日本の高齢化は世界に類をみないスピードで進み,世帯構成は単独世帯,夫婦のみの世帯が増加し,65歳以上高齢者のうち,「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者が今後増加していくと思われる。国は,地域で暮らす高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域包括ケアシステムの構築を進めている。自分が住み慣れた地域・場所で最期まで暮らすためにはフレイルの早期発見と予防こそが重要であり,その鍵となるのが「食と栄養」である。また,超高齢社会における栄養の問題として,後期高齢者が陥りやすい「低栄養」「栄養欠乏」の問題が高まっている。
さらに栄養状態と口腔機能には密接な関わりがあり,口腔機能の低下は虚弱な高齢者において低栄養の危険因子になることから,健康な高齢者においても口腔機能の低下が食事量の低下やビタミン摂取量の低下につながる。ゆえにQOL維持・向上の観点から高齢者の口腔機能について検討することは,管理栄養士として重要であるといえる。
今後,歯科との連携方法として,栄養ケア・ステーションによる横展開は必須であり,栄養ケア・ステーションを拠点としてリハビリ,栄養,口腔の取り組みは一体となって運用されることで,より効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待できると思われる。少子高齢化・人口減少における地域包括ケアの課題は,これから当たり前に存在する独居,老老家族,そして家族と分離した家族をサポートするシステムをどう地域で広げていくかである。兵庫県N市N地区における単独世帯の高齢者に食支援・食育として,「栄養(食・口腔機能)」「身体活動(運動など)」「社会参加」の三位一体を導入して12年になるが,今回,その成果とコロナ禍の状況のなかでの咀嚼力アップ運動についても報告する。
参加者の皆様が地域における管理栄養士の取り組みについてご理解いただければ幸いである。
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