老年歯科医学
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35 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
臨床報告
  • 古屋 裕康, 菊谷 武, 田中 公美, 仲澤 裕次郎, 佐川 敬一朗, 横田 悠里, 保母 妃美子, 礒田 友子, 山田 裕之, 戸原 雄, ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 266-273
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/04/19
    ジャーナル フリー

     目的:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大により,摂食嚥下リハビリテーションの対面診療について,慎重な対応が求められた。本研究では,COVID-19感染蔓延下に対面での診療を中断した患者に対してオンライン診療を実施し,その有用性を検討した。

     方法:対象は,摂食嚥下リハビリテーションを専門とする歯科大学病院附属クリニックを受診する摂食嚥下障害患者であり,緊急事態宣言により対面診療中断となった患者21名とした。緊急事態宣言期間中にオンライン診療での嚥下訓練と食事指導を行い,期間中の肺炎発症,入院の有無,オンライン診療移行前と対面診療再開後での摂食状況(Food Intake LEVEL Scale:FILS),栄養状態を比較し検討した。また,アンケートでの意識調査を行った。

     結果:オンライン診療中に,FILSが向上した者は3名,低下した者は2名,変化のなかった者は16名であった。発熱を4名に認めたが,いずれも入院にはいたらなかった。体重減少率が3%以上の者はいなかった。アンケート調査では,オンライン診療の効果として,感染リスク低減や安心感が得られたと回答する者が多かった。

     結論:感染リスクを考慮した摂食嚥下リハビリテーションの診療形態としてオンライン診療は嚥下機能維持,向上に寄与し,また患者不安を低減した。オンライン診療での摂食嚥下リハビリテーションや食事指導は,対面診療を補完する診療形態として有用であることが示された。

調査報告
  • 平場 晴斗, 石井 隆哉, 小泉 寛恭, 野川 博史, 松村 英雄, 篠原 光代
    2021 年 35 巻 4 号 p. 274-279
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/04/19
    ジャーナル フリー

     近年,超高齢社会を迎えた本邦において,認知症患者は増加傾向にある。本研究では,高齢者医療センターにおける初診患者を対象に口腔内の状態を調査し,認知症の有無との関係について調査を行ったので報告する。

     調査は,2015年1月から2019年1月までの期間に,順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センターの歯科口腔外科に,一般歯科処置を希望して受診した初診患者661名(認知症群,109名;対照群,552名)を対象に,性別,年齢,現在歯,健全歯,未処置歯,処置歯,喪失歯,義歯使用の有無について横断的に調査し,統計学的に分析した。

     認知症の有無に関して年齢および性別を調整した多変量ロジスティック回帰分析を行った結果,上下顎の現在歯数が19本以下の群,健全歯と処置歯の合計が9本以下の群,未処置歯および喪失歯が20本以上の群において年齢と性別を調整しても,認知症をもつ者が有意に多かった(p<0.05)。義歯の使用率は,認知症群65.5%,対照群が41.5%であった。義歯使用の有無に対しては有意な関連が認められなかった。

     本研究の結果から,初診患者における認知症をもつ人は要治療歯が多く,認知症の有無にかかわらず義歯を使用していることがわかった。

  • ―介護老人福祉施設と介護老人保健施設の比較―
    斎藤 徹, 髙橋 耕一, 牧野 秀樹, 山崎 裕, 栂安 秀樹
    2021 年 35 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/04/19
    ジャーナル フリー

     本調査報告では,2011年1月~2019年12月の間に当院が歯科訪問診療を施行した介護老人福祉施設(特養)および介護老人保健施設(老健)の入所者の概要および歯科治療の内訳を比較した。

     同期間に当院が歯科訪問診療を施行した症例(新患数)は6,303例であり,特養および老健の症例はそれぞれ1,742例(27.6%),1,082例(17.2%)を占めていた。初回訪問診療時の平均年齢(標準偏差)は,特養86.0歳(7.8歳)と老健85.4歳(8.1歳)の間に有意差は認められなかった。しかし,歯科訪問診療をするにいたった医科原疾患として,特養では老健と比較して,認知症(62.5% vs 53.8%,p<0.001),肺炎(16.5% vs 5.7%,p<0.001)および脳性麻痺(9.9% vs 4.3%,p<0.001)の症例の比率が有意に高かった。他方,特養では老健と比較して,歯周治療を施行した症例の比率(58.0% vs 62.0%,p<0.05)は有意に低かったが,摂食機能療法を施行した症例の比率(32.3% vs 12.1%,p<0.001)は有意に高かった。しかし,義歯新製,義歯調整・修理,抜歯,歯冠補綴,根管治療などの他の歯科治療を施行した症例の比率は,特養と老健の間で有意差は認められなかった。

  • 近石 壮登, 中澤 悠里, 山家 良輔, 大塚 あつ子, 鎌田 春江, 玄 景華, 杉浦 石根, 良盛 典夫, 野村 岳嗣, 阿部 義和, ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 287-295
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/04/19
    ジャーナル フリー
活動報告
  • 古屋 純一, 志羽 宏基, 佐藤 裕二, 畑中 幸子, 山根 邦仁, 池村 直也, 桑澤 実希
    2021 年 35 巻 4 号 p. 296-301
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/04/19
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症の拡大により,医療は大きな転換を余儀なくされ,歯科診療もこれまで以上の感染対策が必要となった。特に訪問歯科診療では,基礎疾患を有する要介護高齢者など,重症化しやすい高齢者が対象であり,診療設備など環境面での感染対策上の問題も存在するため,訪問歯科診療が継続されない場合も少なくなかったと考えられる。しかし,不十分な口腔健康管理による口腔機能や口腔衛生の低下は,誤嚥性肺炎のリスクを高め,栄養状態や食べる楽しみの低下にも通じ,全身的な問題にも影響する。そのため,感染対策を十分に講じて,訪問歯科診療を継続することは要介護高齢者にとって重要である。当講座では,特別養護老人ホームにおける定期的な訪問歯科診療を20年間以上行っており,施設との長期間の連携関係を構築してきた。そのため,コロナウイルス感染が日本で発見されてからも,施設と当院の間で試行錯誤をしながら,入居者の口腔健康管理を継続して行うことができた。コロナウイルスの感染が蔓延していることを理由に一律に訪問歯科診療を中止するのではなく,高齢者の口腔健康管理や食支援のために最適解を施設側と模索し,柔軟な対応で訪問歯科診療を可及的に継続することは重要と考えられる。そこで本稿では,われわれのそうした一連のコロナウイルス禍での某特別養護老人ホームにて行った訪問歯科診療における活動内容について報告する。

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