老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
7 巻, 2 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • わが国の21世紀社会像
    小川 直宏
    1993 年 7 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 小川 節郎
    1993 年 7 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
  • 佐藤 雅志
    1993 年 7 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    日本の高齢化社会は加速度的に進展し, 65歳以上の老年者は国民総人口の13%を越え, 21世紀初頭には20%を越すものと推定されている。このような背景の中で老年者に対する歯科医療のニーズは高まる一方である。しかし, 高齢化社会に対応するための歯科医学は歴史が浅い上, まだ老年歯科医学講座の開設も4大学のみに過ぎず, 教育面や研究面からみても不十分である。また, 臨床面において老人専門医療機関が少なく, 診療体制においても十分整備されていないのが現状である。
    老年者の歯科診療に当たっての基本姿勢は老年者のQOLの向上, つまり「食事が楽しく食べられること」と「口腔内を清潔に維持すること」への援助であると考えている。
    それには患者およびその介護にあたる人々とのコミュニケーションを図り, 普段の生活状態などから患者像を的確に把握し, その変化にいっでも対応できる体制で診療すること。
    要介護老年者においては, 精神の身体的機能の低下によって口腔への関心が薄れたり, 運動機能障害のため十分に口腔清掃ができず不潔な状態で放置されている事も珍しくない。
    口腔清掃は自己管理が基本であるが, 要介護老年者に対しては介護者が積極的に口腔の管理を行うよう指導する。歯科処置が一段落した後は適宜経過観察を行い, 口腔内が清潔に維持されるよう努める必要がある。
  • 池岡 憲之
    1993 年 7 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    近年, 急激な高齢化社会の到来をふまえて在宅有病高齢者の歯科保健ならびに在宅歯科医療に対する関心が高まっている。在宅歯科医療は従来その困難性により個人開業医等によるボランティア的活動にとどまってきたが, 社会的ニーズの高まりや国の老人保健政策の推進とそれに呼応した歯科医師会の社会的使命感と関心の高まり等により, 地域歯科医療の一環としてとらえ, 組織的に取り組もうとする気運が全国的なレベルで芽ばえ, 各地において先進的な試みがなされているのが現状である。
    しかしながら, 診療効率と診療環境の悪さ, ハイリスク患者を取りあっかうといった困難性が多大であるという点や, 市民に公平に在宅歯科医療を供給する必要性があるということ, また事業の永続性等を考えた場合, 歯科医師会が会としてこの事業に取り組むにあたって慎重かっ細心の配慮が必要になってくる。
    豊中市は国の在宅寝たきり老人歯科保健推進事業のモデル地区として, 在宅歯科医療にたずさわり歯科医師会活動として4年にわたり実施してきたが, その経験から会として本事業を実施するにあたってどのような考え方をベースに進めるべきかを述べてみたい。
    在宅歯科診療終了後の患者の経過を調査したところ相当数の患者が比較的短期間を経て死亡していることがわかった。まさに在宅歯科医療は危険と隣り合わせにいるということができる。本事業実施後のさまざまな問題点について提起し, 今後の在宅歯科医療のよりよき発展をめざす議論が活発になることを切望する。
  • 奥山 秀樹
    1993 年 7 巻 2 号 p. 121-127
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え, 老人人口が増加するとともに日常生活において自立の困難な在宅寝たきり老人も増加している。こうした在宅寝たきり老人を対象に佐久市立国保浅間総合病院歯科口腔外科では行政との協力を基礎に1983年より歯科診療を続けてきた。
    当科で診療を行なった寝たきり者は, 一日中寝たきりという重度の者より室内やベット上での移動が可能な比較的軽度あるいは中等度の寝たきり者が多かった。また全身的合併症は脳血管後遺症が66%と最も多かった。
    口腔内の状況として現在歯が少なく, 義歯が充分に機能していない者が約半数であった, また口腔清掃状態が不良の者が多かった。
    治療は訪問診療を中心に外来診療や入院診療を取り入れて行なった。治療内容は義歯に関する処置が最も多く84.5%の者に行なった。その他の処置はいずれも少なかった。
    在宅歯科医療の効果として口腔機能の改善が最も著明であったが, 精神面や身体面での効果も少なくなかった。
