老年歯科医学
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35 巻, 1 号
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総説
委員会報告
原著
  • 並木 千鶴, 原 豪志, 中川 量晴, 山口 浩平, Chantaramanee Ariya, 小西 恵巳, 吉見 佳那子, 中根 綾子, ...
    2020 年35 巻1 号 p. 41-51
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/23
    ジャーナル フリー

     目的:在宅などでの摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)は,多職種で連携することが効果を高めると認識されてきている。しかし,生活期における多職種連携による嚥下リハの効果を縦断的に検証した報告は少ない。本研究では,生活期の高齢摂食嚥下障害患者を対象とし,嚥下リハ前後のリハ効果の検証と,訪問歯科単独と多職種連携した場合との間に嚥下リハ効果に相違があるかを検討した。

     方法:2017年4月から2018年3月までの期間で,当科に嚥下リハの依頼があった患者のうち,3カ月間のフォローアップが可能であった37名(男性16名,女性21名,平均年齢82.2±9.5歳)を対象とした。毎月1回訪問し,食形態や食事時の姿勢調整を行い,間接訓練を指導した。対象者の機能評価は,KT(口から食べる)バランスチャート(以下,KTBC)を用いた。対象者のKTBCの変化を初診時と3カ月後で比較し,さらに訪問歯科診療のみの群と多職種が携わった群に分けて3カ月後のKTBCを比較,検討した。

     結果:3カ月の管理で対象者のKTBCの各項目が改善した。さらに訪問歯科診療単独群と比較して,多職種が携わった群においてKTBCの栄養状態の項目が有意に改善していた(p<0.05)。

     結論:生活期における高齢の摂食嚥下障害患者の嚥下リハは,摂食嚥下機能だけでなく,栄養状態や身体機能の向上において重要であり,3カ月という短期間においてもそれらの向上を認めた。また多職種との連携によって,より効率的な効果が得られることが示唆された。

  • ―Oral Health Assessment Toolスコアでみた変化―
    荒井 昌海, 松尾 浩一郎, 田口 知実, 森田 英明
    2020 年35 巻1 号 p. 52-60
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/23
    ジャーナル フリー

     目的:今回われわれは,老人介護保健施設において,介護者への口腔ケア教育を含めた口腔衛生管理によって入所者の口腔環境が改善,維持されるか,日本語版Oral Health Assessment Tool(OHAT)を使用して,後ろ向きに検討した。

     方法:2016年9月から2年間,某歯科医院による訪問歯科診療への同意が得られた介護保険施設の入居者と介護者を対象とした。1カ月ごとにOHATを用いて対象者の口腔環境が評価され,評価に基づいた口腔機能管理シートが作成された。この管理シートを基に,介護者への口腔ケアの教育と歯科衛生士による専門的口腔衛生処置が実施された。2年間を通じて入所していた患者を通期群とし,介入の途中で入所または退所した者を含めた全患者を全体群とした。OHATスコアの半年ごとの変化を検討した。

     結果:通期群42名と全体群96名のOHATスコアは,初回評価時では,通期群で中央値(四分位範囲)が3(1~4),全体群では3(1~5)であったが,半年後には,通期群で1(0~3),全体群でも2(0.25~3)と有意に低下し,2年後には通期群で1(0~2),全体群でも1(0~3)と低値が維持された。

     結論:本結果より,入所者が変化していく介護保険施設で,介護者への口腔ケア教育を含めた口腔衛生管理により,入所者の口腔環境を改善させ,継続して維持できることが示唆された。

臨床報告
  • 長田 耕一郎, 湯川 綾美, 山添 淳一, 和田 尚久
    2020 年35 巻1 号 p. 61-69
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/23
    ジャーナル フリー

     脊髄小脳変性症(Spinocerebellar degeneration:SCD)は進行性かつ不可逆的な疾患で,体の平衡性や協調運動,構音機能を低下させる。一般的に,日常生活動作(Activity of Daily Living:ADL)が低下したSCD患者はリハビリを行っても,ADLが改善する可能性は低いと考えられている。われわれは,不適合の義歯を長期間不使用であり,歯科的対応が困難なSCD患者の義歯を調整し,義歯使用が可能とした後,急速にADLが改善し始めた症例を経験した。歯科的対応困難な患者への義歯調整法とともに,本症例について報告する。

