自然災害大国であるわが国において,今後起こりうる災害時の保健医療支援の取り組みとして,全国的に災害医療コーディネーター・災害歯科コーディネーター養成研修会が行われている。一方で,災害時歯科保健医療支援に派遣される歯科医療従事者の育成および支援者登録は十分とはいえない。そこでわれわれは,高齢者を含めた災害時要配慮者の口腔機能支援を行う支援者の養成を目的とした災害口腔医学研修会を企画し,開催した。
研修会は,災害時歯科保健医療支援チームの一員として即時に歯科的トリアージ,口腔アセスメント,保健医療支援活動を多職種と連携して行うことができるよう研修会プログラムおよびテキストを作成し,講義と実習を織り交ぜた形式で1日コースとした。
研修会は九州内で全3回開催し,歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士のほか,看護師,医療事務および歯学部学生まで幅広い職種・学生の参加を得て,計104名の修了者を輩出した。
研修会の前後にプレ・ポストアンケートで理解度を確認した。その結果,研修後に災害時歯科保健医療活動についての理解度の有意な向上がみられ,特に口腔衛生管理や食支援に対して歯科の役割を認識した参加者が大きく増加した。
さらに,研修終了時には所属職能団体および大学などの災害時歯科保健医療支援者リストへの登録を依頼し,今後の災害時歯科保健医療支援活動へ積極的な参加を促した。
今後は,さらなる支援者の養成や学生教育・臨床研修への導入を視野に入れて,活動を継続する予定である。
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