    こうして在宅歯科医療を実施していく中で様々な問題点があるが, 全身的偶発症を起こす可能性があるということが最も大きな問題点と思われた。その対応として在宅歯科医療の適応を指導的内容と, 義歯を中心とした非観血的処置に限りその他の処置や手術はできるだけ診療室へ搬送したり, 入院下で診療するべきと思われた。
  • 宮武 光吉
    1993 年 7 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    国の施策として実施されている在宅寝たきり老人歯科保健推進事業、寝たきり者に対する訪問口腔衛生指導事業等の概要と, その効果の評価について述べた。地域における在宅の寝たきり者等に対する歯科保健事業は, 先駆的に実施されてきた地域を除き, 不十分な状況にあったが, 1988年に, モデル事業として開始されてから, 全国的な展開がみられるようになった。引続き, 1992年からは, 老人保健事業の中に訪問口腔衛生指導が新たに加えられ, さらに, 1993年からは在宅心身障害 (児) 者に対する歯科保健推進事業が予算化される等, 国の事業として拡充されている。これらの事業は, 地方自治体が実施主体となり, 地域の歯科医師会等の協力を得て実施されており, 全身的な状態の改善にも効果がみられ。
  • 下山 和弘, 大芦 治, 海野 雅浩, 内田 達郎, 長尾 正憲, 小田切 一浩, 山崎 久美子
    1993 年 7 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢歯科患者の主訴と抑うつ傾向との関連を明らかにするために, 東京医科歯科大学高齢者歯科治療部の外来患者 (男性88名, 女性132名, 平均年齢74.5歳) を対象にZungの自己評価式抑うつ性尺度 (SDS) により抑うっ傾向の調査を行った。SDSの質問項目よりQOLの因子と抑うつ感の因子を抽出し, SDSの総得点, QOLの因子得点, 抑うつ感の因子得点と口腔内状況との関連については以前報告した。今回は被検者を主訴により義歯不適合 (上下顎全部床義歯装着者) 群義歯不適合 (その他の義歯装着者) 群, 義歯破折群, 義歯不適合・歯疼痛動揺群歯疼痛動揺 (義歯装着者) 群, 歯疼痛動揺 (義歯非装着者) 群, 心身医学的対応症例群その他の主訴をもつ群に分類し, 上記の3得点について2 (男女別) ×2 (該当する主訴の分類) の分散分析を行った。歯疼痛動揺 (義歯装着者) 群ではその他の群と比較するとQOLの因子得点が有意に低く, SDSの総得点が低い傾向があった。また心身医学的対応症例群ではSDSの総得点および抑うつ感の因子得点が有意に高かった。SDSの総得点は主訴の相違によらず女性が男性よりも有意に高かった。すなわち主訴の相違は男女間の抑うっ傾向の差に影響していなかった。本研究の結果から高齢歯科患者の主訴と抑うっ傾向との問には関連があることが推察された。歯科治療時には顎口腔系における主訴の内容を踏まえたうえで, 患者の抑うっ傾向を含めた精神的身体的な状態の把握が必要であることが示唆された。
  • 口腔内調査のフレームワークについて
    石山 直欣, 平野 浩彦, 笠原 諏訪子, 渡辺 郁馬, 山根 瞳, 牧野 正義, 天野 秀紀
    1993 年 7 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    我々は東京都老人総合研究所が1991年4月より調査を開始した長期プロジェクト「中年からの老化予防総合的長期追跡研究」の医学班の総合的医学的健康調査 (以下健康調査と略) の一部分として口腔内調査を行なった。当プロジェクトは医学, 心理学, 社会学の3つの分野よりなり10年間の縦断研究として展開する。医学班の中心的目標は老化とそれに伴う疾病, 障害の発生要因を解明し健康な身体を維持していくための方法を確立することである。研究対象地域は都市型住民として東京都小金井市の中高年を, 農村型住民として秋田県南外村の中高年を対象として行った。1991年は第1回目として東京都小金井市在住の65歳以上84歳以下の者から無作為抽出によって996名が選定された。この中で訪問聞き取り調査に応じたのは814名さらに健康調査に参加したのは405名 (男183名, 女222名) であった。健康調査は従来から行われてきた身体計測, 問診, 検尿, 血圧測定, 心電図検査, 血液検査, 内科検診, に加え新しい検査として歩行や指タッピングなどの運動機能に関する検査, 骨塩定量と我々が行なった口腔内調査とからなっている。口腔内調査はG-1ゼリーを用いた咀嚼能力判定試験と天然歯数, 機能歯数 (天然歯数+補綴歯数) を新たに定義した。
  • 咀嚼能力と口腔内状況および身体状態との関連について
    平野 浩彦, 石山 直欣, 渡辺 郁馬, 鈴木 隆雄
