背景:最大舌圧と栄養状態との関係はまだ十分明らかにされていない。そこで,本研究では総合病院入院中の高齢患者の舌圧と栄養状態ならびに食形態との関連性について検討した。
方法:2015年4月から2020年10月までに,総合病院歯科口腔外科に院内紹介された65歳以上の患者165名(男性96名,女性69名,平均年齢83.5±8.2歳)を対象とした。栄養リスク状態についてはGeriatric Nutritional Risk Indexを用いて中等度・高度群となし・軽度群の2群に分類し,食形態は常食・刻み食群とソフト食・ペースト食群の2群に分けて,それぞれ2群間で最大舌圧の差を検討した。
結果:栄養リスク中等度・高度群(148名)の最大舌圧(14.1±9.6 kPa)は,栄養リスクなし・軽度群(19.8±10.8 kPa)と比べて有意に低かった(p=0.043)。一方,ソフト食・ペースト食群(88名)の最大舌圧(12.4±9.6 kPa)は,常食・刻み食群(16.9±9.6 kPa)と比べて有意に低かった(p=0.001)。また,ROC曲線により得られた栄養リスク中等度・高度ならびにソフト食・ペースト食を予測するカットオフ値は,それぞれ18.6 kPaと16.5 kPaであった。
結論:総合病院入院高齢患者における最大舌圧の低下は,低栄養や食形態レベルの低下と関係していた。
目的:2021年6月に,2020年6月(医療保険導入後2年2カ月)の社会医療診療行為別統計が公表されたので,これを前報の実施状況と比較することで,最新の口腔機能低下症の検査・管理の実態を明らかにすることを目的とした。
対象と方法:2019年6月,2020年6月および2021年6月に発表された社会医療診療行為別統計により,医療保険導入後2カ月,1年2カ月,2年2カ月の口腔機能低下症の検査・管理の実施状況を調査した。
結果:「65歳以上の初診患者」は225万人(2019年),188万人(2020年),125万人(2021年)と減少していた。そのため,2019年から2020年にかけての検査・管理件数はわずかな増加(1.2倍)であったが,初診患者数に対する実施率は1.8倍になった。
考察:検査・管理件数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も考えられ微増(21.2%増)にとどまったが,普及は進みつつある。ただし,口腔機能低下症の有病率と比べると依然として実施率は少ない。
結論:口腔機能低下症の検査・管理は普及してきたが,さらなる普及に向けた努力が必要であることが示された。