯科処置内容は専門的口腔ケアが最も多く,義歯関連処置(調整・修理・新製),歯の固定・鋭縁削合と続いた。さらに,介入患者の転帰としては,他院や介護保険施設への転院が最も多く,死亡,自宅への退院と続いた。死亡原因は重度肺炎によるものが最も多く,そのうち歯科介入のあった患者は歯科介入のない患者に比べて,在院日数が有意に延長していることが判明した。 以上の結果より,歯科介入による口腔機能の維持管理が高齢入院患者の全身状態の維持へ重要な役割を果たしていることが示唆された。
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