    1993 年 7 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    当研究の目的は, 10年間, 同一地域の同一市民を対象に追跡調査し, 老人病及び老化予防方法の検討を行うことである。特に今回我々は, 口腔内状況を中心に検討し, 調査開始1年目の結果を報告した。
    対象は, 東京都小金井市在住の住民, 男性183名, 女性222名の合計405名であった。今回検討を行った調査内容は, 口腔内調査項目として, 天然歯数, 機能歯数, 咀嚼能力試験 (G-1ゼリー使用) の3項目, 他の身体機能調査項目として, 体重, 握力, 平衡機能 (開眼片足立ち時間), 骨塩量 (第三腰椎をDEXAにて測定) の4項目であった。
    以上の項目の関連を検討し, 以下の結果を得た。
    1) 年齢と口腔内状況の関連を検討した結果, 年齢が高くなるにつれ, 天然歯数, 咀嚼能力の有意な減少, および, 低下が認められたが, 機能歯数との相関は認められなかった。
    2) 口腔内状況と咀嚼能力の関連を検討した結果, 天然歯数が, 多いほど有意に咀嚼能力が良好であったが, 機能歯数との相関は認あられなかった。
    3) 年齢性の影響を除外したうえで, 咀嚼能力と全身機能との関連を検討した結果, 咀嚼能力が良好なほど, 体重, 握力, 平衡機能, 骨塩量の値は有意に高値であった。
    なお, 当研究は中年からの老化予防総合的長期追跡研究の一環として行われた。
  • 砂川 元, 小場 幸夫, 新崎 章, 金城 孝, 山城 正宏
    1993 年 7 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    1984年10月から1987年9月までの過去3年間に琉球大学医学部附属病院歯科口腔外科を受診した65才以上の高齢初診患者について臨床統計的観察を行つた。
    1) 過去3年間に当科を受診した65才以上の高齢初診患者は328例であり, これは同期間の新患総数3, 909例の8.4%であった。
    2) 主訴では疼痛に関する患者が151例 (46.0%) と多く, そのうちではう蝕・歯周炎およびそれに継発する歯性炎症が最も多く認められた。
    3) 高齢者の歯科口腔外科疾患では歯周組織炎, 悪性腫瘍, 補綴に起因する疾患が多く認められた。
    4) 既往および合併疾患を有する患者は328例中260例 (79.3%) であり, 循環器系疾患の占める割合は42.3%, 消化器系疾患は28.4%であった。
  • 広瀬 哲也, 石島 勉, 平井 敏博, 青木 聡, 芦田 眞治, 渡部 茂
    1993 年 7 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢者においては, 加齢に伴う唾液分泌量の減少に加えて, Slogren症候群や糖尿病, 高血圧症などの慢性疾患により, 唾液減少症あるいは口腔乾燥症と診断される症例が少なくない。唾液分泌量の減少した患者に対する補綴処置は, 通常の処置に比べて困難となり, さらに義歯使用に際しては多くの問題が生じ, その対処には苦慮するところである。今回われわれは, 味覚受容器を刺激し, 主として耳下腺唾液の分泌を促進するとされている, 口渇緩和ドロップSST® (Salix Saliva-stimulating Tablet) の有効性について検討した。
    被験者は, 若年者群として24才から27才の成年男子8名, 高年者群として66才から88才までの上下顎全部床義歯装着者12名であり, 安静時とSST®投与時の全唾液分泌量, 耳下腺唾液分泌量および唾液クリアランス能を測定し, 以下の結果を得た。
    1) SST®投与時の10分間の全唾液分泌量は, 若年者群 (p<0.01), 高年者群 (p<0.02) ともに有意に増加した。
    2) SST®投与時の耳下腺唾液分泌量は, 若年者群, 高年者群ともに有意に増加した (p<0.01) 。また, 経時的な耳下腺唾液分泌量の測定結果から, 若年者と高年者間では, その効果持続時間に差があることが判明した。
    3) SST®投与時の唾液クリアランス能は, 若年者群高年者群とも安静時に比較して有意な上昇が認められた (上顎: p<0.05, 下顎: p<0.01) 。
    以上の結果から, 口渇緩和ドロップSST®による唾液分泌促進の効果とその有効性が示唆された。
  • 杉原 直樹, 池田 康子, 眞木 吉信, 高江洲 義矩
    1993 年 7 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は老年者における歯科保健のための保健指導指針作成を目的とした。
    調査対象者は千葉市と船橋市の2つの軽費老人ホーム居住者158名と千葉市および千葉市近郊在住の在宅健常老年者107名 (合計265名) である。2集団の被検者とも通常の生活を営んでいる60歳以上の老年者である。
