本研究は老年者における歯科保健のための保健指導指針作成を目的とした。
調査対象者は千葉市と船橋市の2つの軽費老人ホーム居住者158名と千葉市および千葉市近郊在住の在宅健常老年者107名 (合計265名) である。2集団の被検者とも通常の生活を営んでいる60歳以上の老年者である。
現在の口腔内の自覚症状 (いま, 口の中で特に具合の悪いところがありますか) については, 歯 (30.5%), 義歯 (28.4%), 歯周組織 (12.4%) で異常を訴えていた。自覚症状が「特にない」と答えた者は, 施設居住者で50.6%, 在宅健常者で47.7%, 全体で49.4%であつた。歯についての自覚症状では, 「歯が痛いことがあるか」について, 施設居住者の6.2%, 在宅健常者の3.7%, 全体の5.1%の者で「よくある」と回答していた。歯を磨くときよく出血すると回答した者が施設6.4%, 在宅10.0%, 全体で8.0%であり, 「ときどき」までを含めると, 施設14.9%, 在宅18.8%, 全体で16.6%となり1割以上の者で出血症状を認めていた。歯周組織の炎症感では, 「よくある」と回答している者が施設4.2%, 在宅4.9%, 全体4.5%であった。
上下顎別の義歯の満足度については, 上顎の義歯で施設48.5%, 在宅34.3%, 全体43.6%, 下顎ではそれぞれ, 42.3%, 28.2%, 37.1%の者で「非常に満足している」と回答していた。義歯の手入れのし方を習つたことがない者は施設81.5%, 在宅88.2%, 全体で84.0%であった。
食品の摂取応答については施設で55.1%, 在宅で53.3%, 全体で54.3%の者が「非常によく噛める」と回答しており, 「ほとんど噛めない」と回答した者は, 施設5.7%, 在宅7.5%, 全体6.4%であつた。
片側性咀嚼の有無についての回答の割合では, 両側で咀嚼している者は, 施設26.8%, 在宅19.8%, 全体24.0%であった。「わからない」と回答した者を除いても6割以上の者が片側性咀嚼をしている。
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