老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
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37 巻, supplement 号
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認定医審査症例レポート
  • 畑中 幸子, 古屋 純一, 佐藤 裕二
    2023 年 37 巻 supplement 号 p. 25-29
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/04/21
    ジャーナル フリー

     緒言:要介護高齢者にとっても,食事は大切な生活の楽しみであるが,全身や口腔の疾患に起因するさまざまな問題によって,食事を十分に楽しめないことも多い。そこで,施設入所中の要介護高齢者に対して,基礎疾患や生活環境を考慮した訪問診療を行った1例を報告する。

     症例:患者は76歳の男性,「入れ歯がなく噛めないため,噛んで食べたい」という主訴で訪問診療にて受診した。既往歴に心房細動,高血圧症があり,脳梗塞を発症した後,認知症,パーキンソン病の進行により在宅生活困難となり,施設に入所した。上下顎義歯は紛失し,すれ違い咬合であった。食形態は全粥・刻み食で,食事と口腔ケアは自立していた。

     経過:口腔衛生指導後,保存困難歯を抜歯し,その後,上下顎新義歯を製作した。手指の巧緻性や認知機能低下を考慮し,義歯着脱や口腔衛生指導を患者と介護士へ行った。義歯調整後には,食事場面の観察を行い,食形態を段階的に常食に改善したことで患者の満足感を得ることができた。3カ月後に右下臼歯部が歯根破折し,抜歯と義歯修理を行ったが,良好に経過している。

     考察:本症例では,基礎疾患や居住環境を考慮したうえで,抜歯や義歯新製作などの歯科治療,食事場面観察による食支援,施設職員との連携を包括的に行うことで,患者の主訴を改善できたと考えられた。進行性疾患であるため,今後も定期的な口腔健康管理と食支援を継続する必要があると考えられた。

  • 樋口 和徳, 中川 量晴, 松尾 浩一郎
    2022 年 37 巻 supplement 号 p. 8-13
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

     緒言:歯科訪問診療において,歯科補綴的アプローチにより筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の口腔期障害に対応した後,多職種で協力して食支援を行い長期間経口摂取が維持された症例を報告する。

     症例:69歳,男性。義歯の不具合および摂食嚥下の支援を主訴に歯科訪問診療が開始となった。医学的診断名:ALS。現症:摂食嚥下障害なく普通食を摂取。口腔内所見:上下顎無歯顎,全部床義歯(適合不良)。

     経過:介入後,四肢などの筋力低下や呼吸不全が急速に進行したため,初診138日目に入院下で気管切開,胃瘻造設され,退院時の食形態はミキサー食に変更となった。歯科訪問診療にて上顎義歯の新製,摂食機能訓練などを行い,初診476日目にVE評価を行ったところ,普通食レベルの経口摂取が可能であった。同時に多職種で患者の情報を共有する体制を整え,妻に対して食事指導などを実施した。

     その後,徐々に咽頭機能の低下はみられたが,介入後5年以上経過した現在まで口腔機能は良好に維持されてきた。安全に食事を続けたいとの希望から喉頭気管分離術を施行された。現在も経口摂取が維持され,本人や家族の希望におおむね沿った食事が摂取できている。

     考察:ALS患者に対して発症初期より介入し,歯科補綴的アプローチ後多職種が協力して患者にアプローチを行うことにより誤嚥防止のための処置が的確に判断されたことで,長期間経口摂取が維持されたと考える。

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