    現在の口腔内の自覚症状 (いま, 口の中で特に具合の悪いところがありますか) については, 歯 (30.5%), 義歯 (28.4%), 歯周組織 (12.4%) で異常を訴えていた。自覚症状が「特にない」と答えた者は, 施設居住者で50.6%, 在宅健常者で47.7%, 全体で49.4%であつた。歯についての自覚症状では, 「歯が痛いことがあるか」について, 施設居住者の6.2%, 在宅健常者の3.7%, 全体の5.1%の者で「よくある」と回答していた。歯を磨くときよく出血すると回答した者が施設6.4%, 在宅10.0%, 全体で8.0%であり, 「ときどき」までを含めると, 施設14.9%, 在宅18.8%, 全体で16.6%となり1割以上の者で出血症状を認めていた。歯周組織の炎症感では, 「よくある」と回答している者が施設4.2%, 在宅4.9%, 全体4.5%であった。
    上下顎別の義歯の満足度については, 上顎の義歯で施設48.5%, 在宅34.3%, 全体43.6%, 下顎ではそれぞれ, 42.3%, 28.2%, 37.1%の者で「非常に満足している」と回答していた。義歯の手入れのし方を習つたことがない者は施設81.5%, 在宅88.2%, 全体で84.0%であった。
    食品の摂取応答については施設で55.1%, 在宅で53.3%, 全体で54.3%の者が「非常によく噛める」と回答しており, 「ほとんど噛めない」と回答した者は, 施設5.7%, 在宅7.5%, 全体6.4%であつた。
    片側性咀嚼の有無についての回答の割合では, 両側で咀嚼している者は, 施設26.8%, 在宅19.8%, 全体24.0%であった。「わからない」と回答した者を除いても6割以上の者が片側性咀嚼をしている。
  • 痴呆群と非痴呆群の比較検討
    大竹 登志子, 川島 寛司, 柴崎 公子, 渡辺 郁馬, 杉原 直樹, 山根 瞳, 戸島 國
    1993 年 7 巻 2 号 p. 178-184
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢者の健康管理および生活の質 (Q.O.L.) に欠かせない合理的な痴呆老人の口腔ケアが, 直接介助する看護婦および寮母 (ケアワーカ) の技術としてまだ確立されていない。そこで効果的, 効率的な口腔ケアの方法を確立する可能性をさぐるために精神科医師, 歯科医師, 看護婦そして介護者と特別養護老人ホーム (特養) 利用者の実態調査をした。
    調査対象は都内3ヶ所の特養利用者185名, そのうち口腔診査の可能であった179名を分析対象者とした。非痴呆群は36名, 痴呆群は143名で, 平均年齢は81.4歳であった。
    清掃状態は痴呆の有無を問わず不良であったが, 歯の状態は, 非痴呆群より痴呆群では, 未処置歯数, 義歯の不適合, オーラルデイスキネジアが多かった。
    歯の清掃自立状況は, 残存歯については非痴呆群で9割, 痴呆群で3割, 義歯については非痴呆群で全員, 痴呆群では約9割が可能であるが, 痴呆の程度が重くなるにつれ自立度は低下した。
    痴呆老人の口腔ケアの可能性として, 歯みがき動作が指示にしたがって可能である者は8割おり, 今後, 口腔ケアの自立を高めることが可能であるものの, 痴呆の程度の差によってケアの方法を看護婦・寮母, 歯科医師および精神科医師とチームを組んで開発しなければならない。
  • 佐相 一夫, 渡辺 貴史, 小沢 利之, 金子 憲司
    1993 年 7 巻 2 号 p. 185-194
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    密着タイプ義歯安定剤は, 製剤の溶け出しによる違和感が少なく, 使用中に義歯を外して水洗いができるなど, 優れた特長を持っている。しかし, チューブから押出し難い, 使用後に義歯床から剥し難いという使用上の欠点があった。著者らは種々の添加剤を検討した結果, ポリプロピレングリコール (以下PPGと略す) を使用性向上剤として選定した。
    本報告では, チューブからの押出し試験および義歯床からの剥離試験を用いて, PPGの配合量が使用性の向上に及ぼす影響を検討した。さらに, 義歯安定剤の被膜強度, 臨界表面張力などの物性測定結果をもとに, PPGの作用機序を考察した。
    PPGの配合により押出し性および剥離性の向上が認められ, 配合量5%の場合が最も高い効果を示した。
    これらの試験結果とPPGを配合した義歯安定剤の臨床試験結果との間に対応が認められ, 本押出し試験および剥離試験は義歯安定剤の使用性予測試験法として有用であることが示唆された。
    PPGの配合は, 製剤の臨界表面張力を低下させ, その結果チューブ内面への付着性が低下して, 押出し性が向上したものと考えた。また剥離性の向上については, 被膜強度の増大により剥離時に製剤がちぎれ難くなったこと, および臨界表面張力の低下により義歯床との接着性が減少した結果と考察した。