     症例は81歳の男性で,SCDと診断されている寝たきり状態の患者であった。無歯顎であったが義歯は不適合であったため装着しておらず,全介助によりペースト食を経口摂取していた。口腔内での操作を可及的に減じた半調節性咬合器に再付着する方法で義歯調整を行い,義歯を安定化させ,リハビリを継続したところADLが急速に改善し始めた。

     本症例では,フレイル状態の高齢者のADLは口腔機能の影響を受けることが示唆された。義歯を調整することで患者の口腔機能が改善し,リハビリのモチベーションアップにもつながった。義歯調整はSCDのような進行性疾患にも効果的である可能性がある。また,今回のリマウント調整法は,従来のチェアサイドでの義歯調整法では対応困難な症例にも適応していた。

  • 上杉 雄大, 伊原 良明, 野末 真司, 林 皓太, 髙橋 浩二
    2020 年35 巻1 号 p. 70-74
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/23
    ジャーナル フリー

     緒言:今回,進行性核上性麻痺(PSP)の既往を有し,食道癌放射線治療後の摂食嚥下障害によって全量経管栄養管理となった患者が,複合的な嚥下訓練が著効し,全量経口栄養摂取可能となった症例を経験したので報告する。

     症例:患者;76歳男性。既往歴;PSP。現病歴;2016年4月,胸部食道癌に対し,陽子線化学療法を実施。2016年9月,胸部食道の狭窄を認め,内視鏡下バルーン拡張を三度施行するも,食道裂創を認めた。胸部食道の狭窄は残存。以降誤嚥性肺炎を繰り返したため,嚥下訓練目的より当科紹介受診。現症;体重:52.7 kg,modified Rankin Scale 4,舌振戦あり,栄養摂取状況:藤島の嚥下Lv1。VF検査よりかき込み食い,口腔期の運動障害,上部食道狭窄を認めたが,咽頭期には大きな問題は認められなかった。当科診断;食道癌放射線治療後,PSPによる摂食嚥下障害。

     経過:上記診断の下,口腔衛生指導,頸部ストレッチ,咀嚼訓練と並行し,嚥下調整食学会分類2013の1jより直接訓練開始した。食事ペースに注意するよう指導し,段階的に食形態の調整を続け,藤島の嚥下Lvは7まで改善した。

     考察:本症例における誤嚥性肺炎の原因として,ペーシング障害,口腔期の運動障害,上部食道狭窄が原因と考えられる。各原因に対し,複合的な摂食指導・嚥下訓練を継続したことから,藤島の嚥下Lvが1から7まで改善したと考える。

調査報告
  • 寺田 泉, 松山 美和, 山田 博英, 大野 友久
    2020 年35 巻1 号 p. 75-82
    発行日: 2020/06/30
    公開日: 2020/07/23
    ジャーナル フリー

     目的:緩和ケア受療進行がん患者の口腔内評価を実施し,生命予後予測と口腔内状況の関係を検証した。

     方法:対象は,2017年11月から2018年7月の期間に,聖隷浜松病院に入院中の緩和ケア受療がん患者で,同意が得られた85名とした。基本情報はカルテから抽出し,口腔内の状態はOral Health Assessment Tool日本語版(以下,OHAT-J)と口腔機能評価表を用いて評価した。Palliative Prognostic Index(以下,PPI)を用いて,対象者を生命予後が3週未満と予測される群(以下,予後短期群)と,それ以上(以下,予後長期群)の2群に分け比較した。

     結果および考察:対象者の平均年齢は65.6±13.2歳であり,予後長期群が62名,予後短期群が23名であった。OHAT-Jでは,口唇,歯肉・粘膜,唾液,口腔清掃の項目および合計スコアにおいて予後短期群で有意に悪化が認められた。口腔機能においては,すべての項目において予後短期群で有意な悪化が認められた。口腔粘膜など口腔乾燥が影響する項目に有意な悪化が認められたものと考えられ,口腔機能に関しては,Activities of Daily Living(日常生活動作:以下,ADL)や意識状態の悪化などの結果と推察された。

     結論:生命予後予測と口腔内状況には関連性があり,予後短期群の口腔内状況は予後長期群よりも不良であることが示唆された。PPIによる予後予測は口腔内状況の把握に有用であることが示唆された。

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