  • 渡辺 郁馬, 石山 直欣, 佐藤 雅志, 今村 嘉宜, 高江洲 義矩, 金子 憲司, 小沢 利之, 佐相 一夫, 渡辺 貴史, 荒木 博之
    1993 年 7 巻 2 号 p. 195-210
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    義歯安定剤は不適合義歯を歯科医師に修理してもらうまでの間, 義歯使用者が暫間的に使用する医療用具である。市販されている義歯安定剤には密着タイプと粘着タイプの2種類がある。我国では密着タイプの義歯安定剤が主流であるが, このタイプの義歯安定剤は使用後に義歯床から剥しにくい, チューブから押出しにくいといった欠点があった。著者らはれらの欠点を改善するため, ポリプロピレングリコール (以下PPGと略す) を配合したPPG義歯安定剤の有用性を臨床試験により評価した。
    総義歯使用者72名を対象としてPPG未配合の市販義歯安定剤との比較によるクロスオーバー二重盲検法で臨床試験を行った。
    その結果, PPG義歯安定剤は対照とした市販義歯安定剤と同様, 優れた義歯の維持安定効果を示した。また, 主目的である使用性 (押出し易さ, 塗布し易さ, 義歯床からの剥し易さ) の改善については有意差 (P<0.01) をもって対照製剤よりも優れていることが確認された。さらに, 義歯床下粘膜の炎症の改善, 痛みの軽減にも有効であることが示唆された。一方, 安全性面ではPPG配合製剤および対照製剤にそれぞれ1例ずつ副作用が認められたが, いずれも粘膜の異変を伴わない刺激症状であり, 試験の中止により症状が消失する一過性の軽微なものであった。この結果, PPG義歯安定剤は有効性, 使用性, 安全性において有用であると結論された。
  • 義歯裏装材の効果的な使用について
    重頭 直文, 岩永 博行, 亀田 浩司, 村田 比呂司, 浜田 泰三
    1993 年 7 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    高齢者の中には顎堤の吸収が著しく, 義歯による咀嚼機能の回復が非常に困難な場合がある。このような患者に種々の義歯裏装を応用することによって, 不満を解消することができる。しかし, 適応する症例ごとに適切な物性を有する材料を選択する義歯裏装材の基準について明確ではない。
    そこで, 義歯裏装材の粘弾性的性質を調べることによって, 各材料の臨床的な使用目的を検討し, また義歯洗浄剤による暫間軟質裏装材の劣化を観察した。
    暫間軟質裏装材の各材料は一つの目的に絞らず汎用商品として使用できることと, 粉末と液を練和した後の操作性を良くすることが考えられており, 適する典型的な使用目的の結果は得られなかった。しかし材料間でかなり物性が異なっているために, より効果適な材料を使い分けることが必要である。
    弾性裏装材では, アクリル系裏装材よりもシリコーン系裏装材あるいはフッ素系裏装材のほうが高弾性であった。しかし, 弾性が極端に高いと緩圧効果が低下し, 床下粘膜に加わる圧力が分散されず, 局所的に大きくなる。そのため弾性裏装材に望むべき粘弾性は, 理想的には床下粘膜組織の粘弾性および咬合圧等と関連づけて決定すべきである。
    暫間軟質裏装材は酸化力タイプの義歯洗浄剤の使用による劣化が著しいが, 酵素や界面活性剤および消毒液では劣化が少なかった。したがって義歯洗浄剤の選択に際して, 暫間軟質裏装材の表面性状を劣化させない製品を選ぶ必要がある。
  • 鈴木 章
    1993 年 7 巻 2 号 p. 217-219
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 7 巻 2 号 p. 220-234
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 7 巻 2 号 p. 235-247
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 7 巻 2 号 p. 248-259
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 7 巻 2 号 p. 260-264
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 工藤 逸郎
    1993 年 7 巻 2 号 p. 265-266
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
  • 西連寺 永康
    1993 年 7 巻 2 号 p. preface1
    発行日: 1993/03/31
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
feedback
Top